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2:2:0.2

 気が付くと目の前にはクルンさんの顔。 俺の頭側からのぞきこんでいるので顔が上下逆に見える。頭が冷えるのは濡れタオルがおでこにあるからか。あと体に多少の痛みもある。


「えーと、どう」


「あ、すいません。まだ動かない方がいいです。軽い脳震盪だと思います。」


 起き上がろうとする俺を制止するクルンさん。謝る必要ないのに。クルンさんの喋りからしてクルンさん自体に怪我はなさそうだが、念のため確認。


「えーと、クルンさんの怪我はないです?」


「はい、私は無傷です。すいません。かばってもらって。」


 この回答に一安心。謝る必要ないのに。とりあえず、才華、千歳に殺されはしないか。


「俺はどうなってたんです?」


「岩盤の破片が頭に当たって出血し、気絶していました。治療はしました。すいません。」


 どうりで少し頭痛があるのか。治療してくれたんだから、謝る必要ないのに。俺は自分の頭頂部を触ろうと右手を動かす、そして頭頂部ではないなにかに触れる。なんだ?


「あ、すいません。」


 頬を赤めてクルンさんは俺から目をそらす。?謝る必要ないのに。そうか、・・・クルンさんの膝枕だ。うおおおおおおおおおおお。いやいやいやいやいや。落ち着け。俺の手はクルンさんのお腹を触れたんだ。セクハラだ。2人に冷やかされる、睨まれる、殺される。まだ頭が動いていないな。なんで今になって気づくんだが。


「す、すいません。」


 謝る必要あるね。俺が。俺は今一度動こうとする。それを再度制止するクルンさん。


「あ、すいません。気にしないでください。本当にまだ動かない方がいいです。」


「すいません。」


 謝る必要ないのに。とりあえずお言葉には甘えて、もう少しこうしてよう。気持ちいいからじゃない。今後の活動のため体調を整えてるんだ。うん。後ろめたさ、いやらしい気持ちはない。うん。膝枕、気持ちいい。


「あ、すいません。ザイトさんのリュックを勝手に開けて、タオルと水を使ってます。ただ、その際なんですが、水の入れ物が見たこのないものだったので、結構水をこぼしてしまいました。すいません。」


「それは問題ないです。むしろ、治療してくれて助かりました。」


 水とタオルの件は治療の一環なんだから謝る必要ないのに。この世界の水筒はヒョウタンっぽいものか布袋みたいのだったからなー。とりあえず膝枕が気持ちいいことは分かったけど他は?


「ゴーレムはどうなってます?」


「近くにいたのは衝撃でバラバラになったみたいです。あとで心臓部を回収したいと思います。あ、すいません。こんな状況なのにがめつくて。」


 恥ずかしそうにするクルンさん。かわいいなー。謝る必要ないのに。膝枕気持ちいいのと商魂たくましいと感心してます。


「魔物は近くいないんですか?」


「当店の簡易結界を張る道具を使用したので当分は大丈夫です。あ、すいません。商品の紹介みたいで。」


 恥ずかしそうにするクルンさん。かわいいなー。謝る必要ないのに。襲われないのと膝枕が気持ちいいことで俺は安心だ。っと、それより一番の心配ごと。


「アルトアさんたちは無事ですかね?」


「私が見た限り、アルトアとサイカさん、スリッターとバインとチトセさんがそれぞれ同じ通路に逃げていました。チトセさん、サイカさんの魔力を感知する限り、淀みなく動いているので無事だと思います。広範囲の魔力感知はできるので。あ、自慢みたいですいません。」


 自信の漲った顔からすぐさま、恥ずかしそうにするクルンさん。かわいいなー。膝枕が気持ちいいのと感知範囲が広いは助かる。謝る必要ないのに。あの2人も感知でこっちに来ているのか。ん?・・・広範囲の感知ができるのに、あのゴーレムの接近には気付かなかったのはなぜ?


「すいません。普段はスリッターの鼻に任せているんで、感知はしてませんでした。本当にすいません。」


 俺の表情を読み取ったのか、疑問に答えてくれる膝枕の気持ちいいクルンさん。謝る必要にのに。それよりも最大の問題は


「俺らが一番やばいですね。」


 道中の様子から、アルトアさん、才華、千歳は1人でも問題なく戦闘できる。バインさん、スリッターさんの2人は非戦闘員だと言いつつも、協力してゴーレムを退治していた。俺とクルンさんは全く戦闘では活躍していない。膝枕の気持ちいいクルンさんもわかっているはずだ。


「・・・アルトアを1とすると、バインとスリッターで1、私は甘くつけても0.1の力関係です。すいません、弱くて。」


 クルンさんが申し訳なさそうにする。謝る必要ないのに。膝枕が気持ちいいのと薬草の判断はクルンさんの仕事なんだから仕方ないことだ。攻める理由にならんし、する気もない。


「俺らも、才華、千歳が1、俺が超甘くつけてもらって0.1です。すいません、登録者のくせに弱くて。」


 現状、戦力比率2対2対0.2だ。よりによって最弱同士のペアか。・・・俺が無力すぎる。本当にすいません。うーん。とりあえず絶望的だ。・・・・いやそうじゃない。切り替え、切り替え。1人でいるよりはまし。クルンさんがいるのは心強い。うん。そうだ。膝枕も気持ちいいし、魔法がある。俺は体を張ればいい。うん。そうだ。


「頑張りますか。一緒に。」


「すいません。お願いします。」


 膝枕が気持ちいいクルンさんは覚悟を決めた表情をする。謝る必要ないのに。



 俺も痛みが引いたので、立ちあがる。・・・さよならクルンさんの膝枕。名残惜しい気持ちが否定できない。


「さて、どうします。ここで救援待ちます?それとも進みます?」


「進みます。あ、すいません。偉そうで」


「謝る必要ないです。ただ、行き違いなったりはしませんか?」


「魔力の感知で場所の把握と、魔力のオンオフで進行方向などを知らせたいと思います。あ、すいません。少し待ってください。」


 クルンさんは目を閉じ集中している。オンオフで知らせる?謝る必要ないのに。


「あ、すいません。今サイカさん、チトセさんから下に向かうと合図が来ました。魔力のオンオフの間隔で、待機、進行方向 気配を消して移動。救助要請、了解などの合図のマニュアルがあるんです。アルトアたちもその資料は所持しています。感知だけは3人ともできるんで。」


 目を閉じたまま説明するクルンさん。謝る必要ないのに。魔力によるモールス信号みたいなもんか。似たような考えはあるもんだ。


「あ、すいません。勝手に決めて」


「謝る必要ないですし、問題ないです。・・・。」


「? あのどうしました?あ、すいません。」


 俺なんかよりずっと落ち着いているし決断もしてくれている。今までの行動から想像もできないくらい、めちゃくちゃ頼りになるのでつい凝視してしまった。謝る必要ないのに。


「いや、見た目若いのに、すっごいしっかりしているなーって思っていました。あ、すいません。失礼でしたね」


 俺は頭を下げる。エルフだけど女性に年齢はないよな。デリカシーがないと2人に言われる。けりとチョップがくる。あーいなくてよかった。


「100年以上生きてるんでみなさんより経験があるだけです。むしろ、それでも足手まといですいません。」


 クルンさんは手を振り否定してくる。まじかー100歳オーバーか。見た目じゃ全くわからん。謝る必要ないのに。


「謝る必要ないです。とりあえず行きますか。」


 クルンさんを先頭に歩き出す。膝枕の気持ちいいクルンさんの太ももを見るため、後をつけているわけではない。クルンさんが魔物の気配から道を選ぶそうだ。ときおりクルンさんは「すいません。」と謝り停止し、他のグループと交信する。また、ゴーレム、トカゲは感知能力がないようで、クルンさんの指示に従い岩陰に隠れるなどでやり過ごしていくので、戦うことなくスムーズに進んでいく。クルンさんの様子から千歳グループ、才華グループも問題なく進んでいるようだ。心配っちゃ心配だがあの2人なら大丈夫だという思いのほうが強い。


 

 落下してから大分たつけど、合流はまだ時間がかかりそうだ。つまり太ももをまだまだ凝視していても問題ないということだ。うん。このままなにもなく才華、千歳と合流できたらいいけど。・・・絶対にそれはないな。うん。俺の運のなさを俺は知っている。さてどうなる。合流するまでしのげるか。少なくともクルンさんだけでも合流させれればいいけど。あーやだやだ。間違いなく面倒ごとが起きるのがわかっていると。


「あークルンさん。歩きながらでいいんで、聞いてください。」


「あ、すいません。なんですか。」


 申し訳なさそうにこちらを一瞥しながらも歩くのをとめないクルンさん。謝る必要ないのに。


「謝る必要ないです。あのですね。俺、運がまるっきりないほうなんですよ。で、ここまでスムーズに来ているってことは絶対に落とし穴があるんですよ。」


「はぁ。つまりどうゆうことですか?あ、すいません。察し悪くて。」


 こちらを振り向かないが頭が下がるクルンさん。かわいい動作だ。謝る必要ないのに。


「謝る必要ないです。用はこの先また、面倒ごとが起きるってことです。それだけ覚悟してくださいってことです。すいません。」


「はぁ、わかりました。ご忠告、すいません。」


 再度こちらを一瞥するが、半信半疑な顔をしているクルンさん。まーそうなるよな。気持ち注意してくれるだけでもまだいいだろう。うん。注意喚起はこんなもんだろう。やるべきことをやったと思った矢先にアクシデント・・・・なんてないよな。


「ちなみに才華、千歳たちとはどれくらいで合流できそうです?」


「もう間もなくだと思います。アルトアたちは私たちの倍のペースで降りてきてますから。あ、すいません。魔物きます、隠れ、だめ間に合わない。」


 クルンさんが焦りながら杖を構える。俺もそれにつられ慌ててハンマーを構える。はい、早速ですか。たっくふざけてる。上からゴーレム3体、大型の4体次々と落ちてくる。そして囲まれる。今いる場所は落下したときみたく上もひらけた場所。上を見上げる俺。あらまー、通路が何か所か見えらー。あそこから飛び降りてきたんかい。

 

 落ち着け、落ち着け、落ち着け。慌てるな。慌てるな。まず何ができる?何をするべきだ?通路に向けて走り出したいところだが、無理だろう。クルンさんだけでも逃がせば、応援を呼べるか?とういかクルンさんだけを逃がすことすら俺にできるか?他グループが到着するまで持つか?とりあえずゴーレムたちはこっちを様子見している。ええい、同時進行できる能力も考えもないんだ、ひとつひとつなにかしないと。まずは


「クルンさん、救援の合図は?」


「あ、すいません。今送ります。」


 俺は周囲を再確認する。うーん。向かっている通路の前にゴーレムは3体。全部避けて行けるか?まず無理。どうしよう。どうしよう。才華助けて。千歳助けて。・・・駄目だ。落ち着け落ち着け。初手から救援を頼るな。②仲間がきて助けてくれる。は直前のクルンさんの話から除外。①突如反撃のアイディアがひらめく。にも能力的に丸を付けられないなら。④ひたすら耐え抜く。に丸を付ける。うん。これしかない。怪我はクルンさんに膝枕してもらいながら才華、千歳に治療してもらおう。うん。がんばれ俺。


「とりあえず、あの通路へ向かって走りますよ。気合い入れて攻撃よけてください。俺も全部はかばいきれないですから。」


「え、あ、はい。いやでも。すいません。無理じゃないですか。」


 クルンさんが冷静に至極全うな反論をする。謝る必要ないのに。が無視。少なくともクルンさんだけなら可能性はある。


「あー間違いなく俺が狙われるんで。その間にクルンさんは通路まで行ってください。そして才華か千歳を呼んできてください。はい。以上、行きます。」


 俺は前方3体に向けて走り出す。


「は、はい。すいません。」


 謝りながら走り出すクルンさん。今回は出遅れない。脳内イメージでは 先頭の攻撃は2人とも避ける。2匹目の俺が食らうか避ける。その隙にクルンさんは3匹目の攻撃をよけて通路まで行ってもらう。どうなるかな?


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