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治療してくれ。

 少しだけ食材の買い物をしてから帰宅する。先に帰宅していたシクは俺の姿を見て、唖然とする。俺の姿は頭に包帯。左腕は当て木で吊っている。服はズボンはボロボロ、上も血や埃だらだからか。俺の姿を見て硬直した数秒後、


「大丈夫ですか、いや大丈夫じゃないですね。えーと、牛乳飲みます?それとも、お風呂にします?それとも食事?あ、でもまだ作ってないです。あー風呂も沸いてないです。あー牛乳ですね。待っててください。今、台所から持ってきます。」


 シクは混乱した。いや落ち着いて。・・・年齢相応の混乱とみるべきか。いやでも、この世界なら怪我なんてよくありそうだけど。うーん、まずは落ち着いてほしい。あと、牛乳飲んでもこの怪我は治らない。まー風呂は入りたいけど。


「ふふ、シク、落ち着いて落ち着いて。まず、お風呂の準備してきてくれる。そのあと一緒に夕食の準備をしましょう。」


 微笑ましくシクをみていた千歳。千歳の落ち着いた言葉にシクはハッとし、


「は、はい。」


 慌てて風呂場の方へ走り出す。あ、転んだ。大丈夫かよ。俺が言うことじゃないけど、落ち着け。シクは恥ずかしそうに立ち上がり、また走り出した。


「「かわいいねー。」」


 シクの様子を見て千歳、才華が笑う。そこは同意。


「それより、報酬入ったんだから、ターロホさんのところへ行こうよ。先日の約束もあるし。」


 シクの件での約束、ターロホさんのお店で飲むこと。負傷はあるがいい気分でもあるし、俺はそれを提案する。が


「何を言ってるの在人。今日はもう安静にしないと。」


 才華が真面目な顔つきで俺を見る。千歳もだ。うーん、確か左腕、左わき腹は痛いけど、傷口はとりあえずは塞がってる。シクも連れていくつもりだから、前回見たく長時間も飲むつもりはないんだけど。俺が理解していないと表情から悟ったのか、才華が呆れている。


「今日、落下したときと、ゴーレムに飛ばされたときと2回も頭を打ったんでしょ。今は正常でも後から症状でたりするんだから。少なくとも今日、明日は安静にしてもらうよ。もし、異状とか出てきたら、元の世界にも帰るから。」


 才華の淡々とした説明。おおげさな。


「おおげさなと言いたいんでしょ。でも駄目。分かって。」


 俺の思考を読んだ千歳が諭してくる。ですか。2人の様子を見て俺は引き下がる。言い争う気力は2人の顔を見てなくした。


「りょーかい。ただ、俺になにもなかったら、明日の夜にターロホさんのところで。とりあえず今は風呂入る。さすがに血を洗い流したい。」


 俺はいったん自室に行き、脱衣場へ。



 脱衣場には千歳、才華がドンと構えていた。そして、


「腕痛いでしょ。服脱がすよ。とういうか脱がさせろ。」


 手つきがアレな才華。姿勢も前傾姿勢、今にも飛び込んできそうだ。あと顔もアレだ。欲情を隠しきれていない。まー片手から脱ぎずらいのは確かだけど。


「腕痛いでしょ。体洗うわ。」

 

 なぜか自分の胸に両手を当てる千歳。体も微妙にウネウネ動いている。?あと顔もアレだ。欲望を隠しきれていない。・・・俺は呆れて右手を頭に当てる。抱きついてるイメージか。体洗うって。おいおい。


「あー、だったら、まず腕の当て木取って。」


 あとからまた治療されるだから、当て木はなくてもいいや。というかわずわらしい。どうせ、その過程で上の服は脱がされるから、ここまでを境界線にしとくか。2人はちゃちゃっと俺の当て木を取る。その流れで才華は俺のズボンまで手をかけてきた。この餓狼が。


「あーズボンは自分でやる。もういいから。ありがとう2人とも。」


 俺は右手で才華を引き離そうとする。だが、才華はズボンから手を離さず、


「あ、ごめん。」


 とあきらかにわざと俺のズボンをひっぱる。そこに千歳が


「あ、あぶない。」


と心配した口調に見えるが、こちらもわざとらしく俺に抱き着く。俺はバランスを崩し、転倒する。

 その結果、俺は千歳に覆いかぶり、顔は千歳の胸の中、俺の背中には才華が負ぶさっており、後頭部にハリのあるもの。


「在人のラッキースケベ。」


 才華の興奮した声。俺の転倒でこんな状況に絶対なるわけない。倒れる直前に、足にも何かが触れる違和感があった。たぶん、2人が俺を倒しにきたんだ。そうじゃなきゃ、今頃、腕と脇腹に痛みが来てるはずだ。


「もう、大胆ね。」


 千歳の興奮した声。大胆なのは俺じゃない。才華と千歳だ。


「なら、離れてくれ、離してくれ。」


 呼吸はできるが2人が離れてくれない。片腕だから立ち上がることができない。足も絶妙に絡んでいるせいもある。どうして暴走しているんだ。なんだ、今日、ゴーレムなどの魔物を倒しまくって興奮して、それがまだ収まってないのか。興奮はしてるよ俺も。やっほいとう気持ちもあるよ。そこは否定しないけど。うん。否定しないけど。これシクに見られたら、2人が説明してよ。俺は2人のせいって声高に言うからな。


「・・・お邪魔しました。牛乳用意しときます。」


 入口のほうから、かすいかにだが間違いなくシクの声が聞こえた。・・・手遅れだった。また混乱したのか、牛乳の意味が分からない。乳つながり?


「あーあ、シクに見られちゃった。どう説明するの在人。」


「ねー。大変だわ。」


 2人が他人事みたく言う。見られたことは気にも止めてないようだ。2人的には転んだ結果だから、いやらしいところは何もないのか。


 5分後、2人は満足したのか、のそのそと離れる。このまま浴場までついてきそうなので、


「はー。1人で落ち着きたいから、2人はシクと飯作って待ってて。」


 俺が2人を見ると、


「はーい。下も心も落ち着かせてちょうだい。ただ、体に異変あったらすぐ上がってね。」


 緩んだ顔から少し真剣な顔つきになる才華。


「一応、20分たったら、見に来るから。鍵は開けといて。あ、ちゃんと入るときは声はかけるから安心して。」


 同じく千歳も。


「りょーかい。」


 その返事を聞いて2人は脱衣場から出て行った。一気に脱衣場が静まり返った。




 シャワーや湯が足の傷口にしみるが、他に体に異変はなかった。風呂を上がり、キッチンへ入る。うん。いい香りがする。お腹も空いてきた。


「イロイロとすっきりした?体調は大丈夫?」


 俺に気づいた才華。前半はアレだが、後半は心配してる声だ。


「傷がしみたくらい。あーあとお腹が空いている。」


「そう。安心したわ。あ、在人がお風呂入っている間に、クルンさんが手入れを終えた武器とクルンさん製の薬を持ってきてくれたわ。」


 と千歳。武器の手入れ早。千歳の説明だと、負傷部位の自然治癒力をあげるもの。副作用は眠気がます。俺の怪我なら2、3日で治るだろうとのこと。魔法よりは体に良いらしい。


「だから、今日、明日は、在人はこれを飲んで寝てね。明日の当番はシクにお願いしたわ。」


 と千歳から薬を受け取る。見た目は真っ赤な丸薬。見た目だけだと辛そうだ。


「へー、今度クルンさんにお礼言わなきゃ。」


「あとクルンさんからもう1つ伝言あって、明日、私と千歳は例の魔法の件でギルドに呼ばれたの。だから、日中は在人は家事をお願いね。私たちは時間どれだけかかるかわかんないけど、夕方まで帰宅しなかったらシクと一緒に『グラッチェ』まで来て。」


 話しながら、才華が夕食をテーブルに置く。


「りょーかい。シクは明日の予定は?」


「は、はい。イナルタさんのところに行きます。」


 なぜか、俺にビクついている。脱衣場の件か


「シク、えーと」


「あ、大丈夫です、3人が愛し合っているとチトセさんか聞いたので。ザイトさんが我慢できなかったってサイカさんから聞いたんで。男はそうだって2人から聞いたんで。」


 シクの顔が赤い。シクへの説明がおかしい。俺が補足、訂正をしようとした矢先、


「はい、夕食にしましょう。もう気にしないでって言ったでしょ、シク。」


 千歳が遮った。シクへの説明は明日だな。だがどう説明しよう。




 夕食も終え、俺はクルンさんの薬を飲む。味は多少苦い気がした。ベットに入ると千歳、才華が部屋に入ってくる。


「クルンさんの薬を疑うつもりはないけど、今日は私。明日は千歳が部屋にいるから。」


「頭をぶつけたのは本当に怖いことなの。明日、在人が死んでいてもおかしくないんだから。そんなの嫌だから。一緒にいさせてね。」


 2人は真剣なまなざしで俺を見る、一応俺の健康状態を気遣ってはいるんだから反論はしない。そのまなざしに邪ななにかが見えた気もするが。


「2人とも明日、ギルドいくんだから、無理はしないでよ。あと腕は治癒中だから、ベットには入れないよ。」


「あら入ってくると思ったの。やらしい。安心して今日は我慢するよ。」


「一緒に寝るのは怪我が治ったらね。」


 と2人。・・・・突っ込みはやめよう。


「じゃあ、お休みね。在人。」


 千歳が部屋を出る。


 

 才華は予備の布団をベット横に敷く。その後、才華は俺に覆いかぶり、俺の顔をのぞきこむ。


「在人もう、眠たそうね一。」


 確かに眠たくはなっている。副作用はこんなに強力なのか。これは安静にできる時にしか使えんな。才華は何かを訴えかけている気がする。


「だね。あーそうだ、千歳から聞いたけど、ナース服持ってきてるの?」


「うん。想像して想像して。他にも巫女、水着、チアガール、ボンテージ、隠してない下着とかも。」

 

 ニヤーと笑う才華。眠気のせいか、脳内でのそれらを着る2人のイメージがぼやける。


「なんのために持ってきた。」


「楽しむために。」


 力強く即答する才華。でありますか。今度は俺の胸に顔をうずめる。どうした?


「親も目付け役もいない。一つ屋根の下に男女だよ。まーシクがいることはとりあえず置いといて。やることは1つよ。私は求めるよ。成し遂げるよ。千歳も同じ考えよ。相思相愛なのに、在人がドスケベ変態なのを無理無謀無茶して押し込んで奥手のふりなんかしているとか、金がないやら、妹の今後のためとか、千歳がいるからとかで、20歳になってもキスにまで至らないんだから。在人には私と千歳以外に相手なんかいないのに。・・・キスは千歳としてたね。・・・・キスは。」


 おー、まくしたてる、まくしたてる。結局、そこかい。ふーむ。


「あー、才華、俺眠る前に水飲みたいんだけど、口の中痛いんだよね。だから。」


 才華は俺の意図に気づいていないのか不思議そうにこちらを見つめる。


「だから?」

 

「治療して。」


 俺の要求に静かに才華は


「うん。」


 と答え、間髪入れず口付けをする。熱く、舌が熱く口の中を駆け巡り、俺に舌に絡みつく。うっぷんを晴らすように。千歳は実際治療も兼ねてたから優しく感じたが、才華は激しく感じた。数分後名残惜しそうに口を離し、


「ファーストキスは取られたけど、在人から求められたのは私が先ね。」


 ・・・俺が第3者としているという考えは全くないのか。いやまあ、実際は正解なんだけど。


「これは治療行為だろ。」


 俺の答えに


「あ、そうね。なら今度はちゃんとしようね。」


 またニヤリと笑う才華。


「あー考えとく。でも今日は寝るからそろそろどけて。」


「はーい。お休み。」


「お休み。」


 薬飲んでなかったらまだまだ俺は寝付けなかったと思う。・・・千歳といい、才華といい、抵抗もなく、迷いもなく口をつけてくるし、舌も入れてくる。あとなんか上手な気がする。気持ちよくなったのは気のせいじゃあない。たぶん、2人は初めてじゃないんだろう。2人で練習、訓練とか言ってしてそうだ。・・・百合、レズっ気あるのかな。・・・今度そういうシーンがあるの見とくか。2人のために。うん2人のために。心がモヤッとしたが、眠気のせいで考えることができず、そのうち俺は考えるのをやめた。


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