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時は流れるままに 53

「ここかよ……また」 

 ランは上座で一人飲むヨーグルトを飲みながら短い足で胡坐をかいていた。あまさき屋の二階の座敷。何度と無く来ているだけにランの苦笑いも誠には理解できた。

「でも……いいの?私達までカウラちゃんのおごりなんて」 

 そう言いながら来客も待たずに突き出しの胡麻豆腐を出してもらってそれを肴にビールを飲むアイシャ。彼女のわき腹を突いてサラが困った顔を浮かべるが、まるで気にする様子も無くアイシャはジョッキを傾ける。

「私達にとってはベルガー大尉と同じ妹に当たるんですね。本当に楽しみです」 

 笑顔のパーラ。隣のエダはすでにカウラに同席するなら自腹でと言われたキムが一緒にいた。

「でも残念ですね。島田先輩は今日はカネミツの搬入で徹夜だって言ってましたから」 

「神前君。気にしなくても良いって!」 

 赤い髪を振りながら元気に答えるサラ。誠も笑みを浮かべながら主賓の到着を待っていた。

「すまん、待たせたな……って、同僚達も一緒か?」 

 階段から顔を出したコートを抱えたエルマ。アイシャが隣の席に座れと指差すが、愛想笑いを浮かべたエルマはそのまま要の隣のカウラと向かい合う鉄板の前に腰掛けた。

「どうも私の部隊では一人が飲みに行くと言い出すと、いつでもこんな有様なんだ。ここはうちの隊舎みたいなものだ。楽にしてくれ」 

 カウラの一言で緊張していたエルマの表情が緩む。エルマについてきた小夏に手を上げたラン。小夏はそのそばにたどり着くとランの注文を受付始めた。

「もう五年経つんだな」 

「ああ」 

 そう言って見詰め合うカウラとエルマ。その様子をこの上なくうれしそうな表情のアイシャが見つめている。

「昔なじみの再会だ。くだらねえこと言うんじゃねえぞ」 

 すでに自分のキープしたジンを飲み始めている要がいつものように奇行に走るかもしれないアイシャに釘を刺す。誠はその隣でまだ飲み物も運ばれてきていないと言うのに始まるかもしれないアイシャの悪ふざけに警戒しながら正座で座っていた。

「今の品の無い発言をしたのが西園寺大尉だ。あの西園寺家の次期当主だ」 

 カウラの言葉に眉を引きつらせながら要がエルマに顔を向ける。

「エルマ・ヒーリア警部補です」 

「これはご丁寧に。ワタクシは胡州、藤の内府。西園寺公爵息女、要と申しますの。よろしくお願いできて?」 

 わざとらしく上品な挨拶を繰り出す要の豹変振りに目がでんぐり返ったような表情のエルマ。時々こういう状況に出会ってきた誠は苦笑いを浮かべながらエルマが落ち着くのを待っていた。

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