森の戦い
表に出ないはずの黒歴史設定
Q 工房になんで炊飯ジャーはなかったんですか?てかコメはあるんですか?
この世界での魔法と術がある。
術はさらに系統が分かれており、仙術 錬金術 精霊術 祈祷術 治癒術 他の系統(霊術 陰陽術 言霊術 唱術 幽体術 召喚術 空間術 媒体術等々)
その区別の大本は魔力を使うか使わないか。
体内外にある魔力を練り発動するのが魔法。体内外にあるエネルギーを使用し発動するのが術。
術に使うエネルギーは生命力なり、気なり、感情なり、力の流れ等など。
それ以外の違い
魔法は個人個人の得意分野による差はあれど、なんでも平均的には使える。
仙術は誰でも使える体形となった術はあれでも、基本はなにかに特化している。
参考例
炎が得意な魔法使いは、他の属性の魔法を使うことはできる
炎が得意な仙術使いは 炎一点集中となっている。戦闘力の高いものは2,3種類得意分野はあれども、全て使えるなどはほぼいない。
高度な魔法の発動にはが陣の展開が必要 ようは図面を書く 魔法陣グルグルとかかな
高度な術の発動には印が必要 体で象る、文字を書く 術名を口に出すなど 呪術回戦かな
使い手が多いのは魔法>錬金術=祈祷術=仙術>精霊術=治癒術>他の系統となっている。
魔法と術の二刀流はあるし、戦闘力トップ陣になると3,4つは使える。
ランカ・リイド社刊 『さらに向こうへ行く君のための入門書 まずは無知を知れ編』より
真希奈さんは、魔法、仙術、治癒術、幽体術、媒体術に手ごたえがあったらしく、魔法と仙術の基礎を2日間で叩き込んだ。5つもあるのは天才というべきか?
逆にピンとこなかったのは。今は亡き神への祈りを力にする祈祷術と精霊と契約し力を借りる精霊術。本人曰く、祈祷術が使えないのは信仰心が薄いせい。じゃあ、精霊術は?
なんか、精霊がまともに相手をしてくれないやらで機能しない。異世界人が原因なのかもしれないと。ちょっとショックを受けていたが、俺にはどうしようもできなかった。
「ふう」
初戦を終えて、一息つく真希奈さん。人食い植物を炎で燃やすことで勝利。外傷はなし。汚れもなし。疲労はあるようだが、戦いである以上それは仕方なし。仮に無尽蔵な体力があっても、動けば体力は減る、それが普通だ。
海岸から森に入り、真希奈さんの感知で1匹だけの魔物を探す。
そこから、不意打ち。
木製の鏃を飛ばす。鏃は火の付きやすい種類のもの。
そこから、炎の魔法で燃やす。イメージはメラ。
木製の鏃の追加。今度は長く燃える種類のもの。
風の魔法で煙、匂い、火の手を一か所にとどめおく。
これらをできる限り静かに行う
それで無傷の勝利。いきなり真正面で戦うのは無謀に思えたので不意打ちした。卑怯とは言わせん。生き残るためには、だ。
2戦目は真正面からの対決。不意打ちばかりできるわけでもないし、異物魔との闘いとなれば、どこかで真正面からとなる気がする。とかなるだろう。
相手はスライム5匹。ドラクエのスライムと見た目は革新的だったことを思わせる不気味な姿。
体当たりをかわしながら、1匹1匹、炎で丁寧に燃やし尽くす。
木の上から不意打ちをかけてきた6匹目。ひやりとした俺とは対照的に冷静だった真希奈さん。頭めがけて飛んできたスライムをかわし、指先をそっとむけて地面に落ちきる前に燃やし尽くした。
一息つく間もなく3戦目。相手はクワガタ型と蜂型の魔物。どうやら魔物同士でやりあっているところで、こちらに来たらしい。縄張り争いでこちらを巻き込むはた迷惑な奴ら。1匹ずつか、せめて一息をつけてからにしてほしい。言ったところで無意味だが。
3つ巴となった戦い。
真希奈さんが土を錐状にして放つ魔法はクワガタに命中。しかし効いている様子なし。クワガタがその顎で挟さもうと真希奈さんに突進。仙術でふわりと浮きながら真希奈さんは回避。さらに水弾を3発当てる。クワガタは勢いそのまま、木に衝突。着地を狙って蜂が迫るが突風の魔法を放つ。突風の魔法で羽を切られ地面に落ちる蜂。
舞い戻ってきたクワガタが蜂を顎で挟み、真っ二つ。これで蜂は脱落。あとは1匹。対峙したときには決着がついた。指先から放たれた雷撃の魔法が。クワガタを黒焦げにした。
ここで豆知識
この世界の魔物と他の生物の差は魔石の有無。魔力の塊である魔石を核として存在しているのが魔物。
主な倒し方
1 ぶった切るなり、焼き殺すなど 一般的な生命でも死ぬようなダメージを与える。
2 肉体を保てないほどのダメージを与え、魔石を抜き取る。
3 心臓を損傷させるか魔石をぶっ壊す
死んだ魔物は種族や大きさ、個体差はあれど、時間差は基本的には魔石だけ残して消滅する。魔石には使い道があって、売れば金になる。
遺物魔関係の魔物には魔石はあるがこちらは液体の塊みたいなもので、すぐ破裂してしまうので金にはならない。
ちなみに人と会話や意思疎通のできる魔物もいるし、人と友好的種族の魔物からなる集落もある。魔物使いもいれば、普通に街なかに暮らしている魔物も数少ないがいる。
これらは、ランカ・リイド社刊 「明日から君もハンター 教科書購入編」を読んで理解したことだ。
後処理をしないで済むのは便利だが、死体から研究するという手段が取れないのは不便なのかもしれない。
遺物魔対策として、魔石を非魔物に組み込んだ人工生物、人造人間の存在はいそう。人道面を無視してそうだけど。
と真希奈さんは言っていた。この発想がでるのは頼りになると思うべきか、怖えよと思うべきか。
「ひとまずは、戦えそうです」
三連戦を終えた真希奈さんの感想。実戦前は自信のない顔をしていたが、戦闘中は異様なほど冷静だった。間違いなく、俺より強い。
「少し疲れましたので、海岸に戻りましょう」
ただ、体力のなさは不安要素。それは本人が一番自覚している。それと不安なのは……
歩きながら、真希奈さんの顔をうかがう。
「大丈夫かい?」
疲れだとは思うがやや頬が赤い。
「ええ。怪我はないので」
「じゃなくて、気持ちのほう」
人は虫なら容赦なく殺せるほうが圧倒的多数。じゃあ、犬や猫などの動物は?大概の人はすることはない、できない。ここらが線引きされるラインだろう。
「ここってゲームの世界でもない、現実だからね」
魔物を殺す。命がけのやりとり。どれも現代人、平和ボケ日本人には縁遠いもの。
こちらはもう耐性ができてしまっている。直接手を下すことはほとんどないが、それでも立ち会っている。
「……そうですね。ざわつきはあります」
こればかりは慣れてもらうしかない。
「経験上、慣れてしまうよ。いい悪いはともかくだけど」
「そうですか」
「……それに……。いやいいか」
いずれ、人みたいに意思疎通の可能な魔物。人にしか見えない魔物。人間そのもの。と戦う、命の取り合いをする。殺す。最後の人間を殺すが絶対なんて言えない。
「……人を殺すかもですか?」
顔に出ているのか?俺の考えは読みやすいのか?そこまで想像していたのか?なぜわかる?愛音やマアカや才華じゃああるまいし。
「まあ」
「それも慣れますか?」
一切表情を変えないで聞いてくる。あきらめているのか気にしていないのか。わからない。聞けはしない。
「耐性はできてしまう」
テリカ・ヒッスをはじめに、教団信者、魔女もどき、ヴィテス。余裕がなかったからもあるが、ヴィテスのときは気にとめていなかったかも。
「……初めてのときは?」
「……俺のときは単独じゃなかったから、寄り添いあった」
才華と愛音。この2人だからそういうことができた。助けあった。愛し合った。そういう状況じゃあなかったら、どうなっていたかわからない。分からないが、1つだけ言えるのは1人だったら殺されていた。それだけはわかる。
真希奈さんを支えることはできても、寄り添うのは躊躇する。というかできぬ。マアカや才華、愛音たちのような関係ではない。真希奈さんが美人で魅力的であるのは否定しないが、できない。
「私はどう……いえ。その日が来ると覚悟しておくしかないですね」
遠くを見る真希奈さん。そんな日はこないほうがいいが、無理だろう。ただでさえ、内通者がいる状況だ。
「俺でできることなら、協力はする」
それくらいしか言えん。約束できん。
「……お願いします」
このことを他に面々はどう考えているのか?気にしても仕方ないといえば仕方ない。職業的に槍見とケイログトは大丈夫だと思うけど、他は大丈夫なのか?
海岸に戻り、杖の工房内へ避難。ここには既に真希奈さんによる魔法陣が作られている。いわるゆセーフティーゾーン。完全ではないが、ないよりは安全安心。
真希奈さんはソファに座りこみ、俯く。見た目以上に疲労が溜まっているか。それもそうだ。
とりあえず、赤点脱出の紅茶を淹れて真希奈さんへ。
「はい」
「ありがとうございます。……美味しい……」
「いいもんだからね」
こちらで飲むようにリュックに入れた紅茶。用意したのはもちろん天城家。サバイバル、キャンプ場でも良いものを飲めるように、道具も選ばれている。
「……いえ、誰かに淹れてもらうのが久しぶりだったもので……」
「ですか」
ほんの3日前まえでは死を待つだけの体だったんだよな。本人がしゃべらない限りは詳しく聞くつもりはない。
「それより、いけそう?」
無理なら今日の挑戦は終わってもいいと思う。
「……その点は大丈夫だと思います」
安らいでいた表情が凛々しくなる。あら、かっこいい。
「……思ったよりは動けました。油断は禁物ですが……」
「予定通り、昼からは食料や素材など確保もしつつ、もう一当たり行くでいいのかい?」
錬金術に必要な素材、売って金になる素材、それらに関する本があってよかった。文明の成り立った世界なら金は絶対に必要。役に立つ。金は万能ではないが、力は持っている。
「……はい。大丈夫です」
「なら、休んでいてくれ。昼飯は俺が用意するから」
「……すいませんが、お願いします。お茶ありがとう」
ソファにそのまま横になって眠ってしまった。緊張の糸が切れたのかもしれない。無防備なのは信用してくれる証なのだろう。まあ、無意識なところを襲うことはしないし、意識あるところを襲ったところで、返り討ちだけど。
タオルケットをかけて、昼食の準備へ。
生き残るためには真希奈さんの体調管理は重要だな。
真希奈さんの手札
魔法
魔力を転換して撃つべし。炎 水弾 氷塊 突風 雷撃
魔力で固めて撃つべし撃つべし。土の矢
補助も必要 防壁 幻影 毒耐性 精神耐性 治癒 解毒
仙術 呪術が得意らしい
呪術による 睡眠 怠惰
基礎体系 浮遊
治癒術 フォーマンセルの死亡率改善
治癒 解毒 精神正常化
幽体術 スタンドとかペルソナみたいなもん
腕だけを一瞬具現化
媒体術 大地と樹木
木の鏃 生成 性質変化
龍脈読み
他
時間だけはあったので、読んでた本の知識、漫画、小説、アニメの発想。
魔力の感知
料理 洗濯 お掃除
ってところか。
魔法での治癒と治癒術が使えるのは、魔法と術どちらが使えない状況を想定してのこと。
弱点 魔法、術が使えないときどうすればいいか
これが現状のスペック
昼からの戦闘。休み休みだけど、1戦1戦丁寧に切り抜けていく。、
動物スケルトン、大型の蛾。剣を持ったトカゲ。炎の塊。ゴブリン。二股の蛇。顔のある岩。でかいハト。タケノコの化け物。半魚人。動く盾。7つ目の鬼。
真希奈さんは基礎と自分なりの戦術で全て打倒。今のところ、俺の出番はなし。
中でも、7つ目鬼の戦いは本日一番の戦いだった。
返り血と傷から戦いを切り抜けたと思われる鎧
背中に隠し腕2本。この腕は毛皮のマントで隠していたので実際使われるまで気づかなかった。
でけえ斧にでけえ盾。
7つのうち正面3つは相手を、後頭部と側頭部の4つは周囲を警戒。
発見するきっかけは、戦闘音と叫び声。こちらは草陰から鬼の様子をみてみる。
嬉々として他の魔物を斧でぶった切り、犬や鳥系の魔物を半殺し状態にして食べたりしている鬼
雰囲気と圧倒すう強さから、いったん放置としたが、見つかった。たぶん、俺の気配でも察したと思われる。
真っすぐこちらに突進してきたので、こちらも迎撃体勢をとる。逃げようとも思ったが、脚の速さが違いすぎた。だいたい今の間合いは100メートルくらいか?
雷撃を放つも盾で防がれる。というより耐えていただけのようだ。こちらを見るため、盾をずらしたタイミングで水弾。顔というより目つぶし目的の水弾は命中。まあ、効いてはいない。
が。転んだ。
距離があったおかげで、鬼のスライド幅を把握。目つぶしが効いている間に魔法ででっぱりを作る。目が見えるようになったタイミングで3発目を撃つ構え。指先で放っていた先2発とは異なり、杖を向けた上、印が浮かび上がる。
本命と思わせた攻撃は鬼に選択肢を与える。盾で防ぐ?避ける?避けるならどちらに?森の中で岩やら、樹木やら障害は左右にある中で?といったあたりを考えたところで、でっぱりに足を取られて転んだ。という流れ。
その間に一息つく。鬼と俺たちの距離は50メートルくらいか?
鬼が立ち上がったところで、木の鏃が四方八方から襲う。先ほどの印はこの術を発動させるためのもの。生身の部分に突き刺さっているが、これもあんまり効いているようではない。
今度は盾を投げつてけくる。剛速球で飛んでくる盾。それを杖を使用した浮遊の仙術でそらす。
この間に10メートルを切った。
「人多さんは下がってください。盾での援護の判断はお任せします」
それだけの相手と判断したのか真希奈さんから指示が。そして、鬼の前に出る。俺たちの倍の大きさの鬼と真希奈さん。縦は大人と子供以上の差があるように見える。横、厚みは力士と骸骨くらいの差に見える。
鬼が1歩踏み込むと、真希奈さんは1歩さがり指先を向ける。
鬼は指先の斜線上からよけるが背後から木の鏃。指先はフェイントだったみたいだ。しかし、鬼はふりかえり炎を吐いた。背後からの死角のはずなのに。ん?後頭部と側頭部にも目がある。それでか。
そして、鬼は振り返る際の半回転を加えた斧のよこなぎ。高さ的に首狙い。に見えたが、斧は頭の上で空を斬った。割とギリギリの位置に見えたが、真希奈さんはいたって冷静。鬼の足元が斜めに隆起し傾いたせいだ。つまり真希奈さんの媒体術か魔法か。
真希奈さんは3歩前へ出て、無防備となったところへ杖を突き魔法を放とうとした。
だが、真希奈さんも表情が変わる。体をつかまれたからだ。鬼の両手は斧を掴んでいる。だとしたら?背中から人より関節が多い腕がもう2本伸びてる。左手は杖、右手は体をつかんでいる。寝るとき邪魔じゃね?じゃなくてマント替わりの毛皮に隠していたのか?隠し腕って、モビルスーツか!
「あ……」
体格、体重、力、全てにおいて負けている真希奈さん当然のように持ち上げられ、血を吐く。杖も手放してしまった。って、そんな場合じゃあない。このまま握りつぶされるかも。そんな未来を想像した時点で俺は走り出す。
「うおおおおおおおお」
叫び声でこちらを向く鬼。こいこいこいこいこい。
鬼は真希奈さんを投げ飛ばしてきた。よし!計画通りてか、真希奈さんは運がいい。そのまま握りつぶされるや、首をちぎられるよりは可能性がある。俺がクッションになれば!!!!
衝突して、地面を転がる。上手いキャッチができたとは思わんが、どうだ?生きているか?
「はあ。はあ。はあ」
息はある。服がところどころ破れているが目立つ外傷はなし。思ったより無傷で切り抜けられたのはでかい。結果オーライ。
「……す、すいません」
ふらつきながら、立ち上がろうとするので、肩を支える。
「……安易に近づきすぎましたね」
「ごがあああああ!!!」
叫び声に反応して鬼を見ると、怒っているのか?よく見ると背中の隠し腕の手から血がポタポタと落ちている。ついでに指先も落ちている。
「投げられる際、……体のいたるところから風を出しました」
ですか。それのせいで、投げるのもすっぽ抜けた形になったのかも。じゃないと投げられた真希奈さんも俺ももっと負傷しているはずだ。
「……咄嗟だったので、愛音さんの服も破れてしまいましたが」
いつぞやの愛音がやったことをしたのか。あのときは確か、炎で、今回は風。同じくぶっつけ本番で、うまくはいったが、服にその被害がいっている。愛音のときほど、目のやりばに困らないのは救いか。
「で、どうする?」
戦いはまだ終わっていない。体力面での不安がある真希奈さん。吐血したからには内臓面でダメージがあるはず。このまま長期戦はダメだ。
鬼のほうも負傷はあるが、行動には支障はないようだ。杖もないし、このままだとジリ貧。
「……盾で斧を防いでもらってよろしいですか」
鬼と目線を合わせながら、弧をかくように移動する。盾の防壁なら、吹っ飛ばされることはあってもぶった切られることはない。
「了解」
盾を構えて真希奈さんの前へ。めっちゃこええ。だが、びびりながらでも行くしかない。真希奈さんが戦っているんだ。俺だって。
「ここで」
声に反応しピタっと動きを止める。振り返らないが、真希奈さんの気配が消えたように感じる。
鬼は攻めて来ると思ったが動かない。警戒している?なにを?俺を?真希奈さんを抱きかかえる以外なにもしていない俺を?それはないな。
ああ。真希奈さんは俺を目隠し代わりにしているのか。
「……1歩後ろへ」
指示に従い1歩さがると、鬼の背後から木の鏃の雨。鬼は振り返り炎を吐く。時間差で今度は正面より木の鏃の雨。こちらはさらに量が多い。鬼は振り返り口を開いたが動きが止まり、鏃が刺さる。なんだ?
鬼は背後の手で後頭部を抑えている。よく見ると鬼の背後で炎の勢いが増している気がするので、そのせいか?
「……複数の樹木を根から倒し、鬼の炎を押し込みました」
背後からぼそりと真希奈さんの解説。なーる。感心している俺とは異なり、真希奈さんは俺の左側から指先を鬼に向けた。
鬼は指先の射線上からはずれながら、踏み込んだ。そのタイミングで鬼の側頭部から血が噴き出る。同時に俺の右側から炎が飛んだ。あれ?真希奈さんは左側にいたのでは?指先は目の端に見えるが?ええい、脳の処理が追い付かん。
えーと。側頭部の目を潰したのは鏃。で、左側の指先が消えたから、こちらは幽体術の指先か。で、飛んだ炎が鬼に突き刺さっていた鏃に引火。
「ぐばあああああああああああ」
生きたまま焼かれるのは鬼とて苦痛であるのは叫び声から伝わる。このまま燃え尽きてくれないかな。そこまで甘くないよな。
燃え盛る鬼はこちらをにらんだ。ですよね
炎で焼かれながら鬼は斧を振りかぶって突進してくる。焼かれているせいか、動きはわずかに鈍い気がする。これなら避けれるか?
「受け止めてください」
鏃が四方八方から飛んでいく。
「あ、はい」
盾で真っ二つにされることはないが、潰される可能性はある。避けれそうなら避けた方がいいと思うが、真希奈さんは移動する素振りがない。つまり受け止めるしかない。信頼か信用かはわからんが託された以上やるしかない。なんらかの策はあるんだろうから、やるしかない。
踏ん張れよ、俺。ランニングと足腰鍛錬の成果よ、今こそ燃え上がれ。
「うおおおおお!」
「ぶがああああ!」
俺と鬼の雄たけび。斧が振り下ろされる!盾の防壁を発動。衝撃がくる!踏ん張れ。
「あああ?!」
鈍い音が聞こえると鬼の雄たけびが止まった。斧の衝撃も思った以上に少ないので、防げきれるとは思わなかった。
鬼の足元になにかが落ちた。あれは……鬼の投げた盾。浮遊で回避した盾。ここで止まったのは盾を当てるためだったのか。それで、斧の衝撃も少なかったのか。
そして、鬼は上半身がスライドして落ち、残った下半身も倒れた。
「ふう」
気の抜けた声と同時に真希奈さんは座り込む。今日はもう無理だな。
改めて鬼を見ると、頭部が凹んでいる。盾は頭頂部に落ちたのか。ここまで考えて行動していたのか?
木の鏃で鬼に炎を出させる。
正面から木の鏃で注意を正面に。同時に遠隔操作で樹木を倒し、鬼の炎を押し付ける。
幽体術で鬼の立ち位置を誘導。鏃で目つぶし。同時に正面から鏃に引火、火祭り
上からの警戒をなくすため、四方から追い打ち。
斧を振り下ろすタイミングで、盾を頭頂部にぶつける。攻撃中だから、避けれないし、防げない。 あと意識の外だから、ダメージも増えるだろう。
そこで、風でぶったぎり。
他よりレベルが上に見えた7つ目の鬼。ほぼ完勝と言ってもいいだろう。今日が実戦デビューなのに?これは神具の経験のおかげか。それとも才能か。後者なら怖い怖い。
「立てる?」
「……ありがとうございます」
真希奈さんに手の差しのばす。疲労と負傷でふらつきながら立ち上がる姿は弱弱しい。
「ケガは?」
「……まだ直していませんが、……移動しながら直します」
「直してから移動でもいいけど」
「痛みにも慣れておきたいので、このままでいきたいです」
ついさきほどまで戦闘中は終始冷静な表情で凛とした姿だった。でも今は言葉とは違い弱弱しい表情の真希奈さんに肩を貸し、森から撤退。
A 米を食べる知識は神いる時代には確立していた。
鍋なら、工房の外でも料理できるから。
ランカ・リィド社刊『具流万君の食歴書 第1巻』に書いてありました