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すいません。

 子蜘蛛来襲から一夜が明けた。昨日の件はそれなりの大事だと思ったが、街は至って通常運行だ。慣れがあるというのは本当のことだった。これには生きてきた環境の違いを感じる。


 今日、俺らはクエスト、シクはイナルタ魔法塾へ。ギルドも至って平常に思えたが、クエストの掲示板にアラクネルに関する情報欄が付け加えられてた。今のところ、アラクネルの人物像画、西の森への立ち入り規制、東の森の規制解除だけだが。


 俺がアラクネルの情報を注視していると、才華が


「これにしたい。」


 と1枚のクエスト用紙を取り、俺たちに見せる。


 材料採集 依頼者『道具屋ガンソド』 報酬20万、武器の手入れサービス付き

 南西鉱山にて鉱石等回収、魔物討伐

 詳細はお店にて。


「なぜにこれ?」


 俺の疑問に


「この世界だけの物質とかあるかなーって。それが装置の発展に繋がるし。お願い。」


 才華は興味深々な顔をしている。開発者としてはそそる部分があるんだろう。


「私はそれでいいわ。」


 千歳は頷く。


「ではそれで。」


「やった。じゃあ受付してくる。待ってて。」


 用紙を持ち受付に行く、ウキウキ顔の才華。いいんじゃないの。



 さっそく『道具屋ガンソド』に着く。店の壁に『武器、防具、小道具なんでもござーい。』と書かれている。ゲームの武器屋、道具屋みたいなもんなんだろう。乱世に世界一の武器商人を目指した太い商人キャラが頭をよぎった。店内の状況に少し興味がわく。才華がドアを開けようとするも開かない。開店前なのか。


「こんにちはー。クエスト依頼を見て来ましたー。」


 才華はドアをノックするも。返事がない。いや、


「・・・ください。」


 小さいが声が聞こえた。


「すいません。今開けます。」


 女の声が聞こえ、ドアが開かれる。


「すいません。お待たせしました。すいません。」


 出てきたのは金髪のエルフ。蝶のヘアピンが似合っている。スレンダーよりの体格でオレンジ色の服の上に青色のエプロン姿で美人。ただ強気、健全な雰囲気のガーゼットさんと違い、すごっく薄幸というか病弱というか疲れている雰囲気を醸し出している。あと、エルフだから年齢が分かんないけど、外見は俺らに近い年齢に見える。


「すいません。クエストの件ですね。中にお入りください。」


 そう言い、半身になり入り口からずれるエルフさん。そこで俺は気づく、正面からだとエプロンしか見えなかったが、エルフさんの服装は太もも全開に見える格好だった。おーう、なんちゅう恰好だ。すげーな。感性が違うのか。俺はつい目がいってしまう。あーまぶしいけど、目の保養になる。一番後ろにいたため、俺の視線に才華、千歳は気づいていないのが救いだった。


「はい。すいません。」


 千歳がお辞儀し店内へ。「すいません」がうつったのか。


「すいません。失礼します。」


 才華も千歳に続く。「すいません」はわざとだろ。2人の「すいません」にエルフさんもやや困惑している。


「なんか色々とすいません。」


 俺が最後に入る。俺は普通に才華の非礼と太ももを凝視していたことを謝った。


「いえ、こちらこそ。すいません。」


 なぜかエルフさんが謝る。謝る必要ないのに。



 店内は様々な武器、道具、防具が展示されて・・・・・・・いなかった。なんで?店内自体はよく掃除され、綺麗なんだけど。


「なーーんもないね。」


 才華も店内をキョロキョロ見渡す。


「オーダーメイド制だとか。」


 と千歳。なーる。それならありえるか?


「全部売れたんじゃないの。」


 俺の考えに、手を振りエルフさんが答える。


「先日、お店自体ができたばかりなんです。期待に応えれなくてすいません。」


 謝る必要ないのに。


「すいません。名前がまだでしたね。クルンといいます。」


 クルンさんが頭を下げる。謝る必要ないのに。


「お店は1人でやっている訳ではないですよね。」


 と千歳。


「すいません。そうです。奥で鉱山に行く準備をしています。少しお待ちください。すいません。」


 クルンさんが頭を下げ奥に行く。謝る必要ないのに。


 

 そして、奥から3名の人物を連れクルンさんが戻ってくる。


「あんたたちが、登録者かい、よろしく。あたしはアルトア。この店の材料収集担当。」


 俺よりも背が高く筋肉質だ。赤髪のポニーテール、左ほほに切り傷があり切れ目。戦士然とした赤色の鎧を装備した女性。年齢は俺らより上っぽい。雰囲気は姐御肌。ただポニーテールは青色リボンで結ばれている。ギャップあるなー。


「ドワーフのバインじゃ。武器防具作り担当。よろしくのー」


 才華より背は低いが、がっちりした体格。茶髪で、髭で口がぱっと見じゃわからない。まさにドワーフのイメージどおり。黒色胸当て、黄土色ズボン、黒色の前かけエプロンを装備している。年齢ははっきりわからんが年配だろう。


人狼ワーウルフのスリッター。道具作り担当兼副店長。頼むぜー。」


 狼の獣人。全身青白い体毛で覆われ、精悍とした目。ギザギザした歯。ただ、強面より、愛嬌がある顔つきに見える。こちらも年齢が分かんない。こちらは白色胸当てに灰色ズボンの恰好をしている


 これで全員なら店長ってもしかして。


「クルンさんが店長なんですか?」


「あっ、すいません。店長と薬剤を担当しています。一応、一番年上なので、店長なんです。」


 俺も質問に頭を下げ答えるクルンさん。謝る必要ないのに。


「準備できたから、早くいこーぜ。クルン。」


 アルトアさんが急かすと。


「あ、はい。でもその前に、皆さまのお名前を伺ってもよろしいですか。すいません。」


 確かにそうか。俺らは自己紹介してないか。謝る必要ないのに。


「千歳です。在人の恋人担当です。よろしくお願いします。」


「才華です。在人の彼女担当です。すいません。」


 二人は頭を下げ自己紹介をする。・・・・あーもー。TPOをわきまえてくれ。


「在人です。訂正担当です。2人の発言は気にしないでください。では行きましょう。」


 4人が呆然とし、才華、千歳がキーキー抗議してくるが無視。


「あ、すいません。それでは行きますか。詳細は道中でお話しますので。」


 クルンさんがハッとしながらも話を進めてくれた。謝る必要ないのに。とりあえずお店を出る。



「実際なにをすればいいんですか。」


 と千歳。


「えーと、鉱山で岩石の魔物を倒して素材として回収しつつ、鉱石、薬草などを採取します。」


「俺らはその魔物を退治すればいいんですか。」


 クルンさんの説明に質問する俺。俺らじゃなく正しくは2人だけど。


「まーそうなるね。あたしも戦闘メインだから一緒に戦うけど。頼りにしているよ。」


 グッと腕を上げるアルトアさん。まー大剣を背負っていて、逞しいからそうは思ったけど。


「俺とバインも戦うけど、本職は作る方だからアテにはしないでくれよ。」


 スリッターさんは鉈を大きくしたような刃物を持っている。


「そういうこと。だから頼むぞ、あんちゃんたち。」


 バインさんはこん棒だ。背中には盾もある。


「すいません。私は少しだけ治療と補助しか。あ、足手まといですいません。」


 頭を下げるクルンさんは杖を持っている。謝る必要はないのに。


「採集した鉱石とかって、7人だとそんなにもてないよ。」


 と才華。確かにクルンさんとスリッターさんがリュックを背負ってはいるが、大した量は入らないと思う。俺も背負っているが、簡易医療キッド、3人分の昼飯や水筒、タオルなので半分以上は埋まっている。


「あれ、このリュックのこと知らない?」


 アルトアさんが驚き顔をする。2人のリュックを再度見るも、至って普通のものだ。せいぜい同じゴロが入っているくらい。


「すいません。俺らド田舎から来たんで。」


「そうなんか。俺のやつは入り口が何倍にも広がって、家1件分の資材がはいる。クルンのは入り口は両手いっぱい分にしか広がらんが、家3件分は入るやつ。これらのリュックは重さは変わらんし、鮮度も保てる。便利だぜー。」


 スリッターさんが実際にリュックの口を広げ、答える。確かにスリッターさんのリュックは腕いっぱい広がっていた。なんとまー便利なもんが。千歳も才華もリュックに注目している。


「これをスリッターさんが作ったんですか?」


 千歳が質問する。


「いいや。これはここより東の国で売っているもん。まー値段高いし、ここらには行商が売りにこないと見かけんか。店が軌道にのったら、近いもんは作るつもりだけどね。」


「一応、損傷なら私が直せはします。あ、関係ないですね。すいません。」


 クルンさんが会話に入ってくる。謝る必要はないけど。


「魔法を使えるってこと、クルンさん。」

 

 才華が質問する。


「はい、武具に魔法付加するのも、私の担当ですから。あ、偉そうですいません。」


 へー。装飾だけじゃないんだ。謝る必要ないのに。そうなると、アルトアさんもなんか担当あるのか。




「話ついでなんですけど、魔法使う人って、なんで杖を持っているんですか?」


 と千歳。ゲームでは効果をアップさせたりするけど、実際はどうなんだ?クルンさんが杖の頭の部分を指さし。


「杖にはこのように魔法石がついています。その石の種類によって、自然から魔力収集率を上げて、自分の魔力温存。魔法の威力増加。発動までのタイムラグの短縮など魔法を使う際の補助、魔法を放つこと事態もできます。基本、石同士で相性があるので、一般的には2つの効果を付加していますね。ちなみに私の場合タイムラグの短縮と治癒です。2つ以上つけることは可能ですが、製作が難しくなるので値段が跳ね上がります。あ、説明が長くてすいません。」


 へーそうなんだ。俺には一切関係ないけど。謝る必要ないのに。


「例えばさ。その効果をこのなぎなたや刀に付けたりはできるの?」


 と才華。


「付加自体はできます。ただ、魔法石自体は脆く、鉄みたく刃などにすることにはむいてません。例えば、サイカさんの槍なら、持ち手の部分を全部魔法石から作れば十分かつ複数の補助効果がでますが、その持ち手部分自体は脆くなりますなので実用的ではありません。なので効果を限定した魔法石を持ち手の部分に付属させるのが一般的です。また少量で効果の大きい魔法石は稀少なので値段は高いです。あ、すいません。また長い説明で。」


 謝る必要ないのに。今の説明から、2人の武器に魔法効果を付加するのは厳しいかな。まぁ、なくても問題ない気もするが。


「ふーん。なるほどねー。」


 クルンさんの回答に考えこむ才華。なにか思いついたか?ろくでもないことは勘弁してくれよ。










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