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時は流れるままに 20

「あら……お姉様方おそろいですのね」 

 窓の外には和装の美女の姿がある。嵯峨の双子の姉妹の姉の嵯峨茜。

 先月の同盟厚生局と東和軍の武断派によるクーデター未遂事件の解決でようやく来年度の正式発足が決まった『法術特捜』の新主席捜査官就任が決まった同盟司法局のエリート捜査官である。

「あと西園寺さんがタバコを吸って……」 

「おう、茜じゃねえか。会議ばかりで退屈じゃねえのか?」 

 喫煙所から戻ってきた要が茜の高級セダンの横に立っていた。ちらちらと要はその車を眺めるが、要はどちらかと言うとこう言う高級品的な車が嫌いだと何度も言っていた。その目はいつものようにただの好奇心で鏡にでもできるのかと言うほどの艶を見せる塗装を見つめているだけだった。

「会議も大切なお仕事ですわよ。特にわたくし達は国家警察や同盟司法局捜査部、場合によっては軍部との協力が必要になるお仕事ですもの。面倒だと言っても事前の綿密な連携が……」 

「聞こえない!何にも聞こえない!」 

 そのまま自分に対する説教になりかねないと思った要は両耳を手で押さえて詰め所の入り口に向かっていく。

「本当に要お姉さまは……」 

「茜ちゃんもそんなに説教ばかりしても……」 

 アイシャの言葉に大きくため息をつく茜。会議をサボる、会議では寝る、会議から逃げるの三拍子で上層部の不興を買うことを楽しんでいると言う噂の茜の父惟基。無類の女好きであっちこっちの部隊で同性にちやほやされることが趣味だと言ってはばからない妹楓。この二人を東都のはずれ豊川の部隊に残して都心に去ることに不安を感じている茜に誠は同情を禁じえなかった。

「そうですわね。カウラさん!」 

「はい!」 

 誠と同い年。だがどうしてもその雰囲気と物腰は落ち着いていてカウラですら緊張するようなところがあった。そして若干17歳で東和弁護士試験を合格したと言う回転の速い頭脳。あの嵯峨や楓すら御する腹の据わり具合。誠も声をかけられたカウラに同情する。

「しっかり要お姉さまのたずなを握っておいてくださいね」 

「うるせー!余計なお世話だよ」 

 上がりこんできた要がゲートのスイッチを押す。開くゲートを一瞥した後、茜は大きなため息をついて要を見上げた。

「なんだよ……」 

「何でもありませんわ」 

 そう言って茜は車に乗り込む。身を乗り出して駐車場に向かう茜の車を見送った後、要はずかずかと歩いてコタツのそれまで誠が入っていたところに足を突っ込む。

「何もねえって顔じゃねえよな!あれ」 

 その横柄な態度に態度の大きさでは要と負けていないアイシャですら大きなため息をついた。

「じゃあさっきの話の続きをするわね」 

 要を置いて話を始めようとするアイシャ。拳を握り締める要の手を握っカウラが頭を振るのを見てようやく要は落ち着いてコタツの外に正座している誠に勝ち誇った笑みを浮かべて見せた。

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