時は流れるままに 22
カウラの場合手際が悪いのが問題だった。
まるで理科実験をしているとでも言うように、計りに目を向けて動かなくなる。そんなカウラに笑っていられたのは最初に当番のときだけだった。ともかく計る。何でも計る。そして間違えないようにと調理中にも計る。次第に料理を作っているのか食材の重さの検査をしているのかわからなくなる。当然時間は数倍かかり、朝食を食わないで寮を飛び出す隊員が続出した。それ以来彼女は食事当番が免除されることとなった。
正反対なのが要。適当、いい加減、そして短気。野菜炒めは半生。目玉焼きはスクランブルエッグ化。味噌汁はぬるかった。本人は全く気にせず食べるだけに性質が悪かった。当然彼女も食事当番免除組である。
「ほら!クリスマスの時期ってオードブルの広告とか一杯出ているじゃないですか!何とかなりますよ!」
明るく作り笑いを浮かべて叫ぶ誠。自覚のあるカウラは引きつった笑いを浮かべて頷き、自分のことは棚に上げているだろうが、とりあえずアイシャとカウラの料理は食べたくない要が納得したように頷いている。
「そうね……じゃあ料理はOKっと」
胸をなでおろす誠。コタツから追放されて正座している誠の足を隙間風が襲う。
「神前。寒いんじゃないのか?」
カウラはそう言うと要をにらみつけた。確かに誠は寒かった。そればかりでなくなんとなくはじめた正座のせいで足がしびれてきていてぴょこぴょこと足を動かしてそれを我慢している。
「仕方ないなあ……ここに足を入れろよ」
ずるずると横に移動する要。そしてそこに足一本分くらいのスペースが出来た。
「おい、西園寺。それじゃあ入れないんじゃないのか?」
「良いんだよ!片方ずつ入れればあったかくなるだろ?それになんなら……」
タレ目の要の上目遣いの視線。舌なめずりをしているその顔にはなんともいえない色気が立ち込める。誠も一瞬だまされそうになるがカウラの冷たい視線で我に返った。
「無茶言わないでくださいよ」
誠の泣き言が響く警備室。だが、コタツの上で画面を黙っていじっているアイシャは彼等のことなど眼中になかった。
「それでね、私達三人はカウラちゃんにプレゼントをしないといけないわけよね。これはカウラちゃんの誕生日パーティーなんだから」
「遠慮する」
アイシャの言葉に即断するカウラ。その言葉を聞くとアイシャはいかにも残念そうな表情を浮かべる。
「その方が懸命だよなあ」
また少しだけコタツのスペースを作るべく動きながら要がつぶやいた。
「もしかして乙女ゲーとかを用意していたんじゃないですか……しかも自分が飽きた中古の奴」
誠の言葉にアイシャが目をそらす。
「図星か……それはプレゼントとは言わないぞ」
「違うのよ!今度は新品の奴を!」
「まず最初に自分がデバックと称して遊ぶんだろ?」
カウラと要に突っ込まれて思い切り沈んだ顔で誠に助けを求めるような視線を投げてくるアイシャ。だが誠もさすがにこの状態で彼女をかばうことは出来ず視線を落とした。




