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時は流れるままに 21

「まず誕生日会ですけど」 

「素直にクリスマスがやりたいって言えばいいのに……」 

 ぼそりとつぶやく要に鋭いアイシャの流し目が飛ぶ。肩をすくめて舌を出した要を見ると、アイシャは再び話を続けた。

「いろいろ考えたのよ。寮でにぎやかに行う。あまさき屋でパーとやる。でもそれでは私達が求めている家族とのふれあいという要素が満たせないのよね」 

 誠はカウラの顔を見てみた。カウラはアイシャの言うような家族とのふれあいを求めているわけじゃないとはっきりわかるような苦笑を浮かべている。

「そこで誠ちゃんにお願いがあるの」 

 ずいとコタツに身を乗り出して誠を見つめてくるアイシャ。その眼力につい身をそらして避けてしまう誠。

 アイシャの視線ははっきりと誠を捉えているのがわかる。いつものことだがこういう時のアイシャの発言はろくでもないことであることはわかりきっていた。

「誠さんの家で誕生日会。お願いできるかしら?」 

 予想は的中した。誠は助けを求めるようにカウラを見る。首を横に振るカウラ。今度は要を見た。タレ目はニヤニヤ笑いながら誠の発するだろう泣き言を想像しているように見える。

「うちって……クリスマスは特に変わったことはやりませんよ」 

「いいのよ。クリスマスじゃなくてカウラちゃんのお誕生日会なんだから!」 

 そう言うと満面の笑みで誠を見つめてくるアイシャ。

「でも……確か親父は学校の行事とかでこの当たりの日はいないのが普通ですけど」 

 抵抗するように誠はそう言ってみた。高校教師の誠の父誠一がクリスマス前後に家にいないことが多いのは事実だった。誠も子供の頃はクリスマスには父はいないものだと思い込んでいた時期もあったくらいである。母と二人きりのクリスマスを過ごすのが普通のことだった。

 だが、アイシャはまるでひるむ様子もない。舌なめずりをしているように見えるのは気のせいだと誠は思い込むことにしながらアイシャの眼力に耐えていた。

「じゃあ誠ちゃんはお母さんに連絡して場所の確保をお願いするわ」 

「僕の意見は無視ですか」

 そう言って目を手元の端末に移すアイシャ。奇妙に力のある眼に見つめられて焦っていた誠はようやくそれから解放されて大きく息を吐いた。

「それでお料理……」 

 こう言ってアイシャは黙り込む。

 アイシャ、カウラ、要。家事とは縁のない三人である。寮の料理当番では三人がすさまじい能力を発揮して見せたことは伝説となりつつあった。

 アイシャに任せると味付けが崩壊した。包丁の使い方は誠と同じ程度、レシピどおりに火を通し手早く作業を進める。だが味付けで普通を拒否する彼女は絶対に適量を守ることはなかった。

 それ以来彼女は食材切りがかりとして味付け担当を別に設けて料理当番を務めることになった。

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