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治療させろ。

 力は抜けるが治療は続く。


「はい、頭の傷はこれで大丈夫。」


 近距離での山脈見学は終了。なごり惜しい気持ちは否定しない。


「次は足ね。」


「いや、擦り傷とかだからいいよ。歩けるし。それより腕か脇腹でお願いします。先生。」


 精神的に落ち着いてきたせいか、痛いで泣きたい、叫びたい。そこにより激しい禍々しさを増した戦士が


「終わったよ。ち、と、せ。ざ、い、と。」


 怪我やほこりもなく戻ってくる。あるのは禍々しさを伴う笑顔。はやっ。


「お疲れー。」


 千歳はのほほんと才華を迎える。


「治療は?」


 禍々しいオーラとは別に口調は冷静な才華。


「頭と口は終わったわ、足は平気だって。腕と脇腹の応急措置を一緒にしましょう。」


 淡々と答える千歳。ただ、表情は余裕というか勝ち誇っているというか。


「へー。そうなんだ。私にはキスと胸を見せたとしか思えなかったけど。」


 才華はこちらを見下ろしている。ヒッ。


「胸は在人に聞いて。口に指を入れると在人が辛いかなぁって思ったから。才華だってそうするでしょう。」


 千歳も目をそらさず才華を見つめる。才華は無言で俺を見てくる。


「えーと、胸の件は俺の猫背のせいでそういう状況になりました。はい。キスの件は治療なので俺はあの、

直してもらった立場なので何も言えないです。というか、なんと言えばいいのか。はい。お任せしただけです。」


「ふーん。治療だから従ったのね。ふーん。へー。治療方法には従うのね。そう、うん。うん。なるほどね。うんうん。その件は分かった。」


 とりあえず、俺の言い分は通じたのか、納得したのか。才華の攻撃的な禍々しさは収まっていった気がする。そのかわり、


『私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私には?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私とは?私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。私と。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


 何かを訴える声が浮かんでいる気がする。見える気がする。感じる気がする。頭ぶったからかな?気のせいだよな。うん。・・・・・。気のせいじゃないね。


『私と』


 才華の目に浮かんでいる。目で訴えてきている。目が、目が、目がぁ。


「えーと。」


「おーい、無事かー。」


 俺が言葉に詰まったところで、スリッターさんの声だ。その声に反応し


「あ、クルンさんたちも無事か。一安心。一安心。うん。」


 俺が話題を逸らす。才華もクルンさんたちを見て、とりあえずオーラという鉾は納めてくれた。


 

 

 「あーもう終わってる。手早いわね。もー。っと、ザイトは結構ひどいわね。いたそー。大丈夫?」


 アルトアさんはなぜか不満な顔をしていたが、俺の方を見た途端、気遣ってくれる。姉御肌の雰囲気どおり。


「おー痛そう。よく1人で対峙する気になったなー。クルンと一緒に逃げればよかったのに。俺なら逃げるぞ。」


 スリッターさんが軽口を叩いてくる。1人ならそうする。俺だってそうする。


「俺の場合、逃げてもゴーレムが追いかけてくる可能性しかなかいんで。そうなるとあれ以上に囲まれて、クルンさんを逃すこともできなくなると思ったんです。」


「ほー。そうかい。魔物に好かれる特性とかなのかい。素材集める身としては便利そうだけどのー。どっちにしろ。クルンが無傷なのはお主の判断のおかげじゃの。礼を言うよ。」


 バインさんが頭を下げる。


「たまたまです。」


 ・・・クルンさんの無傷が珍しいみたいな話し方だ。俺と同じで怪我が日常茶飯事タイプなのか。勝手に親近感がわく。そう思ってクルンさんの方に目を向けると、クルンさんの顔は真っ青だ。そして、


「すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません、すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません、すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません、すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません、すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


 謝ってくるクルンさん。謝罪で暴走している。あーきれいな顔がすごいことになってます。顔芸が顔芸が。それでも美人なんだけど。謝る必要ないのに。


「クルンさんのおかげで死なずに済んだとで、謝る必要ないです。むしろ助けられました。すいません。弱くて。」


 俺は正直な感想を告げる。でもクルンさんの耳に入ってないようだ。まだ謝り続けている。どうせばいいいんだ。俺はスリッターさんやアルトアさんを伺うが、クルンさんの様子を見て笑っていた。


「気にすんな気にすんな。儂やスリッターだって、チトセ嬢におんぶにだっこじゃったよ。どっちにしろ結果クルンは無傷だった。そっちの方が重要じゃよ。ガーハッツッハ。」


 バインさんがも笑っているが、クルンさんの扱いはこれも平常運行なのか。


「そうそう。それより自分のことを心配しろ。誰が見たって一番の重傷者だぜ。」


 とスリッターさん。それでいいんですか?


「こっちも、サイカがほとんど倒したから。暴れたりないわ。」


 アルトアさんは不満そうだ。そんな和やかな雰囲気だが、クルンさんはまだ謝っていた。謝る必要ないのに。


「ほら、クルン、そんなに謝るくらいなら、あーあれだ、お礼のキスとか一晩寝てやるとかしてやんな。あっははは。」


 アルトアさんが笑いながら、クルンさんの背中を押す。クルンさんはハッとし我に返ったみたい。ただ、アルトアさんの発言に才華もピクと反応していた。


「あ、はい、すいません。えーと。はい。そのそれでよろしいですか?えーと、ではザイトさんの自宅でのちほど。あ、それとも別のところで、ああ、あと、私が作れる精力剤も用意しますし、あ、避妊剤も用意しますから安心してください。すいません。チトセさん、サイカさんほど豊かな体じゃなくて、100歳過ぎてるので人間の年齢ならおばあちゃんなのもすいません。あー、一晩で足りないなら何日でもお付き合いしますか。あ、私は大丈夫ですから、ザイトさんはお店の商品を扱うと思っていただければよよよろしいので。」


 前言撤回、クルンさんはまだ、暴走しているようだ。真に受けてる。俺の回答を待たず話が進んでいく。いやいやいや。それは嬉しい気持ちはあるけど。美人だからテンションは上がるけど。それじゃあ店が変わっちゃう。どっちにしろ俺が殺される。


「クルンさん、落ち着いて。在人はそんなことを求めないから。」


 俺がしゃべる前に才華がクルンさんの前に立つ。


「あ、はい。すいません。そうですよね。私なんかじゃ。お礼になりませんよね。」


 シュンとするクルンさん。いやそんなことないです。クルンさんの名誉のために言うなら、十分すぎるお礼です。


「そんな、落ち込む必要はないよ。むしろ在人にはもったいないくらいだから。在人の生涯収入でも足りないから。」


「あ、はい。すいません。」


 淡々と諭す才華。それに応じてクルンさんも落ち着いたみたいだ。


「在人はお礼がほしくて、頑張ったわけじゃないよね。ね。」


 振り向きながら、禍々しいオーラを再燃させ、才華は俺の方を見る。


「あ、はい、そうです。」


 俺は恐怖で萎縮する。はいそうです。俺は自分が助かりたかっただけです。


「ね。クルンさん。アルトアさんも駄目だよ。在人はこの手の冗談を真に受ける、どーのてー、なんだから。」


 禍々しいオーラは小さくなっていたが、才華の様子を見たアルトアさんは


「あーうん。悪いね。」


 罰が悪そうに引き下がった。スリッターさん、バインさんも静まっている。どうすんのこの雰囲気。俺も今の体じゃあなんもできんぞ。


「じゃあ、私と才華は応急措置をしますので、その間にクルンさんたちは素材回収をしてください。」


 この中で唯一、才華のオーラを恐れない千歳が場を打開してくれる。助かった。


「あ、はい。すいません。ではそのように。」


 千歳の指示により、クルンさんたちは回収作業に移り、千歳、才華は俺の治療。数十分後、俺の腕には添え木で固定状態。脇腹のほうもとりあえず呼吸が楽になった。あとは帰宅後だそうだ。クルンさんたちの方も作業を終えていた。


「クルンさん、素材はまだまだ必要ですか?」


 才華の質問に対し


「いえ、十分です。アクシデントはありましたが、時間に対して採取した量は想定の倍以上です。すいません。助かります。」 


 クルンさんは頭を深々と下げる。謝る必要ないのに。


「そう。なら戻ろう。」


「はい。すいません。帰路もお願いします。」


 クルンさんはまた頭を下げる。・・・やや素っ気ない雰囲気のする才華は早く帰宅したそうだ。なんかあったけ?





 帰りはスムーズにお店に着いた。それでも負傷者にはつらいところはあったけど。


「これでクエストはクリアですか。」


 千歳の質問にバインさんが答える。


「おう、そうじゃよ、ご苦労さん。ギルドにはこっちから連絡しとくわい。」


「こっちがまず報酬。で、3人の武器を手入れするから預かるぜ。あーザイトのハンマーの柄もサービスで直しといてやる。」


 あーそういえばそうだった。まず、スリッターさんから報酬を受けとり、各自の武器を渡す。


「道中から思ってたけど、やっぱり手入れとかしてないだろ。」


 スリッターさんが武器をまじまじと見て聞いてくる。職人だけあって、見てわかるんだな。まー、誰も手入れの仕方を知らんし、道具もない。


「チトセ嬢とサイカ嬢の方は登録者になったばかりのわりには、ずいぶん使われているのー。」


 バインさんも不思議がっている。まー、2人はガンガン倒していくからなー。


「そんなにひどいんですか。」


 千歳は困った顔をしている。


「今度、報酬の代わりに簡易な手入れでいいから、教えてください。」


 才華がスリッターさん、バインさんにお願いする。あーいいかもその考え。こういう素直さは見習うべきなんだろうな。


「お、いい心掛けだね。クエスト最中で行う程度のでいいなら、私がレクチャーしてあげるよ。」


 アルトアさんが割り込んでくる。やっぱ、登録者ならそれくらいできるもんなのか。


「簡易程度でいいのかい?」


「じゃないと、スリッターさんやバインさんの仕事をなくしちゃうよ。本格的なのはここで頼むんだから。」


 スリッターさんの質問に対し、才華がニカっと笑う。


「ふふ、壊れたらここで買いますしね。大斧とか。大鎌とか。」


 と千歳。でもなぜ大斧。なぜ大鎌。ゲッター1かい。それらを持ち2人の暴れるイメージが浮かんだ。似合わなくはない。


「そうそう。鞭とか。蝋燭とか。」


 こちらをチラっと見ると才華。・・・なにがしたいんだい才華。なんて本人には聞かないけど。それらを持つ2人のイメージが否応に浮かぶ。使い慣れたイメージが浮かぶ。本当に慣れてそうで怖い。


「がっははは。じゃの。今後ともご贔屓に頼むわい。」


 バインさんはスルーしたのか気にしてないのか大笑い。顧客ゲットだから気分いいんだろうか。きっとそうなんだろう。・・・クルンさんだけ顔が赤くなってたのも気のせいだろう。うん。


「後ほど、私が自宅まで届けます。すいません。」


 謝る必要のないクルンさんに自宅住所のメモを渡す。


「じゃ、お大事に。しっかり看病してやりな。」


 アルトアさんが千歳、才華の肩を叩く。


「もちろん。」


「はい。それではまた。」


 2人は笑顔で答え、お店をあとにする。


 

 












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