時は流れるままに 104
そう言って画面に現れたのは赤い宝石のちりばめられたティアラとネックレス、そして指輪のセットだった。はめ込まれた石は一つ一つは大きくないものの、その数、そしてその周りを飾る小さなダイヤも見事に輝いて見える。明らかに高嶺の花とわかる商品にただ誠は息を呑んだ。
「なるほど、ルビーですわね。確かにベルガーさんの緑の髪には似合うんじゃないかしら」
そう言って悠然とカウラに目を向ける要。そのタレ目の真意を測りかねて呆然としているカウラ。そこで紳士は微笑んで話し始める。
「よろしければ直接ご覧いただけますよ。早速用意させます。そしてこちらのご婦人のものは……」
今度はアイシャを一瞥して再び老紳士は検索を始めた。ただ呆然と二人の会話を聞いていたカウラ。もしそのまま彼女の気の抜けた顔を今の要が見たら演技のめっきは剥がれ落ちて大爆笑間違いないという状況だった。
誠はただ老紳士の手元だけを見ていた。
「クラウゼ少佐のものは急がなくて結構ですわよ」
そう言うと自然な動きでレモンと砂糖をカップに入れて悠然の紅茶を飲む要。いつも寮で日本茶をずるずるすすっている御仁と同一人物だとは誠には信じられなかった。
「なるほど、では、まもなくオークションなどに出品されることが考えられているようなものでもよろしいわけですね?」
要を見上げて穏やかに笑う初老の支配人の表情は穏やかだった。
「そうですわね。とりあえずコンセプトを私が決めますからその線で品物が出てきたときに連絡していただければ幸いですわ」
ゆっくりとカップを置く要。彼女にこんな芸当ができるとは誠も予想していなかった。
「それではこれなどはいかがでしょう」
そう言って映し出したのはダイヤ中心の白を基調としたようなティアラと首飾り、それに腕輪のセットだった。
「あのー、要ちゃん?」
画像を見たとたんにそれまでの楽しそうな表情から一変して頬を引きつらせながら隣に座る要の袖を引っ張るアイシャ。
「どうされましたの?クラウゼ少佐殿」
今回要が浮かべた表情は見慣れた要の満足げなときに見せる表情だった。明らかに悪魔的、そして相手を見下すような表情。確かにこんな目でよく見られている小夏が彼女を『外道』と呼ぶのも納得できる。
そんな二人の様子を老紳士は黙って見つめていた。
「そんなにお気になさらなくてもよろしいですよ。防犯に関しては定評のある銀行の貸金庫の手続き等、初めて購入される方の要望にもお答えしていますから」
「神田さん。わたくしの銀行の東都支店。あそこを使いますからご心配には及びません」
『わたくしの銀行』という言葉。誠、カウラ、アイシャはその言葉に気が遠くなるのを感じていた。




