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イナルタ魔法塾

 塾内の席に皆座ったところで、イナルタさんは黒板を使い説明を始める


「まずは魔力と魔法の概要を話していくわ。まず、魔法はイメージ・・・・・・・・・・」


 開始1分でコアは寝落ち、俺は開始5分で内容についていけず、ギブアップ。才華、千歳は質問しながら、理解を深めているようだ。もともと魔法の知識があるジーファさんは2人の様子を見ながら、イナルタさんの説明を真剣に聞いていた。先ほどコアに言われたことを気にしているのか。

 

 魔法の理解をそうそうに諦めた俺は、今後のことをやんわり考える。

 えーと明日はまず、宿出た後に購入した家に行ってか。才華が物件見ないで高いからとの理由だけで購入したからなぁ。大きい物件だから、少なくとも部屋は別にしなくては。

 あと良子さんにこれらを報告しなきゃ。森に3人でポイントに行けるか?ジーファさん、コアあたりに手伝ってもらうか?でもそれだと俺達のこと説明しなくちゃならん。死にかけた俺だけど、この世界にとどまってもいいものか。2人に帰る気はなさそうであるが。残るにしても収入はどうする。2人の強さならクエストもこなせるんだろうけど、俺が足引っ張るよね。結局俺が問題点だ。



「じゃあ裏庭で実践。付いてきて。」


 講義が終了し、裏庭での実践に入る。


「では、炎の魔法の例。離れて離れて。」


 イナルタさんが右人差し指を立て、集中する。指先に拳大の火の塊が出来上がる。それを裏庭の中心部へ剛速球で打ち出す。中心部は一気に燃え上がった。通訳の魔法や、治癒の魔法とは違って見た目ではっきりわかる魔法をみれて。少し感動する。


「今ので、魔力の流れと変換の様子は分かった?」


 才華、千歳へ確認するイナルタさん。


「うん。」


「はい。」


 2人は頷く。へー。ただ見せてるだけじゃなかったのね。当たり前だけど俺はさっぱり。イナルタさんはジーファさんを見て


「では水の魔法。ジーファさん。見せてあげて。2人はまた魔力の流れと変換を見ること」


 ジーファさんは予想外だったのか驚いた顔をするけど、すぐ集中する。右手を燃え上っている炎の方への伸ばす。炎の上空に水塊が出来上がり、ジーファさんが手を振ると水も炎へ落ちあっという間に鎮火する。


「はい。ここまでで質問は。」


 俺が手を挙げる。


「淡々と進んでいるんですけど。いつもこんなペースで進むんですか?」


「いえ、5倍速ね。普通はもっと体内の魔力を感じたり、変換までで時間がかかるけど、能力見たり、講義でこの段階まで来てることがわかったから。まぁ、今日で基本は卒業ね。正直割りに合わないわね。」


 イナルタさんはあっさり答える。ですか。すっごーい。才華と千歳は。


「あと、今見た魔法はもう効力はなくなったと思うんですけど。昨日の通訳の魔法はまだ効力残っているのとはどういった違いがあるんですか。」


「人は多かれ少なかれ魔力は持っているから、そこから半永久的にその魔法に必要な魔力を吸い取るように魔力の発生源にリンクしているってこと。魔力切れか魔法障害でもない限り効力は続くってわけ。魔力Eでも1日の生活で魔力切れなんて、そうそうないから大丈夫よ。」


「なーる。」


 俺は頷く。


「では、炎、水の順でやってみて。」


 2人に促すイナルタさん。そんなにあっさりいくんですか。そして、2人ともあっさり先ほどの光景を再現する。嘘でしょ。


「じゃあ、何回か反復したら、他の魔法も試してみて。悪いんだけど、ジーファさん見ててくれる?この後、別の人たちの講義あるから、その準備をしたいの。君たちは暇そうだから手伝って。」


 俺とコアに手伝いを要求するイナルタさん。確かに暇なのでちょうどいいか。イナルタさんとともに、塾内へ移動する。



 塾内に入るとイナルタさんは今までになく真剣な顔つきで俺とコアを見る。なんだ?


「さて、手伝いは嘘で、本当は質問と説明しときたいことがあるの。」


「はー。なんですか?」


 俺は抜けた回答をする。質問は思い当たるものはあるが、俺だけに説明したい内容が思いつかない。


「質問は 君たちは何者?何を隠しているの?正直に答えて。 」


 腕を組んで考える。俺の中でその手の質問への回答はまだ定まっていない。さてどうしよう。正直に話す?いやコアがいるしな。悩むなぁ。悩んだ挙句、


「うーん。先に説明したいことを教えてもらっていいですか。それ次第で。」


 とりあえず、回答を先延ばしに走る俺。イナルタさんも逡巡し、


「いいわ。そうしましょう。コアさんも聞いといて。」


 コアにも?俺はますます分からなくなる。コアも何故って顔をしているがうなずいていた。


「サイカとチトセのことなんだけど。はっきり言って能力、特性ともに異常。魔法の習得に関してもだけど。話を聞く限り、昨日まで魔法、魔力ともに知らなかったんでしょう。・・・もしかして魔物と戦ったこともない?」


 この報告に俺は頷く。あの2人はこの世界では異常になるのかい。ある意味喜びそうだけど。


「私も含めSランクの能力がある人にあったことはあるけど、それでも、何年、何十年の経験、鍛錬からなるものよ。でもあの2人にはそれがない。言っとくけど、今なら私やカタム傭兵団の腕のある人ならあの2人には勝てる。それは長年の経験、技術があるからなんだけどね。でも1週間後には分からない。それくらいの才能があるの。」


 ひゃー。なんじゃそりゃ。ベテラン(年齢から言ったら失礼か)で有名だったイナルタさんからそこまで言われるってすごいことじゃない。でもなぜそれを俺とコアに?


「恐ろしい奴らってことは理解したんですが、それに何か問題でも?」


「ここからは3人の秘密でお願い。あの2人は最終的に世界を壊せる。」


 俺の想定しない言葉が聞こえた瞬間だった。



「冗談でしょ?」


 コアが恐る恐る聞いてくる。俺もそう思った。がイナルタさんの表情は至って真面目。世界を壊す。悪役、ラスボスの最終目的。あの2人が壊す?ただの人間だよ?イメージが湧かない。


「えーっと。も少し詳しくお願いします。理解できてないです。」

 

 俺は質問する。


「あの2人は意識、無意識両方で力をセーブしている。そのセーブも危うくて、ちょっとしたことで外れちゃいそうなもの。それをなくして、倫理観など気にしなかったら世界を壊せる力を持っているってこと。サイカの方がわかりやすいわね。単純な炎の魔法に世界が燃え尽きるまで魔力を込めればいいだけなんだから。そんなことができるってこと。それと同等なことを千歳もできるわ。」


 脅しのように聞こえるが、イナルタさんはあくまで淡々と答える。


「えーでもあの2人って、ザイトがらみなら怖いところあるけど、そんなことしないと思うけど。」


 コアが2人をかばう。ほんの数時間の付き合いなのにいい子だ。


「ザイトに聞くけど、あの2人との関係は?同郷以外で。」


「・・・15年以上の付き合いがある幼馴染です。」


 俺の形式じみた回答。


「それだけ?先ほどの語り部とかの話だと、それだけではないと思うけど。」


 イナルタさんは追及をやめない。


「サイカは彼女。チトセは恋人。ってここに来る前に私とジーファに宣言してた。」


 コアが答える。


「でしょおおう?・・・どっちと付き合っているの?」


 この回答を想定できるわけがないイナルタさんは変なものを見る顔で俺に聞いてくる。


「付き合ってはいないです。結局なにを言いたいんですか。」


 俺は語彙を強める。付き合ってはいない。どちらかというと付きまとわれている。憑かれて疲れている。ただ、2人のことが嫌いなわけではない。あの2人は俺のことが大好きだけど。(自分で言うと気持ち悪い)


「2人に暴走の恐れはないかってこと。だから、君たちが何者なのか知りたかったの。情報は多いことにこしたことはないから。状況によってはカタム傭兵団に止めてもらうことも、想定して傭兵団のコアさんにも聞いてもらったの。」


 そうだよね。俺はあの2人の暴走(世界を滅ぼしはしないが)には慣れているけど、イナルタさんにとっては未知との遭遇だもんね。うーん。仕方ないか。


「とりあえず、これからの話も3人の秘密でお願いします。俺たちは・・・」


 


「・・・・・なわけです。信じがたいかも知れないですけど。」


 イナルタさん、コアに全てを俺は話した。


「嘘でしょ。ザイト。」


 コアは信じれないって顔。だよね。逆の立場なら俺もそう思う。


「なるほどね。だから魔力や魔法を知らなかったてこと。・・・暴走は君しだいね。」


 イナルタさんも驚いているが、落ち着いた口調は変わらない。


「嘘じゃないよ、コア。あっそうだ。明日そのポイント行かなきゃならないんだ。護衛ついでに付いてきて。俺たちの世界には行かせれないけど。ドアを見たら信じれるでしょ。」


「あっうん。明日も私はオフだからいいけど。」


 心ここにあらずで答えるコア。


「じゃ、よろしく。あとイナルタさん、2人の能力の高さについてはどう思います?いきなり魔物を倒したりできます?」


 俺と2人の能力差について、俺たちの世界の人の能力が高いだったら俺だって強いはずだ。でもそうじゃないとすると。やはり生まれついての差か。いやでも、いきなり魔物を倒せる力を持っているものか?


「恐らく適応力の高さのおかげね。私たちの世界に来た事で、この世界の常識に体が適応した。それで魔物を倒せたと思う。まぁ能力の高さは才能ね。たぶん、違う世界でもあの2人ならすぐ適応して、高い能力を持つと思うわ。」


 あの2人はどこでもハイスペック確定なのね。うらやましい。


「私は2人がこの世界で暴走しなければいいだけだから。君があの2人をコントロールして、尚且つ君が死なないようにね。あの2人とは戦いたくないから。」


「・・・はい。」


「じゃあ戻りましょう。たぶん君が戻らなくてソワソワしてるんじゃないかしら。人気者はつらいわね。」


 イナルタさんが笑顔で言う。


「はは、そうだそうだ。愛されてるねーザイト。」


 コアもつられて笑っている。


 戻ると案の定2人はソワソワしており、俺が戻ると「遅ーい。」と文句を言いつつ、満面の笑みになった。その様子をイナルタさん、コアは笑っていた。ジーファさんはコアたちを見て首を傾げてる。

 

 俺たちのいない間に2人の基本は終了していた。街周辺の魔物も倒せる強さになっているとジーファさん。じゃあ、明日はポイント行くのに不安はなさそうだ。

 今日のところはこれで講義終了。イナルタさんから塾用の教科書を買って、授業料を払う。「いつでも質問には答えるから。」とイナルタさん。まだまだお世話になりそうだ。

 宿に戻り、本日終了。本日の結果、家を購入。ギルド登録。魔法習得。1日でよくできたなここれ。



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