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寝て育て。

 買い物の翌日、今日の朝食当番は才華。メニューは味噌汁、小松菜と豚肉ときのこの炒め物、卵焼きだ。

千歳の飯より食べる機会は少ないけど、うまいんだよなー。才華は金持ち嬢様、引きこもり、化学系オタク且、自宅にいれば自炊不要であるため、メシマズ系のイメージだけど料理は上手だ。無論、最初からできたわけでもない。両親が仕事で不在が多くなったため、千歳が自炊を始めた。そのころから才華も、俺の嫁になるため、千歳に負けなため、ばーさんからの圧力などから努力を重ねてきたのだ。


 実は昨日の夜、朝食当番について一騒動があった。始まりはシクが自分も当番をすると言ってきたことなのだが、そこで


「子供はよく寝るべきね。だから朝は私たちにまかせて。」


 とまず千歳が賛成しない。才華もそれに賛成し、俺もそう思っていた。しかし、シクは引き下がらなかったので、千歳が助けを求める視線を送ってくる。はいはい。そこで俺の実感した睡眠の大切さについて(科学的根拠は知らん)シクに説明した。


「シク、聞いてくれ。俺の身近な体験なんだけど。よく食べて、よく動いて、よく寝たら、こうなった。」


 俺は千歳の胸を指さす。それに合わせドンと胸を張る千歳。顔もドヤ顔というか才華に勝ち誇った目線を向けている。


「才華によるとDカップ。」


「最近、Eカップになりました。」


 まじょで。カップがシクに通じるか知らんが、どっちにしろ立派な山脈ですなー。あとこういう時、恥じらいがないのは助かるけど。女性としてはどうなんだ。シクの視線も千歳も胸だ。というか凝視している。


「んで、よく食べて、よく動いて、割りと徹夜が多いとこうなった。」

 

 今度は才華の胸を指さす。才華も千歳に負けず胸を張る。才華も才華で自信満々な顔をしている。


「千歳によるとBカップ。」


「Cカップよ。」


 それ本当?どっちにしろ千歳には見劣るけど。シクの目線は才華の胸。そして、自分の胸を見て手で触れている。・・・まだ平野だもんね。これからだよ。これセクハラだよな。


「・・・でも。」


 まだ納得いかないようだ。家事をお願いするとはいったけどそこまで生真面目じゃなくていいんだけどなー。仕方ないこっちが少し折れるか。


「うーん。なら10日に1回でお願いする。それ以上は一切譲らない。」


「・・・わかりました。」


 とりあえず、これで納得してくれた。シブシブといった表情があるがそれは無視。良かった良かった。と思ったら、才華が膨れている。


「私が千歳よりないのは、装置を作るのに徹夜が多かったんだから。在人のせいだ。責任とれ。責任とれ。責任とれ。責任とれ。責任とれー。」


 ・・・それだけじゃないだろ。アニメ一気見、ゲーム長時間プレイ、同人誌作成もあるだろ。むしろそっちが多いだろ。俺もそれに付き合ったことあったし、このことでばーさんに小言を言われてただろ。と言いたいがグッと堪える。


「どう責任とればいいんだよ。」


「その両手で揉め。ありたっけの愛をこめて揉め。この胸を愛せ。この胸に溺れろ。」


 暴走し叫んでくる才華。そんなに千歳に負けてるのがくやしいのか。十分な大きさだと思うけど。


「わかった。その胸は愛する。」


「本当!」


 顔が綻ぶ才華。ちょろい。でも気づいてないな。俺は胸だけ愛せばいいんだな。それでいいんだな。この様子を見て、今度は千歳が膨れる。あーもー面倒だ。


「ざいとー。私はー。」


「全部愛するよ。才華は胸だけ愛せばいいみたいだし。」


 千歳にも反射で答える。千歳は顔がニヘラーとしている。こっちもちょろい。対して才華は俺の発言の意味に気づいて、また叫んだ。


「なにそれー。そうじゃないよー。違うよー」


 この場が混沌としてきた。シクはどうせばいいかわからずオドオドしている。これからこういうことは何度も起きるから早く慣れてほしいもんだ。だが、なぜ今こうなった。俺たちはシクによく眠ってほしかっただけなのに。混沌が収まったのは1時間後だった。


 

 今日はクエストに行く前にイナルタさんのところへ、シクを魔法塾に通わす手続きに行く。イナルタさんのところでシクを紹介し、週3回コースで手続きを済ませる。手続きが終わったところで才華が


「イナルタさん。一つシクのことでお願いがあるんですけど。」


「悪いけど。あの子の就職先、保護者ならガーゼットに頼んだ方がいいわね。ターロホのところはまー働くならいいかもしれないけど、保護者としてはちょっとね。」


 イナルタさんが答える。これには才華が驚き顔。この読みは200年の経験故か年の功か。どっちにしろ、流石です。


「正直、今の稼ぎで、2人で生活するのは無理なの。ごめんなさいね。」


「ううん。無理なお願いでこっちこそごめんなさい。」


 才華が頭を下げる。まー仕方ないね。


「収入面でいったら、ガーゼットは安定はしているけど、ターロホが一番あるわね。」


 へー。ガーゼットさんは公務員だからわかるけど、ターロホさんの方が稼ぎはいいんだ。以外な気がする。


「ターロホは見た目だけで、相当の客を集めてるからね。そこにもう少し努力があればもっと稼げるはずなのよ。ただ、あのズボラドラゴンはそれを面倒がっているけど。」


 俺の疑問に答えてくれるイナルタさん。なーる。と思ったところで、


 ブーーーーーーーーーー。ブーーーーーーーーーー。


 サイレン?が街中に響く。なんだ?火事?俺はイナルタさんの顔を伺う。


「ギルドからの警戒放送ね。この音なら危険度2。内容はこれから流れるから、よく聞きなさい。」


 警戒?危険度2は何段階のうちなんだ?内心焦る俺とは違い、イナルタさんは至って冷静だ。


「ギルドより緊急放送です。ギルドより緊急放送です。西の森より、大型蜘蛛が大量発生し、こちらへ向かっております。登録者の方は至急、西門へ集合をお願います。また、住民の方は自宅で待機してください。繰り返します。・・・・」


 大型蜘蛛。間違いなくアラクネル関係だ。でも東の森じゃないのか?なぜに西から?俺は考える。


「行きましょう。在人。才華。」


 千歳の声で俺もはっとする。そうだ。まずはそれだ。ここで考えても仕方ない。あと俺が考えても仕方ない。


「ええ。」


 才華も頷く。シクは1人で帰宅してもらうか。俺はそう考えシクを見ると、シクは顔が真っ青で、さらに震えていた。更に、その手は千歳の服を掴んでいる。シクは明らかに怯えている。シクにとってはアラクネルとの遭遇かららまだ一ヶ月。恐怖はぬぐえないか。トラウマだろうし。こういうときなんて声をかければいいのか。


「シクはここで待っていて。」


 千歳は手を放してシクに微笑む。しかし、シクは形見のペンダントを握りしめたまま、震えている。


「やだ。いかないで。1人になるの嫌。」


 その様子を見ていた才華は、シクの前でしゃがみ込み視線を合わせる。


「シク。小指出して。」


 シクは言われるまま右手の小指を出す。才華はシクの小指と自分の小指をからませる。シクには意味が分かってない。イナルタさんも2人の様子を不思議そうに見ている。こっちの世界にはないんだ。


「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。指きった。」


 指を切り、立ち上がる才華。


「なに。今の?」


 呆然としているシクの代わりにイナルタさんが質問する。


「絶対に約束を守るときの手段。約束破ったら拳骨で一万回殴って、針千本飲ますってこと。」


 才華がにっこり笑い、シクに説明する。


「安心してシク。私たちは帰ってくるから。」


 そして、シクに優しく微笑む才華。その表情に一瞬見とれた俺。言葉に出来ない感情が。まずいまずい集中しないと。俺が約束やぶることになる。シクはまだ不安そうな顔をしている。


「イナルタさん。成り行きで悪いんですけど、シクをここでお願いします。お礼は後日するんで。」


 俺はイナルタさんに頭を下げる。


「お礼はいいから。帰ってきなよ。ここは安心していいから。」


 イナルタさんの返事を聞いて、俺は右手でシクの頭を撫でる。


「終わったら迎えにくるから。大丈夫。才華と千歳はこうゆうとき、約束は守るタイプだから。」


 シクは無言で頷いてくれた。イナルタさんにもう一度頭を下げ、塾を出る。



 西門へ向かう途中、俺の懸念を口に出す


「・・・アラクネルに遭遇したらどうするつもり。」


 2人の回答は予想通りだった。

 

「倒す。シクのためにね。千歳もそのつもりでしょ。」


「うん。良子さんやコアちゃんとの約束をやぶっちゃうけど。私は譲らないわ。在人。」


 だよなー。そうなるのはわかってたけど。俺はシクの件がなかったら戦うつもりはなかったけど。ただコアが1人で戦いを禁止される蜘蛛女。その中でも上位にあると思われるアラクネル。危険は尽きない。俺は一考し覚悟を決める。


「わかったけど。俺の条件に従って。

 1 ギルドの指示に従う。 

 2 街を守ること、身を守ることが優先。

 3 アラクネルを探しにはいかない。子蜘蛛退治が優先。

 4 アラクネル遭遇した際は、俺達が重症を負ってない、魔力切れ、体力切れになってない。かつ他に

  戦える人がいるときに戦う。

 5 俺達だけで戦うのは、人を助けるとき。退路がないとき。街に近いとき。街中に入ってたとき。

 ってな感じ。」  


「りょーかい。」


「うん。分かったわ。」


 2人は反論なく了承してくれた。良子さん、コア、事後承諾になるけどこれで勘弁して。俺も2人の意向は尊重したい。シクのためにもできることはしたい。俺だってそれぐらいは考える。

 

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