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行く?それとも行く?

 俺はまじまじと転送装置を見る。うーん何度見ても信じられない。10年でできるもんかね。


 その様子を見ていた才華は腕を組みながら、


「予定は2年で完成させるつもりだったんだけどね。」


 俺は目を丸くする。2年ってあの紙に書いてるものはすべて2年で完成させるつもりだったの。無謀でしょ。


「資料集め、計画で1年、作成に1年予定だったのよ。さすがに無謀だったね。若かったわーー。」


「なぜに2年で完成させるつもりだったわけ。無謀。」


「そりゃー。ちんたら作っていたら、その間に泥棒猫に取られるかもしんないでしょ。小学生なりに焦ったわけよ。」


 横で千歳がにゃーと猫の真似をしている。


「でも中学生になったら、あっ取られることないって気づいたんだよね。そこで千歳には状況説明しながら、意見を聞いたりして、安全安心なものを完成さたんだよ。」


 ・・・取られないって・・・・・


「ちょい、待ち。取られることないって。俺は装置が完成するまで彼女ができないってこと。」


「「うん。」」


 二人はシンクロしてうなずき、はもる。はもり何度目?


「いや。例えば、完成しないから、俺が千歳と付き合うとかもないと?」


「約束に私も便乗したって言ったでしょ。だからそんなことしないわ。」


 なんか、告白してないけど、振られた気がする。まあいいけど。負けずに反論しようとするも、


「いや、でも・・・。」


 言葉が続かない俺、千歳は平然と


「実際、今日まで、告白されたことは?」


 体にサジタリアスの矢がグサッと刺さる。俺は吐血する。


「・・・ありません。」


「告白して成功したことは?」


「・・・ありません。」


 ゴットゴーガンが背中に刺さる。膝ががくがく震える。だが、俺は心を振るいたたせ、反論という名の矢を放つ。


「二人こそ、告白されたことは。」


「あるわ。断ったけど。」


「私もあるよ。断ったけど。」


 ぐっ・・・・。俺知らないぞ、それ。俺の矢は二人の前で停止する。


「女の子からもあるし。」


「あっ私も。」


「後輩の女の子になら、恋人にはならないけど、デートしてあげたわ。」


「千歳も?私も何回あったよ。」


 なんですと。それ女子高のイベントでしょ。俺ら平凡な共学高でしょ。俺の放った矢が俺に刺さる。息も絶え絶えだ。千歳はそんなことお構いなしに追い打ちをしてくる。


「あーバレンタインチョコももらったよね。」


「うん。うん。」


「在人はバレタインで私たち以外でチョコをく・・」


 光明が射した。俺はかぶり気味に叫ぶ。


「沙緒里さん。良子さん。ち・・」


 今度は千歳が平然とかぶせてくる。


「千佳姉さん。文香ちゃん。夢ちゃんは義理チョコね。私たちも一緒に食べたよね。それ以外に本命は?」


「・・・ありません。」


 光はブラックホールに飲まれて消えた。代わりにゲイボルクが刺さり、内臓が飛び出る。

 千佳さんこと天城千佳(あまき ちか)さんは千歳の姉で、才華の義姉。沙緒里さん、良子さんと同じ25歳。

 文香ちゃんこと星舘文香(ほしだて ふみか)は1学年下の後輩。


「今、名前の出てきた人以外で知っている女性の連絡先は?」


「・・・ありません。」


 ロンギヌスが俺の腕を肩から吹っ飛ばす。まだだ、まだ終わらんよ。


「基本俺は二人と一緒に行動していたから、告白されなかったとか。」


「確かに学校では3人一緒だったけど幼馴染ということも知られてたよね。本当に在人のことを好きな人がいたら告白してきたんじゃない?実際に私と才華はそうだし。」


「・・・そうですね。」


 ビームジャベリンが刺さる。脇腹が蒸発する。俺は泣きそうだよ。そこへ千歳のフィニッシュコンボが入る。


「これは夢、催眠術、超スピード?」


「・・・ではありません。」


「結果をいうと?」


「俺に彼女はできません。」


 俺は花火となり肉片が床に散らばった。現実の俺は両手を地面につけ絶望した。慟哭が止まらなかった。千歳はその様子が面白いのか。にっこり笑い。


「はい。よくできました。」


 やりとりをニヤニヤ見ていた才華


「これで分かったでしょ。急ぐ必要がなかったこと。」


「・・・はい。」


「逆に考えると在人のことが好きなのは世界で私と千歳の二人だけ。うれしいでしょ。こんな美人でハイスペックな女神二人に愛されるなんて。」


「・・・才華は女神というより、悪魔だろ。」


 嫌味を言ってみる。しかし、才華は顔をニヤリとし、両手で俺の方をたたき。


「つまり、在人、君は神にも悪魔にも好かれる。ってことだね。」


 元祖スーパーロボットの開発者みたいに言うな。その発想はなかったけど。


 ・・・実際こんな俺に好意を持っているのはこの二人だけ。なぜか。しかも恥じらいも、隠すこともない。昔からずっと「好きだ」「愛してる」を言ってくる。基本一緒にいるけど、一応異性とは観られているはず。俺は鈍感キャラじゃないので、二人の好意には気づいている。決断はしてないが。


「異世界ものには珍しく、リア充ね。無職、引きこもりでもないし、死後転生することもないし。まぁ能力は低いかもだけど。」 


・・・ですね。



 


「では早速、行きますか。」


 才華が装置のキーボードを操作する。装置が音をたて起動する。


「へっ?行くって。」


 俺は問いただす。才華はきょとんとして


「いや、異世界に。」


「ドキドキするねー。」


 千歳は行く気満々。いや散歩じゃないよ。


「ちょっと待って、待って。行くとは言ってないよ。」


 俺は慌てて止める。


「えー?なんで?」


「何を言ってるの在人?」


 二人とも驚いている。 


「いや、当時の俺は行きたかったかもしれないけど。」


 俺は言う。千歳は言い聞かすように俺に


「よく聞いて在人。例えばカラーボックスを作ったら、そのままにしとく?」


「いや、本を入れるけど。」


「でしょ。ご飯を作ったら、そのまま放置しておく?」


「食べるけど。」


「でしょう。だったらこれもそうじゃない。」


 いや、それらと一緒のレベルで考えるのはちょっとどうかと思うけど。俺は食い下がる。


「千歳は大学、俺は仕事あるけど。」


「それは大丈夫、二人とも、財閥関係のところにいるんだから、とっくに解決済み。」


 あら、手のはやいことで。


「いや、それでも、・・・」


 操作をやめた才華の顔つきが変わる。


「私は在人が欲しがったから装置を作っただけじゃないよ。在人が望んだ世界を私も見たいと思ったから作ったんだよ。一緒に行きたいと思ったから作ったんだよ。ただ装置の完成が目的だったんじゃないよ。」


 今にも泣きそうだ。そんな顔すんなよ。やめてくれよ。千歳は才華を抱きしめてこちらを見る。


「覚えてないから。知らない。で済まないことがあるのはわかるよね。」


 非難の目をしている。俺は目をそらす。顔を上に向け考える。はー。そうですね。そのとおりですね。こーなったらもうどうにもならない。折れるのはいつも俺。俺は意を決め叫ぶ。


「あー分かってるよ。行くよ。行くよ。是非3人で行こう。」


 その途端。


「言ったね?もう取り消さないでね?じゃあ行こう。やれ行こう。」


 才華テンション爆発アップ。キーボード操作を再開する。切り替え早!


「あーでも。ちょっと待って。待って。落ち着いて。俺の話を聞いて。頼むから。」


 才華はこちらに目線を向け、


「何を聞きたいの?」


「その装置のことも少し確認したい。」


「異世界はいつからつながっているの。」


「異世界とこの世界がつながるようになったのは2年くらい前。」


「才華は行ってないの?」


「行くのは3人で一緒って決めていたから、ドアがつながっても誰も行っていない。ただ、ドアからドローンとかで、調べたりはしている。」


「・・・さっきの写真見る限り、ドアは森の中につながっているんだよね。」


「うん。そうよ。」


「他のところにつなげたりはできなかったの。例えば街はずれとか。」


「結果をいうと試作1号機ではできなかった。一番安定してつなげるのはそこだけ。」


「考えられる理由は?」


「プッチ神父が新月にケープカナベラルに行ったようなもんね。この装置がここに固定されているから、あっちの世界につなぐちょうどいいポイントがそこだったってこと。そのポイントの緯度、経度も調べてあるから。」


「ふーん。」


「その点、試作2号機は、大型倉庫内に装置を移動できるようしてるから。」


 さらりと恐ろしいことを言われる。


「もう2号機あるんかい。」


「組み立ては所員でもできるようにしてるから、完成は私にしかできないけど。」


「ん?こっちの世界とのつながりは1年たっても変わんないの?」


「微妙にポイントのずれはあるけど、基本的に変わんない。どっちかに天変地異が起きない限りは大丈夫。」


「なーる。じゃあ天変地異がおきない限り、帰れないことはないんだね。」


「そうよ。」


「ドアは向こうから開けれないの。」


「開けれる。」


「ドアって24時間つなげているの。」


「いやオンオフできるよ。万が一あの三つ目の犬なんかが来たら困るから私たちが行ったらオフにする。装置自体は起動させたままにするけど。」


「じゃあ帰れないじゃん。」


「そうならないように。こういうもの作ってある」


 とやや大きいスマホをだす。


「?スマホ?」


「いや、装置のリモコン。ポイント5メートル以内に入って、装置が起動していれば操作できる。あと装置のほうでも5メートル以内にいることはモニターで確認できる。実証済み。」


「なーる。」


「一応一人1台ね。」


 とりあえず。俺の不安はある程度解消された。片道切符でもないし、こっちの人に迷惑はなさそうだ。

たぶん、千歳が進言してたんだろう。俺も覚悟を決めますか。


「そしたら、準備していくかい。」


 二人はなんのことって顔をする。


「「準備って?」」


 俺もまじめな顔つきで。二人を指さす。


「森林内で、二人ともその服はないだろ。人のいるところにすぐ行けるとも限んないだから。服装はも少し動きやすい恰好で、荷物は山登りとかするイメージで準備はしよう。」


「「はーい。」」


 俺の顔つきをみたせいか、二人とも反論はなかった。


「じゃあ一度帰宅してまた集合でいいか。」


「いや、家のほうに行けば、いろいろ用意できるよ。二人が着れる服は常時あるから。まっ在人のは若干すくないけど。」


 左様でございますか。


「ではそれで、あー夢にも連絡しなきゃ。」


「それも、真に頼んだ。」


「ですか。仕事が早いこって。」


「もっとほめてー」


 才華はうへっへって顔がにやついている。

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