時は流れるままに 41
「ツリーとかはどうします?」
誠も久しくクリスマスらしいものとは無縁なので、そう言ってアイシャを見た。ぐっと右手の親指を上げて任せろと目を向けるアイシャ。
「勝手にしろ」
そう言うと要はグラスを口に運ぶ。
「他にシャンパンは……」
「スパーリングワインでしょ?」
「どっちでもいいよ。でも貴様等は飲むな」
カウラの言葉にアイシャが合わせて要が二人に目を向ける。そんな場景を笑みを浮かべて眺めていた誠。
「愉しそうね。うちも店を閉めて神前君のところお邪魔しようかしら」
そう言って微笑む春子に要がタレ目で空気を読んでくれと哀願するようなサインを送る。
「冗談よ、冗談。うちが店を閉めたらシャムちゃん達まで押し寄せるわよ」
「それはちょっと勘弁してもらいたいですね」
愛想笑いを浮かべる誠。そんな彼の視線に一人で腕の端末に何かを入力しているアイシャの姿が目に入った。
「何をしてるんですか?クラウゼ少佐」
「ん?」
誠の言葉にアイシャの行動を見つけたカウラが端末の画面を覗きこむ。
「クリスマスを愉しく過ごす100ヶ条。お前、本当にイベントごとを仕切るのが好きだな」
呆れたようにカウラは烏龍茶を口に運ぶ。要もカウラの言葉でアイシャの行動に興味を失って静かに空のグラスにウォッカを注ごうとした。
「あれ?空かよ。春子さん」
「今日はウォッカは無いわよ。先月頂いたジンなら一ケース封も切らずに置いてあるけど」
「じゃあ、それで」
要の言葉に厨房の入り口に立っていた小夏が呆れたような顔をした後中に消えていった。
「でも、愉しそうよね。できれば写真とか撮って送ってね」
春子はそう言うとさわやかに笑いながら立ち上がり奥へと消えていく。その様を見送っていた誠の目を見て複雑な表情を浮かべた要。
誠が厨房を見つめているのを幸いに懐からウィスキーの小瓶を取り出した要は蓋を取って誠の飲みかけのビールのジョッキに素早く中身を注ぎこんだ。
「素敵ですよね、春子さん」
うれしそうに言う誠に伏せ目がちに視線を送る要。アイシャは要の行動を見ていたが誠がジョッキに口をつけるのを止めることはしない。
「ぐっとやれ、ぐっと」
カウラも煽るようにつぶやく。誠は不思議に思いながら一気にジョッキを空にした。
「あれ?なんだろう……目が回るんですけど……」
そう言った言葉を残して誠は腰が抜けたようにその場にへたり込んだ。そしてそのまま意識は混濁した闇の中に消えた。




