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戦力2

表に出ないはずの黒歴史設定

Q クルンさんはなんでアンな薬を作れるんですか?

 ネクロマンサーが使ったあの『でっかい戦士』並み、もしくはそれ以上の筋力があるように見えるゲイザム。繋がった下半身のズボンも限界ギリギリまで伸びている。それ特注のズボン?


「安心してください。すぐ終わらせますので」


「すぐ終わらせれるとでも?」


 才華の強気な発言にゲイザムは不思議そうにする。この状況だと強がりにしか思えんか


「この状況ですよ?結局この戦いは『竜』が復活するかしないかがそのまま結末につながる。そちらもそう思っていたのでは?」


 まあ、そうなるわな。


 今、竜は空まで移動し、ミタキの街へ向きを変えた。


「竜を倒すことは『七喰』や君たちでも無理。現在この辺りで可能性があるとしたら・・・・


「「カタム傭兵団」」


ゲイザムと才華の言葉が重なる。まあ、そうだよな


「でしょ」


「「その通りです。ですから、私たちも対策は打っています」」


「でしょ」


 ニィっと悪い笑顔の才華さん。まあ、対策の件は把握している。いれば心強いことこの上ない。


「・・・・なのでここに来ることはありま・・・・」


 ハッとしたゲイザム。才華に向かって走り出すがマアカのハンマーが顔に迫ったことで足を止める。既に遅い!


「やっと気づいた?」


 才華がドラゴンの前に術式を展開。術式から飛び立った影が竜に迫る。矢とナイフが両目をつぶし、竜が苦痛で止まった瞬間、氷塊と斬撃が全身を傷つける。苦痛の叫びがあがるもそれ以上の轟音とともに巨大な斧が竜を地面に叩きつけた。


「カ、カタム傭兵団・・・・・」


 竜の頭に着地したカタムさんはそのまま首に深い斬撃を加えた。その様子を苦々しくにらみつけるゲイザム。


「驚いてる、驚いてる。ここまで温存してもらったかいがあったなあ、ガタクン」


 満足そうな表情のキャノさん。今気づいたけど、あの斧の刃には傭兵団のマークが描かれているのか。


「温存しすぎだ」


 ガタクンが放った矢はゲイザムの左目を潰す。容赦ない。それか、ゲイザムの隙がありすぎ。


「ぐうう」


「そう。そう。このコアの活躍がないままかと思ったよ」


 俺たちの横へ着地したコア。


「何言ってるのコア。出番がないのが一番いい想定だったんだから」


 飽きれた顔をするジーファさん。カタム傭兵団より5名がこの場にいる。心強いことこの上ない。


「っく。どうやって傭兵団をここに」


「って考えるのは2流だよ。今大切なのは傭兵団がいる状況をどうするかじゃあない?」


 マアカの鉄球が目を抑えていた右手に命中する。


「考えさせるつもりはないけど」


 愛音の斬撃は首の脈を斬った。容赦ない。が倒せるときに倒すのが大事だよな



 なぜカタムさんたちがここにいるって?そりゃあ、洗脳状態にした信者から情報を抜き取って、七喰の協力を得て、カタムさんたちの場所へ移動し接触。足止班検索、洗脳。そこから教団協力者検索し洗脳。さらに教団支配下の魔物で洗脳できるものは洗脳。


 ・・・・洗脳って便利だね。そんな簡単にできるものなのかとも思ったが、実力の差はどうしようもない。もちろん、才華たちも習得なり開発して、教団関係者を次々、生きた人形にしていった。笑顔だったのは秘密だ。


 洗脳のおかげで教団の用意した魔物もをあっさりと素材にし、外の団員は傭兵団の滞在先とミタキの町への2班に分け、戦闘開始とともには街中信者の後始末をしてもらい。最終防衛ラインについてもらった。


 カタムさん、キャノさん、ガタクンさんたちは竜が復活してしまった場合の切り札。イトベスさんは滞在先の指揮官。ジブルさんはミタキの町の指揮官。ジーファさんとコアは才華たちと一番連携が取れるのでこちらに配置してもらった。


 今回、完全に情報戦に勝っている。情報って大事だね。ほんっとそう思いました。



「あら?」


 首を切られたゲイザムは一瞬だけ血が飛び出たが、すぐさまそれは止まる。愛音の斬った部分はみるみるうちに繋がり、刺さった矢も押し戻され、地面に落ちた。


「っと。そう簡単にはいかないか。むしろここからだな」


 竜のほうも動き出し、カタムさんは頭から飛び降りる。竜のほうも傷がふさがっている。


「魔法で与えたダメージのところは傷の治りが早いね。ふうーん」


 そういわれるとそうだな。 


「じゃあ、カタムさんたちは竜のほうお願いね。痛めつけて弱らせて。計画通り私が始末する準備をするから。あ!殺してくれって懇願するほどズタボロにしたり、始末しちゃってもいいから」


 ラスボスの相手は勇者、英雄一行にお願いしよう。漫画じゃあないんだ、俺たちが勇者や英雄である必要はない。まさに勝てばよかろうなのだ。


「ああ。任されたよ。ジーファは竜が飛びずらいように空中に氷の足場を展開後、防壁での防御。ガタクンは竜の初動の妨害。キャノは脊髄なり背骨を狙ってくれ」


 事前の作戦通り、竜をこの場に足止め、弱体化を図るカタムさんたち。まじでお願いします。


「術式完成まで、在人と愛音は私の護衛」


「ええ」


「あいよ」


 俺は盾でゲイザムの攻撃対応。愛音は防壁で竜からの攻撃の対応。ってことだな。


「少ししんどいから支えて。ふう」


 俺にもたれかかって空に術式を展開していく才華。複雑かつ大規模な術式だ。完成には時間がかかるように思える。



 「マアカとコアはあいつの相手。タイムオーバーまで一方的にいたぶっておいて」


 才華の目線はゲイザム。竜とは違って不死ではないんだろうけど、こっちもタフそうではある。科体のトンネル開口くらいでは死なないのは先ほどの同士?うちで分かったしな。


「任せて」


「オーケー」


 既に走り出していたマアカとコア。マアカは術式を展開させ、ゲイザムの周囲に土での立方体を浮かばせる。今までより多い数であり、ゲイザムにとっては移動しずらいだろう。


「私は正面。コアは背後。ま、不死を得るチャンスだから逃げることはないけど、逃げられないように立ち回る方向で。とりえあえず脚を狙って」


 マアカはハンマーをフレイル形態にして、鉄球を飛ばす。


「はいはーい」


 コアは立方体を足場に移動。ナイフで牽制。


 「甘くみないでもらいたいですね!」


 鉄球、ナイフを回避したゲイザムはマアカを目標としたようだ。


「カタム傭兵団となると万が一がありえます。すぐさま決着をつけさせてもらいますよ」


 不完全な竜でカタムさんたちにおくれをとる可能性はありと。


 ゲイザムは目前の立方体を殴って粉砕し、走り出す。あらら!?ってどうやったんだ?レイダーのときは壊れてもその場にあり続けたはずなのに?魔法でも使っている?


 ゲイザムはマアカに向かって立方体を壊しながらばく進する。ラッセル車とかブルドーザかよ!


 あ!


 快調に立方体を粉砕しながら進んでいたゲイザムの動きが突如止まる。これをマアカは狙っていたと!


 ゲイザムは立方体を魔法で浮いているだけの障害物と思っていたのだろう。自分の拳であっさり粉砕できて、その破片が地面に落下すれば誰だってそう思うだろう。だから粉砕しながら止まることなくマアカへ向かってきた。

 

 それも途中からパンチを出すのも面倒になってきたのか、両腕を胸の前に交差させて勢いついたタックルで。しかも立方体がそこそこ密集した場所に向かって。


 でもそれは罠。途中からその位置に設置した立方体となっている。だから粉砕はすれども、落下することはない。そして、そのことに気づかずばく進したゲイザムは自ら針山に突っ込んでいったのと同じ結果となる。粉砕された破片は腕だけでなく胴体にも大小多数の穴を開けた。


「これは?」


体の異変に気付いたときはもう遅し。もちろん、そのスキを逃すことはしないマアカとコア。マアカカが間合いを詰めており、ゲイザムは腕を出そうとするも破片のせいで動かせない。腕を無理やり動かせば、腕の中を削られることを理解したか。それは絶する痛みだろう。


 「イエイ!」


 コアは背後より腱を切り裂き、ゲイザムはバランスを崩す。


 「ヤー!」


 マアカは腕の交点をハンマーで上からたたきつける。結果体内をより削られる状態へ。さらに腱を切られて立つこともできない。


 ようは突起物を手を当てて体を支えてるようなもの。それを体内の複数の箇所で。イタイイタイ


「まだまだああ」


 悶絶し動けないでいるゲイザムをコアが切り刻む。


「ぐうううおらああああ」


 破片を無視してゲイザムは腕を大振り。コアは右腕を足場に間合いをとる。


「ヒュー。大型ゴブリンとかオーガみたいなはっくりょくー」


 コアは立方体に着地


「ス・キ・あ・り!その脚もらいます」


 マアカがハンマー振り下ろす。ただ脚にではなく、顔面に。性格悪し。


「ぶおっ」


 脚を警戒したゲイザムは反応が遅れ、地面に叩きつけらる。これによりに破片から体は抜け出した。イタイイタイ。


「ふー。ふー。」


 ゲイザムは肩で息をしながら立ち上がってきた。効いてはいるが、まだ余裕はありそうだな。ちらっとカタムさんたちのほうへ目を向けたが、順調にボコッている。さすがカタムさんたち、安心できる。


「殺し屋たちを相手に生き残っただけはありますか。力押しだけでは厳しいようですね。やれやれ」


 立ち上がったゲイザムの体は傷がふさがっていく。


「まあ、この程度なら治りますので問題ありませんが。ふむ。っと落ち着く時間もくれませんか」


 ゲイザムは顔に飛んできた鉄球を回避後、しゃがみこんで地面に手を付ける。


「うおおおおおおおお」


 気合と共に地面を畳返し。立方体を飲み込みながら、大地がコアとマアカを襲う。


「おわわ。キャノみたいなことすんなー」


 コアは慌てながら、立方体を渡りこっちへ逃げてくる。キャノさんもできるんだ。


「コア、後ろに。愛音!」


「ええ!」

 

 マアカが叫ぶと足元から地面が凍り付いていく。愛音も地面を凍らせていき、大地のウェーブは完全に凍り付いた。常春のマントがあるから気にならんけど、これ絶対寒い。


と地面が凍り付いたことでゲイザムの攻撃が終わった訳ではない。凍り付いた地面が砕かれ、破片が飛んでくる。


「防壁」


 才華の言葉に従い、俺は防壁を展開。愛音も俺の後ろへ移動。マアカも防壁を展開した。飛んできた破片が防壁にあたり、衝撃が響く。


「これもまだ力まかせじゃないか?」


「そうだね~」


 ずいぶんリラックスした声だな、才華よ。まあ、この防壁で防げるから焦る必要はないか。破片の弾幕はやまない。最初からこれがねらいだったのだろうか?

 

 ん?弾幕が止まった?もういいとこ砕いたのか?氷や土煙が舞って見えん。


「コア下がって」


 マアカの叫び声が聞こえたのち、なにかがぶつかり合う音が響く。氷と土煙が吹き飛ばされ、目に映ったのはマアカのハンマーとレイダーの鉄球がぶつかる状況。レイダーが復活したか?


「惜しかったですね」


 レイダーのハンマーを使っているのはゲイザムだった。鉄球を引き戻し、振り回す。


「これでブロックや防壁は無意味ですね」


 回転の速度が増していく。2つの鉄球を回転させているので、どちらかは対魔法のやつで、厄介といえる。


「そうかしら?」


 マアカは術式を展開し、ゲイザムとマアカの間に立方体を追加する。どうするつもりだ?


「この鉄球には無駄ですよ」


 右手に持っていた鉄球が立方体を粉砕しながらマアカに向かう。こっちが対魔法用の鉄球か。これを見極めるために挑発したのかな?


「それね!」


 マアカは回転しながら、鉄球をさけ、そのまま鉄球を進行方向にハンマーで叩きつけた。レイダーとの闘いでやったことだ。


 あのときは鎖がぶった切れたが、今回はゲイザムは鎖に引っ張られ体勢を崩す。


「下半身の踏み込みが甘いんじゃあないの?レイダーは耐えていたよ」


 マアカは走り出し、ゲイザムが立ち上がろうとしたときにはコアが指数本をぶったぎった。これで鉄球は使えない。


「つううう。だあああ」


 ゲイザムは掴みかかるが初動が遅く、コアはその場を離れている。


 入れ替わりにマアカが両膝脚で飛び膝蹴りで顎を砕きながら跳ね上げる。テリーマンの代表的な技のような膝蹴りで終わらない。


「今なら出来る!パヴォロス・エルージュ・キーーーーーーーーック!!!!!」


 マアカは右膝を伸ばし、すぐさま炎を纏うかかと落とし。ジェイド版ベル赤や神代表シヴァみたいな炎をまとう攻撃。そのかかと落としは体を切り裂きながら焼いた。


「出来た!」


 着地したマアカは不敵な笑みを見せる。


「じゃあ、私はっと」


 ゲイザムの首筋にナイフを突き立てながら倒立状態のコア


「えーっと。あ!ジーファ製黒いメシーーーーーーーー」


 ゲイザムの顔面に両足ドロップキックを決める荒業を決め、ゲイザムはその場に倒れた。あの技はクエストで才華が見せていたな。そして、技名。いいのか、それで?メシマズの話は聞いたけど。いいのか?


「とっさに思いついたけど、サイカなんて言ってたけ?」


「ハンブルグの黒い霧」


「雰囲気的には似てる気がするからよしとしよう。うん。あた!?」


 うなずくコアの頭にコツンと氷塊が当たった。もちろん原因はジーファさん。こちらに背は向けてるが、怒気が違う。

 

「ぐ、ううう。ぬ。つうううううう」


 悶絶しながらのたうちまわるゲイザム。のたうちまわるなら、まだ終わらないか。?!ゲイザムの肉体が膨張し始めた。なんだ?進化?


「ひやあああああああ。な、、なんだ?こんなこおおおおおおお」


 自分の異変に恐怖した叫び。ゲイザムの想定外ってことか。なんだ?


「体の制御が・・・・・・」


 原因となりそうなのは才華しかいないよな。俺は腕の中にいる才華に目線を下す


「いつ食べた?」


「今」


「あいつのなに・・・どういった情報を食べたんだ?」


「あいつの特性。そうねえ。簡単に言うと『改造技術』だね。あいつは自分の体を相当いじっている。例えるとカブトと涅とかみたいな感じかな」


「教皇の力を再現して、死んで当たり前のあの負傷から生存したのはその力のおかげか」


「そう。ただ、人体の知識が足りないから体の拒絶反発を抑えきれない。拒絶を減らすために自分の肉体に近づけないといけない。だけどそれももうできない。だからもうアイツは終わり」


「決着は付くっと」


「そゆこと」


「ひゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 ゲイザムは出血しながら、激しく地面を転がったが


「ああ・・・・・」


 突如動きが止まってそのままとなった。


「100パーセントを超えた反動みたいな最期だな」


・・・・意外とあっさり倒されたな。いいことだけど。


「これであとは竜」


 才華の目線は竜に向かう。確かにアレさえ倒せば終わる。


「竜対策の術式は?」


「とっくにできて効果発動中。これでカタムさんたちは超パワーアップ。それもあって、ほら」


 才華が竜を指さすと、竜はキャノさんの斧で再び地面に叩き落された。相変わらず傷は治っていくが、明らかに弱っているのがわかる。竜対策の魔法効果は十分なようだ。


「不完全かつ特性が働かないならこんなものか」


 氷の足場から竜を見下ろすカタムさんには余裕が見える。ほんの数回しかカタムさんの戦闘を見たことはないが、まだまだ力の底を見せてはくれない。


「サイカ、どう?竜退治のほう」


「これならイケるね」


 ジーファの問い才華が頷く。


「巻き込まれないように離れて」


 才華は竜の真上に竜対策に続いて竜退治用のじゅゆ式を展開。カタムさんたちも竜から離れ、あれ?宙を見上げたから気づいたけど、術式とは違うなにかの影が上空からこちらめがけて落ちてきている。その影もひとつふたつなんかじゃあない大量である。


 なんだ?


「……防壁!」


 才華が術式展開を中断し、俺の盾を頭上に向けて展開。展開と同時に衝撃が盾に響く。衝撃だけでない。爆音が鳴り響く。


 これで俺も理解した。たぶんだと思うが、間違いないだろう。


 落ちてきた影は信者の遺体。そして、それが自爆した。才華たちでも感知してない上空から遺体を大量に転移させて、タイミングを見計らって自爆させた?

 

 だれが?レイダーやミティにはこの手の攻撃はないはず。いや、奥の手か?それともゲイザム?


 爆風と煙でもう周囲は見えない。信者の遺体での絨毯爆撃。いやそれよりも


「愛音とマアカは?」


「2人の防壁は感じる。あ!」


「どうした?2人になにか?」


 いや2人だけじゃないけど。爆破はやまない。


「術式壊された」


「はあ? どうやってさ?」


「さあ?レイダーの対魔法の鉄球か。それとも別のなにか」


「ってこれ、だれが?」


 主要人物っぽいなのはもういないと思うが、どっちにしろ、竜対策や竜退治の魔法を使うのには邪魔な存在がいるのは確かか。


 ヴウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 鳴りやまない爆音の中からまちがいなく竜の咆哮が聞こえた。ついさっきまで弱っていたはずだが、復活したとき、いやそれ以上の咆哮だ。


「遺体の自爆で私たちの足止め。肉片と魔力は竜の餌。この煙と音で自分の行動の隠蔽か。面倒な手だな、もう。とりあえず、竜対策の術式を展開させるから、踏ん張って」


才華は術式を展開させた。


「ああ。まか



 あれ?ここは?


 任せろと言い切る前に俺は状況の変化に気づく。目の前にいた才華はいなくなり、爆音や竜の咆哮は聞こえない。


 変わりに認識できるのは、静寂な黒い空間の中でひときわ目立つ赤。


「やっほー」


 俺に気づいてのんきに手を振っているのは間違いなくゼフォンだ。で隣にはエルドラさん


 つまり、俺は死んだと。えーと、どうやってじゃない。いま言うことだけは決まっている。もしここに来たときの状況は想定していた。


「いやー、刺激て


「もし願いの権利が残っているなら、


 『俺たちがこの世界に来た時点から出会った俺たちの敵対者に転生、転移の機会を与えない。例外  

  は今の時点で転生、転移した者だけ』


って願いを運用してくれ」


 食い気味み言うべきことを言わせてもらう。ペラペラ話している時間はない。


 「って いきなり、あ」


「できるのか?できないのか」


 このタイミングで俺の体は光に包まれた。言うべきことは言えてるので一安心。


「ちょっとまちなさいよー」


「可能です」


 俺の知りたい解答を答えたのはエルドラさん。その隣の神様は慌てふためている。


「じゃあ、よろ」



「しく。あ……」


 また景色が変わる。いや戻った、戻ってきた。俺は宙に盾を構えている状態で才華は俺にもたれかかっている状況。ゼフォンのとこに行く前と体勢は変わらない。


「上手く言えた?」


 こう聞いてくるってことは俺の身にあった状況は理解していると。


「ああ。エルドラさんのお墨付きだから問題ない」


「そう」


 この願いにつては事前に才華たちと決めていた。竜や教団をどうにかしたほうがいいのではと俺は思ったが、才華たちは


 『人の手でも死滅の竜は倒せると言う事実を残す』


 『この手のはいくらでも出てくるからきりがない』


 『人の手でできることは人の手で』


 とのことで、願うことは却下された。まあ、流石に全作戦が失敗した場合は使うつもりではあったが。


「こっちはどうなってる?」


「私が術式を展開するのを感知して、そのタイミングで、教団の刃が飛んできた。私でも集中する術式だったから、反応遅れて、串刺し。で、それを治療終えて全方位型の防壁に張ったところ。時間にして1分経ったかな?」


「つまり、俺は即死して、即復活したってわけ。いやそれより、才華に怪我は?」



「ちょうどゲイザムから『改造』の情報を食べたから、それも活用して負傷と同時に治した」


「ふむ?」


 つまり、才華も串刺しになっていたと。確かに俺たちの服には血が付いていし、足元にも血がある。それよりもネクロマンサーの時は魔法だったから使えるとは思ったけど、特性まで使えるようになるのかよ。あれ?魔女の力ってどうなったんだろう?


「とりあえず盾をお願い。ふう。このまま対策竜対策の魔法も発動させるから」


 死んで生き返るまでの間に1人ですごいことをしている才華。疲れたのかもたれ具合が増している気がする。


「そこだね」


 術式を展開させながら、防壁で飛んできた刃を防ぐ才華。刃の飛んできたほうを向いてニィっと笑う。


「遅いね」


「とりゅああああ」


 コアの叫び声とともにナイフ飛んでった。さらに風が煙を吹き飛ばす。あとものすごい熱気を感じた気がする


「この風は?」


「爆撃の範囲外に移動したジーファの魔法。視界確保。でマアカが爆撃阻止。コアが元凶に攻撃。愛音はマアカとコアを守ってる」


「ですか」


 見上げると大火球がまっすぐ上空に飛んで行った。マアカってことだよな。落下してくる遺体を高密度の大火球で空中火葬か。


 

 煙も晴れて、視界が戻る。こっちの皆は無事だ。


 まず目に映ったのは一回り、いや二回りはたくましくなった死滅の竜。体格だけでなく、体力も回復したようだ。


 そして、その背後に立っているのは……ミティだ。で、ミティの足元にはヴィテスが横わたっている。


 杖を持っているミティはこちらに冷たい目線を向ける。その胸元というか心臓部付近は血で真っ赤に染まっている。うーん?ん?傷も徐々に治っているようにも見える?


 雰囲気が違う?歌劇団で出会ったときとも、テリカの敵討ちにきたときとも、信者として利用されていたときとも違う。なんだ?


 ヴィテスも心臓部付近から大量に血を流し死んでるように見える。・・・死んでる?


「どうゆこと?ズタボロミティ?に死んだはずのヴィテス?がここにいるのは?」


「ん?あれは見た目はミティ、中身はヴィテス。つまり見た目は大人、精神年齢は子供」


「ですかはい?」


 才華の言っている意味は分かるけど、わからない。ここでヴィテスが出てくるのもだけど、ちっちゃいお子様から愛音たちと変わらないスタイルの女性に代わっているのも。


「死んだんじゃあないの?」


 ゲイザムの発言からそうなるのでは?


「死んだふりじゃない、ザアイ?肉片すら残さない攻撃があるんだから、それを利用して姿をくらます。形勢不利ならそのまま逃走。竜が復活して、チャンスがあれば、不死ゲットって感じで。私ならそうする。でも、想定外の竜のピンチだから、仕方なくでてきたんだじゃあない」


「ですか、マアカ。じゃあ、あの見た目は?」


「特性じゃないかしら?」


「愛音の言う通りだね。どうなのヴィテス?」


 才華がヴィテス?に質問する。


「・・・・・よくわかるわね、それに驚きもしないのね」


 こちらに見せた表情はミティのイメージではしない魔性の微笑み。やっぱり、ミティとは違うってのは感じる。1時間あるか分からない邂逅だったから本人をよく知っているわけではない。だけど演技で柔和な笑みはしてもあのような笑みは見せるキャラではない気がする。そして、否定しないことからヴィテスってことなんだよな?


「人の体を奪うなんてよくある話なんでね。で、お子様から見下してたミティに変わったのは?」


 マアカは軽く言うが、よくあるわけはない。あるのは漫画、アニメなど中でだ。すぐ思いつくのはギニューだな。


「今までの体はガタがきてたからね。ちょうどいい体をもらっただけよ」


 ミティの目線は元自分の体のヴィテス。いや元ヴィテスの骸とでもいうべきか?これも奪った肉体か。何歳なんだ?


「ふうん。心臓を移植した感じ?」


「今回はそうね」


 だから、互いの心臓付近が血に染まっているのか?傷が治っているのは、移植に必要な力か。


「って脳の移植ならわかるけど、心臓で性格や記憶を移せるのか?無理でしょ。ん?あの刃の魔法もそうなら、技術とかも無理じゃないか?」


「ザアイ、内臓移植したら、趣味嗜好が変化するって話はあるんだよね。それの極致的な感じ。例えばで言うと、ロングホーンの角を左腕に移植して一千万パワーを使えたキン肉マン的な感じで」


「ですか、マアカ」


 そう言われるとありえそうに思う。


「で?これから、どうするつもり?」


「どうするもこうするも、言わなくてもわかるでしょ?」


 才華の質問にミティ、もといヴィテスが歪んだ笑みで答える。目線は死滅の竜。不死を得るのは変らない目標ですか


A スリッター「エルフ界ではド淫乱で有名な集落出身だからなあ」

  バイン  「クルンはその集落の感覚に全くついていけないから、出てきたらしいのー」

  アルトア 「元々薬づくりの才能はあったから、集落では常備薬をひたすら作ってたらしいんだけど、集落から逃げたあとは、生活するため薬売りをしていた。ま、その手の薬の需要はどこにでも常にあるからね」  

 

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