時は流れるままに 13
「ランはいるか?」
入れ替わるように入ってきた警備部部長マリア・シュバーキナ少佐に思い切りため息をついてみせるラン。それを見てショートカットの金髪を撫でながら笑顔を浮かべる長身のマリアが歩み寄ってくる。その二人を仕事をするふりをしながら要と誠は観察していた。
「そんな顔するなよ。一応保安隊のナンバー2はお前なんだ。それよりこれから訓練でかけるから声をかけようと思ってな」
「アタシは非番の予定だったんだよ。それなら明華やリアナに言ったらいいだろ?」
さすがに疲れたと言う表情でランはマリアを見上げた。まるで小学校の先生と生徒である。誠は噴出しそうになる要をはらはらしながら眺めていた。
「閉所戦闘訓練だよなあ……もうそろそろ隊長や楓のお嬢様がお帰りになるころか……ってオメー等!遊んでないで!」
自分が見られていることに気づいて叫ぶラン。要と誠は頭を引っ込めた。隣では二人の上司と言うことでカウラが大きなため息をついてみせる。
「今日は歩哨担当も出すつもりなんだ。そこで……」
マリアはそう言うとカウラを見つめた。きょとんとした表情のカウラは自分の顔を指で指す。そしてそのまま視線を仕事をしているふりに夢中な誠と要に向けた。
「それとアイシャにも頼んでおいたからな」
「余計なことすんじゃねーよ。カウラ!そう言うわけだ。とりあえず……」
諦めたランはそう言うと腕の端末に目を向ける。
「20時まで、ゲートで歩哨任務につけ!」
「は!フタマルマルマル時までゲート管理業務に移ります!」
立ち上がったカウラに大きく頷いて見せてマリアは颯爽と部屋から出て行った。ランは仕方が無いと言うように誠と要に目を向ける。にんまりと笑った二人はそのまま立ち上がると出口で敬礼してそのままカウラを置いて廊下に出た。
「あ!お姉さま!」
声をかけてきたのは楓だった。そのまま走り寄ってこないのは明らかに彼女を見て要の表情が冷たくなったからだった。だが、要に苛められたいというマゾヒスティックな嗜好の持ち主の楓は恍惚の表情で立ち去ろうとする要を見つめている。誠も出来るだけ早く立ち去りたいと言う願望にしたがって楓の後ろの渡辺とアンを無視して、そのまま管理部のガラス窓を横切りハンガーへ降りる階段へと向かった。
「声ぐらいかけてやればいいのに」
追いついてきたカウラの一言にこめかみを緊張させる要。その表情を見てさすがのカウラも目をそらした。
ハンガーではすでにトレーラーに搭載された誠の05式をワイアーで固定する作業が続いていた。
「あれ?カウラさん達は……」
目の下に隈を作って部下の作業をぼんやりと眺めている島田からの声に不機嫌になるカウラ。
「門番の引継ぎだ!警備部が訓練に行くからその代役だ」
「ああ、さっきアイシャさんがスキップしていたのはそのせいですか」
そこまで言うと島田はハンガーの隅に置かれたトレーラーの予備タイヤの上に腰を下ろしてうなだれる。
「辛そうだな」
カウラの言葉に顔を上げた島田が力ない笑いを浮かべていた。




