人里
表に出ないはずの黒歴設定
Q プジャン連鎖界には数多の術がありますが、在人になんらかの術の才能はないのですか?
「……行きますか」
「ええ」
拠点となっていた海岸から集落を目指す。その集落は直線距離だと徒歩で3日くらいの距離。実際の道もわからなし、ナビなんてないからもっと掛かる可能性は大。どこにか看板なりがあるといいんだけどな。
まずは現在位置の特定。ここがどこなのか判明しないとなにも始まらない。
そこから、行き先の選定。ヤセントまでの道のりを決めたいし、日程も把握したい。
装備品、道具の充実。周囲の魔物状況。旅路の危険性。情報収集。これらも可能な限りしたい。
戦力の増強もはかりたいところだが、なんともいえん。神具を持った鴨をどう見うるか。世界を数う神具使いと見るか、ビックチャンスを背負った鴨と見るか。判断がつかん。
なので、ただの旅人といきたいところだが、だとすると今度は、この世界の常識を知らなすぎる。
絶対にボロはでるし、そこから、怪しまれる。怪しまれたら、どうなるかも分からない。狙われる?追放される?変人奇人ですむなら一番ましだが、それもそれで嫌ではある。
結局、無知な新人戦士で行くしかない。ここはもう賭けにならざるえない。出たとこ勝負である。
信頼できて、頼りになる人物を見付けるのが一番いいが、そう簡単にはいかない。仕方ないことだけど。
真希奈さんが初歩知識技術を習得していた間で、近くに林道があることは分かった。整備されたわけでもないし、人が通るのを見はしなかったが、それでも道があるのはありがたい。
海岸から森を進んで、とりあえずは林道へ。魔物はすべて真希奈さんが返り討ちにした。
林道にでた真希奈さんは東方向を見る
「……集落はここより東方向にあります。……おそらくですが、この道をゆけば着くと思います」
「ですか。魔物の気配は?」
「……変わらずですね」
道があっても魔物には関係ないか。
「……たぶんですが、この先は山道になると思います、……なので頂上に着いたら……そこから浮遊で周囲を確認します」
山道を登っていくか。服装は愛音の装備を使っているから、問題ないとして、問題は体力だな。天候とて変わりやすいのでは?季節が冬でないだけありがたいと考えるか。
「それは龍脈読み?」
「……はい。まだまだ朧気にですが」
視線は林道から逸れた先を見ている。真希奈さんにはこの森がはどのように見えているのだろうか?
「……行きましょう。お昼前には着きたいですね」
「だな」
道中で気づいたこと。まず1本道ではなかったこと。それと集落からの距離数やら方向やら書いてある看板があること。これらで人の通りを考慮されているのがわかる。つまり、林業以外でこの道を通る人がいるんだよな。観光?修行?魔石集め?
休憩をはさみながら、なんとか、お昼に頂上へ着く。
頂上といっても森の中なので、本格的な山ではない。そこから、真希奈さんは浮遊で周囲を確認する。そして、結論が真希奈さんの口から出る。
「……半島のようです」
俺の通信機で撮影してきた動画を見せてもらう。
「……この道は半島を一周するようにあるようで。……ここが私たちの着いた海岸になります……。そして、分かりにくいですが、わずかに煙が見えました」
画像を拡大するとなんとなくだが、煙っぽいものが見える。気がする。よく見えたな。ハイテクの塊の通信機のカメラでもかろうじて映る距離なんだよな。
「なんの煙なのかは分かりませんが……」
「今、目指している場所と一致している」
「そうです。……距離がありましたので、建物は見えませんでした。……あの砦のような場所ではないと思われます」
大都会や拠点とかではなく、田舎なのか?それともまだ発展途上国にも至っていなくて、このレベルが普通なのか?
「どっちにしろ行ってみないとわからないか」
「……ええ」
「とはいえ、まずは昼食と休憩ですね」
「……そうですね」
休憩は大事。マジで。真希奈さんの体調はこのタッグの生命線だからだ。
戦いを回避したり、苦戦したり、疲労困憊で動けなくなったり、真希奈さんが発熱でダウンしながら、6日間が過ぎた。神具のアトリエや俺の鞄の薬やらがなければ、真希奈さんは死んでいたと思う。だが、生き延びて、たどり着いた。
「……あそこですね」
「うーん。農村ってところかな」
林道より目的地であった集落を見下ろす。建物は見えるだけで20件ほどで周囲に畑。ビニールハウスもあるし小型のトラクターも走っている。農村っていうのは違うかも知れないが、便宜上、農村でいいだろう。見た感じは平穏。
「……銭湯を兼ねた宿みたいのもあるみたいですね」
真希奈さんの指さす方向を見ると、確かに他とは作りの違う建物が1つ。煙の出ている建物の前に看板があるから商業施設だと判断できる。自宅敷地に看板があるならともかく、自宅前に看板があるなら、農家ではないだろう。たぶん。
「この半島を巡る旅行者なり、冒険者用ってところか?」
「……かもしれませんね」
「あと少し、頑張ろう」
お金はないが魔石で宿に泊まれる可能性はあるだろう。最悪、宿に泊まれなといても、食料問題があるので、今日にはたどり着きたい。できれば、日の落ちないうちにだ。
それと今気づいたが、この半島側には堅牢な門に策が設置されている。魔物対策なんだろう。一応見張りらしき老人もいる。といっても門の見張り台で椅子に座っているだけのように見えるが。
ん?あれ以外にも魔物対策はあるんだろか?定期的に冒険者が討伐?管轄する国の兵士が対応?それとも自分の生活は自分で守ると住民自ら?それともここまでは来ない?いやでもつい先ほども魔物と対峙はした。わからんな。
「……はい」
顔に疲れが見えてきたな。少し歩くペースを落とすべきか。
通信機の時間で夕方に門にたどり着く。そう門にはたどり着いた。ただ、門を通過していない。その理由は
「止まらんか」
と見張りのじいさんからボーガンを向けられたから。さらに鐘での警報が響きわたる。
門に次々と人が集まってきた。男性陣は皆、ボーガンや槍など武器を携行している。事前の予想通りだったため、向こうが落ち着いて話を聞いてもらうのを待つしかない。
「……目線はこのままで聞いてください。右端のおじいさん以外に魔法、術を使える人はいなさそうです。……あと門の奥にも人はいます」
小声で真希奈さんがつぶやく。魔力感知で門の奥の人はわかるとして、魔法、術を使える、使えないはどう判断したんだ?
門からは
「人に化けた魔物か?」
「なぜ半島側から?」
「ここ数日、門を通ったものはいないよな?」
「美人なのがより怪しい」
「あんな美人が通っていたら、記憶している」
「人間なら告白したい」
「冷酷に見下ろしてほしい」
「男は子分だな」
「荷物持ちか、盾か、奴隷か。椅子か」
などなどが聞こえる。ふむふむ。はい。とりあえず住民の通行はないと。真希奈さんは美人だということは分かった。美人だってことは分かっていたけど、分かった。あと俺は奴隷ではない。椅子?大丈夫かかの集落?
動揺が止まらない様子だったが、代表と思われる老人が現れると、空気が変わる。代表がこちらを見下ろした後、周囲のほうへ向きなおる。
「ふむ。様子はどうじゃ?」
「今のところは大人しいです。長」
「私はこの村の責任者じゃ。このような状況で悪いが、いくつかお話を聞かせてもらってよろしいかな。お若いの」
高所から見下ろすことと、武器を構えていること。会話をするとしては対等とはいえない。だけど、集落から見れば不審者な俺たちだから、仕方ないか?
「……構いません」
冷静に答える真希奈さん。さてここから、穏便にここを通っていけるか?
「まず、そちらは何者ですかな?」
真希奈さんはヤセントで受け取ったステータスカードを取り出す。これで、魔物の疑いが晴れるといいが。
「……私たちは来るべき遺物魔との戦いに備えて、聖ヤセント王国に集められた……戦士の一員です」
嘘は言っていない。俺は微妙なところだが、真希奈さんは遺物魔との闘いに向けて、異世界から召喚された神具使い。
遺物魔という言葉に、住民は各々の反応をする。脅威であることは間違いないか。
「ふむ……。ではなぜこの半島側から現れたのです?」
「……移動の最中、魔物の襲撃に合い、……運よくこの半島の浜にたどり着いたのです」
嘘は言っていない。拠点でこれから始まるぞってところで、魔物の襲撃。それを退くも、この半島の浜へ転移する。まあ、集落側は船の難破や船から落ちたなどと思っているかもしれないが。
「……なので、私達はヤセント王国への行き方を知りたいのですが、……ここは何処になります?」
「ふむ。その前におぬしらが人である証明をしてほしい。そのカードを死体から取り上げ、化けた可能性も否定はできぬのでな」
「人にしか、術は使えないです」
ここで言う人とは人間、エルフ、ドワーフ、小人、巨人、有属人(角、目、翼、模様などがある人)、獣性人(獣っぽい人、人っぽい獣、虫、竜っぽさもここに含まれる)等のこと。
魔物や遺物魔の魔物は魔石があるため、魔法や魔力を使うのが基本になっている。
「……術と魔法の区別はつきます?」
それができる人物にあくまで気づいていない振り。演技には見えないので意外と嘘つきなのか、役者なのか。神具に選ばれるだけあって、一癖も二癖もあるのか。
返事を待つことなく、樹木に手を当て、枝を増やした。その様子を見た長は、魔法使いのじいさんの方を見て、魔法使いのじいさんも頷いた。
「ふう。門を開けてやりなさい。彼らは無害のようだ」
門が開いたので通してもらう。ただ、何名かは警戒を解いていないように見える。
「ふう。済まないの。情勢が情勢なもんで、警戒せざる得ないのだ。窮屈かもしれんが、我慢してほしい」
降りてきた長が頭を下げる。遺物魔のことを考えれば、不安にならざるを得ないか。自衛は大事。
「……不安なら、買い物と行き先の確認さえできれば、すぐ出ていきますが」
必要な物資と情報はさすがに譲れない。だが、それさえあれば、長居も無用。
「さすがにも日が落ちるからそんなことは言わん。冒険者用宿で止まるのがよかろう。ゆっくり休んでいきなされ」
「……ありがとうございます」
お礼を言って、俺たちは宿へ。ちなみに交渉の際、俺は黙っていたのは下手をこかないためであり、真希奈さんが自分でも交渉の経験を積んどきたいと言ったからだ。結果的に上手くいってよかった。
俺だとどうなっていたことだか。
宿のカウンターにいた店主と女将らしき夫婦に事情を説明し、長は上がっていた。カウンターには薬もおいてある。
「食事付き、1泊で1部屋でいいのかい?」
「……それと薬と食料を。あと魔石の買い取りはできます?あいにく手持ちがありませんので……」
道中得た魔石を取り出す。魔石で目立つのは7つ目鬼のもの。大きさも違うし、輝きも違う気がする。魔石は魔物の強さや大きさで違うようだ。
「こんな田舎じゃあ、買取全部は無理ね。食料はお隣で買いな。で、この大きいの1つで薬、宿代にお釣りでいいかい?」
7つ目鬼の魔石をもらい、銅色の硬貨6枚を渡してくる。
「……ではそれでお願いします」
「……いいのかい?」
「? はい」
驚き顔で停止した売り子と不思議そうにしている真希奈さん。どうも、食い違いがあるみたいだが、俺にも理由が分からない
「いや。相場で言うと、私のぼったくりよ」
「……そうなんですか……」
動揺こそ小さいが、少しだけ困った表情となった。まあ。この世界の適正価格なんて知らないから、こんな反応にはなる。
「こっちとしては交渉開始のつもりだったんけど、拍子抜けね」
「戦士として鍛錬していたんだろ。世間知らずってやつなんだろ」
「そうなの?」
店主の言葉に女将さんはこちらを伺う。
「……ある意味外界と関わらず……引きこもっていましたから、……そうなります」
嘘は言っていない。異世界から召喚されたから、この世界とのかかわりはない。そして、真希奈さんは入院生活で引きこもりだった。
「はあ。戦う技能と生きる技能は別ってことを知らないのかねえ。あたしは嬢ちゃんたちが不安だよ」
あきれた表情となる女将
「……それらを学ぶ直前にこちらに来てしまったもので、学習していくしかないですね」
嘘は言っていない。おそらく、そこらへんのフォローをあの姫殿下なら入れてくれるはずだ。たぶん。
「だとしたら、余計運がないねえ」
「……それはどういった意味です?」
「ここらは影響ないけど、今この国はバカ皇帝とその取り巻きのせいで国内が情勢不安でね。まっとうな状況じゃあないのよ」
「おい。滅多なことを言うな」
「だってよ、本当のことだろう」
女将の言葉に店主の反応。噂やホラではなさそうだ。遺物魔問題がある状況で情勢不安って大丈夫かこの国は?転移先が情勢不安な国なことを嘆くべきか。それでも影響の少ないこの村近くに転移できたことを喜ぶべきか。いや、それよりも。真希奈さんもこちらに視線を向けたので、俺は頷く。
「……その話を詳しくうかがってもよろしいです?」
これは詳しく聞いておく必要がある。
「それは構わないけど、食事後でいいかい?まずはお風呂にでも入ってきな」
「……そうですね」
微笑んで薬を受け取る真希奈さん。
A 現作者「ありません。術を使う予定は一切ありません。世界が変われば眠ってた才能が目覚める?それは創作物の世界のみの話です」
在人「いや、これ創作物」




