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お宝ゲット!!

 とりあえずアラクネルの討伐終了。従業員も無事救出。4人とも無事、万々歳だ。上空の方も巣は溶けてすっきりし、火吹き鳥が崖に留まりこちらを見ている。また入り口付近の子蜘蛛もバラバラになっており、アラクネルの残骸付近にいたリーダー格の三つ目犬も他の三つ目犬と合流する。


 洞穴内は静まり返り、蜘蛛の死臭、落ちてきた糸の束に残った炎と炎からでる煙が充満していた。才華と千歳は地面に残った炎を一つ一つ丁寧に水をかけ消火し始めた。俺とコアはアラクネルの残骸の元へ移動する。


 背負ってた従業員を一旦下して、改めて、アラクネルの残骸を確認。うん。吐きそうだ。俺とは違い2人は平然としている。そこも凄いと思うべきか、それともこの状況に慣れる速さを異常と思うべきか。ま、そのことは置いておこう。するべきことをしよう。


「才華、足の怪我は大丈夫?」


 俺は才華の右ふくらはぎを見る。戦闘中に治療はしていたが、あれが応急措置か完治なのかはあの場所からは分からなかった。見た感じ、傷なども残ってはいない。ホッとする。


「うーん。問題な・・・・。問題あるから背負って。お姫様だっこでもいいよ。」


 と俺に抱き着こうとする才華。うん、大丈夫そうだ。


「はい。大丈夫だね。なのでストップ。」


 俺は右手を伸ばして才華を制する。


「えーーー。」


 口を尖らせて停止する才華。停止はしたのでそこは褒めておこう。心の中で。


 今度は千歳を見る。上半身の装備品ブラのみの千歳。目のやり場に困るっちゃあ困る。千歳は俺に見られているのに恥じることもなく、平然と刀を納刀している。いやいやここは恥ずかしがってよ。どうなのこれ。そう思いつつ、俺は上着を脱ぐ。


 俺の上着は刺されたため穴はあるし、血も染みついている。血は乾いているが、匂いとかも酷いよな、これ。正直これを渡すのは気が引ける。でも才華の服は千歳には小さい。胸の部分が。コアも貸せる服でもない。従業員さんのなら問題なさそうだが、気絶している人の服を脱がすのもなんかなー。消去法でこれになる。我慢して。今後はこうゆう状況のため、2人の服の予備も持っておくべきか。マントとかでもいいかな。


「千歳はまずこれで我慢して。」


「ううん。ありがとう。」


 千歳は嬉しそうに俺の上着を受け取り羽織る。どうなんだろこれ。まーブラ姿でうろつかれるよりはましだろう。


「従業員に加え2人も無事でなによりだよ。」


 2人をまじまじ見るコア。


「コアがあそこで助けてくれたからだよ。ありがと。流石、おねーちゃんだね。」


「ニハハ。どういたしまして。」


 才華のお礼にコアが右手で頭をかきながら、笑い顔で返す。


「うれしそうだねー。ま、本当に助かったと思うよ。俺も。」


 一層顔が綻びるコア


「千歳もお礼言ったら。」


 コアのナイフに1番助けられたのは千歳だと思う。・・・だが返事がない。?


「・・・・・千歳?」


 あれ?っと思い振り返る。そして、俺は絶句する。




「あー在人の服なんて久々。うーん。在人の香りでいっぱい。ふふっ。ここまで血の香りが濃いのは初めてね。ふふっ。ふふっ。」


 俺の服を羽織った千歳は悦に浸っていた。匂いを嗅いだり、頬擦りをしている。自分だけの世界にいる。俺らの会話なんて聞いていなかった。匂いじゃなく香りって。


「後で血の味も確かめちゃったりとか。これはもうお宝ね。やったぁ。ふふっ。幸せすぎて、笑いが止まらないわ。どうしましょう。ふふっ。」


 不気味に二やつく千歳。 


「えーと。その・・・・・・。」


 声のかけ方が分からずコアは困り果てている。俺も正直声をかけれない。背筋が凍った。ただのストーカーがここにいた。訂正、変態ストーカーがここにいた。血をなめる?・・・・ブルっとした。


「ずるいぞ。千歳。私もーーー。」


 もう一人の同類が腹部に顔を押し当てる。そして、頬ずりしつつ匂いを嗅ぐ。顔がイッている。


「あー才華、乾いた血が剥がれちゃうから。もっと優しく触って。」


 パラパラ落ちる剥がれ落ちる血を見てもったいないという顔の千歳。 


「・・・・・・・・。」


 目を丸くしながら、コアは考えるのをやめていた。はた目から見ても分かった。ストーカーは常に隣にいる。それも2人。その2人は別世界に浸っている。


「コア。おーい。」


 コアの肩を叩いてみる。


「あ、ごめん。なにがなんだかで。」


 コアがハッとする。・・・この世界にストーカーという概念はないのか、浸透していないのか。うーん。知りたくない。


「おーい、2人も戻ってきてくれー。」


 今度は2人の肩を叩く。


「あーごめん、ごめん。つい。」


 腹部から顔を離し、テヘペロの才華。


「ごめんなさい。夢中だったわ。」


 ウィンクする千歳。・・・・ついって。アラクネルとの闘いでまだテンションが高いのか?


「ねぇ。今どんな感じなの?」


 興味本位でか、コアが質問する。


「興奮しちゃって、ぬr」


「興奮してるから、ぬr」


 バン!


「はい、気を抜くのはここまで、ここまで。」


 俺は手をたたき、この流れを強制終了させる。俺も2人の行動に呆然としてたとはいえ、ここはアラクネルの本拠地。大ボスは倒したけど、まだ和むには早い。浮ついた話をする場合でもない。下な話はまだ早い。うん。それらは帰宅してから。無事帰れたら多少は付き合うから。



 気を締めなおして、周囲を確認する。三つ目犬、火吹き鳥はこちらの様子を伺っている状況から変化なし。子蜘蛛の増援もない。


「あ、あれ。」


 何かに気付いた才華が壁際を指さす。その方向には地面に落ちた火吹き鳥1羽がもぞもぞと動いている。息を吹き返したのか。だがその火吹き鳥は、飛び立とうとしない。それ以前に起き上がりもしない。重症なのか。


 崖上に待機していた火吹き鳥も気付き、同胞の元に2羽が降りてきた。だが、どうすることも出来ないのか。近くで様子を見て、時折小声で鳴くのみだ。


「仕方ないなー。」


「そうね。」


 才華と千歳は目を合わせ、頷き、火吹き鳥の元へ向かった。でありますか。俺とコアも2人のあとに続く。


 才華、千歳に気づいた2羽の火吹き鳥は羽ばたき甲高く鳴き、威嚇してくる。が、才華も千歳もガン無視。まっすぐ傷ついている火吹き鳥のところまで移動し、全身を見回す。この個体は体が小さく、翼の部分に赤色のラインがある。全身緑色で固体によって異なる赤色が翼にある火吹き鳥の中でも、このラインは目立つ。


 この間も、2羽の火吹き鳥は威嚇を繰り返すが、火を吐いたり、爪などで攻撃してくる気配はない。助けられたってことを理解しているのだろうか。それとも、こちらにも攻撃の意志がないことに気付いているのか。


「あー、翼の付け根付近と両脚が折れてるね。こりゃ痛い。」


 才華がその部分を触り動かして答える。確かに脚のほうは変な方向を向いてる。痛みで火吹き鳥は悶えて、鳴き叫ぶ。その様子を見て2羽の火吹き鳥は一層甲高く鳴き、威嚇してくる。が


「少し、静かにしてね。」


 千歳が微笑みながら、2羽の火吹き鳥を見る。その途端、2羽の火吹き鳥は威嚇をやめ、崖上へ移動した。ビビッたのか。


「どう?魔法だけで治せそう?」


 改めて傷ついた火吹き鳥を見る千歳。


「うん。いけそう。千歳は脚の方をお願い。」


 才華はそのまま翼の付け根に両手を当て治療を開始する。


「任せて。」


 千歳もしゃがみこみ火吹き鳥の脚に両手を当てる。


 悶え鳴いていた火吹き鳥も痛みが和らいでいくにつれ、大人しくなる。


「これでいいね。」


「よく頑張りました。」


 治療を終え、2人は立ち上がる。火吹き鳥はむっくり立ち上がり、ゆっくりと翼を広げる。そして


「クエーーーー。」


 お礼なのか一声鳴き、羽ばたいて宙に浮いた。そして、他の火吹き鳥とともに洞穴から飛びだっていた。


「ばっははいー。」


 才華は手を振り、火吹き鳥達を見送った。


 火吹き鳥が見えなくなると、三つ目犬のリーダー格が


「アオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン」


 遠吠えをする。そして、こちらを一瞥した後、他の三つ目犬を引き連れ洞穴を出て行った。あの遠吠えはお礼なのかな。


「気を付けて。」


 千歳は静かに言い、三つ目犬を見送る。




 三つ目犬も火吹き鳥もいなくなり、人間とアラクネル一味の残骸だけが残った。


「さて、蜘蛛の復讐もなさそうだから、洞穴をでようか。ボトムスさんも待っているはずだし。」


 現状、子蜘蛛の報復もなく、三つ目犬グループも攻撃の意志がない。ここでの用はもうない。


「そうだね。あーでもも少し休んでからで。流石にちょっと疲れた。」


 才華の顔がだらしなくなる。疲れが出ている。やはりアラクネルは強敵だったか。精神的にも肉体的にも相当削られたのだろう。ストレスだってあるはず。


「やっぱ疲れた?」


「ええ。こんなに魔法使ったのも初めてだもんね。」


 千歳も肩を落とす。それもあるか。


「魔法はもう使えない?」


 俺の確認に


「まだ使えるけど、突貫工事は無理。」


「そうね。やろうとすればできるけど、動けなくなると思うわ。」 


 ですか。ここまで長丁場なのは初めて。俺もここまでは想定していない。今まで参加したクエストの中で最長だったのは、クルンさんたちとの1件。あのときは人数は倍いたし、戦闘で俺のみた範囲で魔法はそんなに使っていなかった。それこそ、トンネルの突貫工事なんてしていない。


「蜘蛛の気配は?」


「天上付近のは固まったままだね。森全体は動いではいるけど、こっちに向かってきたりもしてないよ。」


「三つ目犬たちは襲われずに素通りできたみたい。」


 ふむ。敵地ど真ん中だけど、かたき討ちにくる気配はない。ここの方が安全か?考えてもわからんが、街への帰路は従業員の護衛もあるから、負担は多いだろう。今が一番休みやすいか。


「ならもう一休みしてから行こうか。」


 3人は頷いた。






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