時は流れるままに 55
「ああ、済みません」
「謝る必要は無いんだがな。そこの小さいのは別にして」
思わず発した言葉にエルマは切り替えしてみせる要。さすがの誠も少しむっとしながら彼女を見つめた。
「神前誠曹長です。一応カウラさんの小隊の三番機を担当しています」
「ああ知っている」
一言で片付けるエルマに落ち込みながら座る誠。仇を討つというように彼に親指を立てて見せながら立ち上がったのはアイシャだった。
「私はアイシャ・クラウゼ。一応、運用艦『高雄』の副長をやっているわ」
「ええ、存じております」
また一言。アイシャまで前のめりになるのを見てサラと島田が彼女の前に立ちはだかってその場を押さえる。
「じゃあアタシが……」
「お待たせしました!」
ランが立ち上がろうとしたタイミングで小夏がお好み焼きを運んでくる。
「本当にいつも有難うね。すっかりごひいきにしていただいちゃって」
それに続いてきたのは紺色の留袖姿の小夏の母春子だった。手際よく小夏を補佐して料理を並べていく。
「へえ、お好み焼きですか」
「エルマさんでしたよね。東都ではこんな店いくらでもあるでしょ」
春子はそう言いながらエルマの前にえび玉を置く。エルマは首を左右に振って珍しそうにえび玉の入ったどんぶりを覗き込んだ。
「そんなこと無いですよ。と言うかどうしてもうちは機動隊と言うこともあって、外食はカロリーが高めな食事ばかりなので」
そう言うとエルマは具の入ったどんぶりに箸を入れる。その表情が和らぐのが誠には安堵できるひと時だった。
「良く混ぜた方が良いな」
カウラの助言に頷くとエルマはどんぶりの中のものをかき混ぜ始めた。
一方、誠はかき混ぜるのに夢中なカウラとエルマから見えないように春子から手招きされていた。同じように春子に呼ばれたキムと一緒に立ち上がると階段に向かって静かに歩き始めた。
「神前君。どうにかしてくれる?」
春子は困ったように階下を指差す。誠の背中に心理的な理由による汗が広がる。
「来てるんですか?スミス大尉」
そんな誠の問いに春子は大きく頷いた。




