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母なる大地へレッツゴー

 鉱山の麓から歩きはじめ5分、早速、現れたのは全身岩石でごっつい人型の魔物。ゴーレムでいいのかな? 腕の太さが俺くらいはあるし、見上げる大きさだ。全身岩石なのにどう動いてんだ、あと刀やなぎなたで斬れるのか?ハンマーで砕けるか?


「まず、1匹目。はっしゃーーーー。はははははっはは。」


「才華、いっきまーーーす。」


「私も。」


 甲高い声で気合いを入れ、笑いながらアルトアさんが駆け出す。遅れずと才華、千歳も続いていく。ただ、アルトアさんの掛け声で力が抜けたのは俺だけか。ま、いいや。いってらっしゃい。


 ゴーレムがかかげた右手をふりおろし、アルトアさんを狙う。それをアルトアさんは大剣で受け止め、


「はっしゃー。」


 気合いと共にはじき返す、力負けしたゴーレムは体勢を崩す。ひゃー、すごい力。その隙をつき、才華、千歳がそれぞれ両足を斬りつける。2人もさすが。


「グガーーーーー」


 ダメージでゴーレムは声をあげ、両手をブンブンと振り舞わす。風圧がこちらにも感じる。直撃したらふっとぶなこれ。俺の不安をよそに、3人とも余裕をもって回避し間合いを取る。


 そして、俺は気づく。あれ、ゴーレムの足の切り傷が治ってきている。みるみるうちに傷がふさがってしまった。ありゃ。ちょっと傷つけたじゃ倒せないってことか。


「あーあれ。どう倒せばいいんですか。」


 俺の質問に


「普通に生きれなくなるまで、バラバラにする。まー縦、横4等分でもくたばるから。」


 とスリッターさんがあっさり答える。ふむ。千歳の刀なら出来るかな。


「心臓部を狙う、心臓部を切り離すじゃの。胴体部の一番分厚いところがそうじゃ。ただ、心臓部は回収したいのー」


 とバインさんがのんびり答える。才華のなぎなたなら心臓部潰すほうかな。


 3人の方を見ると、アルトアさんから同じ指示を受けたんだろう。才華、千歳は頷いていた。


「手助け不要ですかね。」


 3人が戦っているのを見守りながら、俺はリッターさんとバインさんに聞く。


「まー1匹なら。俺ら戦闘メインじゃないし。」


 とスリッターさん。


「お主の方こそ戦わんのかい?」


 とバイスさん。


「荷物持ちとおだてるのが役割ですね。戦いでは足手まといです。」


「なんだ俺らと同じか。大丈夫。大丈夫。気にすんな。なははは。」


「そうじゃ。そうじゃ。適材適所。がははっは。」


 アルトアさんへの信頼なんだろう。バインさん、スリッターさんも笑っている。


「魔物退治はアルトアの出番なんで。あと武器や防具の性能を試すのもアルトアの仕事なんです。あ、今は関係ないですね。すいません。」


 クルンさんが頭をさげる。謝る必要ないのに。


 ゴーレムの肩から腕がぶった切られた。才華と千歳がやった。


「ゴワーーーーー。」


 ゴーレムが痛みで頭をあげ叫ぶ。そこへ、アルトアさんが


「はっしゃーー。」


 大剣を横一線に薙ぎ払う。ゴーレムの上半身が腰元から落ち、下半身もその場に倒れこむ。そして、上半身にアルトアさんの大剣が振り下ろされる。上半身が左右に切られ、ゴーレムの動きが緩やかになった。

今気づいたが、切断されたところから出血などはなかった。ふっしぎーー。




「終わったのー。採取、採取。」


 バインさんがそう言い、スリッターさんもリュックを手に持つ。バインさんが手際良く、表面の岩石をそぎ落とし、結晶みたいでバスケッットボール大の心臓部と思われる部分を取り出す。心臓部がなくなったゴーレムはさらに細かく砕け散った。ありゃりゃ。


「この鉱山は心臓部を失った1体のゴーレムからできた場所とも言われています。あ、今は関係ないですね。すいません。」


 クルンさんが豆知識を披露する。謝る必要ないのに。へーそうなんだ。つまり山サイズの魔物がこの世界にいるのか。それはどう倒されたんだ。


「ゴーレムってどうやって生まれるの?これは見た感じただの岩なんだけど。」


 才華がゴーレムの破片だった岩石を拾って観察している。


「この鉱山のどこかにゴーレムが生まれる場所があるんじゃよ。他の鉱山のゴーレム系も一緒じゃ。」


 心臓部を回収し終えたバインさんが答える。


「それって魔物が際限なく出てくるってことですか?」


 千歳の質問。確かに。それってやばいんじゃないの。


「そうじゃ。」


 あっさり答えるバインさん。危機感はまったくないけど。


「危険性あると思うんですけど、その場所を放置しといていいんですか?」


「大量発生で街に危機が及ぶ可能性は否定できんが、ゴーレムは資材になるからのー。故にそのままにしとくんじゃ。危機を防ぐためにお主らのような登録者もおるし。」


 なーる。資材がなくなれば、街が立ち行かなくなったりするのか。


「昔、黄金のゴーレムもいたんですが、その出生ポイントを壊したため、ゴーレムが絶滅し金が取れなくなったんです。鉱山から取れたりもしますが、量は少ないんですよ。だから、金の価値は高いんです。あ、今は関係ないですね。すいません。」


 クルンさんの豆知識その2。謝る必要ないのに。ふーむ、だからこの世界の金の価値はバカ高いのか。それらを惜しみなく使った才華は周囲からどう見られたんだろうか。危ないやつらにマークされたりしたんだろうか、まー狙われても大丈夫だろうけど。そう考えながら、才華を見る。


「なーに。在人。私が金塊をポンポン使っているから、狙われたりしないか不安って顔してたねー。心配してくれるのー?うれしいねー。ぜひ、かよわい私を守ってよ。」


 俺の視線に気づき、才華は嬉しそうだ。相変わらず俺の心を読んでくる。それなら危機感を持つのと、か弱いって言葉の意味を調べなおしてほしいところだ。


「それだけじゃないわね。才華なら狙われても大丈夫って表情もしているわ。」


 はい、それも正解。千歳も俺の考えを読んでいる。俺ってそんなに考えが顔に出てるのかなー。


「あと、危機感を持ってほしいのと、か弱いの意味を調べてほしい。」


 一応、ダメ元でダメだしをダメ押しする。これ使い方あってるのか?


「在人のいう通りね。か弱いは才華に似合わないわ。」


 俺に同意してくれる千歳。顔が笑っている。


「なにそれー。」


 才華がキーキー噛みついてくる。あーうっさい。


「おーい。次いくぜ。」


 そんな様子を気にせず、アルトアさんが歩き出す。はい、じゃらけあうのは終了する。



 

 鉱山と言っているが、草木の生い茂った場所、洞窟などもあり、ここが資材集めに適している場所であることを


「すいません。」


と謝りながら、クルンさんが説明してくれた。謝る必要ないのに。

 

 ゴーレム以外にもトカゲやスライムの魔物がわんさか現れる。魔物は自分たちのテリトリーの侵入者を退治しに来ているだけとのクルンさんの説明。それらを退治し、資材となる部分を回収していく。採取の仕方をバインさんたちが教えてくれたので、才華、千歳は自らトカゲの角や胃袋の採取を血を浴びながら実践する。うーん、絵としてはグロイ部分があるのに2人は楽しそうだ。今後のため、俺も学んでおく。

 

 現れる魔物を3人が次々倒していくのを横目に、俺はバインさんの指示で鉱石、クルンさんの指示で薬草を収集していく。俺は鉱石、薬草などを才華用に少し回収するのを忘れない。


 さて鉱山に来て2時間くらいが経った。今は洞窟内で崖がある開けた場所にいる。洞窟内だがこの世界での街灯みたいのが洞窟の壁に設置されており、中は明るい。

 

「先人の努力の結晶です。あ、すいません。余計なことを」


 クルンさんからの豆知識その3。謝る必要ないのに。


 今いる場所は俺らが来た通路以外にも複数の通路があり、他の通路からきたゴーレムをアルトアさん、才華、千歳が1体ずつ、応戦中。まだまだ、魔物が現れそうだが、バインさん、スリッターさんは鉱石採取、俺はクルンさんと薬草採取にいそしんでいる。バインさんたちからアルトアさんの心配をするそぶりは全くない。


 「さらに魔物がここに向かっている。ここは足場が脆いし、崖もあるから移動するぞ。」


 スリッターさんが鼻をクンクン動かしながら、全員に指示を出す。匂いで魔物を位置を判断しているんだろう。ただ、足場がもろいのはどうして分かったんだ?見た感じでは分からん。


「スリッターはこういうのが得意なんです。あ、すいません。説明してる場合じゃないですね。」


 クルンさんが俺の疑問に答えてくれる。謝る必要ないのに。へー。


「クルンとこはもう移動しろ。もう来るぞ。」


 スリッターさんが声を上げる。俺らは崖際にいるからなー。落下なんかしたくはない。


「だそうです。」


「すいません。もう少しだけ。」


 クルンさんが手を休めず、薬草を回収しているので、俺も手伝う。


「すいません。行きましょう。」


 クルンさんが立ち上がり、アルトアさんたちの方を向く。謝る必要ないのに。


 よし行こうと思った矢先。俺らの前にゴーレムが上からドスンと飛び降りてきた。ありゃ、こんにちわ。俺は天上を見上げると、上方にもここへ繋がる道があった。飛ぶ降りるのはためらう高さなんだけど。しかも飛び降りてきたゴーレムは、今までみたやつより2回りは大きい。その大きさのためか、地面にひび割れが入った。あーやばいやばい。

 

 俺の右にクルンさん、前に大型ゴーレム、後方は崖。俺に狙いをつけているゴーレムをすり抜けれそうにはない。このままだと、あれだ、落下フラグだ。そんなフラグあるか?落ちるなら恋がいいのに。

 アルトアさんたちがこっちへ向かってきている。スリッターさんたちもだ。だが、さらに数体ゴーレムが飛び降りてきた。しかもひび割れがさらに広まった。思ったより地盤が脆い。ふむ、スリッターさんが注意するだけはある。


「すいません。私がトロい癖に欲張ったせいで。」


 杖を構えるクルンさん。戦うつもりなんだろう。いやいや、無理だよ。そう思いつつも、俺もハンマーを構える。が、アルトアさんみたく攻撃に耐えれない確信がある。今すぐ全力で逃げたいとこだ。ただ、クルンさんを置いて逃げたら、才華と千歳の手で俺は崖に突き落とされる。さらに岩石も投げ込まれる。目の前のゴーレムより恐ろしい幼馴染がいるこの事実。さてどうしよう。少なくとも俺が盾、いや囮にならんきゃいかん。


「クルンさん、俺と距離をとってください。1、2で突っ込みます。間違いなく俺が狙われるんで、その隙にアルトアさんの方へ行ってください。いきますよ。」


 思いつくのはこれだけ。なめられ属性のフル活用だ。俺もなんとか1撃は回避し、落下する可能性をなくそう。落下と怪我なら後者だ。怪我なら魔法で治療してもらえるし。うん。


「え、そんな」


「1」


 クルンさんの回答は聞かない。猶予もない。決断が鈍らないうちに行動だ。


「2、行きます。」


 俺はゴーレムに向かって走り出す。横目だが、クルンさんは出遅れていた。まーそれはいい。それよりよく見ろ、集中しろ。大型ゴーレムは両手を合わせ、振り下ろしてくる。よりによってそれか。叩き潰されるか、地面砕けるだろ。

  

 俺は横とっび回避。ズドンと地面にゴーレムの拳が叩き込まれる。なんとか回避は成功したかに見えた。ただ、回避の方向が悪かった。


「きゃ。」


 クルンさんとぶつかってしまった。あー俺のアホ、バカ、ドジ。まずい、クルンさんを守らなきゃ。俺は慌てて体勢を立て直す。が。それは無意味となった。

 


 

 ゴーレムのこぶしは案の定地面を砕いてしまった。それもあっさり。あーーーー。俺とクルンさん、大型ゴーレム及び数体のゴーレムは一緒に落下決定だ。ゴムなしバンジー。パラシュートなしスカイダイビング。レッツトライ。有限の先へ。母なる大地へレッツゴー。


「わーーーーーーーー。」


 俺は大声を出してしまう。落下先はなんだ。川か、地面か。湖か。こうゆうとき漫画じゃ川で、運よく助かるイメージがあるけど。現実は?そう現実は非情だ。答えは③だ。いやクルンさんなら、空からの地面激突を防いでくれた魔法を使えるのでは?。そうだ。きっと使える。ぜひお願いする。俺は脳内で②に丸をつける。俺はクルンさんの方を見る。


「すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。」


 クルンさんは俺を見ながらひたすら謝っている。謝る必要ないのに。俺のミスだし。んなことより。


「クルンさん。魔法、魔法、まほうーーーー。」


 俺もだめだ。パニック状態だ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。いやいやいや。落ち着け落ち着け落ち着け。そうだあれだ。才華たちとしたスカイダイビングを思い出せ。無理やり連れていかれ、実践したあの経験を思い出せ。


「すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。」


 まだ謝り続けているクルンさん。ある意味、平常だ。俺は無我夢中でクルンさんの肩を掴み、クルンさんを引き寄せる。これはセクハラではない。


「すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。


 肩が掴まれても、まだまだ謝り続けているクルンさん。とりあえず目を開けて。


「クルンさん、魔法。魔法。まほーーーーう。浮く魔法。」


 俺はクルンさんに叫ぶ。落ち着けないと思うけど落ち着いて。


「すいません。あ、魔法。そうですね。」


 やっと俺の願いが通じ、クルンさんが我に返る。これで助かるかも。しかし、


「すいません。私の魔法は長続きしないです。」


 クルンさんはすぐさま絶望的な顔になる。


「なら地面にぶつかる直前で。」


「すいません。発動にも時間かかるんで、直前だと1人にしかかけれません。」


「俺と体合わせて、俺に魔法かけてください。俺がクッションになるんで。」


 敬語を使う余裕もない。これしか思いつかん。クルンさんを引き寄せる。落ち着け。


「すいません。あ、底が見えてきました。」


 本当だ。川ではない、地面だ。衝突イコール即死亡だ。


「なら早く、早く。俺に抱き着いて、体丸めてください。俺の合図で魔法使ってください。」


 俺は体を地面と平行になるようにする。そしてクルンさんを抱き込む。ほっそいな。これはセクハラじゃない。このままいけばあと30秒くらいで地面か。ぎりぎりまで下をみなきゃ。上には大きい落下物はない。挟まれて死ぬことはないか。がんばれ俺。


 地面には落下した岩盤があるが、突起している場所はなさそうだ。串刺しもないだろう。20メートル、18、16、15、よし、ここかな?俺は背中を地面に向け。背骨粉砕でもいいから死にたくない。


「今です。」


 俺は叫ぶ。そしてクルンさんの魔法が俺たちを包みこんで、落下速度が急激に下がる。そしてゆっくり、地面に降りていく。ふーーーー助かった。と思ったら、


「が、は。」


 俺はうめき声を出し、地面に衝突する。魔法切れが想定以上に速い。2人一緒だからか?どっちにしろ10メートルの高さくらいだから衝撃がある。かーーーーきっくー。ま、助かっただけよしとしよう。と安心したら頭にドンとなにかぶつかる。あ、よくあるパーターンと思いながら、俺の視界は真っ暗になった。







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