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不安を抱えて

 クエストも終了したことから、


「私も戻るわ。その子の住民登録もしとくから。」


 ガーゼットさんはそう言ってギルドに戻っていた。住民登録お願いします。


「さてと、シク。はい、まずこれ。もう手放さないでね。」


 才華が形見のペンダントをシクに差し出す。シクはペンダントを受け取り、


「あ、ありがとう。」


 シクがお礼を言う。形見のペンダントを大事に抱えているが、顔は怯えている。今後のことが心配か。シクにとっちゃあ買われた先が才華になっただけだもんな。・・・俺らも人買いか、悪党として拍がついたもんだ。とにかくシクをどうするのかなんも決まってないし。


「とりあえず、家に帰ろうか。シクの今後については家で考えよう。」


 とりあえず問題を先送りする。俺の常套手段だ。2人も頷いた。シクは多少の荷物があるのでそれを取りに才華と路地裏に行くことになった。


「お風呂沸かしといてね。すぐ戻るから。」


 才華はそう言って、背負っていた荷物を俺に渡す。これ結構重い。なに入ってるんだか。



 帰り道に千歳に質問する。


「俺らの世界から何を持ってきたの。これ結構重いんだけど。」


「医療関係の資料と道具、コアと見るアニメとシク用の服とか。」


「医療関係?何に使うのさ。怪我は魔法でなんとかなるんじゃないの?」


「ジーファが言っていたの。魔法での治療は緊急のときや治療手段がないときに使用するもので、日常的には使わないほうがいいんだって。それで、今後のことを考えて私たちの医療知識を覚えておくことにしたの。」


「ふーん。でも覚えるのに時間かかりそうだけど。」


「こっち来てから、物事を覚えるのが早くなった気がするから、今回持ってきた分は1週間で全部覚えるわ。実技はまぁ在人に実験台になってもらうし。」


 にっこり笑いこっちを見てる。笑顔だけなら微笑ましいが、さらりと恐ろしいことを言ってるし、言われた。確かに魔法の基礎を1日で覚えたし、負傷するのは間違いなく俺だし。1週間でできちゃいそうだし。

 

「・・・シクの怪我はどうするつもり。」


「お風呂で全身を見て。酷いところは魔法で、あとは時間をかけてね。」


 笑顔から一転、少し辛そうな顔をする千歳。治療は2人にまかせるしかないからその件については追及しない。空気を換えるため質問を変える。


「あっちの世界で資料とか用意してた間、ターロホさんはどうしてたの。」


「ん。コアみたく通訳の魔法をかけたから、装置のあるとなりの部屋でお茶を飲んだり、雑誌とか見てもらったりして待っててもらったわ。見るもの全て珍しいってターロホさんが言ってた。」


「へー。魔法は俺らの世界でも持続はするんだ。使えたりはしたの?」


「ううん。才華が試したけど、使えなかったわ。あと身体能力も戻ってた。」


「良子さんとターロホさんはどうだったの?」


「ふふっ。お互いの姿を見て、2人とも言葉を失ってたわ。」


 千歳の様子から相当驚いただんな。良子さんはガーゼットさん。ターロホさんは沙緒里さん。顔は一緒だからなー。ぱっとみじゃ区別付かんし。面白い状況だ。くっ、いいな、それ。


「へー見たかったなー。動揺する良子さんってあんまり見ないし。」


「うん。見てほしかった。私と才華が部屋を離れている間も2人で話ははずんだみたい。」


 ・・・うーん。千歳の雰囲気がおかしい。何か悩んでいるようだ。なにを悩んでいるのか。まー家で聞いてみるか。

 

 家に入るなり、荷物を投げ捨て千歳が俺に飛びついてくる。千歳はもう泣きそうな顔だ。


「なに。どうした。千歳。」


「ん。私ね。シクになにもしてあげれなかった。今日も結局、才華が全部解決したし。シクあんなに可哀想なのに。可哀想と思うだけで、なにもなにもできなかった。」


 あーそうかい。それで悩んでたのかい。やっぱり優しいね。俺は右手を千歳の頭に添え、千歳の全身を抱き込む。


「うーん。まだまだやることはいっぱいあると思うよ。」


「どうゆうこと?」


 千歳が不思議そうにこちらを見上げる。くっ、つい見惚れる。いかんいかん。


「才華がまず動き出して、千歳が補ってくってのがいつものパターンじゃん。俺がいじめられたときとか、装置作ったときもそうだろ。」


「そうかも。」

 

「今回もそうだよ。シクの顔見ただろ。まだ、全然笑ってない。確かに才華が2人組とボトムスさんとの件は解決したけど、それだけ。」


 現状はそうだ。今後どうする?家に住んでもらう?どこかに預ける?実家とかに送る?一緒に住むとしても、俺らとはいつまでもいられない。そのあとは?問題はいっぱいある。全部が全部、俺らが決めることじゃないかもしんないけど。7歳の子に全て決めろというのも厳しい。


「むしろこれから。シクの今後のために、千歳がなにかすればいんじゃないの。千歳ならできるって。俺もできることをするつもりだし。まぁ何ができるか俺にはわかんないし、結果につながらないことの方が多いけどさ。」


「ふふっ。最後言わなくて良かったんじゃないの。でもありがとう。在人。そうだね。うん。まだまだこれからだね。」


 千歳の顔が明るくなった。よかったよかった。解決だ。でもなぜか俺から離れない。


「やることあるよ。」


 俺の質問に千歳は顔を俺の胸に押し当て


「ん。もう少しこうしてたい。シクのために必要。」


 シクのためって言えば許されると思っているのか。まぁ今回だけは許すけど。今回だけな。


 千歳が離れたのは5分後だった。


「よーし、やるわ。まず、在人はお風呂のほうお願いね。」


「あいよ。」


 俺は千歳の指示に従い、お湯を沸かし、その後、千歳と一緒に空き部屋と荷物の整理をする。そして、才華、シクの帰りを待つ。



 ほどなく2人が帰ってくる。シクは割と大きいリュックを背負っている。中には服と回収できた家族のものが入ってるとのこと。ただシクには怯えが見える。


「シクはまずお風呂。そのあと、今後について考えるから。在人は荷物を部屋に持ってて。千歳はシクとお風呂で、シクを綺麗さっぱりにして。さぁ入って入って。」


 才華がシクをまくりたてる。


「うーい。リュック承りました。」


「シクこっちね。」


「は、はい。」


 シクと千歳は浴室へ向かいにというか、シクは千歳に連れさられていく。俺はシクのリュックを持ち、シクの部屋に才華と向かう。


 部屋に入ると、才華が俺に抱きつき、深刻な顔をする。才華もかい。どうした。さっきまでの元気はどこいった。おい。


「在人。シクね、家に来るまでなにもしゃべらなかった。私が話かけても、ビクつきながら『はい』とか『うん』って言うだけ。ペンダントを握りしめたままでね。笑いもしなかった。」


 声も落ち込んでいる。シクにとっちゃ、2人組との件でショックは大きい。まー人間不信にもなるか。今後どうなるかも分かんないだろうし。


「そうかい。まだ怯えてるもんな。まだ俺らのこと信じられないんでしょ。」


「私が『買う』ていったからかな。どうせばよかったかな。」


 俺は右手を才華の頭に添え、才華の全身を抱き込む。・・・俺もワンパターンだな。


「うーん。正しい答えは俺にも分かんない。ただ、才華はシクを助けたかったんでしょ。それなら、いろいろやっていこう。千歳にも言ったけど、俺もできることはするから。」


「千歳にも?」


 不思議そうにこちらを見上げる才華。いかんいかん。また見惚れてた。


「うん。なにもできなかったって悩んでいた。でもやれることをするって」


「そうなの。でも、そうだね。私もそうする。ありがとう。在人。」


 そう言うけど離れない才華。この光景もデジャブ。


「離れないの?やることあるしょ。」


 俺の質問に才華は顔を俺の胸に押し当て


「ん。もう少しこうしてたい。千歳もしてたでしょ。絶対。」


 はい、そうです。よーお分かりで。


「5分だけだよ。千歳はそれで離れたから。」


 才華が離れたのも5分後だった。行動かぶりすぎ。



 













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