第5話 猫の性癖
『取り敢えず説明するとな....』
裕の話を要約するとこうだ。
まず最初に、春樹が犬型の魔物に襲われたそうだ。その時近くに居たLv2の『紅蓮の少女』が討伐に向かったが、呆気なく敗北。
魔物の反応は消えたが、いきなりあそこに現れたのは不自然すぎるとの事。最近魔物はゲートと呼ばれる空間の裂け目からでてくる事が分かったのだが、ゲートが開いた感覚が無かったそうだ。
因みにこの世界のレベルという物は、能力に覚醒した者が行うテストで合格した者の強さの目盛りの様な物で決まる。
最近この辺りを無双していた剣などに炎を纏わせて攻撃する事が出来るらしい『紅蓮の少女』は、やられてしまったそうだった。
「案外現場に近かったな....裕」
『うん。俺としても申し訳無かった。香さんが他の魔物を倒してくれて無かったら危なかった、俺だけだと確実に死んでいたよ』
そうか....と歯噛みする。裕の近くに現れた魔物はもしかしたら春樹の辺りで何かをそしうと企んでいた魔物の仲間の可能性もある。
もしそうだったらこの魔物、かなり知識が高いぞ。危険だ。
「分かった。あの辺に移住するからよろしく」
『君は政府からお金が出るんだっけ。羨ましいな』
「馬鹿野郎、死地に向かうのにお金は付きもんなんだよ」
『取り敢えず、可愛くなった春樹を守れよ』
「ん?もしかしてまさかお前同士か?」
『残念ながら違うよ。いまから香さんと焼肉屋行かないといけないからバイバイ』
彼はそう言っていなくなった。
「はあ、同士はあまりいないんだな....」
溜息を吐いた春樹の親友は、幼女写真集と書かれた本を見つめていた....
「君ってさ、精霊って信じる?」
「いきなり何を....また不法侵入だ。さっさと出て」
「精霊はね、元々人間に力を貸していたんだ。だが、一部の精霊が暴走してね....」
「白猫、お前は一体何を言っているんだ?」
「証拠が見たいかい?せっかちさんだな。ほら」
その途端、白猫の背中に蝶の翼が生える。
緑色で幻想的な光を放つ翼だった。
「....僕を強くしてくれないか?」
「仰せのままに♪お姫様。でわでわ、こちらをどうぞ!」
そう言って出されたのはゲームなどでよく見る狙撃銃。
「いや、ちょっとまて。僕が想像してたのは魔法を使って敵を倒したりするもんなんだけど」
「ああ、その事?何故かというと、君には魔力が殆どないからさ。それでも常人の4、5倍は有るけどね」
な、なんだそれぇぇ!
こういうのって僕TUEEE!ってなるもんじゃないの?
「ん?そんな漫画みたいな展開あるわけないよーせめて強くなってもらわないと!そうと決まれば特訓だ!外に出ようか!」
「にゃ、にゃにぃ!?」
今の声は僕の声だ。反射的にこういう声が出るから女の子って言われるんだなと自重する。
まあ、いま女の子なのだがな。
「ん?なんか文句ありました?」
「い、いや....」
鋭い目(猫の目)で見られて怖気付く。
「よし行こう!」
妙にご機嫌な猫を連れて僕はげっそりとした顔をしながらふらふらとついて行った。
人目の付かない路地裏にて
「先ず、魔力のまとい方からだ。魔力を纏っていると普通より身体能力があがるぞ☆」
ほう、魔力を纏うねえ....
魔法とか使ってみたいんだけど。
取り敢えず練習だ。
「うおおおお」
僕の周りに透明な霧が出てくる。
なんか体がぴょんぴょんするんじゃあー!
「そのまま走ってみてよー」
白猫がよこから声を出すのでリクエスト通り
アスファルトを蹴って走る。
たしかに早くなってる様な....?
「そろそろかな?変化が訪れるのは」
「変化....?うわぁぁぁ!速い!速い!ぶつかるぅぅぅ!」
ドガァァァン パラパラ....
やり過ぎですよ奥さん。
あ、僕だった!テヘペロッ!
「ちゃんと説明しろよこのクソ猫!」
「あはぁん!もっと蹴って!」
ついに壊れたか此奴。
でも魔法的な力で無くても凄い力は発揮出来るんだ。戦闘パターンや武器は人によって違うらしい。
例えば僕はこの銃が武器、つまり遠距離用だ。
僕の銃が強くて無双できますように....
「魔力が少ないんだから強く無いに決まってるじゃないか。理想を持つ事はいいけどさ」
「お前こういう時はなれるといいねみたいな事言う物だと思うけどねぇ!?」
僕はそう言いながら白猫に魔力付きのアッパーをキメ、宙に上がった白猫は物凄く気持ち良さそうな顔をしていた。
あいでぃあが沸いてきた気がするぅ!