強者達3
表に出ない黒歴史
Q ミタキの街4強の配置はどう決めた?
どのような毒かは分からないが、ジョーさんの体が微かに震えている。周囲の登録者も気づいて助け舟を出そうとするも、当然、他の信者がそれを妨害する。
教団側もすでに理解しているようだ。4強を始末すれば、形勢は逆転することに。
「卑怯だと叫ぶか?」
「いんやあ。これは互いに命がけの戦いだからね。」
ジョーさんの回答に詰まらなそうにするツエンダーウ。反論を反論で返したかったのかもしれない。
「口だけの騎士どもよりは世界を知っているようだ。」
なにがなんでも望む結果へつなげる。そういう断固たる決意をもって教団は行動しているのだろう。だから自爆なんてこともできる。
「彼らは彼らで信念があるからね。大切なのは様々な信念、生き方、常識、習慣ががあるってことを理解することだと思うよ。自分たちのが絶対正しい、最上位とは思わないことだね。」
「そういうなら我らの理想を理解してもらいたんだが」
「それにはまず、君たちが信仰しない人たちをないがしろにしないことだね。」
「話は終わりだ。」
ツエンダーウは右手でナイフを逆手にもち、ジョーさんの首に振り下ろす。誰の助けも入らない、これはもう。
「っしゃああ」
「ぬうあ。」
片膝ついた状態でジョーさんは右腕アッパー。そのアッパーは振り下ろされた右腕を砕いた。想定外の反撃にナイフをおとし、苦痛に顔を歪めたツエンダーウ。
「ぐ。まだ動けるのか。はっ!」
「しゃああ。」
左ストレートの追撃をツエンダーウは間合いをとって避けた。
「異常な身体が。」
苦々しい顔をしながら、ツエンダーウは信者に腕を治療してもらっている。
「ふうう。ふうう。ふうう。」
ジョーさんは立ち上がろうとしいているが力がはいらないようだ。膝が震えて、呼吸は荒く、異常な発汗をしている。あの攻撃でより毒が回ったんじゃあないのか?
先に戦闘態勢をとれたのはツエンダーウ。これまずくない?
だがその予想は外れた。いい意味で外れた。
「ふーーー。」
どこかすっきりした顔で立ち上がるジョーさん。立てるどころか、軽い跳躍や、肩を回したりして、体の状況を確認している。毒は?
「な?!」
一番驚いているのは毒の効果を熟知しているツエンダーウ。
「なぜ?立てる?」
「ん?解毒したから。」
「な!?」
あっさり答えるジョーさんとますます驚愕するツエンダーウ。
「登録者なりたてのころ、毒の対策はちゃんとしとけって、ガーゼットさんに言われたからね。それで解毒剤とは持つようにしているんだよ。俺はイナルタさんみたいに魔法も使えないし、ターロホさんみたいに体温上昇で毒素を死滅させることなんてできないからね。」
「だとしても、毒の種類もわからないはずだ!」
「腕のいい謝りすぎの薬剤師がこの街にいるんでね。ちなみに、この薬の効果でもう抗体もできてるから、もうその毒は効かない。」
・・・・クルンさんか。脳裏でも頭をさげて謝っているクルンさんが邪魔にならないようにと消えていった。
「ふう。なら掠れば即死の毒を使うか。これで貴様は竜復活の役目を十全に担うことができなくなるぞ。死体だと生気がたりないからな。」
深呼吸をして、冷静さを取り戻すツエンダーウ。新しく取り出したナイフを右手に持つ。なにやら液体がぽたぽたと落ちて、煙を上げている。うげえ。確かにあたりどころが悪ければ即死しそうである。当たり所よくても死にそうである。
「ああ。だから、さっきのナイフは微妙に急所から逸れていたのか。」
そうなの?
「貴様くらいのやり手になると、かすり傷程度のダメージと引き換えにカウンターを決めてくるからな。」
えっとつまり、これは。実力者は大ダメージをギリギリ回避または最低限のダメージと引き換えに反撃してくる。ツエンダーウはそれを利用して、毒つきナイフをかすらせるようにしたのか。
「なるほどね。」
ぐっと拳を固めて、前掲態勢をとるジョーさん。
「行くぞ!」
ジョーさんがナイフを恐れることなく前進し拳のラッシュ。ツエンダーウはそのラッシュを除け、毒ナイフを振る。そのナイフも空を切る。そして、前蹴り。ナイフの横振り。とび膝蹴り。ナイフ投擲。右フック。毒ナイフ振り上げ。左ボディブロー。ナイフ投擲。回し蹴り。裏拳。ナイフ投擲。毒ナイフ突き。肘打ち下ろし。ナイフ投擲。互いの攻撃を躱しあい。
毒ナイフをよけるのはわかるが、ツエンダーウもジョーさんの攻撃を必死に避けている。防御や捌くなどの動きはない。ツエンダーウにとってジョーさんの拳というか肉体は危険なんだろう。実際、毒でまともに動けない状況でも腕を砕いていた。
「・・・・・なにか動きが変ね?」
愛音はつぶやく。どこが?そして、決着がつく。
ツエンダーウが毒ナイフを突き刺してきた。ジョーさんは右ひじで打ち下ろし、右手をたたくことでナイフは地面におちた。さらに右前蹴りがツエンダーウの体をクの字に曲げる。腹を抑えながら、よろめいたところに、ジョーさんは追撃にせまる。
毒ナイフが落ちたから、これで即死はない。左手のナイフはあっても先ほどと同じ毒だから効かない。
ジョーさんが右の打ちおろしのため右腕を振り上げたところで、ツエンダーウはギラついた目で、逆手に持ち直したナイフを振り上げる。
「これが狙いね」
マアカがつぶやく。相打ち狙い?そんなキャラには見えない。わからないがナイフは当たりそうだ。
鈍色に光るナイフをジョーさんはスエイバックで冷静に避けた。来るのを読んでいたみたいだ。そして、腕を極めて、ナイフを落とさせ、そのまま一本背負いのような動きでツエンダーウを強烈に叩き付ける。
「がっ?!」
血を吐き驚愕な表情のツエンダーウ。
「はあ。はあ。貴様、ナイフの毒に・・・・・・」
「気配と動きがおかしかったからね。本命のナイフがこれだと気づいたよ。」
ジョーさんが足元に落ちているナイフに目をやる。本命?どう見ても何度も投げていたナイフにしか見えない。
「最初に偽即死ナイフを見せたのはこれが本命ですよ~っと印象づけるためね。」
ですか、才華。わざわざ教える必要はないか。
「何本も他のナイフを投げたのはこれは凡庸、使い捨てと思わせるためね。ザアイ。」
ですか、マアカ。必然と偽即死ナイフに注意がいくと。そして、普通のナイフに見せた本物の即死ナイフを掠らせるのが狙いか。なーる。ん?
「動きが変ってのもこれに関係する?」
「うん。掠れば即死のナイフなら当てる攻撃をすればいい。だけど、ツエンダーウの攻撃は当てるより倒しにいった攻撃だった。」
ですか・・・?愛音。
「バットにちょこっと当てればいいのに、ホームラン狙いの振り方ってこと。」
「なーる。マアカ。」
「つっしゃあああああああ」
ジョーさん渾身の一撃がツエンダーウに振り下ろされる。その一撃は地面ごと砕き、ツエンダーウは吐血し、気絶した。・・・死んだ?
西門はジョーさんの勝利。ジョーさんはツエンダーウの身柄を登録者に任し、
「っしゃあああああああああ!!!!」
信者のもとへ突撃していった。
次に動きがあったのは東門。煙と多数の火柱でガーゼットさんの姿は見えない。あれ地雷式の火柱が発動したんだよな。見てるだけで熱いなんて思っている場合ではない。無事なのか?
「爆破の恐怖に負けて、動くからそうなるのです。もう聞こえていないでしょうけど。」
哀愁ある表情となるインダ。うお!?また1つ炎の柱があがった。
「ふっ。ふふ。はーはっつはは。」
冷静に見えた表情がみるみる歪んだ笑みと変わるインダ。・・・・これが本性なんだろう。だがここでなにかが引っ掛かった?なんだ?違和感がある。
「心配ないよ。在人。あの高笑いもすぐ止むから。むしろ笑っていられるかが楽しみだよ。」
「ですか?才華?」
インダの歪みが小さいものに見える才華の歪んだ笑み。頼もしさと怖さを感じてしまうよ。
「自分から動いたのよね、ガーゼットさん。」
「ですか、愛音。そう言われるとジョーさんの戦いの間も、轟音は鳴っていたか。・・・・・?なん でそんな自殺行為を?」
俺なら。あの爆破する光弾が降りそそいでくる状況にびびって足を動かしてしまう。そこから炎に包まれ、倒れて次々炎の柱があがる負の連鎖に陥る。インダはそれを想像しているんだろう。
だけど、ガーゼットさんにそのイメージがわかない。ついでにいうと良子さんの場合でもだ。でも自ら罠に飛び込んだのはなぜだ?
「倒したあとにあの地雷が消える確証はない。他の登録者のためね、ザアイ。」
「ですか、マアカ。」
インダを倒して戦いは終わり。ではない。教団がへし折れるまでは続く。先を考えて地雷の効果も確かめていたのか?
「これで終わりかしら?」
炎と煙を払ってガーゼットさんが姿を現す。炎の中から現れる魔神の如く、その姿が見える。埃汚れはあるもどう見ても無傷。顔には余裕。流石に服は真っ黒に焦げて、胸当ては熱で赤くなっているが。
・・・・・・なんじゃありゃ?
あのオレンジや緑がメインカラーだった外見が胸付近を除いて真っ黒に染まっている。よく見ると、頭にもヘッドギアといって差し支えないものが。ヘッドギアなんて現実に言う日が来るとは。
「な・・・・・。」
外見の変化にインダも驚愕している。・・・・・違うよな、ノーダメージなことにだよな。うん。まあ、そうなるか。色の変化は魔法なのか?
「そんな?無傷なの・・・?」
「そこそこの威力だけど、2人の炎には大分劣るからね。」
さも当然と答えるガーゼットさん。2人といったら、ターロホさん、イナルタさんしかいないだろう。過去の戦いから炎に包まれる、焼かれる状況には慣れているんだろうか?あの黒いのは魔法なのだろうか?
「その装備はなんなの?魔法じゃないわね」
「『黒装』という無形の鎧。」
無形の鎧?って鎧の形をしていないなら鎧じゃないって思ったけど、ここは異世界パヴォロス。自前の被服をコーティングするような鎧もあるんだろう。ってことで納得しておく。
「!・・・・・まさか、古代の魔道具?」
古代の魔道具って便利な説明と言葉がでてきた。なんかすごいものだとはわかる。まさに異世界あるあるか。
「そうゆうことね。」
「くっ・・」
あの魔法に信頼を置いていたのか、効かないことに焦りを見せたインダ。
「さあ?どうする?」
不敵に笑うガーゼットさん。
「なら、これで」
「遅い!」
ガーゼットさんはナイフを投げる。一直線に飛んで行ったナイフは容赦なく、術式を展開させにいったインダの顔へ。インダは術式の展開を中断し、ギリギリで回避。
「っちい」
安心する暇もなく雷撃が迫るもインダは回避に成功した。
「があああああああ。」
回避したと思ったが、インダに雷撃が命中する。その雷撃は後方から飛んできたもの。インダに分けが分からないだろうけど、俺には分かった。見栄をはりました。俺達にはわかりましたが正しい。
さきほど投げたナイフに雷撃が当たり、雷撃は拡散する。その拡散した雷撃がインダを襲ったのだ。あれはそういうナイフなのだろう。・・・・拡散するのは雷撃だけなのか?それが気になる。
あ、もしかしたら、インダが回避できたのはこの雷撃を当てるためにわざとなのかもしれない。
そう思ってしまうのは、動けないインダに、ナイフが肩と腹部にサクサクと突突き刺さったから。宙にいる魔法が一旦途切れるもなんとかギリギリで魔法を発動させ、地面への衝突は防いだ。
「なにが?っく。」
雷撃が襲った理由がわからないインダ。なぜ?と思考している間にガーゼットさんの斬撃が襲う。杖を盾替わりに使用して攻撃を防ぐも、腹部からはアウトな出血。杖も真っ二つに折れた。
「はあ。はあ。」
「面倒ね。本気を出したら?それとも直ぐ死ぬ?」
本気?まだなにかを隠しているのか?
「っつ。流石ね。そうさせてもらうわ。」
全力ではないことをあっさり認めたインダ。なんじゃあ?!
インダの体が変化していく。体が骨が出てきて、下半身も鳥っぽく、サイズは二回りくらい大きくなっている?なんですか?あれは?ついでにおなかの傷は治っていく。
「外見で言ったらハーピー・ハルピュイア・ハルピーだねえ。」
ですか、才華。ハーピーは聞いたことはあるな。詳細や由来とかは知らないけど。
「舞とかバレンタインとかモネとかだね。」
ですか?マアカ?
「大きさと骨っぽいなのは種族の特性かしら。」
ですか、愛音。腕と背中の翼、あと尾は骨のみであり、全身もところどころ骨が出ている。あれでなぜ飛べる?答えは異世界だから。と納得しておこう。
「スカルハルピは久しぶりね。ま、この大陸にはいないから、そうはなるか。っと。」
と変身が終わると同時に斬りかかっているガーゼットさん。だけど、インダは空へ飛ぶことにより斬撃を回避した。
「他の子と一緒だと思ったら、痛い目みますよ。」
腕の翼より骨を打ち出すインダ。その骨を回避し、ナイフを投げるガーゼットさん。巨体故命中するも骨の翼にはカキンと当たって終わりだった。
「さらにですね。」
術式が展開され、地面に突き刺さった骨が新たな魔物となっていく。四足歩行の獣から、武器を持った兵士っぽい奴、インダと同格のドでかい戦士と多種多様である。
「ネクロマンサーみたいなもん?」
「といよりは骨を素体に作った自動人形だね。」
「ですか、才華。」
あっという間に囲まれたガーゼットさん。
「へえ。確かに他のとは一味違うわね。」
つまり、他のスカルハルピはこんな芸当できないと。剣で飛びかかってきた骸骨獣をたたき伏せたガーゼットさん。多少骨が欠けたくらいでは止まらない骸骨獣。再びとびかかろうとしたが、その前に首を撥ね飛ばされ、頭部をつぶされた。残った胴体部分は動きを止める。ネクロマンサーの奴よりはあっさりやられた。だが攻撃はまだ続く。
「!」
背中の翼から放たれた強風は数体の骸骨兵を巻き込んでガーゼットさんを襲う。ガーゼットさんは剣を地面に刺して耐えるが、骨兵の1体がガーゼットさんに直撃。
黒装でダメージはないが少しバランスを崩したガーゼットさん。そこに第3のとして爆破する光弾。爆破で周囲の骨兵も粉砕されるが、その骨の破片が恐ろしい速度で飛んでいる。下手に動くと自分から破片にあたりに行くことになるか。
鎧で大丈夫だと思うが、ガーゼットさんの姿は煙に覆われて確認できない。
そこに第4の矢。尾の先端の骨が強大な矢のようになり、落とされる。
「衝撃には強くても、重さはどうかしら?」
質量兵器が地面に落下し光弾に負けないくらいの轟音が鳴り響く。ぶ、無事なのか?
ピシ!
煙が晴れるより強大な骨にヒビが入る。そして、つぎの瞬間、咆哮とともに骨が砕け散った。なんだ?
「惜しかったわね。」
剣を振って煙を飛ばしたガーゼットさん。先ほど炎とは逆の右側の巻物をひらいている。その隣には骸骨の馬。馬?UMA?体格は拳王の乗っていたあの馬の如く大きく、足は6本。目は赤く蠢き、頭には1本の角と2本の牙。背には鞍。鐙の下には2本づつ槍(4つとも先端の形状は違う)も備わっている。
「あなたも私と同じ魔法を?」
骸骨馬の登場にまた驚愕するインダ。なるほど、確かに同じには見える。
「どっちかというとネクロマンシー。この子限定で、中途半端だけどね。」
ガーゼットさんは剣を納めながら、骸骨馬のあごを撫でている。そして、ガーゼットさんは骸骨馬に跨り、槍というか鉾を手に取った。
「この子の名はアールトゥー。凶暴な私の愛馬よ。」
「ブルアアアアア!」
骸骨馬アールトゥーは気合を入れるように一度立ち上がる。
「この子の素早さは一味違うわよ。」
弓から放たれた矢。銃より放たれた弾。それらの如くばく進するアールトゥー。あっというに進路上の骸骨兵、骸骨獣は弾き飛ばされた。
「もちろん、力もね!」
ブレーキをかけたタイミングで骸骨大戦士が襲ってきたが、アールトゥーは振り返ることなく後ろ脚で蹴飛ばした。そして、すぐさま振り返り、新手の骸骨大戦士を前脚蹴とばし、そのまま踏みつぶす。 骸骨兵2体の攻撃が当たったが、全身がど太い骨のせいか、気にも留めていない。一体の首根っこを加えて他の骸骨兵に投げ捨て、もう一体は頭から踏みつぶされた。まさにあの馬のようだ。
ガーゼットさんも鉾で飛びかかってきた骸骨獣をたたき伏せ、あっという間に囲んでいた骸骨部隊は粉々となった。インダはこの様子を呆然と見ている。足止めにもならなかったね。
「ブッルルル」
「準備運動はいいかしら?次はあれよ。」
ガーゼットさんとアールトゥーは宙にいるインダ獲物を見据える。
「と、飛べない駄馬にまたがったところで」
気圧されたインダは高度を上げ、光弾と骨弾の雨を降らす。この高度ならガーゼットさんの持つ鉾も届かない。ナイフと雷撃も警戒されて当たるまい。どうするんだ?
俺ごときが心配してもどうしようもなく、アールトゥーは殺意の雨に臆することなく駆け出し、ガーゼットさんは槍で骨弾を薙ぎ払う。
だけど、すぐにアールトゥーは地面を駆けることをやめた。攻撃の激しさにとまったのではない。攻撃によりダメージを負ったわけでもない。
だって、地面じゃなく宙を駆けている。翼で飛ぶとかではない。どうなってるん?そう考えたのはインダもだろう。
一瞬、攻撃が止まったタイミングでアールトゥーは加速する。野生の本能?インダは慌てて突風を放つも、投げられたナイフが突風を四散させる。アールトゥーの一本角と2本の牙がインダの腹部を貫通。
「ぐあああああああ。」
さらに鉾が、インダの胸を切り裂き、光、骨に続いて血の雨を降らす。アールトゥーが首を払ったことで、インダを投げ捨てる。そこから背後に回り、鉾がインダの翼を切り裂く
「ぐううううううう。その馬はなんなのよおおお?」
歯を食いしばりながら体勢を立て直し、翼から骨弾を放つインダ。
「南西の大陸の天駆馬。陸、空、海、海中、竜巻、溶岩、雲、術式、矢の上だろうと駆ける馬型の魔物。」
アールトゥーは余裕をもって回避し、ガーゼットさんは自慢の愛馬をうれしそうに説明する。
「ならあああ!」
インダは自分の周りに地雷の術式を展開させた。あれでアールトゥーを撃破し、ガーゼットさんを落下させるつもりなのかも。
だけど止まらない。躊躇しない。怯まない。火柱をあげながら、咆哮とともにアールトゥーはインダに肉薄し、今度は両前足で両肩を蹴飛ばした。砕ける音とも少し高度を下げるインダ。というより落下している。
そこに降ってきたのは一筋の光ではなく鉾。鉾は正確にインダの右肺を貫く。これでインダの落下は止まった。
さらにトライデントを左肩に投げつけるガーゼットさん。よく見ると鉾とトライデントは背中の翼も貫いている。・・・・・?あれ?
「っく。この槍はなんなの?なんで私は落下しない。」
両肩を貫かれ、もがくインダ。背中の翼を貫かれ、本来なら鉾とトライデントに続いて自分が降っているはず。・・・なんで落ちない?・・・・あの鉾とトライデントは宙に浮いているのか?
「あの2つは宙に突き刺せる槍だからね。あなたのようなタイプにはちょうどいいのよ。」
答を教えてくれたガーゼットさん。槍というか禍禍しい薙刀を持っている。そして、アールトゥーの鞍上から跳躍。
「ひい」
「はああああああああああ!!!!」
振り下ろされた薙刀はインダの体を真っ二つにした。光弾、骨、血と続いて自分自身が降る結末になった。
A ガーゼット 各門配置登録者チームにおける ドラフト会議において、東、南、西より指定1位 抽
選により東へ くじを引いた東門代表 イガルカさん 胴上げされる。
イナルタ 北 単独1位指定により決定 北門リーダー副リーダ ツェンとドルグは大はしゃぎ
ターロホ 西 指定2位 ドM軍団は奇声を上げて男女間に亀裂があった。
ジョー 南 指定4位 ジョーさんがちょっと落ち込んでいたのは内緒だよ