時は流れるままに 11
すでに多くのメディアで紹介されてきた誠の機体は地球系植民惑星のすべてで、『誰か止めなかったの?』という落胆と『素晴らしい!感動した!』と言う賞賛を浴びる塗装が施されていた。それは全身にアニメやギャルゲーの魔法少女や戦闘ヒロイン、そして女子高生の幼馴染キャラで塗装されると言う痛い機体だったからだった。
「何を見上げているんだ……そうか、明日から東豊旗駐屯地の基地祭だったか」
特に関心は無いというようにカウラは誠の痛い機体を見上げる。世事に疎い彼女にはかわいい絵が描いてあるくらいの感想しかないのを知りながら誠は頭を描いた。
「でも人気ですよね、神前さんの機体。僕も何度かネットでこの塗装の05式乙型のプラモデルの写真見つけましたよ」
「ああ、そう」
痛い目で見られるのは慣れている誠だが、こうしてカウラの澄んだ目で見上げられると恥ずかしく思えてきて頭を掻くしかなかった。開かれたコックピットに顔を突っ込んでいた整備員までいつの間にか誠達を見下ろしている。
「なんだ?お前等。帰ってきてたのか。兄さんは……まだなんだな」
ハンガーから二階の執務室へ上がる階段の上で声をかけてきたのは高梨渉管理部長だった。東和軍の背広組みのキャリア官僚から腹違いの兄である嵯峨惟基の首根っこを押さえる総務会計総帰任者『管理部部長』の仕事をすることになった。
その兄の嵯峨惟基とは似ても似つかないずんぐりむっくりした体型が階段の上で待ち構えている。
「ああ、すいません。先日の備品発注の件は……」
「それなら後にしてくれ!西兵長。島田君は?」
階段を急ぎ足で下りてきた高梨はそのまま西のところに向かう。取残された誠とカウラはそのまま面倒な話になりそうなので逃げるようにして上に向かう鉄製の階段を登り始めた。
階段を登りきると目に入るのはガラス張りの管理部のオフィス。軍服を着た主計任務の兵や下士官と事務官のカジュアル姿の女性が忙しく働いているのが見える。
「遅せーぞ!いつまでかかってんだ!とっとと来い!」
オフィスを眺めていた誠達を甲高い声が怒鳴りつける。アサルト・モジュール。特機と呼称される人型兵器の運用を任されている保安隊の中心部隊『実働部隊』の部隊長、クバルカ・ラン中佐がそこに立っていた。いつもの事ながら誠は怒ったような彼女の顔を見ると一言言いたかったがその一言は常に飲み込んでいた。
『萌えー!』
ランはこの部隊の副隊長であり、管理部部長許明華大佐や運行部部長鈴木リアナ中佐と同じくらいのキャリアを持つ古参の上級士官である。だが勤務服を着て襟に中佐の階級章をつけ、胸には特技章やパイロット章や勲功の略称をつけているというのに、まるで説得力が無くなって見えた。その原因は彼女の姿にあった。
彼女はどう見ても小学生、しかも低学年にしか見えない背格好だった。124cmの身長と本人は主張しているが、それは明らかにサバを読んでいると誠は思っていた。ツリ目のにらむような顔つきなのだが、やわらかそうな頬や耳たぶはどう見てもお子様である。
「非番じゃなかったんですか?」
カウラはいつも不自然に思わずにそのままランのところに足を向ける。
「第四小隊の復帰の話が来ただろ?あれで訓練メニューの練り直しが必要になってな。どうせ休日ってもすることもねーからな」
そう言いながらランはにんまりと笑って詰め所の中に消えた。




