死亡確認、現状確認
眩しぎるので目を開けていられない。すると急に体が重たくなった。なんだ?体の重さを実感すると同時に眩しさはなくなったが、焦点があわない。というより瞼が重い。瞼だけじゃない、体は怠いし力が入らん。どうなっている?先ほどとは違う部屋?とりあえずまた横わたっている。
「「・・・うぶ?」」
聞きなれた声。才華と千歳の声だ。焦点がじょじょにあってきた、右側に才華、左側に千歳。いつもの立ち位置。そして俺の頭も冴えてきた。確かに2人だ。いやそれとも、今度はこの2人そっくりな人か?それとも天使?神?あ、そっくりさんを利用したドッキリだって考えられる。・・・さすがにないか。
「あー、俺はどうなって?順に教えて。」
とりあえず状況確認。
「刺されて、倒れて、心臓止まってて。もう、もうダメかと、よかった。」
千歳は顔を覆い、泣いている。泣かせてごめん。
「つまり、死んでたのと。」
自分で言って背筋が寒くなる。まじでか。さっきまでの状況は夢なのか、脳内での勝手なイメージか。どっちだ?夢や妄想では済まないリアル感はあったのは事実だ。
「それを魔法とリュック内の医療キッドで手術したのよ。けっこう危なかったかも。感謝してよね。もー。」
才華も目に涙を浮かべながら微笑んでいる。あえて明るく振る舞っているんだろう。無理しなくていいのに。
「2人ともありがとう。」
現状を踏まえて素直に感謝。
「前に言ったでしょ。」
「?」
何だっけ?才華は涙をぬぐい、俺を見てニヤリ
「死亡確認してあげるって」
あ!実現するとは。
「したの?」
俺のあきれ半分顔に対して
「うん。ヒヒ」
ウィンクの才華。ですか。千歳も涙をぬぐい、ほほ笑んだ。
和んだ雰囲気の中
「あのー大丈夫?ザイト」
千歳の後ろから恐る恐るコアが顔を出す。俺を刺した無表情ではなく心配、いや申し訳なさそうな顔で。
コア本人は見た感じ無事そうだ。そこは一安心。心とは逆に体の方は刺された箇所がもどかしく感じる。ビビってますねー。正直だこの体。ま、無駄に心配させる必要はないか。
「あー。うん。」
安心させるため上半身を起こす。が。駄目だ、力が出ない。そんな俺を見て、千歳が俺の体を支えてくれる。
「ごめん。助かる。」
「無理しないで」
体を見ると、ほとんど傷跡はない。魔法のおかげか。ただ、血が足りない気がする。これは結構、体に深刻そうだ。
「あーなんといえばいいのか。そのー。私のテクニック故にその刺しまくって、私の意志ではないんだけど。」
目を合わせず、指をいじっているコア。罪悪感でいたたまれないのか。操られていたから、そこまで気にしなくてもいいと思うが。
「記憶や意識はあったの?」
そこらへんどうなんだろう。両手を見つめるコア。手が少し震えている。
「まーぼんやりと。刺した実感は残ってる。本当にごめんね。」
その手をグっと握り、そして意を決め、頭を下げる。
「そこは気にしない方向で。あーでも、あれでしょ。俺の見た映像だと、最後に胸を刺してたけど、こうして無事なのは、コアが心臓を避けてくれとかでしょ。」
じゃなきゃ、いくら魔法や医療技術を駆使しても生き返れるとは思えん。あんな状況でも抵抗するとかありそうだ。漫画ならあるし、この世界ならありそう。
「ううん。私のナイフは見事に心臓狙いだった、私はなにもできてない。」
あら、まじでかい。なんか、俺がかっこ悪い。じゃあなんで助かったんだ。
「そこは、私のおかげね。」
才華がVサインを出す。はて?なにを持ってだい?
「え、でも、なぎなたの柄で押し倒そうとしてたけど、あれは失敗してたでしょ。」
映像では、あと一歩で間に合わなかった。そしてサックリ胸にナイフが刺さってた。あれが止めの一撃だったんだろう。
「それで助かったのよ。」
と千歳。え、ナイフが胸に刺さった状況のどこが?
「私はもう間に合わないと思ったの。だから、ナイフが刺さっても臓器をかすめない位置に在人を押したの。」
不適に笑う才華。あの状況で、あの瞬間に?
「嘘でしょ。偶然でしょ。」
正直信じられない。そんなウルトラCテクを?漫画、アニメでしかなさそうな技を?だが、とも思う自分がいる。いや、でもいくらそれは。
「伊達に、長年在人を見たり、体にべたついたり、イチャついてるんじゃないのよ。もしコアと在人が逆の立場だったら、無理よ。」
そういいながら、才華は俺に抱き着いてくる。ですか。
「医学の勉強をしといたのもよかったわ。」
千歳も抱き着いてくる。それは本当に実感する。2人の体が温かい。生きている実感を感じる。
「あと、明石先輩や飛影の戦いを見てたおかげね。」
あーそれはそうかも。実践するかはともかく、臓器を避けて突く考えはそれらの作品のおかげで浮かんだんだろう。そこで実践するのが才華らしい。いや実践するしかない状況だったんだ。じゃなきゃ俺は死んでた。ん?心臓止まったから死んだのは変わりないか?おれは死んだのか死んでないのか?それはともかく。
「ま、どっちにしろ、コアは気になくていいよ。」
「ごめんね。それと助けてくれてありがとう。」
コアは再度頭を下げる。結局、俺は刺されただけで、なんもしてないけど。そこは黙っとこう。
「で現状は?ここはどこ?」
とりあえず、俺とコアは無事なのはわかったけど、他は?改めて周囲を見渡すと、土でできた部屋かな?
「場所はコアを助けた場所よ。」
「在人とコアを動かせないから、この場所に土でプレハブ小屋を作ったの。」
2人が説明する。ふむ。魔法って応用がきくなー。いいなー。
「時間は?」
「まず心臓は2分くらい止まってた。」
「今の場所にきてから30分くらいかしら」
30分は気絶と。さっきの空間にはもっといた気もする。
「俺の状態は?」
「持てるもの全活用で、傷は塞いだってとこね。完全に傷が繋がったと思わないほうがいいよ。」
「今、同じ負傷をしたら、次はどうなるかわかんない。あと血も足りてないと思う。」
ですか。無茶できんと。
「蜘蛛は?」
「このプレハブ小屋を囲っているよ。大型が来ない限り壊されはしないはず。」
「ここで倒した分はもう補充されたわね。」
砂漠のオアシスみたいなところか。一戦は避けられんと。
「コアはなんで森に。」
コアが恐る恐る説明しだす。いや、怒んないよ。
「えーと、昼前にシクと昼食を兼ねて買い物にでたんだよね。そしたら、西の森から大量蜘蛛発生の警報入ったから、私も行こうとしたの。でもシクが「怖い」とか「一人にしないで」って震えてたから、偶然あった団員に街で待機することを伝えたの。で帰宅してたら、今度はこの森に蜘蛛が巣を作ったて情報が入ったの。それを聞いたシクがザイトたちのこと迎えに行くって聞かなくって。そこで折衷案として私がポイントまで迎えに行くことにしたの。」
「なんでポイントに?」
「ポイント付近周辺の蜘蛛を退治するつもりだったのと、運がよければ私がいることに気付くかもって思って。」
ドアを開けた途端に蜘蛛に襲われないようにと、ポイントにコアが居るってカメラなりドアを開けるなりで知れば異変に気付くかもってことか。なーる。
「で道からまっすぐポイントに向かっていたら、途中でおっさんと蜘蛛数匹といたんだよね。状況から襲われていると思って助けに行ったの。」
「で、やられたのかい。」
それなら仕方ないか。そのおっさんは無事か?いや、冷静に考えたから無事じゃないよな。
「うーん。そうなるんだけど。ただ、最初にいた数は4匹で、それはすぐ倒したんだよ。でおっさんの無事を確かめるため、声をかけたところで、記憶がない。」
コアが腕を組んで首をひねる。自分でも納得していない顔だ。
「不意打ちでやられたのかしら?」
千歳が考えこむ。蜘蛛にそんあ知恵があるのか?いや野生とか本能をバカにしちゃいけないか。しやそれでもコアに攻撃できるか?それも気になるけど、
「2人はおっさんを感知できなかったの?」
2人が気づかなかった理由が俺にはわからない。
「あのときは、広範囲、遠距離だったのと、蜘蛛が多すぎて埋もれてたのか気づかなかった。コアみたいに知っているのなら気づいたかもしんないけど、全く知らない人までは今は無理。」
と才華。なーる。確かにあのときは相当の広範囲や遠距離だったしな。そこまで求めるのは酷か。
「あと魔法ランクEを感知するやり方はしてないから、それで気付かなかった可能性もあるわ。」
と千歳。なーる。俺みたいなタイプの可能性もあるか。今後はそれを含めた考えたほうがいいか。っとそれより、おっさんのことか。・・・・なんか文章気持ちワルいと思うのは仕方ないよな。生存は絶望的だろうけど。万が一もありえる。確認したほうがいいよな。俺でさえ万が一の確率で助かっているんだから。ん?
「コアを救出したとき、おっさんは見た?」
あのときはどうなんだ?近くにいたのかな?俺はまっすぐコアしか見ていなかった。というか、他に注意する余裕なんて俺にはない。視覚的にも魔力的にも。2人はどうだ?
「見える範囲ではいなかったわ。」
おそらく一番周囲を見ていた千歳。察してくれる。
「この場所についてから今まで、人の感知に気を使ってなかったから、魔力のほうでもわかんない。在人が倒れてからはそれどころじゃなかったし。」
と才華。そうか近くにはいなかったのか。なら別動隊によって運ばれていたってところか。
「今は?」
才華、千歳が目をつぶり、魔力感知を実施する。今回は魔力Eランクを感知する方法なのだろう。見た目じゃわからんが、漫画ならきっと違うエフェクトで表現されてるのかな。あといつから使えるようになったんだか。さてどうだ?
「あ、これかな。森の最奥にいるね、ここからなら2キロくらい。」
と才華。お、運のいいおっさんだ。近いなら助けにいく流れだよな。正直俺の体はきついが、そんなことは言ってられない。
「数人いるわね。密集しすぎて正確な人数は分からないけど。」
と千歳。うげ、面倒そうだ。1人くらいならなんとかなりそうだが、10人近くなると、考えを改めないといかんよな。さてどうしよう。
「コアも森の奥に向かってたけど、なんか理由あるのかな?森の奥の状況は?」
正直、聞きたくない。悪い情報しかなさそうだから。
「一番蜘蛛の密度が高いわね」
と千歳。ですか。数百とかかな?想像するのも嫌だな。
「そこから、森全体に移動しているみたい。」
と才華。蜘蛛の出現ポイントということね。
「ってことは」
「アラクネルがいると思うわ。」
と千歳。だよね。だれだってそうー思う、俺だってそう思う。
「最重要拠点、本拠地、発進基地。ってわけよ。」
と才華。ですよねー。うーん。
「確認だけど、傭兵団で森奥は調べたの?」
「森奥に行く前に西の森の件があったから調べてない。」
アラクネルは結局どこにいたんだ?ま、考えても分からんだろうからそれは置いとく。
「どうする?戦力は3人。だけど、俺は正直体が重い、人一人背負える自信もない。いや頑張るけどね。」
「操られてなんだけど。ほっとくわけには団員としても、個人としても出来ないよ。」
普段の軽い雰囲気とは違い、今は決意ある表情のコア。
「蜘蛛の巣のままで帰れなくなるのは困るわね。それに怯えているシクは見たくないわ。」
千歳が困った顔をする。その目線はなにかを訴えている。
「シクの分、コアの分、在人の分の借りを返すにはちょうどいいね。いい加減振り回されるのも嫌だし。」
不敵に笑う才華。わかっているよね?無言で言われている。はいはい。方針はりょーかい。




