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私です。

『ククル』を出て、千歳と帰宅する。既にシクは風呂上がり状態で、才華は明日の準備をしていた。限界だったシクの就寝を見て、才華と千歳はお風呂へ。その間、俺はベットを整え、明日の準備。2人と入れ違いで、俺が風呂に入る。


 風呂を上がり、戸締りを確認して、自室の扉前へ。もう2人は部屋で俺を待っている。それなりに時間経ったんだ、平常運航に戻っているはずだ。・・・はず。・・たぶん。まさか、混乱やっぱり無理って自室で寝てないよな。いや、それはそれで別にいいけど。あ、でも、やっぱ嫌だな。うーん。どうなっていることやら。今更、俺も恥ずかしくなってるのか?2人のことを笑えんな。


 室内に入ると、黒色の猫耳フードパジャマの才華と水色のネグリジェの千歳がベットで座っていた。緊張した顔付きに思える。


「・・・・。」


「・・・・。」


 俺が入ってきても無言。記憶にはない2人の様子に俺も戸惑う。いつもの2人はどこさいったの?


「やめる?」


 このまま寝ても、寝れないんじゃないのかと思って聞いてみる。


「・・・・。」


「・・・・。」


 2人は無言で首を横にブンブン振り、髪がなびく。なにか言ってくれ。調子が狂うので俺は椅子に座り、もう少し話すことにする。会話で2人の緊張が解ければと思ったからだ。うまく元に戻ればいいんだけど。2人にそれぞれ、目を合わせると、2人は顔を俯かす。えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、なにそれ。初心な女子じゃあないでしょ2人。恥じらいの少ない2人はどこいった?透き通った瞳じゃあなく濁り切った瞳。純粋無垢じゃあなくてどんよく。青い春の青春じゃあな蠢く錆の錆蠢。それが2人だろ。本当に大丈夫かよ。


「寝れる?」


「・・・・・。」


「・・・・・。」


 コクンと頷く2人。


「らしくないんだけど。とりあえず、顔をあげてよ。声をだしてよ。」


「・・・・そんなこと言われても。」


 明るさのない才華の声。らしくない。


「だって、在人が。」


 穏やかさのない千歳の声。らしくない


「もう一度説明するけど、今日のはあれだよ、恋だ、愛とかじゃなくて、いや、そういうのが全くないってわけではないんだけど。一段落とか、一区切りのためだよ。あと子供のときみたく一緒に寝るだけだよ。だから大げさに考える必要にない。」


 えーい、そんなに説明得意じゃないんだから。


「・・・・・。」


「・・・・・。」


 2人は無言だ。なんでこうなるんだ。下手なことはしない方がいいのか。2人に振り回されてる方がお似合いなのか。こんなときなのに落ち着け。


「3年前譲二じいさん、亡くなった時さ、2人とも俺に寄り添って落ち着くまで泣いてたでしょ。それを今回もするよってこと。譲二じいさんとあの2人組じゃあ、色々違うけどさ。それでも千歳、才華は思うところがあったんだろう。それに対して一区切りつけてくれってこと。なんで一緒の寝るのかは、時間の関係で寝るタイミングなだけ。どう、通じた?」


「「うん。」」


 2人が頷く。意図は通じたみたい。



 

 と、ここまで説明して、懸念が浮かぶ。実際は嫌なのか。俺からの誘いはありえないとか。2人は俺を好きだ、愛しているとか言って、俺の右往左往する姿を楽しむのが好きなだけだとか。そうだとしたら、俺はただのピエロか?自意識過剰なだけか?イタイ奴か?泣きたくなってきた。どうなんだ?2人を見てると分かんなくなってきた。どっちにしろ俺は嫌な思いをさせたくはないんだが。ええい、思い切って確認するか。


「本当は俺とじゃ無理?・・・嫌なら無理しなくていいから。俺から言ってなんだけどさ。」


 思い切ってとは思ったが、実際は恐る恐る尋ねる。小心者なところが全開だ。


「「そんなことない。」」


 2人が顔を上げる。表情から嫌ではないことは確認でき、一安心した。心底安心した。


「なら、なんでそんなしおらしい雰囲気なんだよ。てっきり舞い上がって、騒がしくなって、一緒に寝る必要ないってな状況になると思ったのに。」


「ターロホさんのところへ行くときも言ったけど、在人からの提案だったから。驚いて、夢見たくて。でもそのことに気づいたら、どうしてればいいのか、分かんなくて。」


 千歳が細々と言う。顔が赤い。どうしていいか?いつもどおりでいいのだが。


「在人の思いが実感できた気がして。それがすごく嬉しいんだけど。そう思ったら今までにないくらいすごく恥ずかしくて。」


 才華も細々と言う。顔が赤い。


「そう言われると、俺が恥ずかしいんだけど。ただ。」


「「ただ?」」


「いつもどおりになってくれた方が俺も楽なんだけど。変に考えなくても、気負う必要ないよ。まー無理ならいいよ。」


 俺は思ったままのことを言う。ひねりもない、意味深でもない。思ったことを。


「「いつもどおり?」」


 2人は首をひねって考えている。次の瞬間、千歳はショートし、才華はフリーズした。普段が思い出せないようだった。駄目だこりゃ。


「「私ってなに?」」


 えー、そこまで混乱するかい?




 方法を変えるか。俺はそう考える。とりあえず簡単なことから思いだしてもらおう。


「・・・・俺の幼馴染は誰ですか?」


 基礎から2人に質問する。


「・・・・・?」


「・・・・・?」


 2人は意味が分かってないみたいだ。


「はい、聞いて、難しく考えないで。もう一度聞くよ。俺の幼馴染はだれですか?」


「「私です。」」


 2人がキョトンとしたまま、答える。はい、正解。


「いつも、俺のとなりにいるのは誰ですか?」


「「私です。」」


 いつの間にか右に才華、左に千歳が基本になっていた。


「窮地の俺を助けてくれるのは誰ですか?」


「「私です。」」


 一旦は助かるけど、より一層の面倒事を生むこともあるが。


「夢とハツばあさん以外で俺の家の合鍵を持ってるのは誰ですか?」


「「私です。」」


 これは押しに押してきて手に入れたもんな。この4問でショート及びフリーズからは少し回復したみたいだ。



 

 ここから、2人らしい質問にレベル上げ


「いつも、俺の彼女と言っているのは誰ですか?」


「わ、私です。」


 顔を赤くし才華が答える。言いなれたフレーズではないのかい?


「いつも、俺の恋人と言っているのは誰ですか?」


「わ、私です。」


 顔を赤くし千歳が答える。決定事項とか言ってなかったけ?


 彼女と恋人、固定している立場その1。言葉の違いに意味はあるのか?・・・ガールフレンド、ハニーを称する女性が出来たりしてもいいんだろうか?


「在人のガールフレンド、ハニーって言う女性が出来たりしてもいいかなって顔しているよ。」


 顔の赤みが消え、冷ややかな目を向ける才華。


「そうね。」


 同じく冷ややかな目を向ける千歳。こんな状況なのに俺の表情を読む力は健在かよ。


「っ。はい、次。いつも、俺の婚約者と言ってるのは誰ですか?」


 スルーして質問に移行。


「私です。」


 顔が再び赤くなる才華。


「いつも、俺の許嫁と言っているのは誰ですか?」


「私です。」


 同じく顔が赤くなる千歳。

 

 婚約者と許嫁。固定している立場その2。違いはあるのだろうか?・・・フィアンセを称する女性ができても差し支えないのだろうか。


「フィアンセを称する女性ができても差し支えないのかなって顔をしているわ。」


 冷ややかな目の千歳。


「だね。」


 同意する目が冷ややかな才華。思考を読むなって。これも、スルースルー。


「・・・。将来は俺の嫁と言ってるのは誰ですか?」


「私です。」


 今まで一番顔を赤くし、才華が答える。


「いつも、将来は俺の妻と言っているのは誰ですか?」


「私です。」


 今まで一番顔を赤くし、千歳が答える。


 嫁と妻、固定している立場その3。言葉の違いに意味はあるのか?・・・正室、家内、ワイフ、奥さんを称する女性ができてもいいんだろうか?


「「正室、家内、ワイフ、奥さんをを称する女性ができたりしないかなって顔。」」


 千歳と才華の目が心なしか冷たい。だから心を読むな。


「・・・・・・・・。」


 異世界だからワンチャン願ってもいいだろ。少しくらい考えたりしてもいいだろ。


「・・・出来ないから。私以外には。」


「・・・ありえないわ。私以外には。」


 無言の俺に、今度は同情の目を向ける2人。ここは辛辣な意見ができるくらい平常に戻ったと考えよう。それはいいことだ。うん。


 ・・・言われなくても分かっているさ。ちくしょー。ですよね。できるなら、もういてもいいよね。異世界ものなら、既に1人や2人くらいできててもいいよな。あれだ。作者が悪いんだ。きっと。作者出てこい。書き直せ、作り直せ、取り直せ。修正が生じた、タイムベントだ。ザ・ワールド・オーバーヘブンだ。




 あー落ち着け、今はそうじゃない。


「ふー。それはいいから、次。いきなり、口の中を舌で治療したのは誰ですか?」


「私です。」


 俺の邪な考えを見たせいか、顔を赤めることなく千歳が答える。才華は横目で千歳を見る。まだ、ファーストキスを取られた件が悔しいのだろうか?


「俺の要求で口の中を舌で治療したのは誰ですか?」


「私です。」


 こちらも、顔を赤めることなく才華が答える。千歳が驚き顔で才華を見る。千歳の様子からどうやら知らなかったみたいだ。まぁ言うことでもないか。


「この世界に来た当初、魔法を使って、俺の布団に無断で入ってきたのは誰?」


「「私です。」」


 2人がキリッと答える。


「宿屋で朝起きたら、俺の前で、パンツ1枚でいたのは誰ですか?」


「「私です。」」


 2人力強く答える。徐々に鋼鉄の精神が戻ってきたみたいだ。



 今度は方針を変えてみよう。


「高校1年の時、ホワイトデーのお返しが1個しかないと勘違いして、騒動の原因になった誰ですか?」


 互いに自分の分だと言い合い、結局その1個を駄目にし、学校も半日さぼった騒動。『ホワイトデーは振り返らない』


「千歳です。」


「才華です。」


 互いに指さす2人。お互いに「え?」って顔をしながら顔を一瞬見合わす。


「自分のせいではないと?」


「才華の分を自宅に忘れた在人も悪いわ。」


 口を尖らせる千歳。えー。確かに忘れたのは俺だけど。


「そうそう。ただ忘れたのは千歳の分だけど。」


 俺が忘れたことには同意する才華。誰の分かで互いに一瞬、目を合わせる。


「高校卒業時、第2ボタンを頂戴じゃなく寄越せと言ってきて、騒動の原因になったのは誰だ?」


 結局、全てのボタンが取れ、どれが第2ボタンか分からなくなり、終いに川底へ消え去った騒動。あのとき、2人の目から血の涙が流れてたのは、錯覚だったのだろうか。通称『制服ボタンは旅立つ』


「千歳です。」


「才華です。」


 互いに指指す2人。「は?」て顔で一瞬顔を見合わす2人。


「自分のせいではないと?」


「私にあげるって言うのが遅い、在人のせいでもあるよ。」


 口を尖らせる才華。・・・俺がしゃべる前には争ってただろ。キャットファイトなんて可愛らしいもんでもない争いを。熱闘、激闘、死闘を。


「そうね。ただ、私にあげるだけど。」


 俺の発言の遅さに千歳が同意する。そして、また顔を見合わす2人。ほぼいつもの2人に近づいてはいるが、この手の質問はやめよう。


「・・・いつも、俺を誘惑してきてるのは誰です?」


「千歳?」


「才華?」


 互いを指差す2人。ただ、今までと違って疑問形。うん?どうした?


「自分はしてないと?」


「私の中では誘惑のレベルに至ってないよ。」


「私もちょっとしたいたずら程度だわ。」


 心外という顔の2人。「ねー。」って顔で見合わす2人。あれはそういうレベルなのかい。もっと過激になるんかい。


 

 もう十分だな。最後におまけで。


「彼女、恋人および嫁、妻について、俺は全力で否定したことあった?」


「「ない。」」


 2人は笑顔で即答する。はい、そのとおり。スルーするときはあるけど、全力否定したことはないよ。


「俺が2人のことを嫌いって言ったことある?」


「「ない。」」


 2人は首を横に振る。


「だったら、今後、俺から誘うこともあるよ。多少舞い上がるのはいいけど、今日ほどしおらしくなったり、気負う必要ないから。」


「うん。」


「そうする。」


 2人がうなずく。よしよし。


「ま、今日はそろそろ寝たいんだけど、2人からはなにかある?」


「体寄せて、腕組んで寝ていいでしょ?」


 才華が手を挙げる。うんうん。才華らしいね。そして、その状況をイメージする。まぁ俺にデメリットはない。


「いいよ。ただ、変なとこ触られたとは言わないでくれよ。」


「うん。」


 才華が満面の笑み頷く。


「足が絡まったり、胸が当たっても大丈夫?」


 千歳が手を挙げる。うんうん。千歳らしい。その状況をイメージする。まぁ俺にデメリットはない。


「いいよ。ただ、呼吸は確保してよ。」


「ええ。」


 千歳が満面の笑みで頷く。なんか無茶苦茶な気もするが2人が戻った。展開的におかしい、ありえないと言われるかもしんないが、2人に常識なんて通じない。それを再実感した。


 2人がベットに潜りこんだので、俺はクルンさんの薬を飲み、ベットに入った。体の両端から2人の圧、体温、吐息、呼吸、心音などを感じる。子供のときは気にならなかったが、今は・・・・。そんなことを思っていたが、俺の意識は微睡の中に消えた。



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