表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐視眈々  作者: 胡瓜食べたいマン
1/3

episode.1





むかしむかしのお話人里離れた山奥に住む

親子のお話


「母さま行ってきます!!」

そういって青年は扉を開きかけたが、何か思い出したように振り返る


「母さま。母さまはどうして里には降りないの?」



「…ごめんね、私と一緒にいくと迷惑かけちまうから。

紀介(きすけ)いつも買い出しに行かせてすまないね。」

母親はそれだけ言うと早く行けと手で催促する。


紀介は母親と一緒に居たいのだ、もう16にもなろうと言うのに母親にベッタリなのはどうかと

自分でもわかっているが母親が好きなのだ


しかし母親は頑なに里に降りる事はしない



確かに紀介は母親の妙な気とでもゆうのだろうか

そんな言葉にできないオーラを纏っているのは知っていた。

しかも、母親には(あやかし)と呼ばれる存在と対等に話す事ができる。

普通の人間ならば大型の妖だとすぐに喰われる。小型ならまだ抵抗できるだろうがそれでも人間と妖で対等に話す事など出来るはずもない。

しかし、それがなんなのか歳が18になったら教えてくれると母親はいつも言っていたので

あまり気にしても仕方がないだろうと諦めていた


そんなことを考えながら歩いていると

1匹の妖怪が怪我をして転がっている

「おい!大丈夫か、ちいせえの!くっそぉ、今から買い出しに行かなきゃなんねぇのにこんな時に俺の前に出やがって!」

小さいとは言ったものの紀介と同じくらいの背丈はあろう妖怪だ。

紀介は母親の影響で妖の恐怖をわすれてしまっているのだ。


「ふぅ…あまり深い傷じゃなさそうだな。どうしたってんだ?」

紀介は自分の服をちぎり、それで手当をしながら妖怪にきいた

「ひぃ!!人間!!」

気を失っていた妖怪は気がつくや否や目を丸くして逃げ出そうとする。

「こらこらまてよっと。誰もとって食おうってんじゃねぇんだ。ん?妖にこの台詞もおかしいか?へへ」

逃げ出そうとした妖怪を紀介は自分の服で作った包帯で引っ張り戻した

それから数分紀介が説得し何とか敵意が無い事が伝わった妖怪は事情を説明しだす


「実は、妖怪狩りの若い衆がこの奥にある妖狐の根城に捕まってる青年を見たってんで助け出すつもりなんだ。」


この奥にあるのは山と紀介の住んでいるボロ屋しかないはずだ。

とするなら里の奴らの嫌がらせか?

いや、嫌な奴らではあるけど妖狐とやらのねぐらがホントにあるのかもしれない。


「聞いてるか?」妖怪が考え込む紀介に声をかける

「あぁ、すまないそれで?」

「その妖狐の下僕だか仲間だかと因縁を付けられ滅多打ちにされて、奥のボロ屋に住む妖狐の家までつれてったんだよ。

そして命からがら逃げ出してきたってわけよ。」


ボロ屋と聞いた紀介の顔色がどんどんと青白くなっていく。

「そんな事はない。ボロ屋ったって。いやでも、あんな所にボロ屋はひとつしか…」

ボソボソと独り言を言いながら

山奥にボロ屋は自分の家ではないと心に言い聞かせながら

紀介は妖怪を置いて人里まで歩いておりていく。


「ついた、里の雰囲気は…よしいつもどうりだ大丈夫。」

やはり紀介は自分の思い過ごしだったと安堵しながら

買い物をする。

買い物を続けていると少し離れた場所にいるおばちゃん達の井戸端会議が聞こえてきた。

(ちっ、うるせぇな)などと思いながら魚を見ていると「妖怪狩りさん達があの妖狐を倒しにいったんですって!」とおばちゃん達の会話から聞こえてきた


さっき言ってたやつだ。だとしたらホントに?

うそだろアソコには母さましか居ないぞ!

もし万が一妖狐に間違えられて切られでもしたら!!

紀介の体は考えるよりも早く動いていた

母親の待つ山奥の家までぜぇぜぇといいながら走り、走り、走った。


「もう少しだ。もう少し…何事もなく笑っていつもの様に出迎えてくれよ母さま!」

叫びながら木々を抜けると

元々ボロ屋だった家が破壊をし尽くされたあとだった。


「か…母さま?母さま!!いるよな!!母さま!!」

叫びながら破壊された家に走りよると

血痕が至る所に飛び散っているではないか。

それを見た紀介は奇声をあげながら

破壊された家の木片を掻き分ける。

そこからは木片から何人もの男の死体がでてきた。

なんだこれはと考える前に紀介は叫んでいた


「母さま!!紀介だ!帰ってきたぞ!」

と呼びかける


すると家の裏の大きな木の裏から

「紀介…ごめんね。こんな母親でごめんね。」

と小さく、か細い声が聞こえてきた。


紀介はその声のする方にすぐさま走り、駆け寄った。

そこには今まで見てきた姿とはまるで違う母親が居た。

頭上に生える狐のような耳。

顔の輪郭に白い毛も生えている。

そして鋭く長く鉄のように硬そうな爪。

なにより腰のあたりから生える白くモコモコとした9本の尻尾。

今まで紀介が見てきた母親とは違いすぎるくらいに違う

しかし、紀介には分かる。これは母親だ。


紀介はそんな母親を前に。涙した


「良かった…母さまが生きててほんとによかった…」

嬉し涙だった。


しかし、母親は紀介に気付き顔を隠す

「き、紀介!こっちに来ないでおくれ、こんな姿を見ないでおくれ」


「なんでだよ、母さま。そんなに綺麗なのに。」


紀介には母親が何かの妖なのではないかと

薄々は感じていた。

しかし妖狐。しかも白くて9本の尻尾があるとても綺麗な9尾の狐だとは思ってもみなかった。


「母さま。もしかして俺も妖狐なの?」

紀介はこんな妖なら妖狐でもいいと思えていた。

それに紀介には人間よりも妖怪の方が話しやすいのだ。こんなに嬉しいことは無い。


しかし母親から告げられたのは紀介の思っていた言葉とは違った

「これはあんたが18になって立派に家を出ていく時に、私が身を隠す時に伝えようと思ってたんだけどね。

あんたは妖狐じゃないよ、人の子だ」


少し紀介はガッカリした様子で母親に問う

「じゃ、じゃあなんで妖狐の母さまが俺を?」


母親は覚悟を決めたように話す

「あんたを攫ったのさ。妖の気まぐれって奴でね

あんたの元いた家の女…本当の母親だね

その女が私の所へ来てこの子を貰ってくれって言ってきたんだよ。

勿論最初は断ったんだけどねぇ…でもその女がしつこくて嫌気がさしてしまってね

あんた、生まれた時から妖力がかなり強くてね

いっその事食べてしまおうとあんたを攫ったんだよ」


そこまで言い母親は黙る。


紀介はその沈黙に耐えられないのか

「で、でも食べられてない!」

母親はため息をつきながら喋り始める

「あんたがさ…似てたんだよ…死んだ息子にね。

そりゃあ、頭ではわかってたんだよ、別人だってね。

だけど、あんたを見捨てられなかった。」

喋り終わる頃には紀介も母親は泣いていた

「俺は、母さまに育ててもらえてよかった。

母さまの本当の息子の変わりは出来てるか分からないけど。ホントに母さまに会えてよかったと思ってる」

紀介は泣きながら母親を抱く

「紀介…あんたって子は…

あんただって私からしたら本当の息子だよ。馬鹿だねぇ…」


暫く母親と紀介は身を寄せあい泣いた


そして夕日が落ちる頃二人共泣きやみ落ち着いて

ぼーと夕日を眺めながら母親は言った

「紀介…あんたには正体がバレちまったからね…ここでさよ」

母親が言いかけた言葉を

紀介は遮った

「サヨナラはしない!!母さまの息子で居させてくれよ!!」

沈黙の時が流れる

母親は考える、妖とバレた今

自分の子供が危険な目に合わないかと。

自分に着いてくる子供もまた人間の敵になってしまうのではないか

また、山では1つしかない小屋がこんなになったのだ友好的ではない妖達もどこかで見ている事だろう、その妖達から狙われない心配などもない

(敵が増えすぎてしまう。この子を護りたいのならば私が身を引くしかない。)

紀介は母親の顔色を見て何か察したように続ける

「母さま、俺を危険な目に合わせるんじゃないかって心配してるんだろ?大丈夫母さまと一緒なら絶対に何とかなるから!捨てないでくれよ…」

捨てないでくれと言われ母親はハッとする

自分はこの子の親なのだと、2度も捨てられてはこの子は誰を親として生きていくのかと思った

「紀介、あんたは私の子だよ。ずっと一緒だ。

私と共においで」

母親は気恥しそうに、だがしっかりと紀介の目を見て言った


ーーーーーー


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ