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推測

 ~時間は俺たちが森の中でボトムスさんに会う前に戻る。~


「りょーかい。で」


「救出、安全が優先でしょ。わかって・・・」


 才華が割り込む。だが途中で考えこむ。どうした?


「その人たちが蜘蛛に操られている可能はあるよね。」


 千歳が話を続ける。あーそうだね。コアがそうだったからそうだよね。それは手間がかかる。俺じゃなく3人がだけど。


「まーそれは2人の魔法で対処してもらうしかないね。」


 対策がある以上なんとかなりそうだけど。だが才華の顔は晴れない。?


「そもそも、そのおっさんや他の人なんではこの森にいたと思う?」


 考え込んでいた才華が口を開く。・・・・確かに、東の森に来る理由が思いつかない。クエストはないし。特段なにか採れるわけでもないはず。修業?千歳も思いつかないのか黙っている。才華の疑念はまだ続く。


「あとコアを操っていた蜘蛛はどう思う?あの状況だと気絶してるふりをしてた。そんなこと子蜘蛛が思いつくかな?」


 それもそうだね。この中で一番詳しいと思われるコアに視線が集まる。


「えーと、近くにアラクネルがいたら指示した可能性はあるけど、あの状況じゃないと思う。他の子蜘蛛ならそこまで考えつかないと思う。」


 コアも答える。ならば?


「そのおっさんがアラクネルの味方で、蜘蛛に命令してたら?」


 才華の冗談・・・ではなさそうだ。コアも千歳も考えこむ。


「さすがにそれはないんじゃない?そんなことをする理由は?そもそも意志疎通もできないんじゃない。考えすぎ考えすぎ。」


 俺はすぐさま反論という城を構築する。


「司令塔の子蜘蛛となら多少の意志疎通はできるって聞いたことあるよ。だから命令はできるんじゃない。」


 コアによってまず、我が反論城の一角が崩される。意思疎通は可能ですか。はい。


「一度襲われた際、自分の命の保証代わりに、他の人間を売る。または餌を用意する。裏切り防止に子蜘蛛は付けられていると思うけど。あ、自分の命じゃなくても人質を取られたとかもあるかも。」


 千歳によってさらに瓦解する。人質がいたらそうなるか。


「大隊が来ても、その部隊の情報を流す、西の森の件みたく攪乱する、操る蜘蛛を街で油断している間に取り付ける。やれることはたくさんある。しかも今日までだれもその可能性に気づいていなかった。」


 才華が崩壊させる。我が反論城は3分も持たなかった。嫌な想像とともに。この場が静かになる。



 話を進めるため口を開く。


「結局、才華はどう思っているのさ?」


「コアが助けようとしたおっさんはアラクネルの味方。傭兵団が姿を見つけれないのは行動を把握されていたから。西の森から蜘蛛がでたのは、卵の段階で運んだとか前もってそこに産んどいたとか。卵を産むなり怪我を治すのに必要な餌はニワ・・トリとかで・・・・・・。」


 才華は目線を下げ、また考えこむ。まだ何か気づいたと?


「サイカ?」


 コアがうかがう。才華は顔をあげ、コアを見るなり


「コア、商人のボトムズって会ったことある?あと森を検索した際、蜘蛛には遭遇した?それと森に対して魔力感知は?人はいた?」


 矢継ぎ早に質問を繰り返す。


「え、西の森で蜘蛛が出た際の情報提供者でニワトリの捕獲の依頼者でしょ。私は会ったことはないけど。蜘蛛は西の森では多少。この森の検索の際、感知はしているけど、人はいなかった。」


 コアは驚きながら、才華の質問に答える。へーそうなんだ。それよりなんでここでボトムスさん?


「千歳、簡単でいいからボトムズの絵描いて。」


「ちょっと待っててね。」


 千歳はメモ帳を取り出し早速書き出す。才華は話を続ける。


「情報少ないから憶測、想像が多い私の考えだけど、コアが見たおっさんはボトムズだと思う。」


 本来ならボトムスって突っ込みたいが、そんな雰囲気ではない。


「なぜにそう思う。」


「まず前提として、負傷したアラクネルがここまで見つからなかったのは街に内通者がいるから。そして、西の森にしろここにしろ、あの大量の蜘蛛を生むのにはに相当量の栄養がいる。ここまでは納得できる?」


「まぁ、とりあえずは。」


「ボトムズはどこかで、負傷したアラクネルに襲われた。でもそこは商人の交渉術で取引した。その協力内容は今説明したものね。街にいるんだから、団員の情報は集めやすい。それこそクエスト依頼で堂々とギルドに入って世間話なんかでも情報は入る。」


「それから」


「まず、餌としてボトムズはニワトリを提供。私たち以外にもクエストを受けている話はギルドで聞いたことがあるし、ボトムズは東の町へ運ぶといってたから、ボトムズが街から東に行っても誰も気にしない。全部が全部アラクネルに行ったわけではないと思うけど。」


「森に張ってた結界たけどあれに影響は?」


「結界の効果は2つあって、1つは魔物にとって結界に近づくのをいやがる高周波みたいな魔力を放出しているの。例外もあるけど基本、ミタキの街にいる種族には無害なんだって。もう1つはある程度の大きさの生きた生物の出入りに反応するようになっている。だから結界の境界線で餌だけ投げ渡せばいい。コアたちがこの森を調べたとき、人の気配はないんだから、餌の運搬要員の従業員は死体ね。」


「餌の件は了解。西に蜘蛛が現れた件は?」


「もともと用意してたのかもしれないけど、卵を西に運ぶだけね。餌の受け渡しの逆ね。シクのときのツボ。あれに入ってたのかも。どっちにしろ、西の街へいくなり、ニワトリ回収で、森の付近に行くんだから、それも怪しまれない。」


「蜘蛛が街を襲った理由は?」


「検索を西の森に向けるため。たぶん、傭兵団が1回東の森を調べた終えた段階で、東の森を拠点にするつもりだった。だけど、私たちが偶然その情報を見つけたから、再度東の森の検索を開始した。それで西の森から蜘蛛を襲わせた。そしたら誰だって西の森の検索をするでしょう。2人組を殺したのも西にいるのを強調するため。」


「近くにアラクネルがいないから命令できないんじゃない。」


「たぶん、ボトムズの周辺に指令役の蜘蛛がいると思う。普段は荷馬車に隠れていればいいだけね。結界の境界付近で子蜘蛛間で指令のやりとり、西の森でそれを指示した。ってとこね。蟻に役割分担があるみたいに、あの数の蜘蛛なら司令塔の蜘蛛がいてもおかしくないんじゃないかな。」


「なんで、東の森にいるのかしら、ボトムスさんの荷馬車で違うところへ移動したらいいんじゃない?」


 千歳が手を動かしたまま口をはさむ。


「そこはわかんないけど。傭兵団がいる以上、追撃は終わらない。それなら有利な状況で敵を待つ。あとは種の保存として次世代を産むつもりなのかも。それで遠距離移動がつらいとか。」


「卵産むつもりなら逃げたほうがいんじゃない。」


「可能性としては、①ここでなら返り討ちにする自信がある ②一度人の手によって痛い目も見ているから、強い戦力の取り込みを狙っている。③次世代を逃がすための囮になるつもり。まー私は探偵じゃないから、外れても気にしないけど。どう?」


「正解不正解はともかく、才華の考えで動いとく方がいいと思うわ。はい、出来た。」


 才華の意見に賛同した千歳が絵をコアに見せる。似ているのは当たり前、器用さはあるから。


「あ、この人だよ。私が見たおっさんは。似てる似てる。」


 コアが指さす。ということは


「とりあえず、内通者の可能性はある。人質がとられたため苦渋の選択ってこともありえるけど。人を見た目で判断するなら、それはないと私は思う。」


 はっきり口にする才華。その判断の仕方はともかく。筋は通っている気はする。考えすぎかもしれないけど。


「ちなみに今、ボトムスさんがここにいる理由は?」


「そこも正解はわかんないけど、①子蜘蛛の受け渡し。②次世代の受け渡し。どっちにしろ傭兵団は、この状況からしてここでの調査を続けないといけないから、前者なら攪乱のため。後者なら安全な移動のチャンス。あ、③アラクネル本人の移動もありえるね。たまたま今日がその日だったのかも。」


 ふむ。どれもありえそうだ。②だったら、アラクネルを倒した時点で傭兵団の追及も終わりになるから、次世代の当面の安全は確保できると。アラクネルの計画日にあたってしまう、俺の運の悪ささはこういうとき発揮するしな。


「ボトムスさんが私たちを狙った、とかは考えすぎかな?」


 千歳が口を押えながら、提案する。え?


「ボトムスさんはシクの件で、私たちがこの森に入ったのを知っている。そして数時間後金塊をもって現れた。だから、この森に隠し財産があると思ったのかも。私たちのことを知らない人からしたら、この森に入る理由なんて思いつかない。だから、私たちだけでこの森に入るのを待っていたとか。」


「アラクネルとしては人質兼戦力の補強。おっさんとしては金塊ゲット。ありえるかも。」


 千歳の考えにコアは同調する。うーん、俺はともかく、2人の実力はあるほうだし。ボトムスとしては金塊をひょいと出してきた才華の財力に目がくらんでもおかしくはない。かなぁ?


「まー、たまたま今日が移動日だったてこともありえるけど、ボトムズは敵。アラクネル陣営には知恵がある。そのことは意識しておこうか。これからボトムズのところまで行って従業員を助けるけど、ボトムズの見切りをつけるために、ボトムズ本人は泳がそう。」


 才華が話をまとめる。



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