時は流れるままに 108
「ではこちらでよろしいですね」
老紳士の静かな言葉に満足げに頷く要。カウラの両脇にいたメイドが自分を導くのを見てカウラも静々と部屋を出て行った。
「でも実にお美しい方ばかりですな、神前曹長。非常にうらやましい職場ですね」
「ええ、まあ」
頭を掻く誠。確かに自分がパシリ扱いされて入るものの、神田の言うことが事実であると改めて思っていた。
「それではクラウゼ様のものは候補が出品された段階でお知らせいたしますので」
その言葉に要が立ち上がる。呆けていたアイシャもそれを見ていた誠も立ち上がった。
「ありがとうございます」
次々と店員達が頭を下げてくるのにあわせながら頭を下げる誠。彼をにらみつけながら要は先頭に立つようにして歩く。誠達は居づらい雰囲気に耐えながら客の多い広間のような店内に出た。
「まもなくカウラ様とお品物の方も揃います」
神田という支配人の言葉に笑顔で頷く要。
だが、外を見ていた要のタレ目が何かを捕らえたように動かないのを見て誠も外の回転扉を見た。
そこには見覚えのある黒のコート、紫のスーツ、赤いワイシャツと言う極道風のサングラスの大男が右往左往しているのが見えた。頭はつるつるに剃りあげられ、冬だと言うのになぜかハンカチで頭を拭きながら何度も店内に入るかどうかを迷っている。
「明石中佐……」
誠の言葉に店内をきょろきょろと見回していたアイシャも回転扉の外の前保安隊副隊長を見つけた。
「なにやってんだか」
呆れてため息をつくアイシャ。
「遅れてすまない。ではこのバッグは……」
着替えを済ませてアタッシュケースに入れた先ほどのティアラなどを手に持っているカウラも三人の視線が外に向かっているのを見て目を向ける。
「あれは……」
「それでは、また時間を作って寄らせていただきますわね」
そう言って微笑みながら出て行こうとする要を見送ろうとする神田。誠もただ外でうろうろしている明石が気になって仕方がなかった。




