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雫を求めて

Q 表にでないはずの黒歴史設定

 『サツ・マハヤト』の精神について

 伝承した神具使いって?

 案内されたのは部屋というか、コテージだな。そして、俺たちのがいるのは一種の拠点で、召喚や会議室があったのは指令室ってところか?


 移動中に分かったこと、それはこの異世界の文化レベルは中世じゃあないね。時代的には現代と言っていいだろう。


 車もあるし、銃を持っている人たちいる。街灯もある。アスファルト舗装された場所もある。建物も現代的なのが多い。こっちのほうがありがたいけど。


 ただ、軍人というよりは戦士、兵士。って感じの服装。現代人からしたら違和感しかない。


 コテージ内もテレビと電話が見当たらないくらいで、現代に通じる。あ、男女の部屋は別だよ。

コテージの外には見張りなのか、兵士が2名。


「食事はのちほど運びますので。なにかありましたら、外の者に伝えてください」


 リンマさんは頭を下げコテージを出て行った。


 真希奈さんの様子は気になるが、一息入れる。てか、もう夕方近いのか。説明を聞いてるときに軽い昼食も食べたが、あっという間に時間が過ぎた気がする。


 他の面々もリビングで一息ついてる。ここでわかるのが、ケイログトのいた世界の文化レベル。車、蛇口、電気、全てにこれ何?って反応。


 同じファンタジー寄りの恰好をしているエラボザは平然している。


「いやはや、とんでもないことに巻き込まれてしまいましたな」


 兜を脱いでソファアに座ったアロッド。慣れないと怖えよ、その顔。


「帰還するために仕方ないってのもあるけど、戦いに参加することに不安はないの?」


「戦わないと、この世界じゃなく元いた世界だって危なくなるんだろ。ならやるしかないだろ」


 矢賀はこぶしをにぎり宣言するように言い放つ。どうやら正義感は強いようだ。


「神具に選ばれた以上、その責を果たすべきなんじゃないかな?」


 さっきから何度もワンドを見ているエラボザ。選ばれたことが相当うれしいようで、さきほどの会議でも口元がにやけていた。まあ、そういうもんか。そういう気持ちはわからんでもない。


「お前こそどうなんだよ」


「『義を見てせざるは勇なきなり』。異世界であっても、在りようは変わらない」


 4代目が言ってたって6代目が言ってた言葉だ。


「あ?義を見て?」


「参戦するって意味であるよ。おっと、某も人並の良心はあるので、某なりに真剣に挑むつもりではある」


「アロッドさんは楽しそうね」


 声色とか、雰囲気でそういうのは判断できる。


「そう見えるであるか、槍見殿。まあ、某はこういう創作物が好きである故、不謹慎ならが楽しみという感情は抑えられぬ。あと呼び捨てで構わぬよ」


「こういうの?どうゆうことだ?」


「某のいた世界では、我らみたいに異世界に転生、転移して冒険する物語や異世界の勇者が世界を救う物語が娯楽の一つとして確立されているのですぞ、ケイログト殿」


「へえ。お前らもそうなのか?」


 ケイログトがこちらに尋ねるので、みな視線は集まる。


「そういのがあるのは知っているけど、俺は詳しくない」


「隊員に好きな子はいたわ」


「僕は知らない」


「幼馴染が好きなのもあるし、割と見ている方かな」


 基準が才華なので、割と見ているじゃあないかもしれないけど。この中だとオタクなのは俺とアロッドだけか。


「死ぬかもしれないし、間違いなく殺すことになるけど、それはわかっているの?」


 物語のような状況だが、これは現実。それを認識していないとすぐ死ぬ。認識していても俺はよく死んでいたが。逆の経験もあると言える。魔物だけじゃあない、人……知性、理性、言葉が通じる存在のもある。


「ふむ。そうであるな」


 腕を組んで考え込むアロッド。


「?そんなこと気にするのか?」


 槍見の言葉には含みと重さを感じるが、ケイログトにはピンと来ていないようだ。勇者という立場だから、命のやりとりが日常化しているのだろう。


「ま、魔物ならそこまで気にしなくても大丈夫だろ」


「慣れるしかないんじゃないかな」


 あっさりと答える矢賀とエラボザ。まあ、慣れるしかないのは確かだ。慣れざるえない。


 こちらに視線を向ける槍見。


「ふむ、どちらにしても、その状況になってみないとなんとも言えないであるな。ただ、覚悟は必要だという、忠告感謝致すぞ、槍見殿」


「感謝は不要です。そもそも、私とケイログト以外で実戦経験あるのは?といっても私は人やアック……アンドロイドくらいだけど」


 槍見はアンドロイドがいる世界の出身かあ。異世界は広いなあ。


 それはそれとして実戦経験について考える。1秒もてばいい壁やって、死んで神にあって、蘇るを繰り返したパヴォロスの戦いも実戦ちゃあ、実戦。俺1人ではその経験も大して役には立たんだろうけど。


「一応、あるといえばある。一人じゃなかったけど」


 で、実戦経験あるのは俺だけか。学生にしか見えない矢賀と、アバターのアロッドは仕方ない。

エラボザも見習いだからか?


「まがい物だけか。鎧やローブはないのか?」


「僕はまだ見習いだから」


「ケイログト殿に分かりやすいように伝えると、この姿は遊戯用のものであって、実戦に使うことは本来ないものである」


「だとしたら、明日からはどう行動するつもり?」


「どうとは?」


「私たちで組んで行動するのか、単独で別の仲間を求めるのか。それとも単独行動なのか。ここで基礎を積んでから旅を出るのか、すぐ旅にでるのか。とかね。」


「ふむ。そうであるな。今のうちにはっきりさせておいたほうが良いであるな」


 まあ、そうだよな。明日には行動を開始することになる


「俺がリーダーなら組んでもいいぞ。素人どもの判断に任すつもりはねえからな。ああ。お前とお前、お前は歓迎するぞ」


 実戦経験のある槍見。魔法も使え、盾と鎧でタンク役になりそうなアロッド。魔法担当のエラボザ。バランスは取れているように見える。外した矢賀は、立ち回りがかぶっているせいか。


 ただ、こんな言い方が基礎になっているのだろうか。なんかもう勇者じゃなくて悪徳勇者、落ちぶれ勇者になる未来しか見えん。実際そうなっていたから、ボロだったのかも。まあ、そんなことないか、それこそ物語の見過ぎ。


「断るわ」


「僕も」


「評価してくれるのはありがたいが断らせてもらう。某は骸骨騎士を見習って、最初は一人でゆきたいと考えている故」


 ありゃりゃ、振られてやんの。これを見て矢賀もひそかに笑っていた。まあ、自分のせいだろ


「ふん、そうかよ。後悔するなよ」


 苛立ちをにじませるケイログト。そういうところだぞって、思う。たぶん、言っても聞かないだろうけど。


「俺は自分でメンバーを集めて、鍛えながら冒険をする」


「僕もそうですね」


「真希奈さんはどうするかわからないけど、基本的には個人行動で決まりね」


「そのようになりますな。まずは各々を磨くことに専念しましょう」 


 皆の方針は決まったようだ。団結しないのは仕方ないだろう。



 個人行動は決まって、皆はどこで活動するか話し合っている。行動場所をかぶらないようにしたいようだ。

 

 さて、俺はどうするか。真希奈さんのことで考えは中断しちゃったから、まとめないと。


 俺の現目標は『元の世界に帰ること』『赤石樹の雫を入手する』の2つ。そのうち『元の世界に帰ること』は邪神討伐まで生存すれば達成できる。ぶっちゃけ、安全な場所で生きていれば達成する可能性はある。


 逆に雫の入手については、行動しないと無理。それも正攻法でだ。


 だとすると、

 まず、最後の1本を探しつつ、楽科の一族か呪仙都のところに向かう。

 そこで見つかっていない1本を入手できるように交渉。それがまずとれる手段か。


 オーデションは終わっているから、そっちは無駄か。あ、いや、倍以上の金払えば譲ってもらえる可能性はあるか?でもま、この手段はちょいというよりかなり厳しい。


 あとは報酬としてもらうか。参戦する旨を伝え、報酬として用意しておいてもらう。まあ、その1本は非常時には使っていいよって言っておこう。これならワンチャンあってもよくね?


 ただ、参戦する以上、なんらかの形、できればわかりやすい形で貢献してるようにしたい。

 

 直接な戦闘力はない。ぶっちゃけ、雑兵として働くしかないか?それで、報酬を請求するのはなんか心ぐるしい。 

 

 はああ。

 

 俺は神具を使えないけど、愛音が来れば……。


 違う。


 愛音任せにするな。通信機で発信していてもいつ連絡がとれるかはわからない。だから。


 俺が愛音の代わりやる。


 と大声で言いたいところだし、言うだけならタダだが、実の供わない言葉に賭けることができる奴はいないだろう。


 何度も実感し、分かっているが、代わりにもなれない。


 ……代わり?


 愛音の代わりの神具使いを見つけることならできるか?心身ともに信頼信用できる力を持つ者、そうなりそうな者を見つけること。


 それなら、隠された雫を探しながもできる。わかりやすい形にもなるから、報酬として受け取りやすい。


 これでいくか。あ!だめだ。神具を俺が手に取れない。俺の手には全く反応がなかった。これもダメか。あ!いや、うーん。いけるか?どうだ?考えてもわからんから、やってみるか。でやるなら、明日になる前にだな。




「おや、ザイト殿荷物を持ってどちらへ?」


「ちょっと試してみたいことができたので、姫殿下のところに」


「ふん。まがい物がなにを試そうとしてるんだ?」


 いちいち突っかからないと気がすまんのかね、アンタは


「……まがい物なりの努力ってところ」


「はっ。選ばれないやつは大変だな」


 選ばれても大変なのでは?って思うが、構ってられん。視線はあったが無視。ケイログトはマウントが取れて満足したのか、ニヤついていた。俺の姿は負け犬にでも見えたのだろう。ま、どうでもいい。


「ふむ。差し支えなければ某も付き添ってもよろしいですかな?」


 え?


「私も行くわ」


 はい?


「はあ。まあ、構いませんが?」


 他の3人は自分の神具確認にいそしむようだ。まあ、面倒な奴がいないだけ良しとしよう。

外に出て、見張りの人に伝言を依頼し返事を待つ。よく考えたら、姫殿下も忙しいよな、今日、出会えるかわからんな。アロッドは別の兵士となにやら会話中。コミュニケーション能力が高いんだろうな。


「人多さん、すいません」


「え?なに?」


 おもむろに槍見が謝ってきた。なんかあった?


「ケイログトといるのが嫌になってきたので、人多さんをだしに使いました」


「ああ。なるほど。気持ちはわかるから、気にしなくていいよ」


「言い返さないでいいんですか?」


「俺の経験上、言い合っても時間の無駄」


 で、経験上、ああいうのってどこかで手遅れになる。それを助ける義理はない。神具が引き継がれる以上、死んでも困らん。正直そう考えている。


「……そうですね」


 なにか思うところがあるらしい。聞くかどうかと思ったところで、兵士が来て姫殿下の謁見可能になった。槍見にも言いたくないこともあるだろうから、スルーの方向で。


 会議室に来たのは姫殿下、バランデルアさん、リンマさん。それに真希奈さんの4にん。真希奈さんの顔色は、さっきよりはよくなっているかな?……本当に大丈夫?


「お待たせしました、ザイト様」


「すいません、姫殿下」


「真希奈さんももういいの?」


 心配そうにしながら近づく槍見


「……はい。……お騒がせしました」


 ほほえみで答える真希奈さん。


「復帰したならなにより。あ、某は100パーセント興味本位故、槍見殿は空気を換えたい故」


「はあ」


 アロッドの説明に困惑している真希奈さん。


「それで、ご用件は?」


「えーと、どこから言えばいうべきか、神具で試したいことを思いついたので、まず、神具を出してほしいんです」


 神具使いではないことが確定している人物から、神具を要求されれば困るよな。姫殿下の顔に出ている。まあ、そうなるのもわかっている。が、ここで引くわけにはいかない。


「自分の今後の方針を決める重要な案件なんで、是非」


「姫殿下。雫の件のことからも、ザイト殿にもなにか引けぬ訳があるのであろう。柔軟な対応が吉と某は見た。バランデルア殿もそう思わぬか?」


 助け舟を出してくれたのはアロッド。バランデルアさんも頷いている。


「わかりました。リンマ、お願いします」


「アロッドさん、ありがとうございます」


「なに、礼と敬語は不要であるよ。単純に某の興味本位であるからな」


「本当に楽しそうで、なにより」


「いやあ。隠せんですな」


 親指を立てるアロッド。エンジョイ勢なのは確か。


 再び神具が目の前に現れ、この場にいる人達の注目が集まる。一見してつい先ほどとはなにも変わらない。今のままだとだけど。


 俺はこの部屋に持ってきた鞄に手を入れ、中から鍵となるものを取り出す。


「え?それって……」


 引いた声を出したのは槍見さん。そりゃそうなる。だが、それも覚悟の上。


 俺の手にあるものは『愛音の髪束』


 本来ここにいるはずだった神具使いの髪。手触りの良い黒い髪。俺はその髪を手に巻きつけ神具をつかむ。


 実験の結果は今わかる。神具使いの一部とみるか、ただの物質とみるか、神具はどう判断する?


 抜けた。


 先ほどはなかった手ごたえとともに、刀は抜けた。軽いけど刀の重さを手に感じ、一歩だけ自分の状況が変化したことを実感する。


A  第2次遺物魔戦において、神具使いとして

  『島■中■■輔■■』という刀と鎧を着た侍

  『セゴ首領』と呼ばれ、『ケイテンア・イジン』の精神も伝えた政治力も持った男性指揮官

  の2人が召喚され、世界は違えど、同郷であることを知った2人は意気投合。

  その後、自軍を創立し、生き残りが精神を残していった。

  今でも、その精神は根強くののこっている。のこりすぎている。


   

  

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