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VS新人 再び

 「な・・・・・・・・」


 ネクロマンさーは口を開いて、かぎ爪男の末路を見ていた。自分たちはそうそう殺されないと思っていたのだろう。かぎ爪男も会話からそう思っていたと思う。


 だが残念ながらそれは甘い。少なくともかぎ爪男の確保は絶対ではなかった。かぎ爪男はネクロマンサーに雇われている以上、依頼者はわからんだろうとのこと。


 さらに傭兵団は自分たちが狙われることに慣れているので、団員がやられない限りは特段依頼主がわからなくても困らないという。それに巻き込まれる形になった登録者に申し訳ない気持ちもあるが、登録者なら依頼で命を落とすのは付きものとも言っていた。


 イトベスさんの言葉は油断させるためにハッタリ。ほんのわずかでも油断すれば儲けもの。そのわずかが勝敗、生死を分ける。その結果が目の前にでた。これで5対5。


 「まだだよだよ。」

 

 イトベスさんはかぎ爪男の死体に向かって、魔法を放つ。渦を巻く風が死体を粉微塵とし、残った部分は両手と両足のみ。


「これくらいでもまだ操れるのかのかの?」


 イトベスさんの言葉にネクロマンサーは舌打ちをした。これくらいになると無理なのか。


「役立たずが、役立たずが、役立たずが。これで、5対6か。」


「いや、4対6。」


「あ?」


 ネクロマンサーに対してガタクンさんが反論する。ガタクンさんの言葉と同時に中堅斥候が膝をつく。

いつの間にか斥候の両膝には矢が刺さっていた。そして、そこへ間髪入れず、イトベスさんの魔法が斥候の遺体を粉微塵とし、ナイフが地面へと突き刺さった。


「彼らも登録者。遺体も残らない覚悟はあるじゃろじゃろ。」


 流石のカタム傭兵団。あっという間に状況が変わっていく。俺はともかく愛音、才華も見ているだけだった。




「なるほど。なるほど。なるほど。流石に一筋縄ではいかないか。」


 深く息をしたあと、ネクロマンサーはこっちを見上げる。戦力が新人2人と中堅1人と減ったのに焦りがない。それには傭兵団や才華、愛音も気付く。


「ならどうする?降伏するか?」


「こうする。こうする。こうする。」


 キャノさんの降伏勧告に対してネクロマンサーは笑みを浮かべ床に術式を展開させる。ガタクンさんが矢を放つも中堅戦士が盾となり、ガタクンさんも金髪ちゃんの魔法で足止めされる。


 床が激しく揺れる。なんだ?


「在人。」


「こっち来て。」


 2人に引っ張られ、壁際まで後退。床というより、地面から大きな腕が飛び出す。なんだ?なんだ?ゴブリンイーターではないのは確かだ。


 その正体はすぐに判明した。地面から出た頭部のシルエットはドラゴンだと思う。ドラゴンの死体を操っているのか。そんなんものどうやって持ち込んでいるんだ?あれと戦うの?ターロホさんが蜘蛛と戦ってたときに姿が脳裏に浮かぶ。


 ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


 ドラゴンの怒号とともに、口から放たれたブレスは天井を貫く。崩れた破片が落下してくるのを才華が浮遊の魔法で止める。同じことをイトベスさんはキャノさん、ガタクンさんにもしている。


「おっと。おっと。おっと。そいつは村へ向かわせているから、頑張って止めたまえ。」


「なんだと。」


 ネクロマンサーの言葉にキャノさんが反応する。つまり、こいつを止めるために戦力を分断しないといけない。しかも操られた遺体のドラゴン。先ほどの会話から半端な傷は自己治癒してしまう。あれも消失させないといけない。


「嬢ちゃんたちたち。わしとあれをと」


 魔力の多い才華、愛音とともに止める判断したイトベスさん。だが


「隙あり。隙あり。隙あり。」


 今度は尾が飛び出てきて、ほぼ一直線上にいた傭兵団を上空へ吹っ飛ばす。嘘でしょ。

「そっちは任した。」


「こっちはまかせてください。」


 才華、愛音が飛ばされた傭兵団に叫ぶ。


「無理はするな。」


「頼んだぞぞ。」


 キャノさん、イトベスさんの叫ぶ声が遠くなっていく。そして、全身を現したドラゴンは空中へ飛び、村の方へ移動し始める。そのドラゴンの目にいきなり矢が刺さり、動きが停止する。ガタクンさんは飛ばされながらも、放った矢だ。


ブルオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 ドラゴンは雄たけびをあげ、建物内から姿は見えなくなった。だが、戦闘音は聞こえるので傭兵団との闘いが始まっている。




「さて。さて。さて。この間にささっと片づけるか。」


 ネクロマンサーの言葉に戦士君はこちらに動き出し、金髪ちゃんは杖を構え、術式を展開させる。中堅戦士はそのままネクロマンサーの護衛のようだ。ネクロマンサーはなにかを飲んでいる。魔力でも回復させているのか?


「在人、下がって。」


 愛音はそう告げると戦士君へ向かう。


「力は上がっているようだけど、・・・・・・」


 戦士君の剣を振るスピードや動き自体も早くなっているのがわかる。金髪ちゃんの放った炎は前回より1つ1つ大きさが大きく、術式の展開から発動までの時間が短い。これはネクロマンサーの魔法の効果なのだろうか。


「他はなにも変わってないね。まあ、数日しか経ってないけど。」


 才華のいう通りだった。基礎能力はあがっている。だが、以前言われたことはなにも反映されていない。戦士君に金髪ちゃんの炎の数発が当たり、戦士君の動きが止まったのだ。その間に愛音は戦士君の右腕を切り捨てる。


 戦士君の動きがまた止まり、苦痛の叫びをあげる。


「酷い。酷い。酷い。」


 ネクロマンサーのヤジを無視して愛音はそのまま攻撃をしかける。だがわずかに辛そうな表情を見せていた。


 愛音の追撃に戦士君は反応し剣で受け止める。受け止めるどころか、刀を弾き飛ばした。力も増しているのか。死なずに成長していたら、これくらいできるようになっていたのかも。


 愛音は左腕・・・左手が傷んだのか間合いを広げた。互いに片手が使えない状況となった。


 だが俺の考えは外れた。戦士君は自分の落ちた右腕を広って、切断面に押し付ける。そして、数秒後には繋がったようだ。この治癒力がドラゴンにもあるとしたら、向こうも厳しい展開になるか。


 愛音は右手にナイフを持つも、さきほどの二の舞をさけるため、戦士君の剣を避けるのみ。間合いの差のせいか、反撃もできず壁際に追い詰められる。壁に追い詰めたことで戦士君は剣を振り上げる。


 まずい。・・・・・・・と普段なら思っていたと思う。


 戦士君は剣を振り上げたところで、また、炎を浴びたのだ。炎の魔法を撃ったのは金髪ちゃん。才華はここまで魔法を相殺しながら金髪ちゃんと対峙していた。だが愛音の腕が痺れた状況を把握した時点で、魔法を回避しながら移動をはじめた。


 そして、金髪ちゃんの炎を戦士君に当たるように誘導したのだ。


 戦士君の動きが止まると同時に愛音はナイフで戦士君の両眼を切る。戦士君は右手で顔を抑えるも剣を振り下ろしてくる。だが顔を抑えている間に愛音は戦士君の後ろに回り込んでおり、そのまま体当たり。続けざまに左手の指をナイフで切り落とす。


「ごめんね。」

 

 戦士君の手から落ちた剣を愛音はキャッチし、そのまま戦士君の両足を切断し、戦士君は仰向けに倒れた。


「聞こえているのかも、理解しているのかも分からないけど、アマはここから逃がしいるから安心して。」


 愛音は戦士君の胸に剣を突き刺し、そのまま氷漬けにした。これなら、すぐには脱出もできないし、ネクロマンサー本人と決着がつくまで遺体を完全消失させる必要がない。



 この間に、才華は魔法を全て相殺、回避で徐々に金髪ちゃんへ接近していく。真正面約2メートルまで接近したところで、金髪ちゃんが今までで一番大きい術式の魔法を杖から放った。金髪ちゃんはこれを狙っていたのだろうか。


 だがそれは才華に当たることはなかった。放たれる直前に才華の薙刀が杖を横に逸らしたのだ。放たれた魔法は教壇に座って見ているだけのネクロマンサーめがけて飛んでいき、ネクロマンサーは慌てて教壇を盾にして魔法を防いだ。


「その術式の魔法は普及されているもの、内容が分かれば対処できるし、接近されてからの対処もあのときのまま。」


 才華は金髪ちゃんをうつ伏せに抑え込んだ。魔法が直線的に放たれると分かっていたから、才華は薙刀で杖を逸らす選択をし、変化がないとわかっていたから組み伏せた。前回から数日しか経ってないから無理もないとは思う、まあ、一瞬で判断できる才華もすごいんだけど。


 この状況になって金髪ちゃんは指先から魔法を放とうとする。だが


「これは子蜘蛛対策の応用。」


 才華は首すじに手を触れると、指先に浮かんだ炎は消え去った。体を動かす電気信号を狂わす魔法の才華改造版。才華によると魔法を放つ際、体内に魔力が流れている。だから魔法使い対策として、魔力の流れを狂わす魔法を作った。


 魔法自慢が魔法を撃てなくなった際、出るであろう焦り、絶望、苦痛の表情をみるためと才華は言っていた。


「もう少しだけ、ここで待ってて。すぐに眠らせるてあげるから。」


 結局、苦痛の表情を見せたのは才華であり、才華も金髪ちゃんを氷漬けにした。


























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