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異世界ものは終わりバトルものへ。

 装置の部屋からとなりの部屋へ移動する。するともう一つの入口の前に良子さんがいることに気付く。

 俺たちが部屋中心に移動したところで、


「皆さんどちらへ?」


 冷淡なしゃべりかた。明らかに雰囲気がよくない。が才華は気づいていないのか。


「異世界行く準備で家にほう行く。準備手伝って、良子。あっ真にもお願い。」


「異世界ですか・・・。」


「ん?どしたの、良子?」


 良子さん、今度は俺のほうを見る。


「在人君なら止めてくれると思ったんだけど。」


 あー。これはひと悶着の予感。


「・・・行かない方がよいのですか?」


「当たり前です。写真も見ました。そんな危険な場所へ行くのを止めないとでも?」


「ですよね。」


 先ほど決めた覚悟は霧になって消えた。良子さんは力のこもった目で才華を見つめている。


「才華様。結論から言います。異世界に行くのは辞めてもらいます。」


 才華もさっきの明るさはどこへやら、冷静な顔つきになっている。


「・・・誰の指示?」


「私の考えです。」


「へー。私が止まるとでも?、ここからトンボ返りして、今すぐ行くこともできるのに?」


「というと思いましたので、真。」


 装置側の部屋のドアが閉まる音、振り向くとドアの前に真が立っていた。嘘。全然気づかなかった。


 才華の機嫌がどんどん悪くなっている。千歳も静かだが、冷たい気配を出し、良子さんから目をそらさない。


「・・・メイドの領分超えてない?」


「主人が常識ない行動をしたら、殴って止めろと、祖父母に教わっているので。」


「あっそ。」


 才華と良子さんはお互い目をそらさず、淡々としたやり取り。でもバチバチと火花が見えるし、空気も重苦しい。


「在人君。確認するけど、異世界に行くつもり?」


 良子さんの目が怖い。昔、俺達が3人でバカやったら、怒るのは良子さんの役だった。そのときと同じ目つき。静かだが怒りを内側に押し込んでいる感じだ。ただ、そこにいるだけなのに俺は動けなかった。


「あ・・その・・えっと・・・・。」


 ビビッてしゃべれない。その様子を見て、良子さんは千歳を見る。


「千歳さんはどうするつもりです。」


「良子さんの言いたいことはわかります。ですがごめんなさい。私も異世界に行ってみたいので。あと、ここで辞めたら、才華の10年は全部無駄になると私は考えます。そんなことを私はできませんし、させません。」


 俺とは正反対の堂々とした敵対宣言をする千歳。良子さんは軽い溜息をして、


「どうしても行くというのなら、実力行使という形になりますが。」


 才華も怒りが顔に出ている。


「やれば?できればだけど。」


「安心してください。怪我はさせませんので。」


「私たち二人相手に?二人とも、じっちゃん、ばっちゃんの指導うけてるんだけど。」


 そう二人ともアパート管理人の空はつばーさん。その夫で故人の譲二じーさんに身を守るすべを教わっていた。週1、2回程度だったがなぎなたや剣道、空手、柔道、護身術などなど。二人はそこらの一般人より充分強いレベルだ。俺も教わったけど才能がなく二人には徹底的に劣る。才能のなさはじーさん、ばーさんからのお墨付きだ。

 学生時代にお嬢様、優等生というイメージで周囲から見られていたが、それをぶっとばす過激さが二人にはあった。そのため、才華は『オメガ暴走機』、千歳は『眠れる神龍』とまで呼ばれていた。


「私も祖父母から教わっています。あと2対2になります。」


 良子さんはボクサーのように構える。


「申し訳ありませんが。才華様。千歳さん。」


 ドア前の真も中断構えをとる。


 先ほど、気配がなかったところからも強いんだろうな。良子さんは言わずもなが。たしか学生時代『鬼神』と呼ばれてたって沙緒里さんに聞いたことがある。

 それでも才華にあせりは見えなかった。


「急造タッグチームで、私たち2000万パワーズに勝てるとでも?」


「正確にいうと、私が1対1を2回くり返すだけです。真には私が千歳さんを制圧するまで、才華様を抑えてもらうだけです。その後、私が才華様を抑えて終わりです。」


 この発言に、千歳が冷徹さを込めて反論する。


「・・・制圧ですか。甘くみてません?」


 千歳は特段構えないが、まっすぐ良子さんを見据える。引く気配がないことから戦闘態勢のようだ。


「私を抑えるだけ?へー。じゃあ私たちはプリム狩りで頭をすっきりさせてあげる。」


 才華は真をギラリと睨みながら右手を白衣のポケットに入れ、前かがみになる。あのポケットにはいろんなものが入っていおり、このような状況においてそれらを使うことに才華は抵抗がない。


 一触即発、俺は4人の中心にいる。前門の鬼神、後門のオメガ、神龍。その奥に未知の強豪。俺に逃げ場はない。始まったら止められない。というか、誰一人俺を目にいれてないし、気にも留めていない。唯一の男なのに。まじで情けねぇ。


「真、白衣からなにが出てくるか私にも分からないので油断しないこと。」


「はい。」


 あー始まる、始まる。俺は狼狽え、四人の顔を見渡す。


「「在人は下がってて。」」


 才華、千歳は叫ぶ。


「あっはい。」


 俺は壁際へ移動する。 


 ほんの少し前まで、異世界ものだったのに、今バトルものだよね。いや、異世界ものにもバトルシーンはあるけど、異世界に行く前に本格バトルシーンはないよね。・・・駄目だ駄目だ、現実逃避してる場合じゃない。

 4人の空気がピリピリしている。まずい、まずい。怪我はさせないって良子さん言ってたけど、良子さんは打撃ストライカータイプって聞いたことあるし、ここパソコンやら、機材やらいろいろあるんだから、絶対に怪我人は出るでしょ。そして結果的に一番怪我するのは絶対に俺。俺は部屋を見渡す。・・・あっ、あれだ。あるものが目に入った。


 葉一枚が地面に落ちたら、決闘開始の合図。そんな空気。こういうとき才華は自ら開始の合図を出す。


「それじゃあ。始めますk・・。」


 言い終わる前に、俺は


「ストップ、ストップ。やめやめー。」


 叫びながら、4人の中へ飛び出す。俺の手には先ほど才華がお湯を入れていた水鉄砲。闇雲にぬるくなったお湯を4人にぶっかける。苦情なんて知るか。


 機先を取られた4人、「きゃっ。」「あっ。」なんてかわらしい声を出しながらあっけにとられている。


「はい、落ち着こう。落ち着こう。元凶の俺を無視して話を進めるのは酷いよ。」


 俺は空になった水鉄砲を床に投げ捨てる。まず。俺は笑顔で才華と千歳の方を向き


「まず、2人はテンション下げてね。あとは俺が進めるから。」


「「・・・うん。」」


 俺の切実さを感じとってくれたのか、2人は素直に頷き椅子に座る。素直でよろしい。次に真


「真ちゃん。悪いんだけど、みんなの分のタオルと掃除道具持ってきてくれる。ちゃんと自分の体も拭いてね。」


 真は良子さんの方を見る。良子さんも頷く。


「わかりました。お待ちください。」


 駆け足で部屋を出ていく。仕事増やして、ごめんね。トリは良子さん。


「えーと。クールダウンできました?とりあえず、2人で話し合いをお願いしたいんですが。」


 良子さんは少し逡巡して頷く。


「そうね。装置の方に行きますか。」


 良子さんのまとっていた雰囲気が柔らかくなる。ふー。あっ服透けて、ブラの色が。髪も濡れて色っぽい。


「2人は真を待っててください。あと申し訳ありませんが、真が着いたら奥の部屋に入れてください。」


 良子さんは2人に指示し、俺と一緒に装置の部屋へ。

 なんとかゴングはならずに済んだことに俺は安堵した。



「えーっと、まず何から言えばいいか。」


「待って。先に礼を言うわ。在人君が止めてくれなかったら、どうなってたか正直わからないわ。止めてくれて、ありがとう。」


 2人だけなので、軽い口調ながら良子さんが頭を下げる。珍しい。


「頭あげて下さい。さっきも言ったけど、今回の元凶は俺なんで。」


 良子さんは切り替える


「で話というのは?」


「まず結論。あの2人はもう止まりませんよ。絶対に。俺でも止められないです。」


「そうね。あの雰囲気は。」


 おでこに手を当て、困った顔の良子さん。


「なので、・・・・。」






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