前回までのあらすじをしてなにが悪いんだい
「ちょっと人より舐められることが多い以外、凡人な青年、人多在人。天才で美人、幼馴染であり彼女の天城才華が愛の力で開発した異世界転送装置で、巨乳で美人の幼馴染の地陸千歳とともに異世界へ乗り込む。異世界のミタキの街で、危険な蜘蛛女アラクネルを追うカタム傭兵団、アラクネルによって家族を失ったシクたちと出会い、自分の力のなさ、彼女と幼馴染のハイスペックを実感しながら、死にかけたり、死にかけたり、死にかけたりし、異世界物語あるあるを体験していく。
ミタキの街にアラクネルの魔手がせまる中、東の森で、アラクネルとその協力者ボトムズと戦うことになる在人たち。戦況は二転三転しながらも、森の魔物火吹き鳥、三つ目犬の協力を得てアラクネルを討伐する。その戦いを通じて、彼女才華への想いを再確認した在人は
『結婚しよ。』
とプロボーズし、この異世界パヴォロスで結婚式をあげ、末なくしあわ。」
「おい、寝ている人の上でなにをやっているだ。」
ベットで寝ている俺に才華が布団の上から覆いかぶさっている。
「前回までのあらすじ。」
「なぜに?」
「おいおいおい、前回までのあらすじをして何が悪いんだい。」
「いや、なんで寝ている人の上でやる?」
「それは朝になっても起きてこない夫を嫁が起こしに来たんだよ。でその寝顔を見てたら、幸せな気分でぼーとしてしまって、このままじゃいけないと思って始めたわけ。」
「俺はどこからツッコミを入れればいい。」
「どこかおかしい?」
楽しそうに笑いながら答える才華。
「起こしにきたのはまぁいいとして。まずパヴォロスで何?」
「パヴォロスはこの世界のことだよ。この世界の人たちはこの世界をパヴォロスって呼ぶんだって。シクが言ってたよ。」
「へー。そうなんだ。で『その戦いを通じて』以降については?」
「・・・・どこか間違って?あなた。」
質問の意味が分かりませんといった顔をする才華。あなたって。
「俺にはそこらへんの記憶はないんだけど。」
「ええ。記憶喪失?そんなぁ。あの嬉しかったプロポーズを、楽しかった式を、愛し合った初夜を覚えてないの?なんってこったぁ。あああ。」
オーバーリアクションの才華。
「ないだろ。」
「本当に覚えてないの仕方ないなあ。ならもう一度やろう。プロポーズからやり直そう。だから起きて。」
上半身を起こし布団を引きはがそうとする才華。
「あー起きる。起きる。起きはする。とりあえず、どけてくれ。」
俺も上半身を起き上がる。
「ああ。」
わざとらしく、後ろにバランスを崩した才華が倒れまいとして抱きついてくる。
「サイカさん、まだザイトさんは起きませ・・・・。」
シクが顔をのぞかせる。!!時が止まる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「やだもー。あなた、子供が見てるわ。」
才華が俺をわざとらしく押しのける。そして、時は動き出す。
「起きたんですね。チュトセさんに伝えてきまふ。」
顔を硬直しつつも噛みながらシクは立ち去った。
「じゃあ。私も下で待っているよ。在人。朝ごはん!朝ごはん!」
何事もなかったように才華が部屋を出ていく。朝一番の小さな嵐は去っていった。結局、前回のあらすじで俺を起こした訳は?なにも解決していない。




