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決めるのは

 20分後、千歳とシクが部屋に入ってくる。シクは綺麗さっぱりしている。コートを脱いだからフカフカしたしっぽが見えてる。2人はテンションあげて触りそうだけど、俺が触ったらセクハラか。とその前にシクの今後だ。


「千歳ありがとう。シクはそこに座って。」

 

 才華がシクを室内の椅子に座らせる。うーん。相変わらず、不安がにじみでてますなー。さてどうでる。と俺が考えを巡らせたてところで千歳が


「まず、改めて自己紹介ね。私は千歳。よろしくね。」


 優しく微笑む。確かにまともな自己紹介をしてないな。慌ただしかったのもあるけど。


「才華よ。かわいいのは好きで堅苦しいのは苦手だから。そこんとこよろしく。」


 締めで才華がビシッとシクを指さす。今のは次回予告か。


「俺は在人。楽にしていいから。」


 そう言ってみるがシクの雰囲気は変わらない。


「あの。その。わ、私はどうなるんですか?」


 不安な目で聞いてくるシクに才華が胸を張って答える。


「はっきり言て何も考えてないよ。ここまでしたのはあの2人組とボトムスの思い通りになるのが気に食わなかったから。それで私がシクを買っただけ。ぜーーーーんぶ私の都合だから。あとはシク次第。行くあてがあるなら必要なお金は用意するよ。行くあてがないなら一緒に住んでもいい。提案はするけど、シクが決めて。」


 あら、本当になんも考えてないな。でも顔は笑顔だから吹っ切れたのね。うじうじ悩んでるよりはいいけど。この回答にシクはぽかんとしている。


「私は一緒に住んでも問題ないわ。そうしましょう。ね。」


 千歳がシクの髪を整えながら優しく付け加える。シクは戸惑っている。


「でも、私は皆さんに300万ゴルの借金が。」


 才華がきょとんとする。


「借金?あーお金は一切気にしなくていいよ。全部私の都合なんだから。」


 さすが金持ち。器も大きいですな。シクは顔を下す。


「都合ですか。」


 まだ不安は解消されないようだ。


「ほかに聞きたいことは?」


 俺が聞くとシクは震えだす。あれ?なんかまずい?


「・・・本当のことを言って。私、奴隷?商品?300万の借金の肩で売られるでんしょ。皆さんの言うこと、私には都合良すぎ。」


 シクが震えだす。千歳も手を止める。


「そ、そんなつもりはないって。」


 俺がオドオドしながら返す。俺のタイミングで泣くなんて。


「嘘だ。嘘だ。嘘だ。そんなの信じられない。さっき私の都合って言ったじゃないですか。ようするに私を利用するってことでしょ。あの2人みたいに。そうに決まっている。」


 シクが立ち上がって叫ぶ。さらにシクの目には涙が浮かんできた。才華はその様子を見ながら、冷静に返す。


「他に言いたいことは?」


「300万ゴルも返せない。父さんも母さんも兄さんもいない。どう生きてけばいいの。こうなるならあのとき一緒に死にたかった。この先、なんの希望もないし。生きている意味もない。」


 シクが泣け叫ぶ。


「ふーん。死にたいなら死ねば。それがシクの決めたことならそれでいいよ。お金は返さなくていいし、お墓なら家族4人分用意してあげる。」


 才華は態度を変えない。これは子供には厳しくない?いや大人にでもだけど。


「才華!なに言ってるの。」


 千歳がシクを抱きしめながら、才華を見る。


「私がボトムスからシクを買ったのは、少なくても選べる自由をあげるため。厳しくて冷たいかもしんないけど、自分で今後のことを決めてもらうためよ。シクが選んだことになにも言う気はないよ。・・・どんなことでも。」


 才華は淡々としている。が。こぶしは握りしめられているし歯を食いしばっている。本心じゃ死なせたくないのに。あの2人組やボトムスさんとは違うことを証明するため、シクの意志を尊重するのか。そうゆう考え方も分かるけどさ。その様子を見て千歳も、


「ごめん。」


 一言静かに謝る。そして、俺に目を向ける。うーん。どうせばいいでしょ。と悩んでもしかたないか。才華と千歳に言ったようにできることをしよう。とりあえず行動だ。失敗しても2人にフォローしてもらおう。・・・人任せすぎかな。ええい、深く考えるのはやめだ。ノリと勢いだ。あとからの苦情なんて、言わせとけばいい。


「振り出しに戻るけど、シクはどうしたいの?」


 できるだけ冷静な口調で俺は問いただす。


「分かんない。決められない。」


 顔を両手で覆いながら答えるシク。まーそうなるわ。


「だよね。すぐには決められないよな。うんうん。7歳だもん。俺の感覚では才華が少し厳しいよ。才華や千歳なら決めれると思うけど、俺みたいな一般人には無理だよ。うん。俺がシクでもそうなる。」


 ここから、俺は気分明るく答える。空気を換えたかったからだ。才華なんか悪者にしてごめん。俺は才華を見る。才華は何も言わずにいる。なりゆきを見守っているみたいだ。今は見ててくれ。


「んで。俺は才華と考え方が違うから。シクに考えがないなら、シクの今後を俺が決めつけちゃうよ。まずシクの『生きてる意味』や『これからどうするか』が決まるまで、ここに一緒に住んでもらう。だから死ぬのは認めないし、嫌でもさせない。」


 口からでるでる反射と勢いだけの言葉。シクの様子なんてあえて無視。止まるな、緩めるな、押し切れ、俺。


「ここで家事をしてもらって、その働き分の給料を支払うから。それで決定。面倒だから反論も聞かない。それを恨むなら、とことん恨みたまえ。むしろその恨みのパワーを活用しな。俺はいつでも苦情、反論、報復、復讐、逆襲を受け付ける。」


 俺はシクを指さしながら宣言する。俺は嫌われるのにも慣れているから、こんなことが言える。3分の1で誰かが嫌われるなら、それは俺の役割だ。譲るわけにはいかん。ただ、宣言はしたけど2人の顔を伺う小心者でもある俺。


「私はそれでいいわ。」


 千歳は頷く。賛成1票。


「シクがいいなら。文句はないよ。」


 才華はシクを見つめる。賛成もう1票。2人の同意は得た。よし。


 シクは顔をあげ俺を見る。目は疑いの目だ。まだだ、まだ終わらんよ。


「あと本当のことを言うよ。まず、シクの立場は奴隷でも商品でもなく、うちのメイド兼友人。シクの行き先は俺らがこの街にいる間はこの家。」


 シクの表情は変わらない。俺はシクの前で正座をする。これで表情が困惑するシク。ここで、もう一手。ユニバーーーーーーース。


「とまぁ、信じられないよね。でもいいよ。それで。でも俺はともかく、この2人のことを少しだけ信じて。シクのことを知ってから、ずっとシクのために行動している。それだけは、それだけは。お願い。」


 俺は土下座をする。・・・この世界に土下座は通じるのかな?土下座のあとで気づくから俺はバカなんだよなー。さてどうかなこれで。俺は頭を下げたままでいると、


「あの。なにをしてるんですか。」


 シクが戸惑いの声で聞いてくる。おーーーー通じなかった。自分で自分の状況説明はなんか恥ずかしいので、俺は頭をあげ、2人に助けを求める。


「土下座って言ってね。私たちの故郷での最大限のお願いや謝罪の仕方なの。」


 千歳が説明する。説明ありがとう。


「うん。室内だから本来の言葉的には違うけど。どっちにしろ。するほうは恥って感覚があったり、やすやす行うものでもないの。」


 才華が付け加える。へー室内だと違うんだ。知らなんだ。恥は気にしてないからいいし、やすやすした内容ではない。


「なんで、なんで。そんなことまでするんですか。私なんかのために」


シクが不思議そうな顔をする。なんでって言われてもなー。


「なんで?」


 俺は2人に尋ねる。


「シクがかわいいから。2人組が気に入らなかったから。シクの笑顔が見たいから。」


 才華が満面の笑みで答える。


「かわいそうだったから。助けたいと思ったから。シクの辛い表情を見たくないから。」


 千歳が優しく微笑む。


「2人がそう望んだから。」


 俺も立ち上がり答える。


「だから、2人のことを信じてもらいたい。そのためなら俺は土下座をするよ。」


「でも私、お金を返せない。」


「お金は気にしないでいいよ。俺が言うことじゃないけど。」


 俺は2人を伺うと。


「笑うこと。私はそれで十分よ。」 


「当分一緒に暮らして。私はそれで満足ね。」


 2人が即答する。さいですか。


「だって。シク。だからさ、少し一緒に暮らして、シクはどうしたいかを考えて。あと暮してる間でさ、俺らを信じられないと思ったらさ。」


「思ったら?」


 千歳が聞いてくる。これでラストワン。


「ギルドにクエストを出すなりして、裁判にすればいいと思う。ただ犯人は俺だけにして。そこだけはお願い。」


 これが俺のできることだろう。あさはかでもいい。バカでもいい。2人の誠意、善意には俺も協力する。


「そのときは私がシクに金塊をあげるから。それを報酬に当てなよ。」


 才華がシクの右肩に手を置く。ん?


「そうね。それがいいわね。証拠は私たちが用意するし。」


 千歳がシクの左肩に手を置く。あれ?シクは2人を見ながら戸惑っている。


「シク、在人を犯人するときは、私たちが捕まえるの協力するから。」


 才華が興奮しながらシクの手を握る。


「ただ、在人の扱いは私たちに決めさせて。お願い。」


 千歳もシクの手を握る。息が荒い。2人の考えはシンクロしてるみたいだ。ただ、これじゃあシクの利用じゃないのか。


「俺をどうする気?」


 俺は呆れながら質問する。


「シクの前では言えないわ。ふふ。」


「アンなことよ。ひひ。」


 2人がニヘラニヘラしている。おかしいな、どこで間違えた。シクに信じてほしいだけなのに。話が大幅にそれた。俺の内容が悪かったか。この様子をみたら、シクは別のところに預けた方がいいかも。はー。今は、とりあえずこの件を締めよう。


「話が逸れたけど。少なくとも2人はシクの味方側ってこと。とりあえず、返事ちょうだい。」


 俺はシクの回答を待つ。直前にやりとりで、味方と言い切れない俺がいる。く、やっぱり最後に失敗をする俺。シクは目を閉じ天上を向く。そして

 

「買われた身なので従います。今日から、お世話になります。」


 こちらを見て答える。疑いの目はなくなった。うーん。まだ堅苦しいけど、ここからでいいか。


「じゃあこれからよろしく。」


 これでシクが住むことは決定した。2人も一安心した顔をしている。良かった。ここまで強引だったかもしんないけど、もう覆させないよー。





















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