表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/169

ファーストコンタクト

 骨も無くなったネクロマンサーはこれで死んだのか。・・・・予備の骨がどこかにありそうなんだけど。


「仮にね、どこかに骨を隠しててもネクロマンサーが復活することはないよ。あいつのその魔法はもうないから。」


 俺の不安を察した才華の言葉は確信をもった発言だった。


「ないってのがよくわからんだけど。」


「そのままの意味だよ。とにかくあいつが使うあの死体蘇生、操作の魔法はあらゆる世界を通じて存在しない。あいつが万が一、転生してもその魔法は使えない。また新たな術式で作り直す必要がある。」


「そうなんだ。って言いたいけど、詳細を知りたい。」


 才華と愛音は事態を理解しているようだけど、俺だけ蚊帳の外状態。


「もうなにがなんだかわからん。シクが生き返ったのは願いの力なのはわかるけど、魔女?その赤くなった髪の毛、食べた?なないろ?ななしょくだっけ?相変わらず2人だけの共通認識で俺だけ蚊帳の外。」


「そうね。どこからはなせば」

 

 愛音が困った顔をする。


「まずは私との出会いからでしょうね。」


 ネクロマンサーとは違う女性の声が響きわたり、クロスティよエルージュが警戒態勢となる。周囲には誰もいない。何処だ?誰だ?


 動揺している俺を後目に愛音と才華は空を見上げた。見上げると女性が空から降りてきて、目の前に着地した。


 白色ブラウス、赤色膝上スカート。黒のニーソックス。赤色ハイヒール。左肩口には赤色の紐がまかれている。黒色の胸当てに弓を背負い、腰元に矢筒。魔法より弓道のイメージ。沙緒里さんや良子さんくらいの年齢に見える。二つ結びの髪は胸近くまで伸びている。その髪の色は赤。


 赤髪・・・・魔女なのか?流れ的に魔女か。愛音がエルージュとクロスティの警戒を解かせた。


「ずいぶん伸びたわね。」


 髪の色より、長さを気にしている魔女。


「伸びるのは聞いてなかったんだけど。」


 才華は口を尖らせながら腰元まで伸びた髪を弄っている。


「伸びても微々たるものだから、言わなかったのよ。そこまで伸びるのは才能ね。怖い怖い。」


 愚痴に動じず微笑み返す魔女。・・・・・才能ですか。


「それで、今日はどんな要件なの?」


「新しい魔女の誕生を祝福にね。」


 !どう考えても才華は魔女になった。これしかないよな。それも重要なことだがまずは。


「そんなことより、この人だれ?」


 俺はつい口を挟む。俺だけ置いてけぼりなのをなんとかしてくれ。


「魔女」


「『ななしょく』の1人ね。」


「イディ・ラーン、君は相変わらずね。」


 才華、愛音、魔女のイディが順に答えていく。えーと『七色』の魔女のイディ・ラーンね。・・・・相わからず?


「俺、会ったことあるの?」


「今日で3回目」


 ?才華よ。本当かそれ?全く記憶にないんだけど。


「1回目はコアに刺されたときだから、在人は一瞬死んでた。」


 そうなの?刺された後にそんなことが。


「そのお返しをもらったときが2回目ね」


 1回目はともかく2回目は俺のいない間にあったのか?・・・・お返し?


「お返し?2回目っていつ。というか、俺だけのけもの?いやまあ、女だけの秘密かもしれないけど。」


「はい、落ち着いて。」


 リディの手には術式が展開される。


「これで説明するわ。」


 リディの術式が俺の頭を覆う。




「才華、治療お願い。私は蜘蛛蹴散らすわ。」


 愛音が刀を振り、子蜘蛛を切り切伏せる。状況は俺がゼフォンのもとで観た映像の直後だ。


「片づけたら、土壁で覆って、千歳。あ、空気穴を忘れないでね。」


 才華は愛音に叫びながら、俺の治療を開始していた。才華は愛音を『千歳』と呼んでいる。

愛音が『千歳』?どうなっている?


 愛音は子蜘蛛を片づけたあと、すぐさま魔法で土製のプレハブ小屋をつくりあげる。


「心臓付近は私が。千歳は他をまず応急措置、そのあと医療道具で胸付近を。」


「ええ。」


 才華の指示に言葉少なく返事をする愛音。状況がひっ迫している証拠だ。よく助かったな俺。


「お邪魔するわね。」


 音を立てることなく侵入したイディの声に反応して、愛音は最速で刀をイディの首元へ。眼つきがやばい。なんとか刺さなかったって感じだ。イディは慌てて両手をあげている。才華は目線を向けることなくそのまま治療を続ける。


「誰?要件は?簡潔に答えて。私が違和感を感じたら、斬り殺します。」


「魔女のイディ・ラーン。おいしいそうな匂いに引き寄せられてここに。」


 いたって真面目な表情で答えるイディ。俺の血の匂いだよな。


「千歳。斬れ。こっちの手が足りない。」


「さよなら。」


 同じ考えに至った2人。


「まって。まって。そこの彼じゃないわ。なんなら助けてもいいわよ。あと人の肉は食べない、食べれない。食べたいと思わない。」


 2人以上に必死な声を出すイディ。俺じゃないならコア?愛音?才華?


「手短に説明して。」


「私も含めた3人なら彼を救える。その対価に私の食べたいものを頂戴。」


「何を食べるつもり?」


「『名前』。って言っても全く分からないと思うけどね。1つだけ安心して。死ぬことはないわ。」


『名前』・・・・・『千歳』となんらかの関係性はあるんだろう。


「才華・・・・・。」


 怪訝な表情の愛音は一瞬だけ視線を才華へ。


「さあ、どうする?」


 イディも才華へ目線を送る。


「もう1個答えて。力づくでは奪えないの?。」


 一触即発の空気となる。確かにそうだ。死亡状態の俺に気絶状態のコア。俺を治療しながら、戦うのは2人には無理。治療しないという選択も2人にはないだろう。大規模な炎、氷、風の魔法を使ったばかりだから、疲労だってある。襲って奪うことはできるはずだ。


「戦うことより、交渉したほうが安全だし食べれる可能性が高いと思ったから。あと味違うのよ。死んでるより生きてるときのほうがおいしいのよ。」


 指を立て答えるイディ。なるほど。


「それに、まあ。これはいいかしら。この2つで納得できる?もうそろそろ決断しないと手遅れになるわよ。」


 まだなにか理由があるのか。


「千歳、こっちに。ただ、『名前』の件は、成功報酬で後日、私たちが一段落したらね。」


「契約成立ね。」


 口角をあげるイディ。


「なら、すぐに始めて。」


 刀を下した愛音も俺の治療に戻る。


「2人はそのまま続けて。」


 イディが展開させた術式が光輝き人の女性が現れた。


 オレンジ色のラインが入ったノースリーブのセーラ服を思わす白色上衣。オレンジスカート。オレンジ色の腕抜き。白色ニーソックス 右肩からかけたランタンの紐が胸を強調し、腰元には三つ又に分かれたナイフが2つ。白色リボンでまとめたボリュームのあるツインテール。少し幼い雰囲気を持った女性。髪は赤い。


「お久しぶりね。サンホット。」


 サンホットと呼ばれた魔女はあきれた顔をしている。


「毎回言ってるけど、いきなり呼ぶのはやめなさいよ。イディ。」


「ごめんなさいね。今回は結構切羽詰まっているの。とりあえずあの彼をね。」


 俺を見たサンホットはしかめっ面となる。


「呼ぶにしても私も美味しいものが欲しいんだけど。」


 その視線は俺を治療している2人に向けられていた。


「そこをなんとか。お願いね。」


 片目をつぶってお願いをするイディ。


「分かっていると思うけど貸しだからね。あとイタンダに連絡だけしといて。」


「ええ。任せたわよ。」


 サンホットは俺のもとへ。


「2人とも一旦離れてくれるかしら。」


 サンホットの言葉に素直に従う才華と愛音。


「本当にまずそう。死ぬ想定も覚悟も零じゃないけどすっごく半端なまま死んでる。それならなにも考えないで死んでくれたほうがまだましなのに。」


 俺を見て小さくつぶやいたサンホット。


「はあ。・・・・・・・・・あ。ん。」


 ため息をついた後、サンホットは口を開いて閉じた。


「終わったわ。」


 2人のほうへ振り替えるサンホット?なにをした?ただ口を開け閉めしただけだよな。


「何をしたの?」


 愛音が口を開く。


「死ぬ可能性を食べた。」


 2人も言葉の意味を理解できない顔をしている。サンホットは口を開いて舌を伸ばす。その舌には三日月を思わす紋様が浮かんでいる。魔女ってそんなことができるのか。どんな原理なのかさっぱりわかんないけど。


「今ならこの負傷で死ぬことはない。だからといって放置していい傷でもないし、時間がたてば死ぬ可能性は出てくるから、あとはあなたたち次第。」


 サンホットの言葉に促され、2人は治療を再開する。


「不味いものは遠慮したいんだけど。」


「そこまで不味かった?」


 コクンと頷くサンホット。思い出したくもないようだ。


「あの2人のほうがおいしい素材なのはわかっているくせに。」


「それはね。」


「だから我慢もできずにここにきて、弱みに付け込んで、私を呼んで、だもんね。」


「ええ。魔女らしいでしょ。」


 悪びれもしない笑みを浮かべるイディ。


「イタンダのところに帰るわ。」


 術式を展開させてサンホットは消えていった。


「・・・・これで。」


「こっちも全部終わった。あとは起きるのを待つだけね。」


 俺の治療を終えた2人。


「これで報酬はもらえるかしら。」


 イディは舌を伸ばす。弓矢を思わせる紋様が舌にあった。


「そうなるね。」


 才華は立ち上がる。


「後日サンホットみたいに呼び出すから、お礼のほうはお願いね。」


「ええ。約束は守ります。」


 イディは俺の体に術式を展開させる。サンホットを呼び出した魔法なのか。これで契約を反故することもできない、ってことだよな。


「それじゃあ。またね。」


 イディは展開させた術式の中に移動し、消えていった。たった数分の出会いだった。


「在人は無事でよかったけど、『名前』を食べるってどう思う?」


「そのままでしょ。無くなったらどうなるかはわかんないけど、在人の命のほうが大事。」


「そうね。・・・・在人には?」


「魔女が来たときにね。イディ本人がいたときのほうが説明しやすいし、時間に余裕があると在人がなんとかしようといろいろと動いて、もっと混沌とした状況になると思う。」


「分かった。」


「それよりも、イディの様子からして千歳」


「あ、コアちゃんが目を覚ましたわ。」


 才華の話を遮り、愛音はコアのもとへ。才華はまだこの件になにかあるようだったが、コアのほうへ振り返ったときにはその様子は消えていた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ