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時は流れるままに 101

「よろしくて?行きますわよ」 

 振り返ってそう言った要の雰囲気の変わり具合に誠もカウラも唖然とした。悠然と回転ドアに向かう要。そこにはいつもの粗暴な怪力と言う雰囲気は微塵も無い。カジュアルな雰囲気のダウンジャケットも優雅な物腰の要が着ていると思うと最高級の毛皮のコートのようにも見えた。

「変わるものねえ」 

 そう言いながらついていくアイシャ。その言葉を聴いて振り向いてにっこりと笑う要は誠にとっても別人のものだった。

 回転扉を通ると店内には数人の客が対応に当たる清楚な姿の女性店員と語らっているのが見える。店のつくりは誠がこれまで見たことがあるようなデパートの宝飾品売り場などとは違って展示されているのは数は少ないが豪華なケースに入った指輪やネックレス。その中身も誠は美術館等で目にしそうなものばかりだった。

「これは西園寺様……」 

 落ち着いた物腰で要に近づいてくる女性の店員。それほど若くは見えないが清潔感のある服装が際立って見える。

「お久しぶりに寄らせていただきましたわ。神田さんはいらっしゃるかしら」 

 所作も変われば声色も変わる。その豹変した要に生暖かい視線を送るアイシャ。カウラは店員が声をかけてきたときから凍ったように固まっている。誠も似たような状況だった。

「わかりました……それでは奥にご案内しますので」 

 そう言って歩き出す店員に当然のように続いていく要。そのいかにも当然と言う姿に誠もアイシャも戸惑いながらついて行こうとする。

「カウラさん!」 

 誠に声をかけられるまで硬直していたカウラが驚いたようにその後につける。店内でもVIP扱いされるにしては貧相な服装の要達を不思議そうに見る客達の視線が痛かった。

「どうぞ、こちらです」 

 黒を基調とする妖艶な雰囲気の廊下から金の縁がまぶしい豪華な客室に通された。誠達の後ろにいつの間にかついてきていた若手の女性店員がついてくる。穏やかに先輩とわかる店員が合図すると彼女達は静かにドアの向こうに消えていく。

「皆さんもお座りになられてはいかがです?」 

 すでにソファーに腰掛けている要の言葉。明らかにいつもの彼女を知っている三人には違和感のある言葉の調子。仕方なく誠達はソファーに腰掛けた。

「いつもお友達を紹介していただいてありがとうございます。この方達は……」 

 明らかに不釣合いな誠達を見回す店員を満足げに眺める要。

「職場の同僚ですわ。一応この二人に似合うティアラを用意して差し上げたくて参りましたの」 

 『二人』その言葉に口を開けるアイシャ。まさに鳩が豆鉄砲を食らった顔というものはこう言うものかと誠は納得した。

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