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時は流れるままに 10

「何が宿題だよ……どうせ第四小隊の連中がクリスマス休暇に入ったんだ。アタシ等が休んで良いわけねえだろうが」 

 吐き捨てるようにそう言って歩き出す要だが、彼女についていこうとした誠の顔を心配そうに見つめているカウラを見つけて振り向いた。

「カウラさん……何か?」 

 思わず不安そうな顔のカウラに声をかけた誠。そこで一度頭を整理するように天井を見上げたカウラが覚悟を決めたと言うような表情で口を開いた。

「それなんだがな。何でも……第四小隊は20日から勤務の予定なんだよな」 

 突然のカウラの言葉に誠は呆然とする。

「そんな……ロナルドさんは婚約者と……」 

「それが突然破棄されたんだそうだ。彼も相当荒れているらしいから仕事をして気分を変えたいと言うところなんだろうな」 

「でも……なんでですか?あの人結構良い人ですよ」 

「私に聞くな」 

 そう言うととぼとぼと歩き出すカウラ。そして誠は人のよさそうなロナルドが荒れている様を想像しようとしたが、いつもニコニコとしている穏やかなアメリカ海軍のエリート士官の表情がゆがんでいる様が想像できないでいた。

「なんだ、帰ってきてたの」 

 本館に入り、そのまま中で笑い声が絶えないアイシャ達の居る運行部の部屋を通り過ぎて、技術部部長室の前に来たとき、扉が開いて技術部のトップである許明華大佐が現れた。

『あ……』 

 誠もカウラも思わず声を出していた。

 彼女は来年の6月にタコこと明石清海中佐と結婚する予定があった。ロナルドの婚約破棄の話をしていた二人はそれを思い出して複雑な表情で上官を見つめていた。

「なんだなんだ?私の顔になんかついているとか……」 

 じっと自分を見つめてくる部下達の表情をいぶかしむように見つめる明華。だが、一番タイトな環境の技術部のトップには暇はなかった。何度か首をかしげるとそのまま二人を置いて早足でハンガーへと向かう。

「なんか話を聞いちゃうと意識してしまいますね」 

「ああ」 

 誠の言葉に上の空で返事をして再びカウラが歩き始める。技術部の各セクションの部屋を通過してハンガーへと出た誠達の前にはいつもなら隣の建物である車両置き場においてある人型兵器『アサルト・モジュール』の搬送用トレーラーが一台置かれていた。

 そしてその運転席では部隊の最年少で19歳の技術兵である西高志兵長が端末を手にじっと目の前の灰色の機体を見上げていた。

 保安隊の保有する12機のアサルト・モジュールのうちの一機。05式特戦乙型。そしてその担当操縦者は誠だった。

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