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時は流れるままに 51

 急に立ち上がったロナルドの表情の死んだ顔に、思わず誠はのけぞりそうになった。要の頬がひくついている。カウラは目を逸らして端末の画面を凝視している。そしてこの場を収める責任のあるランは泣きそうな顔でロナルドを見つめていた。

「みんな。いいんだよ、そんなに気を使わなくても。人生いろんなことがあるものさ」 

 そう言って笑うロナルド。どう見ても気を使わなくて良いと言うようには見えないその顔に全員が引きつったような笑みを浮かべていた。

「すみません!」 

「お邪魔します!」 

 そう言って現れたのは島田と小火器管理主任のキム・ジュンヒ少尉だった。キムの手には紙箱が握られている。

「スミス大尉」 

「私は特務大尉だ」 

 こめかみを引きつらしてキムの言葉を訂正するスミス。それを軽い笑顔で耐え切ったキムはそのままロナルドの机に箱を置いて蓋を開いた。

「頼まれていたナインティーイレブンのロングセフティーの組みつけが終わったんで届けに来たんですけど」 

 そう言うとキムは箱の中からロナルドの愛銃を取り出した。ゴツイ大型拳銃ガバメントのクローン。それを見るとロナルドは口元に少しだけの笑みを浮かべて受け取った。何度かかざしてみた後、マガジンを抜いて重さを確かめるようなしぐさをしてみせる。

「バランスが変わったね」 

 ようやく死んだ目に光が入った。

「まあレールにライトを付けると若干前が重くなると言ってたじゃないですか。そこでスライドの前の部分の肉を取って若干バランスを後ろに持っていったんですよ。どうです?」 

 キムの説明を聞いてロナルドは銃を何度か握りなおした後、静かに箱に戻した。

『駄目か?やっぱり駄目か?』 

 要のコメントが誠の端末の画面に表示されたとき、キムの後ろから島田がロナルドの前に顔を出す。

「特務大尉。例のブツ。到着しているんですけど……」 

 その言葉はまるで魔法だった。キムの銃を受け取って少し落ち着いたロナルドの表情がぱっと明るく変わる。

「例のブツってオリジナルのシリンダーヘッドか?」 

 シリンダーヘッド。ロナルドはガソリン車の規制の少ない東和勤務になってすっかりクラシカルなガソリン車改造の趣味にはまり込んでいた。二輪車で同じガソリン車マニアの島田とは良いコンビと言え、ロナルドが配属数週間後には手に入れていた初代ランサーエボリューションのレストアをしたのも島田だった。

「オリジナルじゃあ無いんですが、無理なボアアップ改造されてたこれまでのとはかなり違いますよ。エンジンも無茶が無くなって良い感じに吹き上がりますし」 

 島田のこの言葉が決定打だった。ロナルドはそのまま島田の肩を叩く。

「じゃあ、行こう。クバルカ中佐!ちょっと駐車場まで行って来ますから!」 

 導かれるようにして島田についていくロナルド。彼の姿がドアに隠れたとき、全員が大きなため息を着いた。

「キム。お手柄だな」 

 ランはそう言いながら隊長の椅子に座りなおした。軽く手を上げてキムが出て行く。

「助かったー」 

 要は大きく安堵の息をつく。カウラもようやく肩の荷が下りたというように伸びをしてみせた。

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