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イディは2回目

「これが1回目、2回目は思い出してもらったほうが早いわね。」


 イディの声が聞こえ、その失われた?忘れていた?記憶が脳裏に蘇る。これはアラクネルを倒してから5日後のミタキの街中だ。


 俺たちは次のクエストやシクの家族の埋葬の件の備えて買い出しをしていた。




「武器、防具も購入。在人には大型バッグに盾。薬も買った。これで依頼を受けれる。」


 ガンソドで千歳の刀の新造、才華のなぎなたにも魔石の加工をしてもらった。千歳の刀の鞘にも魔石がついており、その効果は秘密だという。


「あと買う物はある、千歳?」


「日常の食材を買うくらいね。」


「よーし。それ買ってから、シクを迎えに行こう。」


「りょーかい。ってなんだあ。これ。」


 突如、俺の体から術式が展開され、一瞬で3人は光に包まれた。


「え?なにが起きて?」


 光が消えるとテーブルと椅子のある室内。周囲をよくみると喫茶店か?どこだ?

 

 間抜け面の俺に対してすでに警戒態勢の2人。もとい迎撃態勢の2人は椅子に座っていた女性の首元になぎなた、胸に刀を当てていた。


「待って。待って。待って。落ち着きなさいよ。」


 女性は慌てた表情で手を挙げている。


 白色ブラウス、赤色膝上スカート。黒のニーソックス。赤色ハイヒール。左肩口には赤色の紐がまかれている。黒色の胸当てに弓を背負い、腰元に矢筒。魔法より弓道のイメージ。沙緒里さんや良子さんくらいの年齢に見える。二つ結びの髪は胸近くまで伸びている。その髪の色はイナルタさんと同じように赤い。


「ああ。イディか。」


 なぎなたを下す才華。イディ?


「ああ。って。落ち着いたら呼ぶ、っていったじゃない。」


「サンホットの言ってたとおり、呼び込む前にテレパシーなりで連絡してくれないと。」


 才華が呆れている。サンホット?ザンボットの聞き違い?ではないよな。


「急に状況が変わったら、こうなります。」

 

 千歳も刀を鞘に納める。2人の知り合い?俺は知らんぞ?


「誰?」


「魔女のイディ・ラーン。あなたの命の恩人ね。そして、ここは私のプライベート空間。君に掛けておいた術式であなたたちを呼び寄せた、ってわけ。」


 魔女?術式?っていつ掛けた? 


「命の恩人?」


「うん。」


「ええ。」


「そういうこと。」


 才華、千歳、イディが頷く。


「いや、はじめましてですよね。」


「ううん。2回目」


「コアちゃんに刺されたときが1回目。」


「つまり、君が一瞬死んでたとき。分かった?」


「ですか。ってわからんぜよ。」


 ついていけず口調がおかしくなった。


「あのとき、私、千歳、このイディのおかげで在人は死なずにすんだの。」


「私たちだけじゃあ、在人は助からなかった。だから命の恩人。」


「感謝してね。」


 3人の様子から嘘はないように見える。


「はあ。」


「で、今はその対価。成功報酬をもらいにきたの。」


「はあ。・・・・・・・はあ?」


 報酬、対価の言葉にやっと反応している俺は才華と千歳のほうを見る。


「ごめん。混乱させないため、今日まで黙ってた。だから怒んないでね。」


 才華は手をあげウィンクしている。


「うん。本人がいないと信じれないと思ったの。」


 千歳は目を伏せている。


「あ、うん。怒りはしないけど・・・・・。とりあえず、一通り詳細は聞きたいかな。」


「なら、座ってお茶でもどう。」


 テーブルにお茶を並べ、椅子を引くイディ。


「ちょうどいいや。いろいろ聞きたいし。」


「そうね。ほら在人も突っ立てないで。」


 2人は警戒することなく座る。


「あ、うん。」


 2人につられて椅子に座る。



 ・・・・・なんじゃこの状況。


「改めて自己紹介。魔女のイディ・ラーン。」


「登録者で、在人の彼女、婚約者、嫁の天城才華。」


「同じく登録者で、在人の恋人、許嫁、妻の地陸千歳です。」


「・・・・・・人多在人です。えーと先日は助かりました。でいいのかな?」


 頭を下げておく。


「それで対価っていうのは?」


 もう単刀直入に聞いていく。


「あなたを助けたことの対価。あなたを助けた変わりに私のほしいものを頂くわ。あ、クッキーも食べてね。これは対価うんぬんはないから。」


「あ、おいしいね。このクッキー。で、その対価の支払いは状況が一段落してからってお願いしてたの。だから今日なのね。」


「紅茶もいい香りね。そに対価は『名前』。」


『名前』?どうゆうことだよ千歳。クッキーと紅茶を楽しんでる場合かよ。俺はイディに向き直る。


「『名前』を食べるってこと。私は魔女だからね。」


・・・・・魔女、イナルタさんと同じ。


「えーっと対価の件をいったん置いといて魔女って?イナルタさんも同じ真っ赤な髪の色をしてましたけど。」


「魔力に、魔法に、魅入られ、愛された女性ね。」


 抽象的すぎる。


「魔力だけで生きれる女性。この世界には自然の中にも魔力があるから、実質食事なしでも生き続けれる存在。」


「魔女になったら種族は関係なくエルフ並みに長寿。あと綺麗な赤い髪。魔法を使う存在としては上位ね。」


 才華、千歳の説明のほうがわかりやすい。


「そして、このイディは『ななしょく』」


「魔女の中でも上位。」


「・・・・・『七色』。」


 虹が脳内にかかる。


「在人、色なんて可愛らしいものじゃあないよ。」


「色じゃない?」


 色じゃないとしたら、職?織?


「職業の職でも織物の織でもないわ。」


 千歳が脳内で浮かんだ言葉を否定する。言葉に出してないのに。


「じゃあ、なんなの?」


「喰べるの『喰』」


「意味合い的に口がつくほうね。


 2人が答える。口のつくほう・・・・・喰か。


「・・・・『七喰』」


「他にも『七つの天災』とも呼ばれている。」


 千歳の言葉に可愛らしい雰囲気は飛んでいき、一気に禍々しい雰囲気となった。てんさい・・・・天才じゃあないよな。天災だよな。


 千歳の言葉に反応してイディの醸し出す空気が間違いなく禍々しいものとなった。口元も妖しい。


「魔女の道は魔女に。ただ受け身でいる私たちじゃあないんでね。」


 目線を合わす才華のイディ。


 魔女の道は魔女・・・・イナルタさんか。魔法のことで聞きたい話があると才華と千歳だけでイナルタさんの塾へ行ったときがあったな。そのときか。


「で七喰と呼ばれる訳は?」


「文字通り、魔力以外にも食べるものがある七人の魔女だから。」


「『(めい』、『』、『せい』、『かせ』、『みつ』、『しん』、『かて』」


 才華が指を曲げながら言葉をあげる。


「それらを食べて、味わって、栄養にする。」


 口を開き舌を伸ばしたイディ。その舌にある弓矢の紋様が妖しく光った。


「どういう原理かは説明してもわからないと思うから、なるものはなる。できるものはできる。ってことね。」

 

 才華も千歳も淡々としている。これからその対価を『名前』を請求されるのに。才華も千歳も淡々としている。


 この淡々としていれる2人が逆に怖く感じてしまう。



「えーっと。話を戻して、その対価は名前ってことなんですよね。」


「ええ。」


「食べるとどうなるんです?」


「食べたらなくなるわね。」


 いやそうだろうけどさ。それで終わり?なわけないよな。


「そうねえ、あなたの腰に装備しているものをテーブルに置いてもらっていいかしら。」


 購入したばかりのキリアルガのナイフのことか。


「これですか。」


「ええ。これはなに?」


 イディはナイフを指さす。?


「・・・・ナイフですね。細かく言うなら、ガンソドで販売しているキリアルガのナイフですね。」


「そうね。ナイフね。じゃあこれはなんでナイフなの?」


 なんで?って言われても。2人も俺に注目している。


「えーっと。物を切れる刃に取っ手がある刃物の中で片手で扱える小ぶりなもの?」


 いざ説明しろと言われると難しい。仮に他の物でもそうなるかも・・・・いかに漫然として生きてるってことになるかな。


「まあ、そんな感じね。」


 とりあずは十分な回答だったらしい。


「じゃあ。このナイフがフッとひと息で崩れる、刃が丸みを帯びてる。錆びて切れない。これはナイフとして使えるかしら。」


「使えない。」


「もうひとつ。バラバラに分解されている、原型がわからないほど粉々になっている、刃もなく球体になっている、ナイフは使えるかしら。」


「使えないですね。」


「私が食べるってそういうふうになるってこと。」


 ・・・・。?


「イディに名前を食べられたナイフは、ナイフとして機能してない物になるてこと。」


「刺せない、切れない。刃の部分が切れない、刺せない。ふっと一息で崩れる、錆びる。」


「・・・・・・・はあ。」


 ・・・・・ですか。いやそっちよりもそっちじゃないほうが重要なんだけど。


「もし俺の名を食べた場合どうなります。」


 こっちが本題だ。
























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