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愛音の1日

Q 在人の部屋に隠されているものってある?

「一仕事お疲れ様」


「ありがとう」


 手渡した外套を羽織る愛音。


 ここはスタジオでスタッフの皆さんがあれこれしている。数分前まで愛音はここで働いていた。ただ、それはスタッフとしてではない。


 ファッションモデル『千歳』として。

 

 愛音は現在、マアカがトップに君臨しているグループの専属モデル。グループから売られる新商品の服やらコスメやら口紅やらブランド物をつけては写真なりPVなりをとっている。身近に人、それも恋人が雑誌に載っているというのは不思議な感覚になる。


 愛音の見た目に仕草で売り上げは想定以上だそうです。夢も真も新商品買ってたな。


 芸名とおして『千歳』の名を使っているのかは女の秘密ということだそうだ。だが『愛音』が『千歳』を名乗ることのはしっくり来ている。なぜだ?


 なぜ愛音がモデルをしているかと言ったら、大前提としてまず、俺たちがシクと再会するためなのは当然。その一環とは言える。


 そして……


「それではお先に失礼します、ベガラットさん」


 愛音があいさつをしたスーツ姿の女性、ベガラットさんだろう。この人が愛音をモデルとした張本人。

 

「ええ。お疲れ様、千歳さん」


 流暢な日本語で返事をするベガラットさん。ビッシとしたスーツ姿から、クールビューティという言葉が似あう。


 ベガラットさんはマアカ曰く


「ザアイと出会えたと同じくらいの大切な出会い」

「秘書兼影武者兼代打というか真打兼後釜」

「私の会社が私不在でもやっていけるのベガラットがいるから」

「ザアイと結婚したら、安心して専業主婦になれる」

「トップの座を奪ってもらってもかまわないんだけどね」

「才華にとっての良子みたいな感じ」


だそうだ。才華と良子さんという説明が俺には分かり易かった。


そのベガラットさんと俺の関係は、


「……気をつけて帰ってね、人多さんも」


 良くない。嫌われているというよりは信用が薄い。


 まあ、それは仕方ない。

 

 マアカのボーイフレンドが俺。理由はこれ。


 妹みたいにも思っている年下の上司のボーイフレンドが絶賛3股中。俺たちの関係はそれでこじれていないのが余計悩みになっているのかも。一人の男としてはハーレムはやっほーいと、浮かれるのは勘弁してほしい。


 銀河の歴史に1人くらいのハイスッペックな才華、愛音、マアカ。その3人とは銀河の果てと地核くらいのの差がある俺。

 マアカの異性関係で言っても、婚約者候補だった才華の兄、才馬さんと俺じゃあねえ。


 外見、内面、能力、どれをとっても釣り合わない。俺もそう思う。「そうだそうだ」とイナリやらラドンやらも言っている。事実だけどうるせえ、こんちくしょう。




「正気……本当ですか?」


「正気で本当よ」

 

 マアカから今後の予定と俺との関係を聞いたときのベガラットさんは頭を抱えていた。頭抱えるほどか~。


「でも、3股は……」


 すいません。そりゃそうですよね。


「私とラトの現在の関係をなかったことにして、ラトは私、愛音、才華の中から1人を迷わず選べる?」


 ある程度、分野が決まっているならあるかもしれないが、俺は選べてません。


「っつ。それは……」


「即決はできないでしょ。あ、怒ったりはしないわよ。私でもそう思うもの」


 にっこりと笑うマアカ。自分が選ばれないことを不満とは思わないか。


「三者三葉だけど、誰が手に入っても、大きなプラス。手に入るなら3人とも手に入れたい。そうも思ったでしょ」


「……」


 沈黙ってことは肯定だよな。結果的に俺はそういう状況だ。悩んだりすることはあるが、不幸ではない。


「世間体を気にするなら、私が表立つ立場じゃなければいい。それこそ、ラト、あなたがトップの席い座ればいい。あなたなら、誰も文句を言わないし、私も安心」


「なに言ってるのよ」


「あ、私を追放するのも1つの手ね」


「そんなことしないし、できないわ。それはやめて」


 暗い表情となるベガラットさん。俺の知らない、踏み込むべきではない関係が2人にはあるんだろう。マアカもおちゃらけた空気をやめる。


「そう。でも私が譲らないってこと。ラトを頼りにしていることはわかってね」


「はあ。譲らないっことはわかりました」


 一瞬こちらを見たベガラットさんの目は冷めていた。すいません


「それに才華、愛音、私。ラトのリストの最高位にいる私たちを現実的に手に入れている人多在人。3つ以上なら偶然で済ませないのがマーラウト家。私たち3人を手に入れているその遺伝子をマーラウト家に落とし込むのは悪いことじゃあないでしょ」


 その怪しい表情にはドキリとしちまうものがある。ここでその表情はいらない気もするけど。


「私がマーラウト家とグループの歯車の1つであることは否定しない。だけど同時に私個人の幸せを手に入れることを邪魔はさせない。で。相思相愛のザアイとなら私は幸せを手に入れて、マーラウト家は優秀な血を引き寄せる魅力を手に入れる。どこに不都合がある?」


「……」


 本当にそんな血が手に入るならアリって考えてるのか。信じてるの?


「ということで、私とザアイの熱愛関係はここまでで、もう1つのほうは?」


「そちらも止める気はないでしょう。才華さん、愛音さんも含めて」


「そうね。で、?」


「不在期間の給料分は前倒しで働いてくださいね。もちろん、その装置?への出資は自分の小遣いでね。あとそれを考慮した今後の日程は計画表は用意してね」


「ですよね~」


 プライベート分は全部自分で埋め合わせしろってことか。超フリー研究者、開発者の才華と違って、マアカは企業のトップ、そうなるわな。あとマアカ不在でも回りはするのか。


「ああ。それと愛音さんにもお話があるわ」


「愛音?」


 何故ここで愛音。


「目的は分かったし、会社の面々はマアカだからで済むけど、現実的にそのプライベートがこちらの営業に影響を与えているんですから、埋め合わせはしてもらうわよ」


 不適な笑みを浮かべたベガラットさん。シクとの再会を目指すことを心情的に理解できるから、止めしないけど、それはあくまで俺たちの都合、プライベートの問題。


「ちょうど新商品宣伝用の顔が欲しいって要望があったのよね」


 後日、愛音がその話を聞いて、


「~傘下グループからじゃなく、わが社からのマネージャーも用意するわ。これでどうかしら」


「分かりました」


 あっさりと承認した。


「いいのか?」


「私だけなにもしないわけにはいかないからね。在人だって、才華のところで働くんでしょう」


「ん。ああ」


 才華の元で働くことになる。これは俺の職業が学校の用務員から転職。それで済む話ではない。


「在人と愛音を天城家で働いてもらうつもりはないよ。私は2人の上司になりたくないからね。私たちはあくまで幼馴染でいいでしょ」


 才華は昔からそう言っていた。少なくとも俺や愛音が良子さんや千葉のじいさんみたいに使用人として働くことはないはずだった。あっても天城傘下の仕事。それこそ、コネで就職していた学校の用務員みたいな立ち位置だった。


「在人。私たちはシクと再会する。必ず再会する。だから、私を支えてね。いや、支えろ。具体的には私の元で働け。好待遇は約束する。こき扱うから疲れたら私の体で癒してやる。いいね。拒否権はないし、そんな決定権は在人はないから」


 照れたのか、いい空気を自ら粉砕した才華。でも、方針転換をするほどの決意と覚悟は伝わりはした。



「それに、ここでも働くんでしょ」


「まあね」


 そう、俺の勤務先は才華の元だけじゃあない、マアカの元でもだ。


「ラトには別件もあるから、その穴を埋めてほしいのよ。私の運転手とか、お茶だしとか、荷物もちとか、夜の相手だから、マネージャみたいなものね。難しいことはないわ」


「2か所で働くの大丈夫なの?」


「開発者の才華とスポンサーの私というより、良子さんとラトがブッキングしないように調整中」


「だから、大丈夫だろう。たぶん」


「あら、そうなの。あ!」


「どした?」


「マアカ。ベガラットさん」


「なに?愛音」


「私のマネージャーに在人をつけてもらっていい?撮影現場とかに1人で行くのは心細くて」


「はい?」


 にこやかに提案する愛音。心細い?本当か?


「……撮影時の同伴者に人多さんをつけることはわかりました」


「お願いします」 


 いいんですか?ベガラットさん?まあ、仕事に悪影響がないほうがいいと判断したのか?


「さっきまで2か所で働くこと心配してなかった?」


「在人は大丈夫なんでしょ?」


「あ、はい」


 1人だけはぶられるのは嫌です。とオーラが言っている。その後


 マアカの傘下グループでの撮影のみ。(他の会社の仕事はしない)

 あくまで撮影の仕事のみ。(万が一有名になっても、テレビ出演などはしない)

 

 など他の詳細を決めて、モデル『千歳』は誕生した。といっても基本的には俺と一緒に才華のところの使用人として働き、モデルの仕事があるときだけその仕事というふうになっている。


 ついでに俺は3人の付き人っぽいポジション。まあ。異世界でのクエストよりは働いている気がする。



 あっさり大学をやめて、使用人業で才華、モデル業でマアカのアシストに勤しむ愛音。

 10年分の給料かせぐと言って、3割増しで働いている(ベガラットさん談)マアカ

 クルンさんの薬開発部署を建て、避妊と妊娠の薬作成と並行して、装置の試作2号機作成している才華


 目的に向かって3人はそれぞれの形で貢献していた。




「それじゃあ、お疲れ様」


「ああ、お疲れ」


 愛音と一緒に帰宅して、それぞれの部屋へ。ん?家の中からにぎやかな声が?居間に顔を出すと


「兄さん、お帰りなさい。」


 妹の夢。


「在人さん、お邪魔しています」


 才華のところのメイドで、今は同僚でもある日向真。


「兄さん、やっほー。」


 夢の同級生、影崎 美嘉 (かげざき みか)。一言でいえばギャルでピンクのリボンがトレードマーク。夢とは中学校からの付き合い。なにかと中心にいる気がする。キツネ系女子


「お邪魔してます。在人さん」


 夢の同級生。鈴原まひる 影崎とは対照的な雰囲気のおっとりとして穏やかな印象。今は脱いでるがベレー帽大好き女子高生。こちらは高校生からの付き合い。犬系女子


「こ、こんばんわ。お兄さん」


 夢の同級生。月里(つきり)うつつ。こちらも影崎とは対照的な内向的、引っ込み思案な子。カチューシャをつけた、タヌキ系女子。ただ、背は俺以上の高さなんだけどね。んで小学校からの付き合い。


「こんばんわ。でこの状況は?」


「せっかくの休日だから泊りにきた」


 ですかい、影崎。って。泊まるのはかまわんが、それなら夢から一言あるはずだ。記憶にない。


「ってのをついさっき決めたところ」


 あ、そういうこと。君ならありえる。


「というわけなの、いいでしょ、兄さん?」


「ん。ああ。親御さんの了承があるならかまわんよ」


 これくらいの突発事案は、才華より全然、平穏。そう、平穏。呼ばれたら、異世界に行くことにくらべれば至って日常だ。


「い、いきなりで、ご、ご迷惑になってないですか?」

 

 縮こまって不安そうな顔のうつつ。


「ああ。大丈夫、大丈夫。予備の布団もあるし、服の予備(才華、マアカのもの)もあるし、俺は愛音のところにいけば互いに邪魔にならんだろ」


 愛音もこの状況を説明したら、了承してくれるだろう。ぶっちゃけ、この説明がなくても泊まれる。泊まるだけだどね。 服の予備についても察しているから突っ込みはない。


「やっぱり、兄さんは話がわっかる~。それに愛音さんのところで泊まる~?いやらしい予感がピンピンしするねえ~。あ、アンなことしたりするつもりだなあ」


 影崎よ、なにをニヤついているんだ。この発言を受け、真っ赤な顔をしているのはうつつとまひる。もう現状の関係を把握している夢と真は至って普通の表情。


「今日はないな」


「今日は?それって付き合ってるいることだよね?きゃー。ついに暖冬どまりだった兄さんに春がきたのね、おめでとう」


 この手の話に一番敏感で大好きなやつだ。騒ぐ騒ぐ


「お、おめでとうございます?」


「はい、ありがとう、うつつ」


「あ、愛音さんっていえばさ。どうしたのこれ?」


 影崎が鞄の中から取り出しのは、愛音が表紙のファッション誌。先週発売されたやつだ。


「最初はそっくりさんかなあ、って思ったけど、どう見ても本人。勢いで服も買っちゃた。いつからモデル始めたの?」


 まあ、気にはなるよな。あと売り上げこの貢献には感謝を。


「最近」


「以前お会いしたときより、その綺麗になってますよね」


 影崎と一緒に愛音のページを開いて目を通す鈴原。服やメイクのおかげだけではないってのも感じ取っているようだ。


「わ、私も何冊か見ましたけど、『マーラウト』関連のブランドだけなのはなにかあるんですか?」


「……コネとの取引だから」


「は、はあ?」


「まあ、とにかく、商品は財布に余裕があれば買ってあげてくれ。愛音もそれなりに気になっているから」


 売上は大事。うん。回し者じゃあないよ。


「じゃあ、俺は愛音のところへ行くから」


「あ、うん」


「イチャつくんだ。イチャつく。いや、もしかしたら、お風呂あがりで、タオル一枚かも、そこから、きゃーーーーーーー」


 また、騒ぎ出した影崎をスルーして、着替えを持ちだし、いざ、恋人のところへ。




 互いに持っている合鍵で、愛音の自宅のドアを開ける。連絡してないけど、怒られることはない。

と思ったけど、影崎の言葉が脳裏をかすめる。もしかして、仕事から帰ってきたから、お風呂に入ってるかも。それはありえそう。で、タオル一枚なのは……現在基本的には一人ぐらしの愛音。誰かがいることはないから、風呂上がりで、全裸、タオル一枚ってことがあってもおかしくない。ないよな。


「愛音~。おじゃまするよ~」


「どうしたの?在人」


 愛音は着替え終えて、タオル姿。ではなくエプロン姿だ。ふう。漫画やアニメな展開なんてそうそう起きるものではない。あ、でも異世界には行けたか。だからあってもおかしくはないのか?いや、今はどうでもいい。


「俺んちは、真たちのお泊り会。ってついさっき決まったんだってよ。なので、宿無しになった俺を是非泊めさせてくだせえ。なんでもは無理でもそこそこのことならやりますんで」


「あら。美嘉ちゃんもお手柄ね」


 顔に手をそえ微笑む愛音。2人でお泊りなんてなかなかないわな。それよか、よく影崎が発案と分かったな。


「そうだな」


「なら、感謝の印を渡したいから、そこそこのことお願いしようかしら」


「といいますと?」


「7人分の夕食を作ります。買い出しに行きたいと思います」


「ですか。って、よく5人いるってわかったな」


 魔力なんてない世界なのに、どうしてわかったんだ?


「あの世界のおかげで、人の気配とかは感じやすくなったわね。たぶん、才華、マアカもそうよ」


 ですか。あの世界の経験は3人の戦闘力を間違いなくあげたようだ。


「ふうん。てか仕事で疲れたろ。俺が買ってくるぞ」


「ううん。一緒にちょこっとドライブしましょうよ。いいでしょ?」


「あ、はい」


 2人で敷地にある車へ乗り込む。この新車は俺の就職祝い。という名の運転手も兼任という証明。所有者は天城才華になっている。あれば便利なので助かる。


 免許は皆もっているが、基本、運転手は俺。それを良子さんから厳命されている。


「運転できるで済むなら問題ないけど、下手にそれが趣味や興味になって、片輪で壊れたガードレールを走るとか、音速のその先と言うなり実行するようになるのはほんっとうに困るの」


 異世界に行くこになったときより深刻な表情だった。確かに簡単にその状況が想像できる。その先の下手をうった未来も。


「だから、在人。あなたの運転でドライブということにしとけば、あの3人はそこで満足するでしょう」


「そうかも」


「だから、君はこれから運転好き。4人でいるときのエスコート役は自分のものだということにしないさい。これは上司としての命令。いいわね」


「り、了解です」


 有無を言わせない圧をかけられた。そして、才華、愛音、マアカの運転手という役職を得て、今に至っている。


2人でプチドライブで買い出しを終え、2人で夕食を作り、夕食を夢たちへ渡し、2人で夕食を食べる。まったりとテレビ番組を見る。


「今度のこの個展見にいきたいわ。一緒に行かない?」


 愛音が興味を持ったのは「しかなんちゃら」とかいうおっさんの絵画の個展。おっさんは性格悪そうな笑みを浮かべていた。と思いはするが、言葉にはしない。よく知らん人物だし。


「このおっさんのファンだったけ?」


「うーん。ファンってわけじゃあないのよね。ただ、たまにすっごい惹かれる絵があるわ。で。たまには直接見てみたいかなあって」


「ふーん。ま、行くのは問題ないよ」


「じゃあ、期間中にいきましょうね」


「ああ」


 2人で行くデートになるのか、4人で行くデートにのか。それ以上で行く遊びになるのか。今はわからない。どれでもいいけど。


「さて、ここでそこそこのことをお願いしていいかしら?」


「いいけど、なに?」


 夜のドライブとかか?アンなことは状況考えてくれよ。


「一緒にお風呂入りましょう」


「あ、うん」


 何でもできるわけではない俺ができそうなことである。断ることのできないお願いにより2人でお風呂に入る。パヴォロスの家とは違って、2人で入れば体が触れあう浴槽でだ。隣でこの状況だと影崎たちは想像するだろうか?小休止の話題にでもなっているのだろうか。タオル1枚どころではない状況だ。タオル1枚じゃない状況はとっくにあるんだけどさ。


 それはともかくゆったりまったりする。ちょっぴりイチャついたりする。見えるもんが見える件はどうしようもない。だって風呂だし。


そして、


「さあ寝ましょうか」


 愛音の家にある客用の布団は用意されませんでした。愛音の部屋のベッドに座っています。

パヴォロスのときのベッドより当然小さい。2人だとぎりぎりくらいで体が触れ合う。触れあうのはある意味慣れたけど、愛音の家で部屋でってなると初めてだ。


「どうしたの?変な顔をして」


「いや、今の関係になって愛音の部屋で2人きりってのが、このままだと影崎のいうような展開になりそうで」


 耐えれるか、俺?だって愛音だぜ。思えば、買い出しのプチドライブから、やけに距離が近かったように思う。お風呂だってそうだ。あれ、誘われてる?


「あらら。在人が望むならいいけど、今日はお隣には純粋な子たちがいるのよ」


 からかう表情でこちらを見る愛音。


「わかってるって」


「本当に?」


 体をよせて耳元でささやく。怪しい目だし、当たってるし、ぞわぞわするじゃないか。


「本当だ」


「そう。きゃ」


 といいながら抱きしめてやった。仕返しである。やわらかい、温かい、いい香り。


「今はこれが精いっぱい、なんてね」


 少ししたら、愛音を手放して、横になる。


「さあ、寝ようか」


「ええ。でもその前にっと」


 愛音はスマホでだれかにメッセージを送ったようだ。才華、マアカあたりに自慢か?


「ぬわああっ」


 俺の家から叫びが。声の主はずいぶん近いように思える。


「なんて文を送ったんだ?」


「はい、これ」

 

 微笑んでスマホを見せてくる愛音。


『聞き耳立てても今日はなにも聞こえないわよ。美嘉ちゃん』


「あいつ……」


 よくわかったなって思ったけど、気配を感じ取ったのか。事情の分かる俺はともかく、影崎には恐怖だよな。


『ごめんなさーい』


 土下座のスタンプつきの返事がきた。


「ふふ。じゃあ、寝ましょうか」


後輩をからかって満足したのか、愛音も横になる。


「ああ。お休み」


「お休みなさい」


 電気を消し、目をつぶる。そっと握ってきた愛音の手は暖かい。この手はブランドの物を持ったり、印象に残る仕草をとるために使われている。それにおいしい夕食を作った、


 だが、ついこの前までは生物を、人を容赦なく切り捨てていた。あと、指先がぽろりと落ちたこともあった。隣の部屋で事情を知っているのは真くらいか。 夢にはのんびり異世界生活くらいでしか伝えていないし、影崎や鈴原、うつつなどは知る由もない。


 知ってもらう必要もないけど。


 で今は、俺たちの関係が特別であることを認識させてくれる。うん。幸せを感じる。愛音もそうなんだろうか。そうであってほしい。きっとそうだ。


そんなことを考えて、眠りについた。


 ……ってそんな簡単に寝れるか! 寝顔を見るに決まってる。うん。モデルの恋人って自慢できるな。そんな機会はないけど。


A 才華と愛音の抱き枕カバー 表はパジャマ 裏ははだけているパジャマ姿のが1種類 水着版が1つ

  才華、愛音、マアカの抱き枕カバー 表R18、2歩手前、裏はR18、0.5歩手前が1種類

 計7つの抱き枕カバーが押し入れにある

「ここ最近の誕生日プレゼントで個人分とは別枠として渡してくる」

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