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Q ベガラットさんの情報や秘密をぜひ

 千佳さんは小さな子を庇って車に曳かれた。


 2日前、才馬さんは出張先で会議があるから早朝に天城家の本家を出た。普段なら才継君も連れて同行する千佳さんだが、出発前日に体調がすぐれないことから、お留守番。


 千佳さんは今日になって大復活し、「なまっていられるか」と才継君を連れて散歩にでかける。一応立場が立場で、病み上がりなので、同世代のメイド坂上菫も一緒にいた。


 その途中、足元に飛んできたサッカーボールを手渡そうと子供を坂上さんに預ける、横断歩道の真ん中でボールを手渡したところで車が突っ込んできたらしい。


 その小さな子に怪我はなく、事故自体の処理も警察が迅速に終わらせている。事故を目撃してしまった坂上さんは有能メイドとして現場ではてきぱきと対応。ただ、良子さんたちと合流したのち、自害しようとしたので、田杉さんたちが必死で止めたらしい。

  

 意識なく病院に運ばれた千佳さんは緊急手術中。最悪も想定しなければならない状況。これらを一足先についていた良子さんから聞いた。


 今、この場にいるのは良子さんと沙緒里さん。才継君は良子さんの言葉を受け入れた坂上さんが面倒を見ているそうだ。


 愛音の両親は海外出張中のため、まだこちらに着いていない。


 親友の事故に良子さんは恐ろしいほど冷静だった。愛音と医師や警察とのやりとりに付き添い、物事を進めていた。

 沙緒里さんは沙緒里さんで愛音を励まし、良子さんを度々手助けしていた。俺たちも手助けが必要なら言ってくださいと尋ねたが、


「愛音のそばにいてあげなさい」

「良子に疲れが見えたら、お願いするわ。今は千佳の無事を祈りましょう」


と断られた。


 結局俺は頭をさげている愛音を手を握っていた。震えている愛音の手に力はなく、俺はときおり言葉をかけてあげたが、なんて言ったかは自分でも憶えていない。足元がおぼつかない気持ちで無事を祈ることしかできなかった。



 


 姿を見れたのは日が変わったころだったと思う。命は無事だと聞いてほっとし、愛音と良子さんは執刀医より、詳細を聞きにいった。そして、


「このまま意識が戻らない可能性がある」


と良子さんは俺たちに告げた。ほかにも説明があったが、『植物状態』ということが俺の脳内で受けつけることができた。


 千佳さんの笑顔や意味不明な行動や、俺たちを冷やかす行動らをもう見ることはない。それは理解できてしまった。理解を拒む脳を、現実逃避をしようとする心を無理やり押さえつけて、理解できたのがこの事実。


 マアカや才華は唖然とし、紗緒理さんは口を押さえていた。


 うつむいていた愛音の表情はよく見ることはできなかった。見たくなかったのかもしれない。


「才馬やご両親は私が待つから、皆は一度帰りなさい、疲れたでしょう?」


 良子さんはこちらにそう告げる。


「私はのこり」


「愛音嬢ちゃんも帰るぞ」


 顔を横に振って残る意志をしめそうとした愛音。それを遮ったのは千葉のじいさん。とM・Kさん。なぜここに?


「連れてかんと帰らんじゃろ。寝付けなくても横にはなるべきじゃ。年寄りの経験則くらい聞け。マアカ嬢のほうも迎えが外で待ってるから、行くぞ」


「……わかりました」


 ふだんのはっちゃけた雰囲気とはまるで違う千葉のじいさん。その雰囲気に押されなにも言えなかった愛音。マアカと病院で別れ、俺たちは才華の家へ。


「いろいろ考えても今すぐにはまとまらんじゃろ。軽い夜食食べて、フロは言って、ひと眠りしてから考えるんじゃぞ。全員な。」


 俺も含めて疲れた表情で才華の家について、軽い夜食、お風呂を済ませる。遅くまで起きている使用人さんたち、お疲れ様です。


 俺や愛音用となっている客用部屋に入って違和感に気づく。甘い香りだ。これは?ああ。あれか。普段は使われていないアロマキャンドルが焚かれている。使用人の誰かが気を使ったのだろう。認識するとより、甘く感じる。


「千葉じいのいう通り、今日は寝よう。じゃあ、おやすみ」


 才華はそう言って、自室へ行った。才華とて空気を読む。愛音のそばにいてやれと言っているのはわかる。

 

 応じる以前に自分でもそのつもりではあった。役に立つとは思わんし、いなくてもかわらんとも思う。俺にはそれぐらいしかできん。いや、今はそれだけでもできると考えるべきか


 愛音の横で就寝。横になるまで会話もどこか生返事であった。


 ここまで落ち込んでいるのはシクが死んだとき以来だ。あのときは奇跡的な確率、誰もが想像しない奇跡でシクは生き返ることができた。あんな偶然がそうそう起こることはあるまい。


 あれだって、俺たちの世界では絶対に起きえない。


 ……俺たちの世界。俺たちの世界?。


 じゃあ、違う世界は?てか、魔法なら?


 って、魔法は無理か。確か、パヴォロスに行けなくなってから、数週間で魔力はなくなったって才華たちは言っていたな。そのせいなのか髪の色も根元の黒から毛先に向かうと徐々に赤色へと変わっている。


 そういえば、魔女の目はどうなったんだ?そこは聞いてない。才華ならなにかわかりそうだが。


 あ、でも、魔力が残っている間なら魔法は使えるかも。そういえば、クルンさんの薬もいろいろこちらにあるはずだ。それだって使えるのでは?


 ……ここまでにしよう。俺で思いつくんだ、今の愛音はともかく、才華、マアカならこの事を考えれいるはず。


 それでも千葉のじいさんの言葉に従ったんだ。明日になってから考えよう。深く考えるのをやめると、すぐ寝れた。



 翌日、朝食を済ませて才華の研究室でマアカと合流する。


「賭けになるけど、異世界に行くよ」


 開口一番の才華の言葉。


「それしかないわね」


 マアカは納得している。


「いいの?」


 現状2号機での目的はシクとの再会。そういう理由だから良子さんも2号機の開発にはなにも言ってこなかった。異世界に行くことをあまり良くは思っていない良子さんがこの状況で行くことを快く了承するとは思えない。愛音もそれを理解しているのだろう。


「私がそうするって決めたの。悪かろうとやるよ。例え1人でもやる。それが私」


「そう。ありがとう」


「愛音の礼なんていらないよ。千佳ねえを助けるのは私の意志なんだから」


 ドンと胸を張る才華。決意は固いとみた。


「千佳さんの意識を戻すためってのはわかるけど、どうして、異世界転移なんだ?魔法とかクルンさんの薬じゃあ無理なのか?」


 良子さんを説得する理由はあっても困るまい。あと単純に俺がしっておきたい。


「単純に魔法はこの世界じゃあ使えない」


「あれ?でも通訳の魔法とかは使えてなかった?ターロホさんやシクはそれで会話には困っていなかったよな」


「魔法自体はパヴォロスで発動しているのと、その効果を維持するのに必要な魔力が体内にあったから。


「と言うと?」


「パヴォロスだと体内で生産、維持できる魔力と自然にある魔力で魔法の効果は維持できる」


「ふむ」


 自然魔力のおかげで、俺も通訳の効果が維持できてたんだろう。


「でも、私たちの世界の環境じゃあ、魔力は魔力という形を維持できない。体内で生産・維持できる魔力もにも限界がある。だから、時間がたてば、シクやターロホさんに掛っていた通訳魔法の効果も切れるはずだよ。ま。この色見ればわかるでしょ」


 才華は自分の髪を指さす。


「そういった理由で体内ならまだしも、自分の体外に放つ魔法は発動できない」


「なーる」


「それに、魔法で治療できる確証はない。脳に関すると難しいのはどこでもいっしょ」


 死亡状態になっている俺の負傷を何度も治療している才華。それでも難しいか。


「じゃあ、クルンさんの薬は?」


「ザアイ、手足を治すのと脳を治すのじゃあ、レベルが違う。それは魔法も薬もいっしょ。クルンさんの薬の効果は高いけど、それでもそこらへんは無理ってのは聞いているわ」


「ですか。それでこの世界ではまず治せない。だから、異世界に行って……どうするわけ?今の話だと異世界で魔法使えるようになっても直せないんだろ」


「だから、賭け。パヴォロスで得た知識、技術じゃあ治せないけど、試作2号機でつながった第3の世界には治す手段、もしくはそれに繋がるきっかけがあるかもしれない」


 !


 この世界ではありえない魔法が異世界にはあった。ならこっちにはないものがまだあってもおかしくないか。その世界ではなくても、さらに違う世界なら。いつかは見つかるかもしれない


「だから、賭けか」


「そう。次の世界で見つかる保証もないし、探し続けでも見つかる保証もない」


 そうそう都合よく見つかりはしないよなあ


「だけど、絶対に見つける。絶対に」


 険しい顔となって決意を表す才華。


「で?愛音はどうする?」


「どうするって?」


 首をかしげる愛音。


「発案者の私とパートナーの在人。戦力としてマアカ。私たち3人は異世界に行って手段を探す」


 当たり前のように探索メンバーになっている俺。まあ、問題はない。だけど、マアカはいいのか?

基本スローライフよりのパヴォロスはともかく。今度は冒険よりの異世界生活。そうそう帰界できるかわからん。それにマアカ、仕事があるだろ。俺や才華とは違って不在が困る立場だろ。


「でも、愛音は残って千佳ねえの近くにいてもいいんだよ」


 険しさが消え、優しい表情で愛音を見つめる才華。愛音なら自分で探すともいいそうだし、千佳さんに近くにいるとも言いそうだ。安全なのはこの世界にいることだけど、どっちが良いのかわからん。


 わからん以上、決断を尊重しよう。

 

 落ち着くためにか目を閉じる愛音


 「もちろん、行くわ。姉さんは私が救う」


 目を開け、立ち上がる愛音。


「……ううん。違うわね。在人。才華。マアカ。姉さんを治すのに協力して。お願い」


 俺たちを一瞥し、頭を下げる手に力が入っている。


「「当たり前だ!!!!」」


 力強く。本当に力強く答える才華とマアカ。なんかの漫画でみたような気がするが、今はいい。


「俺も当たり前だけど。いいのか?千佳さんのそばにいなくても?それに危険かもというか、危険だと思う」


 決意は固いだろうが、言うべきことは言う。才華やマアカの心配についてはとりあえず置いておく。言わないでもわかっているだろうが。


「姉さんのことは沙緒里さんや、良子さん、義兄さんにお願いできるわ」


「まあ、そうだな」


 その3人だけでなく頼れる大人は周りに多い。一番頼っている俺が言うんだ、それは間違いない。


「それに私だけ仲間外れなんて嫌だわ」


「そうだな」


 4人でいることが基本。そういう関係だ。誰が欠けても嫌だってやつだな。


「なーに。私たちでさがせば、見つかるのは確定済み」


 さっき保証はないと言っていた才華とは違い、自信ありといったマアカ。俺としては才華の言葉のほうが正しいと思う。一般人な俺としてはだが。


「マアカ、それは何故?」


「私の幸運はザアイと出会いや男女の関係に至ったことから、実力を除いてもいいほうだと証明されている」


「ふむ?」


 運があるほうのは知っている。俺とのあーだこうだは置いといてもだ。


「流石についてついてつきまくる宇宙一のヒーローや幸福エナジー異常女子高生よりは流石に薄皮1枚分くらい劣っているとは思う。その2人に運だけの勝負なら負けるとは思う」


 運プラスαなら勝てるって言い方だな


「だけど、私ど同等の幸運を持つ才華と愛音。私たち3人が組めば、その2人が組んだとしても勝てる」


 2人を抱き寄せるマアカ


「運プラス実力。これなら千佳さんは助かる。ね?愛音」


「ええ。そうね。マアカ」


 マアカの手をにぎる愛音。これは愛音を元気づけるための言葉だし、愛音もそれはわかっている。

この3人を見ればできそうと思ってしまう。3人の交際者としてなら。



「目的ははっきりしている。そのために異世界に行くのはいいとして、具体的にはどうする?」


 目的や方針は決まっているが、詳細はなにも決まっていない。今すぐ行くぞともいいそうだ。


「まず、出発は準備がおわってから。だから3日後くらいかな?」


 才華の言葉にとりあえず一安心。夢への連絡や良子さんたちにも話はしとかないといけない


「異世界に行くとしても、私たちが生きていける環境かは確認しないといけない。それに手札を増やすために、魔力のある世界がいいかな。それらを考慮してまず異世界を探すよ」


 確かに魔法が使えれば選択肢は増える。


「じゃあ、その間に私は仕事の区切りや引継ぎをしておけばいいわね」 


「それはそうだけど、マアカが行くことが心強いけど、立場的にいないのはまずいんじゃあないのか??」


 不在が困るポジションなのはマアカのもとで働いたからわかる。


「ベガラットがいるから何も問題ないわ。ベガラットは謙遜するけど、私がいる、いないはもう影響ないのよ」


「さいですか」


 実際、マアカがパヴォロスにいるとき、仕事を仕切っていたのはベガラットさんだというのも聞いている。マアカがそれだけの権限を与えていることに誰からも(取引相手も含む)文句がないのも知っている。


「私と在人は才華の手伝いね」


「ま、そうなるな」


 装備品や道具の確認は必要だろう。あとパヴォロスのときみたく、ルールは考えたいたほうがいいだろう。


 その世界でどれくらい探すか、違う世界へ移動するのはどれくらい探索したらとか、見切りのラインも決めていたほうが良いかもしれない。


「こんな状況だからさ、気を張ることにはなるけど……」


 どした、才華?


「異世界そのものを楽しみながらってのも忘れちゃあいけない」


 にっこりと笑みを浮かべる才華。どういうことだ?


「張り詰めても、緩すぎても、いい結果は訪れない。気持ちの余裕がよい結果を生むってことかしら」


 一番張りつめそうなの愛音が静かに応える。確かに気をはりつづけても持たない。リラックスは必要か。


「そうゆうこと、愛音。いい仕事には心身のいいバランスが必要」


「エジプトを目指したジョースター一行みたいに。アバンの使途たちのようにってことね」


 確かに楽しそうにしてたし、楽しかったという結論も出していた。


「いい例えね、マアカ。彼らのような冒険であろうってことよ」


 ウィンクする才華。まあ、そっちのほうがいいとは思う。


A 年齢28歳

  10年前にマアカと出会い、紆余曲折あって、主従関係に

  マアカ来日時は、事務、秘書、護衛、家事、語学等あらゆることを修行中であったので、在人たちと直接出会っていない 

  本格的にマアカへの秘書、護衛活動を始めたのは、マアカが日本を離れてから。  

  こう見えて可愛いもの好きな一面がある。ということはありません。必要最低減なものしか置いていないタイプ。


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