時は流れるままに 43
急に少女はドアを開いて車に戻る。少年がその様子にあっけに取られていると急に強い光が彼を包み込んだ。
「君達!そこで何をしている!」
東和警察の機動隊と思われる二人の警官が車に近づいてくるのが見える。それをめんどくさそうに見つめたジョージは静かにファスナーを下ろすと小便を始めた。
「オジサン達!ごめんね。おしっこが……」
近づいてきた警官のうち、頬に傷のある巡査長の顔に笑みが浮かぶ。
「坊ちゃん、そんなところでしちゃ駄目だよ。近くに……」
そこまで言ったところで太り気味の方が相棒のわき腹を突いた。彼の視線が車のナンバープレートに移るとその表情に驚きが走る。
「外ナンバー?大使館の専用車両ですか」
二人の表情が厳しいものに変わる。肩から提げていたカービン銃に手をかける二人。それを見て運転席の男は車から降りた。
「すみませんね。カクタとか言う町の交流イベントの帰りでしてね」
男の言葉を口をあけて聞いていた警官も相手が大使館の関係者と聞いて、とりあえず銃から手を離すとヘッドギアに付けられた通信機で本部に連絡を送る。
「本当に申し訳ないね。おう、ジョージ。済んだか?さっさと帰らないとお父さんが心配するよ」
ジョージは警官達が神妙な顔で本部との交信を続けているのを見て舌を出しておどけてみせる。そんな彼を軽蔑のまなざしで見上げる少女。一瞬止んでいた北風が再び彼らの間を吹きぬけていく。
「そうですか。本部から後で大使館に確認が行くと思いますので」
太った警官の言葉に愛想笑いを浮かべる男。
「本当にお手間を取らせましたね。それにしてもずいぶん派手に照明を使っての搬入作業ですねえ……何を運んできたんですか?」
そんな何気ない言葉にピクリと反応する警官。それを見て車に乗り込もうとしていたジョージはドアに手をかけたままじっとしている。その瞳は興味深げに警官達の反応を観察することに決めたように車の屋根をぎょろぎょろと見回す。
「残念ながらお答えできかねます」
警官の表情が凍りつく。男はさらに質問をしようと思うが、上司から指示を思い出した。
「じゃあ、お仕事がんばってくださいね」
そう言って男は運転席に身体を沈めた。それを見て素早く車に乗り込むクリタ少年。
「お答えできませんだって!馬鹿じゃないの?あの中身が化け物みたいに強いって言われているアサルト・モジュールだってちょっと調べれば僕だってわかるよ」
「仕方ないですわ。それがあの方達のお仕事ですもの」
後部座席に座る二人のとりとめのない話題に苦笑いを浮かべるとそのまま車をバックさせて国道へ向かう直線道路に乗り入れることに決めた。




