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火だ。氷だ。風!

 暴風、豪音とともにコアの元へついた。蜘蛛も動揺しているのか、動きがとまったり、逃げ出したりと襲ってくる雰囲気がない。チャンスだ。思ったより作戦がうまくいった。ラッキー。


 才華の策が上手くいった。


 才華はコアのところまで一直線で炎を放つ。ただ炎を放つのではない。高温高密度の火球となった炎を。これで、木も地面も蜘蛛も消失させる。誰が見ても自然破壊。だがこれでコアのもとまで直線に進める。上から見ても横からみても真っ直ぐに。


 才華の炎のあと、数秒遅れで千歳が焼失した場所へ氷のトンネルを作る。超速突貫工事だ。そしてその中を才華が魔法の氷と森にある樹木を削って作ったソリで移動。これで蜘蛛を近寄せず、戦闘回避。


 ソリは風の魔法の応用で移動 千歳が高速前進を担当。才華は風で前方の風圧やソリの態勢を調整しつつ、氷の魔法でソリの強度を保つ。さりげなく才華は2種類の魔法を同時使用できることが判明。まじかい。


 トンネルを抜けコアのもとについたら、千歳が浮遊の魔法でブレーキをかける。それと同時に才華が風の魔法で周囲をぶっ飛ばす。そこから千歳は蜘蛛退治、才華は俺のサポート。俺はただコアをの元へ真っすぐ行き、抱えるなりして救出。救出後はそのまま、トンネルを逆走。その際、出口は才華がふさぐ。あとは道路まで最短距離を行く。


 ポイントからコアのいるところまで、10キロくらいだと千歳が言っていた。歩いてもしんどい距離なのだが、


「この距離で魔法のコントロールとか体力持つの?、言っとくけど、2人とも無理はしないでいいし。できる範囲でいいからね。コアの近くまで行ければいいんだから。」


「問題ないよ。」


「できるわ。」


 2人が俺に体を寄せる。胸が当たるし顔も近い。あら、怒った?


「ムキになってない?」


「なってない。ただ在人と同じで多少の無理はするだけ。」


 千歳。それを言われると俺も黙るしかない。


「コアを助けたい。ただそれだけ。」


 才華。そうかい。


「なら。やろうかい。」


 2人の決意が固い以上、俺も腹を括るしかない。



 かくして、ぶっつけ本番で作戦実行。ポイントにてコアのいる方向へ才華、千歳が並び立つ。そして両手を前面に伸ばす。


「準備いい。千歳。」


「いいわよ。才華。」


 2人は不敵な笑み。2人が組んだときにでるこの笑い顔。この笑みが出たとき、2人なら出来ると自信いや確信がある証拠。互いの実力を知って信頼している2人。ある意味タッグを組むために生まれた2人。2000万パワーズ。この2人は頼りになる。・・・・俺がいるという事実を忘れないでほしい。いや足手まといなのは否定しないけどさ。そこはね。


 才華の前に火球ができ、どんどん大きくなる。大きさに比例して、空気が熱くなる。熱気が増す。もう俺の背丈を超えている。だがまだまだ大きくなる。少なくとも森にある樹木を超える大きさにするのだろう。熱くないのかと思い、2人を見るも、2人は平然としている。なんらかの理由があるんだろう。魔力か、魔力のおかげなのか。


 そんなことを思っていると火球はもう樹木の大きさを超えた。前面の樹木は次々消失していった。焦げた匂いもする。森の中で目立ったことをしているが、今のところ、蜘蛛が現れない。熱気で近づけないのか、魔力量の多さにビビったのか。


「いくよー。燃え尽きろー。」


 才華が両手を上にあげ、振り下ろす。超火球が高速で前方にぶっ飛んでいく。轟音とともに焦げた匂いがが充満する。火急の範囲外の樹木もところどころ煙が上がり、地面も抉れている。4,5秒後


「千歳いいよ。」


 才華の合図に合わせて、千歳が地面を触れ魔法発動。抉れた地面が氷付く。だがそこで終わりではない。えぐれた地面の両端に氷山ができ、そのまま円となり、トンネルとなる。トンネルは火球を追いかけて伸びていく。さっきまでの熱気はどこへやら。さむ。すっきりした風景が氷のトンネルにより、やや薄暗くなる。


「ここぉー。」


 才華は右手を上に振り上げる。トンネルのため見えないが、恐らくコアの近くまで火球が行ったため火球を上方へ飛ばし消したのだろう。この間も千歳はしゃがんだまま、トンネル造りを継続。だが直ぐに


「できたわ。」


 千歳が立ち上がる。早い。


「こっちもオッケー。乗り込んで。」


 才華が氷のソリを作り上げる。俺が氷のトンネル工事に目がいってる間に、才華は完成させていた。余計な飾りのないシンプルなソリを。そのソリに3人乗り込む。冷たいが頑丈そう。


「すぐ行けるかい?一呼吸とる?」


 大量の魔力を使っているはずだ。2人には少し汗が滲んでいるし、やや呼吸が荒い気がする。呼吸を整えるくらいしても問題ないと思うが。


「「大丈夫。」」


 2人はウィンクで答える。


「りょーかい。街まで着いたら肩かすし、帰宅したら飯も用意するから、頑張って。」


 応援で2人に気力が戻った気がする。俺の今できることはこれくらい。


「在人は私の体を支えて。」


 千歳がしゃがみ、後ろを向き両手を伸ばす。俺は言われたとおり、しゃがんだ状態で、千歳を抱き込む。


「これでいい?」


「ええ。いくわ。」


 千歳が風の魔法を発動、予定どおりソリが高速で前進する。Gがすごい。千歳を支える腕に力が入る。才華が背中にもたれかかっている。才華の圧がどんどん増している。それだけ加速しているのだろう。


「はは、楽しいー。」


 絶叫マシーン大好き才華。スカイダイビング大好き才華。この手のものはお得意。むしろテンションアップ状態。スピードはすごいが、ソリに揺れがないのは才華のおかげだろう。


「あとどれくらい。もつ?大丈夫?」


 2人に挟まれ、後ろを見ているから距離感がわからん。フル出力の千歳は疲れてないのか心配だった。


「5キロ切ったわ。大丈夫。」


 千歳が冷静に答える。早い。早すぎる。これ時速何キロ?秒速何キロ?


「浮遊の魔法でも急ブレーキは体にきついから、減速調整頼むよ。」


「えー。」


 顔は見えんが口を尖らせているに違いない才華。


「才華。」


 千歳がピシャリ一言。


「はいはい。大丈夫だよ。在人、1キロ切ったよ。もう着くよ。」


 才華の声が真剣味が戻る。


「500ね。在人100で腕離して。」


 千歳の風が弱まり、スピードが落ちていくのがわかる。


「100。2人とも向き変えて。」


 千歳は魔法を止めたので俺も腕を離し、体の向きを変える。あとは慣性で進めるのだろう。微調整は才華が風の魔法で継続する。


「30ね。」


 才華の両手に小さな竜巻が出来上がる。それもだんだん大きくなっている。千歳の浮遊の魔法でブレーキをかける。


「0。」


 千歳のカウントゼロとともに、ソリはトンネルを抜け出し10メートル進まないくらいでソリは止まる。


「吹き飛べ、ダブルサイクロン。」


 コアのいる場所を一瞬で視認した才華が竜巻を2方向へ放つ。蜘蛛が吹き飛ばされていく。なかにはバラバラになっていく蜘蛛もいる。


「いきましょう。コアお願いね。」


 千歳が間髪入れず、走り出し、目の前の蜘蛛を切り捨てていく。直前まで魔法を使っていたが疲れは見えない。俺も千歳が作る道を走り出す。この先にコアがいることは千歳が走り出した段階で見つけることができた。距離は10メートルくらいか。トンネルからコアまで20メートルの距離。あの遠距離からの魔法操作でこれなら十分すぎる結果だろう。あとは速力だ。才華は俺の後方に位置し追いかけてくる。



 千歳、才華が次々と大小様々な蜘蛛を蹴散らせていく。コアまであと5メートル。コアは気絶をしているのか仰向けで倒れ、やや大型の蜘蛛の背に乗せられている。どうやら餌として、アラクネルの元へ運ばれていたのだろう。危なかったな。マジモンで。


 

 前方には20ほどの蜘蛛がおり、コア周囲の蜘蛛は6匹。ただ、周囲から蜘蛛が集まりつつある。


「退路は私が。」


 千歳が振り返り、後方へ走り出す。


「任せるよ。」


 才華は俺を追い越し、一瞬で3匹切り倒す。続けざま、コアを背負っていた蜘蛛の頭部を凍り付かし、けり砕く。どうやら才華の足経由で凍らせたみたいだ。これにより、蜘蛛は倒れ、コアも地面に落とされた。


「コアを背負ったらまっすぐ走って。」


 才華は残る3匹も切り倒し、前方の蜘蛛を相手取る。


 


 俺もコアのもとへ着。外見に汚れや服の破れはあるけど、目立つ負傷はない。気絶しているみたいだ。正直安堵する。とりあえず、周囲を確認しコアを背負う。俺は周囲を見まわす。才華のおかげで蜘蛛は近づいては


 ブスリ


 何かが刺さる音がした。?え、なんだと思った途端、右腹部が熱くなり、全身から力が抜ける。え?俺は前かがみになる。


 グサ。グサッ。


 今度は右肩、左腕付近から熱さを感じる。なん


「がはっつ、え。」


 吐血しても、俺はまだ理解しきってなかった。自分の異常に。目の前の異常に。感じていたのは背筋は寒いが、ところどころ熱いということ。汗がにじみ、呼吸が荒いこと。赤いなにかがところどころに出ていること。


 ガサ


 今、右太ももにナイフが刺さった。あ、ナイフが抜かれた。ナイフもそのナイフを持つ手も見たことがある。そう思ったとき、俺は膝を地面につける。ここで鈍い俺は理解する。俺がナイフを刺されたことに。右腹部に、右肩に、左腕に、右太ももに。そこから血が流れていることに。目の前に人物に。見慣れた人物に。


 コアに。


 コアはいつのまにか立っていた。右手に血の滴るナイフをもち、俺を見下ろしている。無表情、無慈悲なコアが。こんなキャラじゃない。今朝の感情豊かさはどうした。


「コア?」


 俺はかすれた声を出す。俺に助られるのそんなに嫌だった。・・・わけではないよな。


 コアはなにも答えず、ナイフを横に振る、今度は首筋から血があふれた。あ、コアの目、なんかおかしい。あーそうか、あれか蜘蛛に操れているってやつか。その能力を忘れてたわけじゃないけど、倒れていたら、そんなこと思うわけないじゃん。蜘蛛にそんな知恵があるのかよ。しくった。瞼が重くなり、閉じていく。そんな状態でもコアの首筋に蜘蛛の足みたいのが見えた。そして目の前は真っ暗に。







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