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登場

 休むことになったが、俺は従業員のもとへ。今更だが、従業員はスタンガン替わりの雷を食らっている。ぱっと見外傷はない。呼吸もしている。だが見えない部分は?俺が見るわけにはいかんだろ。


「才華、千歳休む前に、この人の怪我とかないか確認して。」


「あーい。」


 才華が返事をし、千歳、才華、コアも従業員のもとへ寄ってくる。途中、コアはアラクネルの残骸からナイフを回収する。才華、千歳もコアがナイフを拾うに合わせ、残骸を見下ろした。


 そして、2人の表情が変わる。さらに才華は天上、千歳は洞穴入り口を見るやいなや


「コア、在人。今すぐ、ここ出るよ。」


 才華が声を荒げる。?2人の様子に焦りが見えた。


「え?」


 コアも戸惑っている。


「急いで。」


 千歳は言いながら、天上を見る。その動きに俺もコアもつられ、天上を見る。そして、俺は絶句する。


 子蜘蛛が一斉に降りてきたのだ。今になって何故?先ほどの沈黙はなんだったんだ。おい。


「ザイト。その人背負って。早く。」


 コアが叫ぶ。俺はハッとし、慌てて従業員を背負い走り出す。3人もすでに入り口に向かっていた。入り口をふさがれるのはまずい。全力で入口を目指す。が。


 ドタン。


 俺は足がもつれて前に倒れる。血が足りないのか。疲れたのか。このような場面ではよくある。ありきたりすぎる。やってしまった。顔から血の気が引く。倒れた俺に3匹の子蜘蛛が迫りくる。たたなきゃ。焦りのせいで動きがとろい。まずいまずい。


 バサッ。ザン。スパン。


 俺に襲い掛かってきた子蜘蛛を3人が一蹴する。すかさず俺の周りを3人が武器を構え囲み、次々と襲ってくる子蜘蛛を迎撃する。あ、危なかった。あと1歩遅かったら消化液やら糸まみれになっていた。俺はホットした。だがまだ囲まれている。俺が立ち上がると


「皆こっち。」


 コアの指示のもと、子蜘蛛を返り討ちにしつつ壁際まで移動。子蜘蛛に囲まれているが。全方位を囲まれるよりはましか。


「四方を囲まれた状況よりはましかもしんないけど。」


 俺と同じ考えの千歳。だが「けど」の意味がわからん。


「ここまで誘導されたね。」


才華は入り口の方へ目線をむける。あ、この場所は入り口とほぼ真逆の位置。


「ごめん。でもこうするしかなかったと思う。」


 コアが俺をチラッとみる。


「ごめん。」


 そうだよね。俺が転ばなければね。俺が転んだ結果、入り口を子蜘蛛に塞がれ、尚且つ入り口から最も遠い位置まで来てしまった。しかも子蜘蛛は両端を厚く陣取っている気がする。壁伝いでの移動もさせないつもりだ。



 子蜘蛛は周囲で一旦停止。そしてじりじりと間合いを詰めてくる。統率の取れた動きに思える。


「・・・私たちだけになるのを待ってたのね。」


 才華は冷静に答える。まじで?


「アラクネルいないのに、そんなことできんのかよ。」


 今まではアラクネルの指揮があったから、搦め手を使ってこれたんじゃないのかよ。子蜘蛛だけでそこまで考えるのか?あれか、洞穴に入る前に戦った際にいた一際大きいあの蜘蛛か?


「指揮をしてたのはアラクネルじゃないわ。」


 千歳が俺の疑問に答える。


「はぁー?」


 意味が理解できず、変な声がでた。


「どうゆうこと?説明して。」


 コアも驚く。アラクネルじゃない?じゃあ誰?


「アラクネルの死骸に3匹の子蜘蛛の死骸があったの。」


 子蜘蛛?確かに子蜘蛛はアラクネルの胸にいた。


「2匹はアラクネルの胸あたり。そして、1匹は首の後ろ付近に。」


「それって。つまり。」


「コアが今考えたとおり。アラクネルは他の蜘蛛女支配下の子蜘蛛に操られていたってことよ。」


 はぁー?才華の言葉に耳を疑う。この一帯には蜘蛛女の生息地ではない。アラクネルは住んでた地域からここまで逃走してきた。なら他に蜘蛛女はいない。子供でも分かると思う。あ。アラクネルの子?いやでもボトムスさんは子供を産む準備をしてた、って言ってたから、まだ産まれてないよな。産んだ後だとしても、親を操るなんてするか?出来るか?どっちにしろアラクネルが操られていたってことを俺は信じられない。


「俺らに取り付けるためにいたとかは?」


「それもあるかもしれないけど。でもね。蜘蛛女は人の会話ができるのに。アラクネルは一言もしゃべらなかったでしょう。」


 俺の考えに千歳の反論。言われるとアラクネルは叫ぶだけだった。ボトムスさんに命令をしているから喋れないことはないよな。


「あと千歳が真後ろにいるのに糸をタイミングよくお尻から吐いて千歳を捕まえた。そのあとコアのナイフを見ないで払った。あれは上から見て、指示を出したと思う。子蜘蛛との通話がどうなって、タイムラグがどれくらいあるのか知らないけど。千歳が弾いたナイフを避けれなかったのは、距離が近すぎたってこと。もしアラクネルが気配とかでナイフを弾けるなら、千歳のときのも防いだと思うよ。」


 才華の補足が続く。なるほど。いや感心している場合じゃあない。


「だったら、もう1匹、蜘蛛女がいることになるんじゃん。あれともう1戦しないといけないってことじゃん。」


「そうだね。」


「そうね。」


 千歳と才華は冷静に答える。


「いや、なんでそんなに冷静なのさ。2人とも魔力は少ないんでしょ。あと体力とかも。さっき見たく火吹き鳥や三つ目犬もいないんだから。不利だろ。だから2人も最初は逃げることを選んだでしょ。」


 援軍というか、第三者の援護はない。体力、魔力、精神力どれも減っている。今まで以上の子蜘蛛の数。元気な蜘蛛女。不利だ。いや今までもそうだったけど。相当やばいって2人も思ったんでしょ。俺にだって分かる。


「そうだけど。在人が転んだ時点で、逃げるはできなくなったよ。」


 才華は淡々と言う。すいませんでした。


「だから、突破するしかないわけね。」


 千歳もだ。切り替え早。


「で、どう突破するの。チトセ。サイカ。」


 コアの質問に対して


「まずは入り口を通れるようにはしないとね。」


 千歳は入り口をチラッとみる。そうだね。逃げる手段は確保したい。


「子蜘蛛が襲ってこないってことは何か狙いあるんだろうね。この状況なら黒幕も出てくるんじゃない。っと出てきた。」


 才華は天上を見る。つられて天上を見る。天上には既に蜘蛛の糸により巣ができており、そこから1匹の蜘蛛女が右手から糸を伸ばし降りてきた。



 

 大人のアラクネルとは違い、若い。見た目の年齢はコアくらいか。ただアラクネルの面影が見える。他の蜘蛛女ではなくアラクネルの子。次世代だよな。


「アラクネルの子だよね。コア、蜘蛛女の子供はこれくらいの大きさで産まれるの?」


「聞いた話になるけど、魔物として活動している蜘蛛女の子はあれくらいで生まれる。ちなみに人と共存しているのは人の赤ちゃんと大きさ変わらないって。魔物は環境によって産まれる大きさが違うんだよ。」


 才華の質問に答えるコア。常に戦う状況にあるから大きく生まれるってことなのかな。それはそれとして、まだまだ別の疑問が浮かぶ。


「でもさ。ボトムスさんは産む準備しているって言ってたけど。」


「そんなの、ボトムズが嘘を言ってたんだよ。本当はとっくに産まれてた。」


「なら。なんでアラクネルを操るのさ。」


「そこは本人に聞こうよ。どうなのさ。アラクネルのおこさ・・・・・・。」


 才華はアラクナルの子と目を合わしたところで、何かに気づき、言葉が止まる。


「・・・・。うーん。アラクネルさん?それとも本名は別にある?何が狙いなのかな?そこんとこ教えてくれない?」


 アラクネル?あれはアラクネルの子じゃないの?疑問だらけの状況に才華の発言に処理が追いつかない。


「どうゆうこと?意味が分からない。」


「アラクネルも、アラクネルの子も操られているのね。」


 混乱している俺とは違い千歳は真相に気づいているみたいだ。子も操られている?つまり他に蜘蛛女がいるってことか?


「目や表情がさ、母親蜘蛛女も目の前の蜘蛛女も操られてたコアと同じなんだよ。母親蜘蛛女と戦っているときはさ、子蜘蛛に気づかないでいたから、こんな目って思ってた。でも操られていた母親とその子も同じ目なら、操られているってことになるでしょ。もともとの可能性もあるけどね。」


 才華の指摘に俺は目の前の蜘蛛女の目や表情を観察する。・・・・うん。操られたときのコアと同じに見える気がする。


 無表情だった蜘蛛女の口元が釣り上がる。







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