約束の品は伊勢回転操装置
とまぁ、役者はそろったようで。雰囲気もいつもどおりになりました。俺も千歳も椅子に座り、
「で話のつづきだけど。」
俺が話始めると
「あーん、ちとせぇーー。在人がひどいんだよーー。」
才華は椅子から立ち上がり、千歳の胸に顔をうずめ、俺を指さし、ぐうたら少年を真似る。
「どうしたんだい? 才華くん。」
千歳も才華の頭を右手でなでながら、ふだんしない君付けをし、青いタヌキを真似る。
「約束忘れて、私の長年の時間をドブにすてたのー。それだけでは飽き足らず、私をさんざん利用した挙句、ポイして、若い真のところへ行っちゃたのー。あの蔑んだ瞳がいいってさぁー。」
最初以外でたらめでウソ泣きの才華。千歳は顔をこちらに向け
「それはひどいねー。真ちゃんも危ないわ。」
よしよしと言いながら才華を慰める。突っ込むの面倒なので、俺は一言冷たく言い放つ。
「3歳しかかわらんだろ。」
「基本3歳違ったら中学高校はかぶらないのよ。その差は大きわよ。」
えーい話が進まない。俺は千歳を見て
「千歳は奥に何があるのか知っているの?」
問いただす。千歳は
「10年前、教室、欲しい物。って言ったら思い出す?」
ヒントを出してくるが、俺にはピンと来ない。その様子を見た千歳は目を丸くし
「本当に覚えてないんだ。」
あきれてる。んなこと言われてもなー、俺の記憶力を君たちと比べられても困るよ。あきらめの早い俺は
「本当に申し訳ありません。千歳さま。才華さま。この愚かな私めに答を教えてください。」
90度腰を曲げ、頭を下げる。千歳は
「もー相変わらず、あきらめるの早いんだから。」
さらにあきれている。
「そうだね。でも、このまま答えがでず、あきれてる二人の姿を俺は見たくないんだよ。早く真実にたどりついて、二人の満足する行動を俺は実行したいんだ。時間は有限だからさ、少しでも早く動き出したほうが、二人のための時間も増えるだろ。」
とか言ってみる。才華は千歳の胸に顔をうずめるのをやめ、立ち上がり、
「聞いた?千歳?しかたいなー。もー。」
満足した顔をしている。どうやら許されたそうだ。ちょろい。
「じゃあ早速見てもらいますか。こっちこっち。」
千歳によって部屋の奥のドアが開かれる。3人で奥の部屋へ移動する。
隣の部屋に入り、そして俺は絶句する。
「どう、思い出した?」
千歳は俺の顔を覗き込む。
「む、まだわかっていないな。その顔」
才華は俺の顔を見て口を突き出す。そりゃそうでしょ。見たこともない機械ですもん。
正面から見た形は凸型、真ん中にはドアがあり、左側には計器がいっぱい、右側にはキーボードとモニターが付いている。
「なんですの?これ?」
素っ頓狂な声で質問する俺。 二人はドアの両端に立ち、片手を機械、反対の手を俺に向け伸ばし、こちらを向く。
「「異世界転送装置。」」
はもって答える二人。
「・・・伊勢 回転 操装置?」
俺は首をかしげる。伊勢の回転を操作する装置ってこと?なにそれ?あっ伊勢市を回転させるってこと。余計わからん。10年前の俺は伊勢市を恨んでいたのか?頭が混乱する。俺が理解していないのを表情から読み取った二人
「「異世界 転送 装置。」」
顔を横に振る動作もシンクロし、はもる二人。
「いせかい てんそう そうち?」
「「い せ か い て ん そ う そ う ち。」」
「異世界転送装置?」
「「い せ か い て ん そ う そ う ち。」
「異世界転送装置」
俺の頭は真っ白になる。先の会話から10年前の俺が欲しがったもの。SFの世界。アニメ漫画の世界。
「要するに?」
才華は胸を張り、手を腰にあて仁王立ち
「オタク、引きこもり、夢見る少年少女、10年前の君が目指してやまなかった異世界に行ける。」
千歳は両手を俺のほうに伸ばしながら
「選ばれし者となって世界を救う異世界生活、チートな力を手に入れ裏で表で活躍する異世界生活、探検、冒険する異世界生活、ハーレムを手にする異世界生活、スローライフを楽しむ異世界生活、そんな異世界での生活がドアの向こうに。」
解説してくれる。
「さぁ、行くよ。」
「さぁ、行きましょう。」
二人の声が重なる。これ練習してただろ。
・・・異世界に行ける。違う、行くことになる。これはすごいことだ。うん、本当にすごいことだ。俺も勇者になったり、チートな力を手に入れたり、ハーレムを手に入れることができるかもと。うん。興奮している。驚いている。興味ないといったら嘘になる。・・・・いや、待て、落ち着け。そんなことは現実にはありえない。ありえねー。あるはずがない。
そうだ。うん。そうだ。あれだ。これは才華の罠だ。昔何度かやられたドッキリだ。さらに混乱してくる。
「・・・嘘でしょ。あっ今日4月1日だったね。」
俺は騙されない。信じちゃだめだ 信じちゃだめだ。信じちゃだめだ。ドッキリ、ドッキリだ。
「嘘じゃないよ。」
「4月1日はとっくに過ぎてるわねー。」
至って平常運航の二人は心外な顔をしている。15年以上の付き合いだから、嘘は分かるつもりだ。だが今までの会話、動作に嘘の気配がない。
「夢だ。催眠術だ。超スピードだ。」
早口になっている俺。夢ならあり得る。催眠術ならあり得る。ザ・ワールドならあり得る。俺は何を言っているんだ?
混乱している俺とは対照的に、
「ありのまま今起こっている事を話すわよ。今、在人の目の前には異世界転送装置があるのよ。何を言っているかこれでわかると思んだけど。なにかをされたわけでもない。頭がどうにかなったわけでもない。催眠術とか、超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてないわ。もっとも恐ろしい片鱗を味わってはいるでしょうけど。」
才華は冷静に返してくる。千歳も冷静に
「いったん落ち着きましょうか。在人。深呼吸。深呼吸。はい。すってー。はいてー。すってー。はいてー。・・・」
深呼吸の動作をする。俺はそれに従い、深呼吸する。
「すーはー。すーはー。すーはー。・・・」
よし。落ち着いた。・・・かぁ?
「もう一度聞くけど、嘘でしょ?大がかりなドッキリ。」
才華はやれやれといった動作と表情で
「しつこいなー。嘘じゃないわよ。」
千歳は右手で口を隠し、微笑みながら
「嘘じゃぁないわねー。」
まだ信じられない俺の顔を見た才華は
「もー。したら、私たちの汗を舐めてみな。嘘をついてる味はしないから。においも嗅いでみなよー。嘘のにおいはしないから。早く早く。レモンの味とバラの香りがするはずよ。」
自信満々に言ってくる。そして、二人ともなぜか自らの上着の首元を下に引っ張る。そこを舐めろということかい。俺はさすがに引く。
「ふーー。転送装置なんて作れるの?。」
服を戻し、才華はドヤ顔で
「忘れた?」
さらに背筋を伸ばし、右手を高く挙げ、
「私の科学はーーーーーーーーーーーー。」
甲高い声を出す。千歳も背筋を伸ばし、左手を挙げ、そのまま才華の右手にハイタッチしながら、右足を上げ、
「「せかいいちーーーーーーーーーーーーーーー。」
二人、目線はこちらに満面の笑みではもる。これも練習したでしょ。ジョジョネタ3連続のノリを見て、俺は落ち着いた気がした。
落ち着いた?俺は地べたにあぐらで座り込み、才華と千歳も装置前の社長椅子に座る。俺は今一度質問する。
「1個ずつ聞いていくけど。異世界転移装置でいいんだね。どゆもの。」
才華は椅子を一回転させ、俺のほうを向くと、キリっとした表情で
「この装置で、異世界に召喚されるんじゃない、こちらから向かうんだ。
偶然巻き込まれるんじゃない、自力で乗り込むんだ。」
3部主人公28歳時風に説明してくる。4連続目。体格が違いすぎるだろ。あと、文章でしか分からんだろ。それ。
「意味わからん。も少し具体的にお願い。」
才華はにやつきながら、
「私たちのいる世界とは違う世界へ行ける装置。あのドアが異世界とこの世界をつなげて、ドアをくぐるとあら不思議、在人一行は異世界に到着ーというわけ。ドアにはカメラがあって、モニターで異世界の様子がわかる代物よ。お家に一台いかが?」
「原理は?」
「聞いて理解できる自信ある?」
「ない。完成品?試作品?」
「試作1号機ね。完成品ではある。」
「偶然できたとか?」
この質問に才華はムッとした顔に変わり、
「それは私に対する侮辱よ。」
怒りがこもっていた。俺はすぐさま謝る。
「だね。ごめん。」
「わかればよろしい。」
互いに真面目な顔つきに戻る。
「安全性は?実験は?」
「ドアが違う世界とつながるのは確認している。安全性は壊されない限りは大丈夫。」
「本当に異世界?」
「はい。モニターで撮った写真。」
写真を数枚渡される。うーん。三つ目の犬?がいっぱい。その犬より大きい火を吹く鳥?あっ女の人・・・ではないね。下半身が蜘蛛だ。
「加工写真だ。と言いたい。」
「はいはい。」
そういった言葉はあきあきといった顔で答える才華。
「・・・異世界はどんな感じ?」
「とりあえず、人が生活できる環境。1年365日1日24時間、時間の流れも一緒ということは確認している。」
「人はいるの?」
「蜘蛛女の足に破れた服みたいな布。矢の刺さった三つ目の犬が数匹。少なくとも物を作れる種族がいると考える。」
俺は少し目をとじ考え込む。ハードな異世界。戦わなければ生き残れない世界。1狩りいこうぜ的な世界の可能性が高いと。俺は目を見張らき胸を張って、自信満々に言う。
「俺は戦って生き残れる自信がない。」
「「私たちが守ってあげる。」」
自信満々にVサインを出し、ウィンクで答る二人。ありゃ。逞しいしカッコいい。俺は質問に戻る。
「実は転送装置はすでに世界にあって一般人は知らないとか。」
「財閥で知りえる範囲ではない。この装置は在人との約束のために完成させた世界でひとつだけのもの。」
「装置でひともうけは?」
「今は考えていない。これはお金のために作ったわけじゃないから。まぁ製作途中のアイディアはお金になったけど。」
「知っている人は?」
「兄貴夫婦、良子、真、この研究所の数人ってところね。」
「誰も止めなかったの?」
「まっ私事だし。私が止まる訳ないし。私の天才性を信じたんでしょ。」
「でありますか。」
「であります。」
なるほど、なるほど。
「とりあえず、最後の質問。約束って?」
やり取りを見ていた千歳が
「はい。これー。」
A4用紙を1枚、俺に渡し説明する。
「10年前、才華がこれを作ったら家族になろう。って約束したわけ。まぁ私はそこに割り込んだようなものだけど。」
紙には「異世界に行く機械」が赤丸で囲まれていた。これを見ても俺は何も思い出せない。俺の脳よもう少しでいいから働いてくれ。頼むから。家族って結婚のことかい。10年前の俺よそんなで結婚してよかったのか?あーさっきのコントで才華の言っていた人生は結婚で、指輪は結婚指輪か。
「うーん。まだ思いだせない。って顔ね。」
人差し指を唇につけ、千歳は俺の表情を読み取る。はい。すいません。
「でも。これは本当のこと。あのときの在人は間違いなく異世界に行く機械を望んでいた。だから才華は10年かかって作った。これは並大抵のことじゃないよね。」
少し憂いを帯びた表情の千歳。そんな顔すんなよ。
「私は何もしていないけど。約束は一日たりとも忘れてはいないわ。」
表情は変わらないけど、言葉に力はこもっていた。その表情を見ていた才華は立ち上がり、
「そんなことはないよー。千歳は私を手助けしてくれたよ。」
千歳に励ましの声をかける。
「異世界での安全性について考えたのは千歳だし、私は繋げることしか考えていなかったら。カメラとモニターも千歳が言ってくれたんだから。あと、疲れがピークの時の私にご飯作ってくれたし、着替えさせてくれたし、お風呂で体を洗ってくれたし、ハグしてくれたし、マッサージしてくれたし、コスプレしてくれたし、膝枕してくれたし、胸揉ませてくれたし、甘えさせてくれたし。大人のかいだ・・・」
うーん。いい話が脱線してきた。俺の表情にあきれが出ていることに気づいたのか
「と に か く!私一人の力ではない。それは言える。」
締める才華。
「なるほどね。」
とりあえず。今までの2人の様子からこの装置は信じがたいけど本物で、俺との約束があったことは確信した。俺が覚えていないだけで。
「10年前ねー。」
「時間はかかったわー。あっ、まさか。作れないで、苦しんだり悩んだりする、私が見たかったんじゃないのー?性格わるーい。」
上目遣いで俺をのぞき込む才華。おい。
「それとも。できないって泣きつく才華をいたぶりたかったんじゃないー?」
千歳も上目遣いで俺を覗き込み、才華のノリにのってくる。先ほどの表情はもうない。それはいいことだ。それは。うん。それはな!そこからのこの切り替えは早くない?おい。
「ははっ。」
「ふふっ。」
二人は笑っている。くっ。突っ込みは控えてやる。
俺は手に持っている紙を見てみる。ほかに何が書いてあるか気になったからだ。そして俺は絶句する。
1 JOJO4点セット (石仮面、スーパーエイジャ、弓と矢 ケープカナベラルへの旅行券)
究極生物、天国へ行く?
2 小聖杯と大聖杯
英雄を望んだのかなぁ?
3 子供
10歳だよね、このころ?
4 BF団
全てはビックファイアのために?
5 フロンティア船団
超自由シンデレラと銀河の妖星、アイドルデビュー?
6 異世界にいく機械。
これが一番できそうに思ったのかな俺は?
7 大人な私♡
メルモちゃん?
8 鉄の鬼神
破壊願望があったのかなぁ?
・・・才華、基準はなんだ?当時気に入っていたものか?10歳ってこんなもんか?俺が欲しそうにしてたのか?才華は作れると思ったのか?どれが簡単にできるんだ?|(子供が簡単に見えてしまう。) 100年過ぎてもできそうにないものだらけじゃないか。結局そのうちの一つをたった10年で完成させた、お前どんだけ天才なんだよ。
・・・紙をそっと俺のズボンに閉まった。次にどれほしいといわれても困る。子供か大人な私二択じゃないか。20歳の思考はそう至るよ。10年前の俺よ、選択は間違っていなかったかも。




