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驚くこと

 カタムさんたちがギルドに入り、約30分後、千歳、才華がギルドから出てくる。2人の顔は悩んでいるみたいだ。魔法開発で疲れたのか?


「サイカさーん。チトセさーん。」


 シクはが手を振り、声を掛ける。シクの声に気づき、2人がシクに飛びいてきた。そして、シクにべた付く。・・・そんなことが起きると思っていたが、作り笑顔でそのまま歩いて俺らと合流してきた。なにがあったんだか。作り笑顔はシクには分からんだろうけど。


「迎えにきてくれたの。ありがとう、シク。」


 千歳がシクの頭をなでる。うーん。なんかなー。


「大分待ったでしょ。シク、在人。ごめんね。」


 才華がウィンクし片手を上げる。やっぱりなにかあるなー。


「お疲れ様です。チトセさん。サイカさん。」


 2人のわずかな異変に気づかないシク。それともこんなことに気付く俺がおかしいかな。俺も2人のこと言えないなー。でも、まーまず労うのは大事か。


「2人ともお疲れさん。大変みたいだね。」


「まーね。で、それとは別件なんだけど、登録者の手続きの関係で在人さ、ちょっときて。」


 含みのある俺の言葉に対し、才華はうなずく。うーん、シクには言えない内容か。


「・・・・りょーかい。」


 俺は頷く。さてその間、シクはどうするかな。だいぶ待ったから疲れているかも。ちらりとシクに目を向ける。 


「私とシクは先に『グラッチェ』に行って、適当に注文しておくから。シクも疲れたでしょう。行きましょう。」


 千歳が俺の考えを察し、シクの返事を待たず、歩き始める。


「あ、はい。」


 シクは慌てて千歳に着いていく。



 

 ギルドに入り、アラクネルの情報前へ移動する。周囲には人がいないからここにしたみたいだ。


「で、何があったの?」


「その前に、よくわかったね。在人のくせに、生意気だ。」


 どこかで聞いたことあるセリフを放ち才華が口をとがらせる。軽口をたたく余裕があるのか。と思ったが無理に明るく振る舞っているるんだな。


「付き合い長いだろ。シクよりは2人のこと分かっている。・・・・って言ったら、気持ちわるいか、これ。やっぱなしで。それより内容は?」


 一瞬微笑んだ後、真剣な顔付きになる才華。いや、真剣といより思いつめた顔をしている。


「今日もカタムさんたち西の森での検索してたんだよね。で、今回、森の奥で、子蜘蛛に操られた2人組の死体と遭遇したんだって。」


「それを聞くと、アラクネルは西の森にいるってわけだね。」


「カタムさんたちはそう思うって。」


 シクの家族みたいにたまたま遭遇して、今回は操られたってことか。人の方が向いてることとかもあるだろうし。ただ、今の話だけだと、2人が悩む意味が思い当たらない?考えてもわからんな。うーん、まどろっこしい。


「言いにくいのかもしんないけど、結論を言うと?」


「その死体がシクを利用したあの2人組だったの。」

 

 へ?あの長いやつと太いやつの2人組?ボトムスさんにこき使われてるんじゃないの。ボトムスさんはし知っているのか。あの人なら騒ぎ立ててそうなんだが。いつから操られたんだ?そもそもなんでそいつらは西の森にいたんだ?いろいろ疑問が浮かぶ。


「傭兵団の人が運んできた遺体をガーゼットさんが確認して、私たちもギルドにいたから頼まれて確認したの。」


 粛々と話す才華。・・・・確認済みなのか。だから思いつめた顔してたのかい。才華からしたらクズの2人組。だが関わった人の遺体を確認する。いくら才華や千歳でもいい気分にはならないはず。遺体を見るだけでも複雑な気持ちになるのに。


「あの2人のことを許すつもりはないけど、正直少し、ほんの少し、原子サイズレベルで複雑な気分になってる。」


 ・・・ほとんど気に留めてないのね。それよりシクへの対応のほうで悩んでたのかな。まー才華らしいや。才華は昔から敵対者には容赦も温情もない。とことん苦しめて目の前から消えればいいと思っている。ただ、今までの敵対者なんて所詮は未成年の学生で、死に別れた相手はいないんだけどね。一応フォローするなら、敵対者の死を原子レベルでも思うところがあるなら人の子なんだろうと思って安心する。少なくとも俺は。


 このような世界だからもっと人の死は身近なんだろうか。それとも俺達の世界となんら変わらないか。俺らは今後もっと身近な人の死に直面するのか。それともクエストで人を殺したりするのか。そのとき才華、千歳はどう思うのか。俺の両親、ハツばあさんの旦那譲二じいさんくらいか、記憶ある身近な人の死は。・・・俺も2人組のことより才華、千歳のことを考えてるからしょうもないか。あれだな、動揺しているな俺も。遺体を見てないのに。


「まぁ、それが普通だと思うけど。ただ、俺の感想はそれでも才華は思ったより冷静だなーっと思った。褒めていいのか分かんないけど。」


「私は在人の顔を見たから少し落ち着いただけよ。千歳もそうよ。迎えに来てくれてありがとう。」 


 微笑む才華。2人のためになったならよかった。


「シクに対しては?」


「シクには私たちから言うつもりはないよ。千歳も了解している。どこかで知りえるかもしんないけど、機会はできるだけ減らしたい。一応、この件には他言しないようになっているけど、在人には伝えなきゃと思ってたの。そこでシクと迎えに来てくれたからね。いいタイミングだったわ。」


「言わない件はりょーかい。2人が悩んでいたのは俺がボロを出す前になんとかしなきゃってことか。」


 なるほど、それはそうだ。そんな話を聞いたら否応に反応して、ミスるのは俺だな。知ってるのと知らないとじゃ反応変わるもんな。うんうん。正しい判断だよ。涙が出るくらい。


「だから、迎えに来てくれてありがとう。」


 改めて微笑む才華。その表情がまぶしくて直視できん。




「確認したいけど、他言無用の他の理由は?」


「アラクネルの恐怖を街に広めないため。」


 なーる。シクの家族のことは街に知られてないし、この街ではまだ人的被害もない。あの2人組はこの街に流れでやってきたはずだから、いなくなっても不自然ではないか。街に不安を煽る必要はない。


「あと2人組死亡時期特定にため、解剖することになったから。」


「へー。この世界にもそういうのあるんだ。っていったらこの世界の人に失礼かな。」


 正直、この世界は魔法を介した技術があるため、科学技術、知識は俺らの世界より遅れていると思った。


「なに言ってんの、この世界にその考えはないわよ。カタムさんもガーゼットさんも、遺体を解体して死亡時期や原因を調べたら、って提案したら驚いていたわ。」


 キョトンとして俺を見る才華。じゃあ、どう調べるんだよ。・・・まさか。


「まさか、2人がやるわけ?」


「イエース。と言っても、知識も道具もないから、明日、私たちの世界に戻って道具、資料を集めて、明後日、知識と技術を得る。3日後本番。という予定だから。」


 サラリと説明する才華に俺は絶句する。えー。いや、できると思うとうかできるよな2人なら。


「大丈夫なのかよ。」


「うん。ま、初めてだということはガーゼットさんも了解済み。で毎度のことだけど、ここ来てから技術、知識の習得スピードは私たちの世界の比じゃないの。多少実践に対する不安はあるけど、問題はない。ちなみに法律的にもここでは問題ない。」


 才華は胸を張る。そこも心配だけどそこじゃあない。


「いや、それもそうだけど、そのあれだ、遺体と関わるのは平気なのかってこと。精神的に参らないのかってこと。」


「心配してくれるの?そこは。在人が隣にいてちょうだい。それだけで安心するし、心強いから。」


 こちらを見つめる才華。ただ、イチャつきたいって気もするがストレスになっても困るか。


「わかった。」


「じゃあ、夜に千歳とベッドに行くかも。ひひっ。」


 手を顔前にやり、ニヒヒと笑う才華。あ、そっちですか。・・・ええい、ままよ。


「わかった。来てくれ。それで嫌な気持ちは忘れてくれ。ちゃんと2人で来いよ。と、まだ聞きたいことあるけど、それは後にするか。2人も待っているだろうし。」


 そこそこ時間が立っている。・・・?なぜか才華が口を開けこちらをボーと見てる、?ん?どっした?


「才華、どうした。行こう。」 


「あ・・・・・・・・・。え・・・・・・・・・・・・。?」


 ・・・・フリーズしている。?


「大丈夫か?」


「?・・・・・・・・・?」


 反応していない、というより聞いていない。俺は才華の肩を掴む。


「おい、聞いてる?」


 俺の呼びかけにハッとし、才華は口を震わせながら、手も前に出し震えている。


「どうした?」


「ざ、在人が誘ってくれた。大人になって初めて。や、やた。う、嘘じゃないでしょ。」


 そこで動揺すんなよ。俺も驚くがな。いつものノリはどこ行った。普段の積極さはどこ行った。あれか遺体を見た影響か?たまには要求を素直に飲んでみたけど、逆効果だったかな?


「この状況で嘘言わんよ。冗談言わんよ。ただ、添い寝程度だよ。1つのベッドで3人一緒に寝るだけだよ。子供のときみたく寝るだけだよ。」


 勢いで言ったけど、添い寝程度ってどれくらいなんだ?まーいいや。


「・・・・・・・・・・?」


 才華は混乱した状態でフリーズしている。


「おーい、聞いてる?」


「うん。うん。大丈夫。」


 首をがくがく縦に振りながら答える才華。絶対に聞いていない。そんなに驚く?俺はこれぐらいでも力になりたいと思うけど。変かな?まぁ今更引っ込める気はない。


「エロい目的じゃなくて、精神の安定のためだから。ストレス溜めないためだから。この件の間だけだから。そこ忘れないように。」


 念押しする。


「あ・・・・・うん。・・・・・・・。」


 コクンと頷く才華。見た記憶のないしおらしい動作と表情。やべえ、かわいい。これはこれで惹かれる。


「・・・昨日、口の治療のときは平然としてなかったけ?」


「・・・・・・・・。」


 また、フリーズしている才華。ありゃありゃ。


「おーい。」


「・・・・だって、あれは、私の本音の要求に対してだし、治療だし。でも今のは軽い冗談で、だぶん躱されると思っていたから。」


 対して期待はしてなかったと。まぁ遺体の件がなければスルー案件ではあったな。もう少しいじりたい気持ちもあるが、千歳とシクが待っている。


「・・・置いてくぞ。」


 俺は入り口へ歩き出す。付いてくると思ったが才華はまだフリーズ。・・・遺体見て食べれないとかあるかな?俺は才華の方ぬ振り返り確認する。


「飯食べない?食べれない?」


「あ・・・食べる。うん。」


 才華はどうにか反応し、静かについてきた。すれ違った職員が才華の様子を不思議がっていたが俺はスルーした。


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