嘘じゃない
時間にして9時ころ、3人でもそもそと起きる。1階に降りるがシクはまだ起きていないようだ。ま、そんなときもあるだろう。
外を見るとクロスティとエルージュはもう外出している。まあ。飯がでないから取りにいったのだろう。すまん、許せ。
3人でダラダラと遅い朝食を済まして、なにもしてないけど、コーヒーで一休み。
「シク、遅いわね。」
「ま。まだまだお子様だからね。」
「どうする?起こす?」
「そんなこと言って、寝てるシクに手だすんでしょ。ずるいぞ、在人。私も。私も。」
「それはどっちの意味?」
はしゃぐ才華に落ち着いて突っ込む愛音。
「で、起こす起こさない?」
才華を無視して、愛音に再確認。
「うーん。そうね。お昼近くになっても起きてこなかったら、起こしましょうか。」
「それでいいんじゃない。」
「じゃ、それで。」
お昼前になったのでシクを起しに変態モード才華と至っていつもどおりの愛音が部屋にいった。シクと住むようになった日より遅いので、相当疲れたのだろうか?確かに顔は疲れて眠たそうだったが。それとも風邪でもひいたか?
2人が部屋に行って10分は過ぎた。・・・遅い。寝ているシクの顔を見て悦に浸っているのかも。
いや、ミイラ取りがミイラになったのかも。寝ていそうだ。ミイラを起こしに行くか。
部屋のドアは開いている。開いているってことは、少なくとも着替えていることはないか。ドアから、中を覗く。
ベットでシクは寝ている。ただ、布団はきれいにはだけている。2人がいたずらで布団を取ったのか?そのベットの横で才華はペタンと座って天井を見ていた。なんだ?天井にはなにもない。愛音も棒立ちでシクを見ている。
なんだ?空気が重い。あ、どっきり?それはあるかも。気をつけないと。
「まだ、起きないの?」
部屋に入り、2人に声を掛ける。愛音は俺の声に驚いた表情で振り返り、才華は生気のない顔で俺を見た。
「どしたの?2人ととと。」
俺がしゃべり終えるまえに、愛音が俺にもたれかかってきた。愛音には力が入っていない。
「在人。」
「どしたの?愛音?」
「シク。シクが。」
愛音の声がか弱い。
「落ち着きなよ。シクがどうしたのさ。まだ寝ているみたいだけど。」
「死んでる。」
はぁ?
「何言ってんの?」
「だから。・・・・・・シク。・・・・・・死んでいるの。」
「はぁ?え、いや、だって。」
理解ができてない。愛音は何を言っている。あ。
「どっきりにはっからんよ。」
そうだ。あまりにも迫真な演技に飲み込まれかけたが、騙されん。
「嘘じゃないのよ!」
愛音が声を荒げる。一瞬時間が止まり、愛音の目から涙が。
「嘘じゃないの。シク。・・・・・・・・・・・死んでいるの。」
「はぁぁあ?」
俺はシクの眠るベットへ。
シクは穏やかな表情だ。ぐっすりと寝ている。きっとそうだ。うん。
俺はシクの腕に触れる。
・・・・冷たい。
シクの反応がない。
胸の動きもない。
呼吸音も聞こえない。
シクの胸に手を当てる。心臓の鼓動がない。少なくとも俺には感じられない。
なんで?いや。嘘だ。そんなはず。いや。え。まさか。
「嘘じゃないでしょ。」
俺のとなりに来た愛音がボソリと言う。
「いや、だったら、ほら、あれだ。」
「心臓マッサージと人口呼吸?それとも魔法?」
言葉にできない俺に対して、才華が投げやりに答える。
「そう。それら。」
「無駄よ。」
「なんでさ。」
「だって、何時間も経っているのよ。」
俺は絶句する。
「シク。」
悲痛な声でシクの名を呼び、愛音が俺にもたれかかり、両手で顔を覆い静かに泣き出す。
「う、う、うあああああああああああああああああ。」
対照的にその場で子供のように大泣きを始める才華。
この2人の泣き声に
「どうしたんですか?」
とシクは起きて、2人を見る。なんだ、やっぱりどっきりじゃないか。やってくれるね。この。
そんな期待も外れる。シクに反応はない。穏やかな表情のまま。
愛音を受け止めている体勢なのに、才華が何も言ってこない。普段ならなんらかのリアクションをとるのに。
シクが死んだ。
それだけが、脳内を駆け巡る。




