第30話 業火⑤
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!」
「っ!!!」
黒い熱線が射ち出される直前、ルノはアルフの顔面を殴り軌道をズラすことで辛うじてその一撃を躱した。
黒炎に包まれる手を振りながら、一旦大きく距離を取る。
そして愕然とした。
「クソ……っ!」
ルノから逸らされたその攻撃は、横薙ぎにサイミアのほぼ全域を襲っていたのだ。
超高温の熱線を受けた建物群は灰にさえならずにドロドロに溶けていた。そして、さらに厄介なことにその熔解した部分から黒炎が出火し始めていた。
「テメェ、やってくれたなぁオイ……!」
背後の惨状を、守りきることの出来なかった都市の成れの果てを見て激昂しそうになる。
「チッ!」
しかし、すんでのところで踏みとどまる。
アレは冷静にならねば勝てない相手だ。いったいどんなカラクリかわからないが、魔力が尽きる気配はないし、あまつさえ竜の咆哮の真似事までしてのけた。
上位種族に挑むつもりでかからねば間違いなく更なる地獄を生み出すことになるだろう。
と、その時、頭上の黒雲が不気味な音を立て始めた。
「やっとか……!」
その音を待っていたかのようにルノが天空を仰ぐ。
そして、ゆっくりとアルフに向き直る。
「悪いな。ここからはもう手加減できねぇ。命まで取る気はないが、腕や脚の1、2本は許せ」
ルノは轟音と共に黒雲から去来したそれを抜き放ち、告げた。
「精々死なねぇように祈っとけ」
★
「この一件での死者、行方不明者は約5万人。あの日サイミアにいた民の8割が炎に呑まれた。直接焼かれた訳じゃねえが、炎の熱で沸騰してた河に飛び込んだ奴等も茹で上げられて死んだ」
「…………………………」
「どうだ? 何か思い出したことはないか?」
「……………あの日、宿に戻ったら血の海だった。エレナの姿がなくて、慌てて、追いかけた先で……」
「目の前で殺されたのか」
「………」
「それで我を忘れて暴走したと」
「………」
「まあ、概ねエルグの読み通りだな」
「……俺の記憶は、エレナが殺されたところで途切れてるんだ。暴れていた記憶は、やっぱりない」
「そうか。それでもお前がやったことに変わりはねぇ。お前が3万人の命を奪ったんだ」
「……あぁ」
「俺の部下も何人か焼かれた。正直なところ、すぐにでもお前を殺してやりたいが、残念ながらそういうわけにもいかねぇ」
「え……?」
「お前の身柄は大陸連合に預けることが決まっている。そこで裁かれろ。コレはその結果如何で返してやる」
そう言ってルノが取り出したのは、誰かの肘から先だけの右腕だった。
その中指には深紅に輝く指輪が嵌まっている。
「それ、は……」
「見りゃわかんだろ。俺が切り飛ばしたテメェの右腕だよ。向こうにゃ腕のいい聖属性魔法の使い手がいるからな。これくらいならすぐくっつけてもらえるだろ」
「…………」
「さて、言質が取れた今、お前に拒否権はない。これからすぐに連合の本拠地─レイト光国へ向かう。抵抗するようなら殺す。いいな」
「………………あぁ」
今のアルフにはなにかを判断出来るような精神力は残されていない。
ただルノに言われたことに従うことしかできなかった。
そして、アルフ達は再び飛行船に乗り込み、無響渓谷より西部にあるレイト光国─サミレア大陸最大国へと向かうのだった。
記念すべき(?)第30話!!
こうして細々とですが投稿し続けてこられたのも読者の皆様のお陰です。PVがゼロとかだとたぶん心折れてました笑
この場を借りて御礼申し上げます。
これからも『誰ガ為ノ世界』をよろしくお願いしますm(_ _)m




