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VSアラクネル

 洞穴を抜けると巣であった。・・・訂正もうこれは巣じゃなくテリトリーなのかもしれない。日が差すとはいえ、天上は蜘蛛の巣ができており、崖からは糸の束が垂れ下がっている。糸には子蜘蛛もいる。ただ思ったより少ない。正直全方位囲まれていると思っていた。ここまで人が来るのを想定してないのか。違うか。崖上にいるんだなこれ。あーやだやだ。それに糸の束にはところどころ糸の塊がある。三つ目犬や大鳥がはいるのだろうか?そして、ボトムスさんが言ってた通り、ど真ん中に女がいた。下半身が蜘蛛の女が。


 この世界に来る前に見た画像の蜘蛛女。あのとき映っていたのは横顔だったので正面の姿は初めて見る。

これがアラクネルか。ケンタウロスの蜘蛛版か。禍々しい6本脚の下半身。大人の魅力があふれでる上半身。その胴体から蜘蛛の脚の面影がある人と同じ腕。進化の過程が気になる。


 下半身には切り傷がちらほら見える。上半身は裸・・・・髪で胸元は隠れている。よくみたら蜘蛛の足が見える、子蜘蛛がブラ替わりか。ご都合主義か。どーでもいいけど。アラクネルはしゃがんだ体勢で、目をつぶっている。寝ているのか?まさか、そんなはずはないだろ。余裕あるのか静かに怒っているのかどっちだ?わからん。


 アラクネルの右側に、女性が無表情で正座していた。周囲に人がいないから従業員だろう。生きているのか?これもわからん。・・・人質役は女性だったのか。女性従業員は初めて見た。今まで見たのはがたいのいい男性ばかりだったしな。だからボトムスさんは助けたかったのか?ただ・・・いや今はいいか。とりあえず、人質としての扱いはされていない。蜘蛛が取り付いているだけみたいだ。


 緊張感がピークに達する。アラクネルの目がとじたまま、無言で対峙する。そして、アラクネルの目が開かれそうしたところ、千歳、才華、コアがアラクネルに向かって走り出してた。アラクネルまで20メートルないか。というか出遅れた。千歳はこぶし大の炎を放つ。


「在人、ダッシュ。」


 こちらを見てないのに俺が走り出してないことに気づく才華。その声に促され俺も走り出す。はい。すいません。ただ、アラクネル、子蜘蛛ともに虚を突かれて、動き出しが遅い。というか子蜘蛛は動いてもいない。俺のおかげか?


 千歳が放った炎はアラクネルに向かっていく。先手を取られたアラクネルは慌てただしく炎を横っ飛びで回避。が炎は1発で終わりでなかった。次々と炎がアラクネルを襲う。アラクネルは脚を激しく動かし炎を回避し、さらに口から糸を吐き向かってきた炎を相殺した。このやりとりでアラクネルにダメージはない。だがアラクネルは後方まで下がったため、アラクネルと従業員が完全に離れた。これが千歳の狙いなのだろう。これで俺やコアは従業員に専念できる。千歳すごいわ。


「ナーイス。千歳。」


 その隣を走る才華は魔法で雷を放つ。その雷は一直線に従業員に向かっていた。?え?


「えーーーー!」


 コアが驚き声を上げる。がすでに遅い、雷は従業員に直撃し、従業員はそのまま倒れこむ。どうやら痺れで動けないみたいだ。!なーる。魔法でスタンガンか。才華はコアの声に対して冷静に回答。


「コア、今のうちに取りついた蜘蛛」


「もう倒した。」


 さっきの慌てようから一瞬で、従業員から離れた子蜘蛛を縦に切り裂いたコア。かっこいい。才華も一瞬目を丸めるが、すぐにアラクネルの方へ向き直る。千歳の援護に向かう。


「なら従業員よろしく。」


「任せて。」


「そっちも気付けて。」

 

 俺は従業員のもとに到着する。・・・・今気づいたが、でかい。あ、背が高い。正座していたため分からなかったが俺より背が高い。それに比例して山がある。


 背負い入口を見ると、入り口は子蜘蛛で塞がれていた。動き出してわずかな時間なのに。来る者は拒まず、去る者はいません。ですか。獲物を入ったら蓋をして逃がさない。先手こそ取られたが、この行動ができることは統率が執れている気がする。練習とかもしている?考えすぎか?とりあえず向こうにも知恵はある。


 子蜘蛛たちは入り口前で待機しこちらには向かってこない。他の子蜘蛛もだ。まー突っ込んでもやられる可能性が高いから隙を探っているのか?それとも入り口封鎖が任務なのか?分からんがいい予感はしない。とりあえず入口まで移動の辞めたほうがいいだろう。コアに目をやるとコアも無言で頷き、アラクネルたちの方を見る。俺と同じ考えだ。


 千歳は中段の構えでアラクネルと対峙している。その右後方に才華は位置し、2名を視界に入れ、魔法を放つつもりに見える。従業員は確保した以上撤退でも問題はない。倒すか撤退2人は現在どっちを考えているのか?


 


 いつ、どちらから動き出すのか?バトル漫画で出てくるシーンだ。・・・・・・・。このターンはアラクネルが口から溶解液を吐き出す一手から始まった。千歳は右斜め前に走り出し回避。千歳にいた場所に溶解液が当たり、白い煙が上がる。千歳はアラクネルの右側面に移動し、右後脚に近づく。


 が、千歳は後方へ急停止。アラクネルの右側面の上空から糸が飛んできた。千歳はスッテプで糸を回避。才華の近くまで戻ったところで攻撃は止む。あっっぶねぇ。千歳が糸に捕捉されていたら、一気に戦力比が傾くところだった。心臓がバクつく。回避の遅れたアラクネルを子蜘蛛が懸命に助けたのだろう。向こうとしても頭が倒れるのは避けたいか。


 一呼吸を入れたところで、千歳と才華が目を合わせ頷く。今度は才華が右側、千歳が左側からそれぞれ回り込む。挟み撃ちか。アラクネルは体を才華の方に向け、口から溶解液を吐き出す。才華は着弾点を見極めたのか。停止することでそれを回避。その間に千歳が左後脚に斬りかかる。斬れる。かともかくこれは当たる。


「下がって。チトセ。」


 コアが叫ぶ。今度は千歳に向かって、3方向から同時に糸が飛んでくる。千歳は後方は飛び、体をひねりながら回避。だが完全に回避できず、右腕と胸に糸が絡みつく。これにより千歳は右腕で胸を隠すような体勢になった。まずい。

 

 焦る俺とは対照的に、千歳は冷静に左手に刀を持ち、炎をまとわせて蜘蛛から伸びている糸を切る。そこへ更に糸が吐き出される。千歳は右腕と胸に糸がついたまま横っ飛びで回避。


この状況に対して、才華は上空を見上げ、炎の魔法を放とうとする。が、アラクネルが両手を前に突き出し、掌か網の様に放つ。才華は舌打ちをしながら、左後方へ回避。アラクネルはそのまま両手を才華の方へ振る。その動きに合わせ糸が薙ぎ払ってくる。才華はこれを炎で相殺しつつ避けるも、千歳からの距離が開く。さらにアラクネルは両手を振り回すので、才華も回避に専念している。


 この間も千歳には次々糸が迫っている。炎で糸を溶かす隙が見いだせないのか。そのまま飛ぶ、転がるなど、回避に専念している。ときおり、上空の蜘蛛を見て、魔法を放とうとしているが、そこへ他方向からの糸が来るので、回避したときには、蜘蛛は若干移動しており、狙いがつけられないようだ。仕方なく、ばらまかれた糸を炎で溶かしている。広範囲に放とうとしても、動きが止まるのでそれはできないのだろう。。唯一の救いはアラクネルが才華を捉えるの専念していることか。


 本当はコアも助けにいきたいのだろうが、入り口側の子蜘蛛の存在のせいで動けないでいる。コアはアラクネルの方へ動こうとすると、入り口の子蜘蛛がこちらへほんの少し、だが確実に近寄ってくるのだ。コアが離れたら、人1人を背負った俺じゃ子蜘蛛に対抗できん。従業員がいなくてもだけど。まずいな。今は耐えるしかないのか?才華ならアラクネルの攻撃から隙を見つけるはず。ここでも俺は人任せだが。


 と思っていたら、状況は悪化していく。アラクネルは両手の糸を振り回す、口から溶解液を出す等で、才華への攻撃に集中していた。千歳の方に目もくれていなかった。千歳が上空からの糸を避け、アラクネルの真後ろ付近へ移動したところで、アラクネルのお尻から糸が放たれた。投網かよ。このうえないタイミングだった。


「ちとせぇ!」


 俺が大声をあげてしまう。千歳も回避しようとするが、間に合わない。千歳の胴体部分が糸に覆われる。頭が出ているから呼吸はできるし、足も動けるが、上半身は左手が辛うじて見えうるくらいだ。刀を手放していないのはすごいと思うが。まずいまずいまずい。確かに蜘蛛は糸を尻から出すけどさ。蜘蛛女は手、尻、口から糸を出すってギルドで誰か言ってたな。今まで忘れてたし、ここまでその素振りを見せなかったしな。そんなことより、千歳がまずい。


「ちとせぇ。」


 才華は炎の魔法をアラクネルに向けて放つ。おそらく被弾も覚悟している。アラクネルは、両手を振り糸で炎を防ぎ、さらに口から溶解液を吐き出した。その溶解液は放射線の動きで出された今までとは違い、真っ直ぐ才華に向かっていた。面ではなく点での攻撃、速度は桁違い。そんな吐き出し方もできるのかよ。才華も意表を突かれたためか、溶解液が右ふくらはぎにかすった。


「つぅ。」


 才華の顔が痛みで歪んだ。声を出さないように堪えている。致命傷ではないのだろうが、負傷個所から煙が上がっている。なぎなたを杖替わりにして倒れるのを防ぐ才華。治療せば問題ないのだろうが、その時間を与えてはくれまい。千歳もさらに上空からの糸が



 

 アラクネルは左手を前に突き出す。糸で捕えるつもりか。このままじゃ、マジでまずい。やばい。


「コア。ここよ」


 俺と従業員より、今はあの2人だ。そう思って声を上げる。


「サイカッ。チトセッ。」


 コアが俺が言い終わる前にコアがナイフをアラクネルに投げつける。なんとか隙を作ってほしい。隙ができればあの2人ならなんらかのアクションを取る。


 キン!


 アラクネルはそのナイフを余裕をもって右腕で弾く。ナイフを見てもいないのに。はじかれたナイフは千歳の方に飛んで行った。


 キン!!


 ナイフがアラクネルの右脇腹に背中側から突き刺さる。血が噴き出す。アラクネルの動きが止まった。

弾かれたナイフを千歳が体を一回転させ、左手に持った刀でさらに弾き返したのだ。嘘だろ。


「がーーーーーーー。」


 叫び声を上げるアラクネル。


「お返し。」


 その隙を逃さず、才華は炎を乱射する。アラクネルの腕、腹部に当たる。さらに上空の子蜘蛛にも命中し、炎の当たった子蜘蛛が落下した。才華はアラクネルと距離を取り、しゃがみこんで負傷個所に手を触れ魔法での治療行為に当たる。


 千歳もアラクネルから距離を取り、目を閉じ呼吸を整える。


 ボワッ。


 千歳の一瞬、上半身が燃え上がる。糸を溶かしたのか。動けないよりましだが、火傷しそう。糸が溶け出し、その中から氷で覆われたメリハリのある体が出てきた。さらに氷も溶けていく。胸の部分は焦げ落ちた服の下からブラジャーが出で来る。どうやら服の下に氷を張って火傷を防いだみたい。はぁぁ、すごっ。見た目じゃない、その技術に。


「ありがとう。コアちゃん。」


 ほっと息を吐く千歳。千歳としても際どい状況だったのか。


「本当。助かったよ。」


 才華も立ち上がった。軽く飛び跳ね。痛みを確かめている。どうやら問題なさそうだ。一安心する。














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