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動きな。騒ぎな。暴れな。

 2人の危機が去ったとはいえ、状況は良くない。上空を確認すると、才華に倒された分の子蜘蛛は補充されていた。上空から糸の援護。両手、尻、口からの糸。また2パターンの放ち方のある溶解液。鋭い爪のある脚。それに加えて、統率された行動。不安材料だらけ。うん。逃げるべきだな。


 だが、勝ち目が浮かばない俺とは違い、2人は違うことを考えていた。


「攻撃が当たる瞬間を狙われたね」


 才華がアラクネルを見ながら話す。そう言われるとそうかも。たぶん。おそらく。千歳の刀が当たると思ったタイミングで糸が飛んできた。だとしてもアラクネを守るための行動だ。そこまで気にする必要あるか?


「ええ。糸のことが意識から外れたタイミングね。」


「だから、千歳でも避けきれなかった。」


 2人の話を聞き、コアが質問してくる。


「どうゆうこと?分かる?ザイト。」


 これは昔、譲二じーさんが言ってたことだ。また漫画とかでも見たことがある。


「えーと、人は攻撃が来るとわかったら、避けるなり耐えるなりできるけど。さっきは刀で攻撃が当たると意識したタイミングだったから、防御も回避も考えてなかったってこと。だから避けれないし、喰らったらダメージが大きい。俺でさえ刀が当たると思ったタイミングなんだから、千歳はもっと攻撃に意識がいってたと思うよ。だから避けれなかったってこと。たぶん。」


「私は広い範囲で観てたから糸に気づいたけど、千歳は糸に対する防御も回避も意識していなかったタイミングだったてことね。へー。」


 コアが関心する。でも魔物がそんなことを考えるか?それとも、経験からか?


「コアちゃんの声がなかったらあの段階で捕まっていたわね。1度目のときは避けれるように吐いたのかも。2回目で確実に捉えるために。」


「そうだね。あと、最初から2匹以上で同じタイミングで援護もできたけど、あえて1匹だけにしてたのかも。偶然いいタイミングで援護できましたよーって思わせたと。」


 まんまと俺は騙されたと。俺だけではないけど。俺ならもう死んでたな。あの2人だから無事だったと。


「子蜘蛛も周囲に広がっているから、死角ができるわね。」


「かと言って上に集中するとアラクネルの糸、液、爪。」


「コアちゃん、蜘蛛女ってこんな戦いかたするの?」


 2人は冷静に分析する。そう、そこ。俺も気になる。


「私は聞いたことない。」


 新たにナイフを用意しながら、質問に答えるコア。その額には汗が見える。焦りか?


「やるってやつだ。」


 中段に構え、うんうん首を縦に振る才華。


「うーん。どうしようか。才華。」


 再度、中段構えを取る千歳。言葉のわりに焦りは見えない2人。互いへの信頼がさせるのか。俺は不安だらけだが。アラクネルはナイフを抜かずに腹部を糸で止血していた。他の子蜘蛛がせめて来ないのは。司令塔の体制が整うのを待っているためか。考える時間ができるにはありがたい。


「そうだねー。」


 才華は周囲を見回す。頼むぜ。俺は思いつかん。




「うーん。うん。」


 一人頷く才華。とりあえず、考えが浮かんだみたいだ。どんなのか分からんが才華を信じよう。正しくはそれしかできんだけど。


「千歳は少しだけアラクネルと対峙して引きつけて。ただ接近はしないで回避に専念しつつ、魔法で牽制。」


「才華は?」


「私は先客を目覚めさせるよ。ひひっ」


 ?意味が分かりません。コアを見るが顔を横に振る。だが千歳は、なるほどといった表情をし


「いいんじゃない。」


 アラクネルの正面に移動。


「いっくぜぇいー。」


 叫ぶや否や、才華は炎の魔法を放つ。その炎はアラクネル、周囲の子蜘蛛を狙ったものではなかった。そのためか、子蜘蛛は反応しない。アラクネルも想定外だったのか炎になんも反応せずにいた。炎の行き先に目を向けると、炎は垂れ下がっている糸の束に当たった。糸を溶かして子蜘蛛の行動範囲を減らすのつもりなのか。


 あ、違った!


 糸の束と思いきや炎は糸の塊部分に直撃していた。糸の塊は地面に墜ち、溶けていく糸の中から、三つ目犬、火吹き鳥の姿が現れる。才華は舞うように次々炎を放ち、糸の塊が溶かしていく。全部が生きているわけではないのだろうが、息している個体はそれぞれ動き出した。


「ちょっと熱いのは我慢ねー。」


 アラクネルは才華の行動に最初は茫然としていたが、我に返ったのか、慌てたのか


「きゃえーーーーーー。」


 叫び声をあげ、才華に迫ろうとする。が。千歳がその前に立ちはだかり、氷の魔法を放ち牽制する。1発がアラクネルの右腹部に当たる。そこはナイフが刺さった場所直近、響くのか動きが止まるアラクネル。


 そこへ動き出した火吹き鳥の1匹が上空からアラクネルめがけて火を吐く。アラクネルは回避するも才華から離れる。ここで援護する手経ずの子蜘蛛はどうしたのかと思うと、他に動き出しだしたもう1匹の火吹き鳥に火を吐かれ、地面に落ちたり、応戦しており、援護どころではないようだ。


 その間に動き出しだした三つ目犬は水を弾くように体を震わせ、唸り声を上げる。動き出した三つ目犬は5匹。そのうち1匹は他の個体より一際大きく、なんか醸し出す雰囲気が違う。リーダー格?そのリーダー各は周囲を見渡し状況を確認している。


「ほらほら、鳥ちゃんも犬ちゃんも動きな。騒ぎな。暴れな。今がチャンスだよ。ほらほら。」


 才華は三つ目犬の方に叫ぶ。その間も炎を糸の塊に向けて放つ。才華の声を聴いたためか、それとも偶然か。リーダー格の犬は一声あげる。それを聞いた他の4匹は入り口に向かって走り出した。そして、入り口付近の子蜘蛛に襲いかかる。その様子を確認したリーダー格は唸り声をあげ、アラクネルの前に低い姿勢で構える。今にも飛び掛かりそう。とりあえず、敵を蜘蛛と決めたみたい。


「あなたは逃げないの?」


 リーダー格をチラっと見る千歳。


「死んだ者の仇はとる。生きた者は守る。リーダーは大変だねぇ。」


 才華は魔法を放ちながらリーダー格を見る才華。


 才華の言った先客。第3者の三つ目犬、火吹き鳥の開放。ふつうに考えたら敵が増えるだけなんだが。

それを考慮しても使えると思ったのか。この行為は吉とでるか凶とでるか。俺なら凶なんだけどな。今のところは吉だ。




 アラクネルの巣が騒々しくになってきた。糸の塊、糸の束が溶けて次々地面に落ちてくる。そのせいか洞穴内は蒸し暑くなってきている。火吹き鳥が3羽まで増え、天上の巣は既に壊滅状態。三つ目犬はさらに3匹復活し、入り口の子蜘蛛を倒している。


 この事態に子蜘蛛は対応できないのか。天上、地上関係なくも次々倒されていく。アラクネルも想定外だったのか対応できずにいる。今なら「逃げる」のコマンドは使えそうだ。


「熱くなってきたー。」


 蒸し暑さに対してか?この展開に対してか?とにかく叫びながら、才華はなぎなたを構える。かく乱は計画通りなのだろうが。


「もう、子蜘蛛の援護はないわね。」


 千歳が不適に笑う。そして、アラクネルの真正面向かって走り出した。


 アラクネルは千歳の動きにやや遅れぎみに口から溶解液を出す。千歳は右に避けつつ、魔法を放つ。氷がアラクネルの右脇腹に再度命中。容赦ねーな、おい。千歳はアラクネルの左前脚の元へ。アラクネルは右前脚を突き出す。鋭い爪がある脚だ。刀で防ぐのは無理だ。千歳はアラクネルの左側面まで移動し回避。アラクネルは上半身を左にひねり、溶解液を吐き出す。


 だがこれはアラクネルのミスだ。千歳に意識を集中しすぎ。左を見た瞬間、負傷している右脇腹をリーダー格の三つ目犬が咬みついた。い、痛いっってそれ。


「ぐるあーーーーーーーーー。」


 苦しみ悶えるアラクネル。なにこのナイスコンビネーション。これは偶然なのか?それとも、三つ目犬がそう動くように誘導したのか?少なくとも才華の援護があると思って、左側面まで動いたのか?三つ目犬には一度噛まれたことあるけど、痛いじゃすまないよな。


 あ、噛み千切った。ひー。アラクネルの右脇腹が欠ける。アラクネルは前かがみになりつつも、三つ目犬を睨む。そこへ千歳が間合いを詰め、


「すっごいー。」


 両前脚に横一線。前脚の関節部分を切断した。


「ぎゃぎゅらーーーーーーーーーーーーーーーー。」


 一層甲高い叫び声をあげ、アラクネルは前方に傾く。


「おー。いったそー。」


 才華がアラクネルの後方から近づき、氷の魔法を放つ。たった今噛み千切られた右脇腹へ。こっちも容赦ない。顔が邪悪だ。アラクネルは痛みに体をよじる。


 アラクネルは才華の方へ向きを変えようとする。だが、前脚を斬られているため、バランスを崩し、前のめりに倒れこむ。


「ちょっと想定外が起きたくらいで、慌てすぎだよ。」


「そうね。」


 間合いを詰める2人。アラクネルは足をじたばたさせながらも、体勢を直す。倒れた際に右腕で体を支えてしまったのか、右腕はプランとしている。折れたか?だが4本脚でバランスが悪いのだろうふらついている。


 そこを見逃すことはしない今の2人。千歳は右の真ん中脚、才華は左の後ろ脚をそれぞれぶった切る。さらにリーダー格の三つ目犬がアラクネルの喉元に噛み千切った。2本の脚で体を支えきれず、アラクネルは右半身を下に地面を倒れる。


 アラクネルはヒューヒュー呼吸をしている。立ち上がろうとしているが体がついてこれてない。

 

 2人はしゃがみこみ、地面に手を触れる。アラクネルは右半身からじょじょに凍り付き、それに比例して体の動きも弱まっていく。数秒後アラクネルは完全に凍り付いた。そして、才華は蜘蛛の部分、千歳が人の部分を容赦なく蹴り砕いた。・・・千歳はよく蹴れたな。ぱっと見は人なのに。服を燃やすことになったのが頭にきているのか。


 










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